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2025-02-15

22年振り?! ハーレムのアパートでお世話になったTさんと再会

 メールボックスの迷惑フォルダに紛れていたメッセージから久しぶりに懐かしい知人と先日再会しました。1999年に私が単身NYに乗り込んだ時にお世話になったアパートの大家さんです。京都出身のエネルギッシュな方で、すぐに意気投合して、2人で近くの公園でよくサッカーやりました。公園にいた多国籍メンバーと草サッカーやって削りあったりしましたね~。その他、イチローの試合見に行ったり、郊外のバザーに連れて行ってもらったり色々お世話になりました。マンハッタン・ハーレムのど真ん中のアパートで、夜に発砲音があったり、うるさすぎて勉強に集中できなかったので少しして私はクィーンズに引っ越しましたが、その後もたまにチャイナタウンでランチしたりしました。9.11のあと少ししてTさんがタイに行くと言って突然居なくなったのには驚きました。その際、車譲ろうかとおっしゃってもらったのですが、残念ながらあの時私には車を持つ余裕がありませんでした。
 
 その後、ぱったり音信不通になりましたが今年1月末にメッセージを受け取りました。タイ語をマスターして現地で運転手付きの生活をされていたそうですが、クーデターの内乱でどうにもならず、その後、中国の雲南大学で勉強されたそうです。で、今はロスで奥様と子供3人とのセミリタイア生活。今年還暦になるのに6,9,12歳の子供がいらっしゃるとのこと、相変わらずエネルギッシュですね!もちろん大谷のワールドシリーズも現地観戦したそうです。アメリカ、タイ、中国の話以外にもサッカーの話などで盛り上がって楽しい時間を過ごせました。年に一度チケットの安い時期に帰国するそうなのでまた来年会いましょう!

2023-07-15

3次元 Yang-Mills 理論のシュレーディンガー表現

 プリンストン高等研究所では例年、大学院生向けにある特定のトピックについての夏の学校が開かれています。私が参加したのはもう20年前2003年のことでしたが素晴らしい環境だったので今でもよく覚えています。今年の夏の学校のトピックはYang-Mills理論の閉じ込めについてのようです。私の指導教官だったNairの動画も出ていたので大学院生に戻った気分で興味深く見ました。



相変わらずとても分かり易く勉強になる講義でした。ハミルトニアンを用いた3次元 Yang-Mills 理論は長年ナイアが研究してきたトピックで私も2008年に関連論文を出したことがあります。それ以降ほ比較的新しい内容(カシミール効果の計算、超対称性ゲージ理論への応用、非アーベル型エンタングルメントについての洞察)も丁寧に解説されています。ナイアが好きな質量ギャップについての理解も二日目の講義の32分ごろから披露されていて懐かしかったです。100ページ以上の丁寧な講義録も用意されており、意欲のある学生・若い研究者が取り組みやすいよう配慮されています。Yang-Mills理論の(ラージ$N$ではない)非摂動的な手法に興味ある方は是非ご覧ください。

2023-07-05

Mathematical Review 115: IKKT行列模型、最近の進展

私が大学院に入ったのは1999年でしたが、その頃の素粒子論は弦理論全盛でその中でも特に全てのタイプの超弦理論を統一するという(Witten先生が発見し命名した) ${\cal M}$ 理論が注目されていました。${\cal M}$ 理論がもつ時空の非可換性との関連で ${\cal M}$ 理論が行列模型で表されるというBFSS行列模型が提唱され、またほぼ同時期にあるタイプ(Type IIBと呼ばれる)超弦理論が行列模型として記述できるというIKKT行列模型が提唱されました。当然ながらこれらについて多くの論文が出ました。博士課程の頃、私もこの流れに乗らないとポスドクが見つからないだろうという思いもあり、これらの行列模型について論文を書きました。20年ぐらい昔の話です。

結局、ポスドクは見つからずその後これらの行列模型についてあまりフォローしていなかったのですが、先日、AMS の Mathematical Reviews からIKKT模型についての論文のレビューを依頼されたので少し読んでみました。昔のことを思い出しながら、ざっと見た感じで表面的にレビューしただけですが、とりあえずこちらを寄稿しました。最近、偶然にも長谷部さんからIKKT行列模型についての関連論文を教えてもらっていたので、こちらについても読んでみました。IKKT行列模型から高次元スピンのゲージ理論やゲージ場の散乱振幅を導くという話です。何故そのようなことを考えるのか今の私には良くわかりませんが、20年にわたり同じトピックを深めていくSteinacker氏の研究スタイルには感服します。今後もシミュレーションではない解析的な手法でIKKT行列模型の研究を続けて行ってもらいたいと思います。

2023-03-04

18年ぶり?! ボストンから友人来日

 大学院の時の友人が明日の東京マラソンを走るのと仕事を兼ねて訪日中とのことで久しぶりに会うことになりました。最後に会ったのは2005年だったでしょうか?記憶が薄れています。私が Queens の Elmhurst にいた下宿先にまで来てくれたことを思い出しました。台湾でドイツ文学と物理を専攻し、金門島で1年徴兵経験を積んでから CCNY の物理学科に同期で入った Hsuanyeh Chang です。他の同期のメンバーよりも年長なためかとにかくアクティブで初めから英語もペラペラだったので少し圧倒されましたが私とは気が合ったのでよく話していました。物性理論に進んだのですが、いつの間にか台湾に帰って特許事務所で働いたり中国の深圳で働いたりしてまたNYに戻ってきました。そしてなんだかんだで物理の PhD を取得したのに何故かワシントンDCの弁護士事務所に行ったと聞いていました。その後、ボストンに移り弁護士資格を取得し今では特許事務所を自分で開いているとのこと。


ほんで明日の東京マラソンですか!いつまでもアクティブだなあと感心するしかありません。

2021-09-18

QCD 量子色力学 note18: sine-Gordon 方程式

ワインバーグの訃報に接し開始した昔のノートのデジタル化ですが、ようやく最後のエントリーとなりました。電弱標準模型の話からだいぶ離れてしまいましたが、今回は sine-Gordon 方程式を扱います。
\[ \begin{eqnarray} \L &=& \hf (\d \varphi )^2  - \frac{\mu^2}{\al^2} ( 1- \cos \al \varphi ) \\ V&=&  \hf \left( \frac{\d \varphi}{ \d x} \right)^2 + \frac{\mu^2}{\al^2} ( 1- \cos \al \varphi )  \end{eqnarray} \tag{1} \]
ただし、$(\d \varphi )^2 = (\d_t \varphi )^2 - (\d_x \varphi )^2$ である。真空では $V (\varphi ) = 0$ なのでその定常解を
\[ \varphi_0 (n) = \frac{2 \pi n}{\al} \]
とおく。$\varphi = \varphi_0 + \et$ としてラグランジアンを展開すると
\[ \L = \hf (\d_t  \et )^2 - \hf ( \d_x \et )^2 + \frac{\mu^2 \eta^2}{2} - \frac{\mu^2 \al^2}{4!} \et^4 + \cdots  \]
有限エネルギー条件は $|\vec{x}| \rightarrow \infty$ で $\varphi \rightarrow \varphi_0$ となる。ラグランジアン(1)から sine-Gordon 方程式は
\[ \left( \frac{\d^2}{\d t^2} - \frac{\d^2}{\d x^2} \right) \varphi + \frac{\mu^2}{\al} \sin \al \varphi   = 0 \tag{2} \]
となる。伝播速度 $v$ $(|v| < 1 $) をもつ波動を考えると sine-Gordon 方程式は以下のソリトン解をもつ。
\[ \varphi_{sol} = \frac{4}{\al} \tan^{-1} \left[ \exp \left( \pm \frac{\al^2}{\mu} \frac{1}{\sqrt{1-v^2}} \Big( (x- x_0 ) - v ( t - t_0 ) \Big) \right) \right] \tag{3} \]
ただし、$|\vec{x}| \rightarrow \infty$ のとき $\varphi \rightarrow \varphi_0$, $\d_x \varphi \rightarrow 0$ の境界条件と積分公式
\[ \frac{\al}{2} \int_{\varphi (x_0 )}^{\varphi (x) } \frac{ d \varphi}{ \sin \frac{\al}{2} \varphi} = \Bigg[ \ln \left( \tan \frac{\al}{4} \varphi \right) \Bigg]_{\varphi (x_0 )}^{\varphi (x) } \]
を用いた。この時、全空間のエネルギーは $U ( \varphi ) =  \frac{\mu^2}{\al^2} ( 1- \cos \al \varphi ) $とおくと
\[ {\cal E} = \int_{- \infty}^{\infty} U ( \varphi ) dx = \frac{4 \mu}{\al^2} \sqrt{1 - v^2} \]
と有限になるので(3)はソリトン(孤立波)解である。

2021-09-13

QCD 量子色力学 note17: フレーバーカイラル対称性

以前のノートnote11でQCDの「フレーバーカイラル対称性の破れの階層性」について触れましたが、今回のエントリーではこの点について更に詳しく見て行くことにする。

QCDのフェルミオン部分のラグランジアンは
\[ \L = - \sum_{i = 1}^{N_f} \bar{q}_i \ga \cdot D q_i + \mbox{(質量項)} \tag{1}\]
で与えられる。ただし、$D = \d + A$ であり、$A$ はグルーオンを表す。古典レベルでこのラグランジアンの最大の対称性は $U(N_f)_L \times U(N_f )_R$ となる。これは
\[ \L = - \bar{q}_{Li} \ga \cdot \d q_{Li} - \bar{q}_{Ri} \ga \cdot \d q_{Ri} + \cdots \tag{2} \]
と書き下せば明らかである。実際にはこのフレーバーカイラル対称性は実現されていない。以下ではカイラル対称性が破れる原因を紹介していく。

(1) 電弱相互作用
 電弱ゲージ群 $G_W \subset U(N_f)_L \times U(N_f )_R$ によって明示的にカイラル対称性が破れる。この対称性の破れはクォークと $W, Z$ ボソンとの相互作用、クォークとヒッグス場との相互作用を通して起きる。これらの相互作用はQCDラグランジアンの摂動的な補正として扱われ、クォークの質量項だけが残る。これは電弱摂動理論のゼロオーダーであり、そのラグランジアンは
\[ \L = - \bar{q}_i \ga \cdot (\d + A ) q_i - m_i \bar{q}_i q_i \tag{3} \]
で与えられる。このラグランジアンの対称性はとても小さい。全ての軸性対称性は質量項のために自明的に破れる。もし全ての $m_i$ が等しければ $U(N_f )_{L+R}$ 対称性が保たれる。しかし、質量差を考量すると $U(N_f )_{L+R}$ より小さな対称性しか持ちえない。$N_f =3$ の場合、
\[ U(N_f )_{L+R} = U(3)_V \approx SU(3)_V \times U(1) \]
となる。ここで、$SU(3)_V$ はGellMann-Ne'emanによって提唱されたクォーク模型の $SU(3)$ 群である。$U(1)$ はバリオン数を表す。

(2) 強い相互作用によるカイラル対称性の自発的な破れ
 クォークの質量も含めて全ての電弱相互作用項が無視できる場合、古典的な対称性は $U(N_f )_L \times U(N_f )_R$ である。この対称性は強い相互作用の閉じ込め効果により $U(N_f )_{L+R}$ へ自発的に破れる。これは実験的な事実であるが、理論的に証明されたわけではない。これは自発的な破れの効果によるものでオーダーパラメータを使って記述できる。簡単なオーダーパラメータとして複合演算子 $\bar{q}_{Li}q_{Rj}=M_{ij}$ を採用する。
\[ \bra \bar{q}_{Li}q_{Rj} \ket = \bra M_{ij} \ket = c \del_{ij} \tag{4} \]
$U(N_f )_L \times U(N_f )_R$ 変換のもとで $M \rightarrow h^\dagger M g$ となる。ただし、$ h \in U(N_f )_L $, $g \in U(N_f )_R  $ である。$\bra M \ket = c {\bf 1}$ のとき $U(N_f )_{L+R}$ は保存される。$\bra M \ket$ が ${\bf 1}$ に比例しない場合($c$-数でない場合)対称性の破れ方は異なる。パリティは自発的に破れない。実際、ヴァッファとウィッテンによりベクトル的な対称性は自発的に破れないことが示されている 。すなわち、自発的な対称性の破れによって $U(N_f )_{L+R}$ より小さな対称性が得られることは無い。

ゴールドストンの定理により自発的な対称性の破れ $U(N_f )_L \times U(N_f )_R \rightarrow U(N_f )_{L+R}$ によってコセット多様体 $\frac{U(N_f )_L \times U(N_f )_R}{U(N_f )_{V}}$ に対応する南部-ゴールドストン粒子が導かれる。これらは標準的な擬スカラーメソン $\pi, K , \eta ,\eta'$ を与える。元となるカイラル対称性 $U(N_f )_L \times U(N_f )_R$ はクォークの質量とその他の電弱相互作用によって自明的に破れるので理論の完全な対称性ではない。そのため、これらの擬スカラーメソンは現実世界では無質量とならない。

(3) 軸性アノマリー
 軸性アノマリーについて詳しくはnote07を参照のこと。古典的な対称性は $U(N_f )_L \times U(N_f )_R \rightarrow U(N_f )_{L+R}$ であるが、フレーバー1重項の軸性 $U(1)$ 対称性はアノマリーによって破られる。このアノマリーは


\[ q \rightarrow e^{i \ga_5 \al }  q \]
\[ \del_\al \Ga = 2 \al N_f \left[\frac{1}{16 \pi^2} \int F_{\mu\nu}^{a} \widetilde{F}_{\mu\nu}^{a}  \right]  = 2 \al N_f Q\tag{5} \]
となる。ただし、$Q$ は整数でインスタントン数を表す。$U(1)_A$ は完全に破れるわけではなく離散的な部分群は残る。(この点については後で議論する。)

2021-09-09

QCD 量子色力学 note16: ハドロンとレプトンの深非弾性散乱

前回のnote15の続きです。(ノートはあと3つ!)今回はQCDの発展に歴史的に重要な深非弾性散乱を取り上げる。この実験によりクォーク(ファインマンはパートンと呼んでいたらしい)の存在が実証されQCDの研究が進んだ。ここでは例として電子$e$と陽子$p$の散乱について考える。
 

上記のように運動量を指定する。散乱後の陽子の状態を$X$、その運動量を$P_X$とおく。基本的なローレンツ共役な変数は$\nu = p \cdot q$と$q^2$になる。ただし、$q = k - k'$とおく。相互作用のラグランジアンは
\[ \L_{int} = e A_\mu J_\mu + e A_\mu \bar{\Psi} \ga_\mu \Psi \tag{1} \]
となる。ここで、$J_\mu$はハドロンの電磁カレント
\[ J_\mu = \sum_{i} Q_i \bar{q}_i \ga_\mu q_i \tag{2} \]
であり、$i$はフレーバーの指標である。
\[ \begin{eqnarray} Q_i = \frac{2}{3} &~~& \mbox{for} ~~ q_i = u , ~c,~ t \\  Q_i = - \frac{1}{3} &~~&  \mbox{for} ~~ q_i = d, ~s,~ b \end{eqnarray} \]
散乱過程の振幅は(1)より
\[ \A = i e^2 \sqrt{\frac{m}{E_k V} \frac{m}{E_k' V} \frac{M}{E_p V} } \bar{u}_{k'} \ga_\mu u_k \frac{\del_{\mu\nu}}{q^2}\int \bra X | J_\nu (x) | P \ket e^{-iq x } d^4 x \tag{3} \]
とおける。$P$は(4次元)運動量演算子なので
\[ J_\mu (x) = e^{iPx} J_\mu (0) e^{- iPx} \tag{4} \]
と表せる。よって、
\[ \begin{eqnarray} \int d^4 x ~ \bra X | J_\mu (x) | P \ket e^{-iqx} &=& \int d^4 x~ e^{-i (p+q-P_X ) x}  \bra X | J_\mu (0) | P \ket \\ &=& (2 \pi )^4 \del (p+ q -P_X )  \bra X | J_\mu (0) | P \ket  \tag{5} \end{eqnarray} \]
となる。

フラックスが$F= 1/V$となる陽子の静止系($E_p =M$)で考える。また、状態$|X \ket$にある粒子の波動関数因子($\sqrt{\frac{m}{E V}}$など)は省略する。というのも、それらの因子は$V \rightarrow \infty$極限でローレンツ不変な形で位相因子に組み込まれるためである。式(3), (5)から散乱断面積は
\[  \begin{eqnarray}  d \si &=& \sum_{k' , P_X} \frac{|\A|^2}{\tau F} = \frac{V}{(2 \pi )^3} d^3 k' \sum_X \frac{e^4 V}{\tau } \frac{m}{E_k V}\frac{m}{E_{k'} V} \frac{1}{V} \frac{1}{q^4} \tau V (2 \pi )^4 \del (p + q - P_X ) \\ && ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~\times \hf \sum_{s, s'} \left( \bar{u}_{k'}^{s} \ga_\mu u_{k}^{s'} \, \bar{u}_{k}^{s'} \ga_\nu u_{k'}^{s} \right) \hf \sum_{P: \mbox{偏極}} \bra X | J_\mu (0) | P \ket \bra P | J_\nu (0) | X \ket  \\ &=& \frac{2 \pi e^4}{q^4} \frac{m}{E_k} \frac{m}{E_{k'}} \left[ \hf \sum_{s, s'} \left( \bar{u}_{k'}^{s} \ga_\mu u_{k}^{s'} \, \bar{u}_{k}^{s'} \ga_\nu u_{k'}^{s} \right)  \right] \\ && ~~ \times \left[ \hf \sum_{P: \mbox{偏極}}\sum_X (2 \pi )^3 \del^{(4)} ( p + q -P_X ) \bra X | J_\mu (0) | P \ket \bra P | J_\nu (0) | X \ket   \right] \frac{d^3 k'}{(2 \pi )^3} \tag{6} \end{eqnarray} \]
ここで、
\[ \sum_s u_k^s \bar{u}_k^s = \frac{{k \!\!\! /} + m}{2m} \]
を用いると
\[ \begin{eqnarray} \frac{2 \pi e^4}{q^4} \frac{m}{E_k} \frac{m}{E_{k'}} \left[ \hf \sum_{s, s'} \left( \bar{u}_{k'}^{s} \ga_\mu u_{k}^{s'} \, \bar{u}_{k}^{s'} \ga_\nu u_{k'}^{s} \right)  \right] &=& \frac{2 \pi e^4}{q^4} \frac{m}{E_k} \frac{m}{E_{k'}} \hf \frac{1}{2m \cdot 2m} \tr \left[ ( {k' \!\!\! /} + m ) \ga_\mu ({k \!\!\! /} + m) \ga_\nu \right] \\ &\simeq& \frac{2 \pi e^4}{q^4} \frac{\big[ k_\mu {k'}_\nu +k_\nu {k'}_\mu - \del_{\mu\nu} k \cdot k'  \big]}{2 E_k E_{k'}} \end{eqnarray} \]
となる。ただし$m= m_e$は$|\vec{k}|^2$あるいは$|\vec{k'}|^2$に比べて充分小さいと仮定した。よって、散乱断面積は
\[ d \si = \frac{2 \pi e^4}{q^4} \frac{\big[ k_\mu {k'}_\nu +k_\nu {k'}_\mu - \del_{\mu\nu} k \cdot k'  \big]}{2 E_k E_{k'}}  W_{\mu\nu} \frac{d^3 k'}{(2 \pi )^3} \tag{7} \]
となる。ただし、$W_{\mu\nu}$は
\[ \begin{eqnarray} W_{\mu\nu} &=& \hf \sum_{P: \mbox{偏極}}\sum_X (2 \pi )^3 \del^{(4)} ( p + q -P_X ) \bra P | J_\nu (0) | X \ket \bra X | J_\mu (0) | P \ket \\ &=& \hf \sum_{P: \mbox{偏極}}\sum_X  \frac{1}{2 \pi} \int d^4 x ~ e^{-i (p+q - P_X) }  \bra P | J_\nu (0) | X \ket \bra X | J_\mu (0) | P \ket \\ &=&  \hf \sum_{P: \mbox{偏極}}\sum_X  \frac{1}{2 \pi} \int d^4 x ~ e^{-i q } \bra P | J_\nu (x) | X \ket \bra X | J_\mu (0) | P \ket \\ &=&  \hf \sum_{P: \mbox{偏極}}  \frac{1}{2 \pi} \int d^4 x ~ e^{-i q } \bra P | J_\nu (x)  J_\mu (0) | P \ket  \end{eqnarray} \]
で与えられる。これはさらに
\[ W_{\mu\nu} = \hf \sum_{P: \mbox{偏極}}  \frac{1}{2 \pi} \int d^4 x ~ e^{-i q } \bra P | \big[ J_\nu (x) ,   J_\mu (0) \big] | P \ket  \tag{8}\]
と書き換えられる。交換子に出てくる余分な項 $J_\mu (0) J_\nu$ はデルタ関数 $\del^{(4)} ( P_X + q - p)$ を与えるが、これは$W_{\mu \nu}$に寄与しない。というのも、このデルタ関数は$P_{X0} = M - q_0$を意味するが、実験室系では$q_0 = E_k - E_k' > 0$なので、中間状態$| X \ket$のエネルギーは$P_{X0} = M - q_0 < M$となるが、そのような状態は散乱過程に寄与しない。(つまり、陽子が崩壊するような状態は存在しない。)よって、$q_0$が正となる状態$| X \ket$は存在しない。我々が関心を持つ現象は$q_0 \rightarrow \infty$の極限である。

2021-09-02

QCD 量子色力学 note15: 電荷の定義と閉じ込め

前回のnote14の続きです。今回の内容は前半の電荷に関する部分がナイアの教科書(基礎編)


の10章、後半の閉じ込めについては教科書(発展編)


の19章に詳しい解説があります。ここで紹介するノートはメモ程度のものなので詳細を知りたい方は教科書を参考にして下さい。

ゲージ理論の電荷演算子

\[ S = - \qu \int F_{\mu\nu}^{a}F_{\mu\nu}^{a} d^4 x = + \hf \int \Tr \left( F_{\mu\nu} F_{\mu\nu} \right) d^4 x \tag{1}\]
ただし、$F_{\mu\nu } = -i t^a F_{\mu\nu}^{a} $ であり、$SU(3)$ の生成子 $t^a$ は $\Tr ( t^a t^b) = \hf$ を満たす。この作用の変分は
\[ \begin{eqnarray} \del S &=& \hf \int \Tr \left[ F_{\mu\nu} D_\mu (\del A_\nu) \right] 4 d^4 x \\&=& 2 \oint \Tr \left( F_{\mu\nu} \del A_\nu \right) d \Si^\mu + (\mbox{運動方程式}) \tag{2}\end{eqnarray}\]
となる。無限小ゲージ変換では $\del A_\mu  = D_\mu \th$ とおける。ただし、$\th$ は無限小のゲージパラメータ。式(2)より空間表面上での変分は
\[ \del_\th S = 2 \int \tr \left( F_{0i } D_i \th \right) d^3 x \tag{3} \]
となる。このゲージ変換のもとで状態 $| \Psi \ket $ は
\[ | \Psi \ket_\th = e^{i2 \int \tr (F_{0i} D_i \th ) d^3 x} | \Psi \ket \tag{4} \]
と変換する。ただし、
\[ F_{0i} D_i \th = D_i ( F_{0i} \th ) - \th D_i F_{0i} ~, ~~~~~ F_{0i} = E_{i} \]
である。物理的な状態はガウス則 $(D \cdot E = 0)$ を満たすので
\[ \tr \th ( D \cdot E ) | \Psi \ket = 0 \tag{5} \]
よって、物理状態は
\[ | \Psi \ket_\th = e^{-i2 \oint_{|\vec{x}| \rightarrow \infty} \tr \th E_i d s^i } | \Psi \ket \]
と変換する。表面積分は無限遠での2次元球面上で評価される。無限小ゲージ変換 $\del A_\mu  = D_\mu \th$ はネーター対称性として作用するので対応する電荷演算子 $Q^a$ は
\[ | \Psi \ket_\th = e^{i Q^a \th^a} | \Psi \ket \]
と定義できる。よって、$E_i = - i t^a E_i^a$, $\th = t^a \th^a$ とすると 
\[ Q^a = i \oint_{|\vec{x}| \rightarrow \infty}  E_i^a ds^i \tag{6} \]
を得る。ガウス則が自動的に満たされると考えると(4)から直接
\[ Q (\th ) = 2 \int \tr (E_i D_i \th ) d^3 x \tag{7} \]
ともおける。これは2次元面ではなく3次元空間全体での積分として評価される。

2021-08-29

QCD 量子色力学 note14: グルーオン伝播関数の1ループ量子補正

前回のnote13の続きです。グルーオンの作用はnote13の式(4):
\[\begin{eqnarray} S_q &=& \int \Big[ \hf A_\mu^a (- \d^2 ) A_\mu^a + \bar{c}^a ( -\d^2 ) c^a + g f^{abc} A_\mu^b A_\nu^c \d_\mu A_\nu^a  \\ && ~~~~~~~~~~~~~~~~~ + \qu g^2 f^{abc}f^{apq}A_\mu^b A_\nu^c  A_\mu^p A_\nu^q - g f^{abc} \d_\mu \bar{c}^a A_\mu^c c^b \Big] d^4 x \tag{1} \end{eqnarray} \]
で与えられる。またフェルミ粒子との相互作用はnote13の式(5)より
\[ S_{int} = \int \bar{q} ( \ga \cdot D + m ) q = \int \Big[ \bar{q} ( \ga \cdot \d + m ) q - ig \bar{q} \ga \cdot A q \Big] \tag{2} \]
と表せる。これよりグルーオン伝播関数の$g^2$オーダーでの補正は下記の(1), (2), (3), (4)のファインマン図で与えられることが分かる。


ただし、(1),(2)はグルーオンのループ補正、(3)はゴースト場のループ補正、(4)はフェルミ粒子によるループ補正を表す。ここでは、例として(4)の1ループ量子補正の計算を行う。
\[ e^{- S_{int} } = 1 - S_{int} + \frac{(-ig)^2}{2!} \bra \bar{q} {A \!\!\! /} \cdot t q ~\bar{q} {A \!\!\! /} \cdot t q \ket + \cdots \]
なので、グルーオン伝播関数の$g^2$オーダーの項は
\[ \begin{eqnarray} I_{1loop} &=& \frac{(-ig)^2}{2!} \int A_\mu^a (x) \bra \bar{q} (x) t^a \ga_\mu q(x) \, \bar{q} (y) t^a \ga_\nu q(y)  \ket A_\nu^b (y) d^4 x d^4 y \\ &=& \frac{g^2}{2} \int A_\mu^a (x) t_{ij}^{a} t_{kl}^{b} \tr \ga_\mu \bra q^j (x) \bar{q}^k (y) \ket \ga_\nu \bra q^l (y) \bar{q}^i (x) \ket A_\nu^b (y) d^4 x d^4 y \\ &=& \frac{g^2}{2} \int A_\mu^a (x) A_\nu^b (y) \tr (t^a t^b ) ~ \tr \int \ga_\mu \frac{e^{p (x- y) }}{i {p \!\!\! / } + m} \frac{d^4 p}{(2 \pi)^4 } \int \ga_\nu \frac{e^{q (y- x) }}{i {q \!\!\! / } + m} \frac{d^4 q}{(2 \pi)^4 } ~ d^4 x d^4 y  \end{eqnarray} \]
ここで、
\[ A_\mu^a (x) = \int \frac{d^4 }{(2 \pi)^4} A_\mu^a (k ) e^{ikx} \]
などの運動量表示$A_\mu^a (k)$を用いると
\[ \begin{eqnarray} I_{1loop} &=& \frac{g^2}{2} \int \tr (t^a t^b ) A_\mu^a (k) A_\nu^b (k') \del ( p-q + k) \del (q-p + k')  \\ && ~~~~~~~~~~~~~~~~~~ \tr \left( \ga_\mu \frac{1}{i {p \!\!\! / } + m}  \ga_\nu \frac{1}{i {q \!\!\! / } + m} \right) \frac{d^4 p}{(2 \pi)^4 }\frac{d^4 q}{(2 \pi)^4 } \, d^4 k d^4 k' \\&=& \frac{g^2}{2} \int \tr (t^a t^b ) A_\mu^a (k) A_\nu^b (-k) \, \tr \left( \ga_\mu \frac{1}{i {p \!\!\! / } + m} \ga_\nu \frac{1}{i ({p \!\!\! / } + {k \!\!\! / }) + m} \right) \frac{d^4 k}{(2 \pi)^4 }\frac{d^4 p}{(2 \pi)^4 }   \tag{3}\end{eqnarray} \]
ここで一時的にフェルミ粒子の質量を無視すると
\[ \begin{eqnarray} \tr \left( \ga_\mu \frac{-i{p \!\!\! / }}{p^2} \ga_\nu \frac{-i ({p \!\!\! / } + {k \!\!\! / }) }{(p+k)^2} \right) &=& - \frac{\tr \big[ \ga_\mu {p \!\!\! / } \ga_\nu ({p \!\!\! / } + {k \!\!\! / }) \big]}{p^2 (p+k)^2 } \\ &=& - \frac{4 \big[ p_\mu ( p+k )_\nu + p_\nu (p+k)_\mu - \del_{\mu\nu} p \cdot (p + k) \big] }{p^2 (p+k)^2 }  \end{eqnarray} \]
なので
\[ I_{1loop} =  -2 g^2 \int  \frac{d^4 k}{(2 \pi)^4 } \tr (t^a t^b ) A_\mu^a (k) A_\nu^b (-k) ~ I_{\mu\nu} (k) \tag{4}\]
となる。ただし、
\[ \begin{eqnarray} I_{\mu\nu} (k) &=& \int \frac{d^4 p}{(2 \pi)^4 } \frac{ \big[ p_\mu ( p+k )_\nu + p_\nu (p+k)_\mu - \del_{\mu\nu} p \cdot (p + k) \big] }{p^2 (p+k)^2 } \\&=& \int \frac{d^4 p}{(2 \pi)^4 } \int_0^1 dz \frac{ \big[ p_\mu ( p+k )_\nu + p_\nu (p+k)_\mu - \del_{\mu\nu} p \cdot (p + k) \big] }{\big[ p^2 (1-z) + (p+k)^2 z \big]^2} \\&=& \int \frac{d^4 p}{(2 \pi)^4 } \int_0^1 dz \frac{ \big[ p_\mu ( p+k )_\nu + p_\nu (p+k)_\mu - \del_{\mu\nu} p \cdot (p + k) \big] }{\big[ (p+kz)^2+ k^2 z (1- z) \big]^2} \end{eqnarray} \]
ここで、ファインマン積分公式
\[ \frac{1}{AB} = \int_0^1 dz \frac{1}{\big[ A (1-z) + B z \big]^2} \]
を用いた。$p \rightarrow p - kz$と変数変換すると
\[ I_{\mu\nu} (k) = \int_0^1 dz \int \frac{d^4 p}{(2 \pi)^4 } \frac{ 2 p_\mu p_\nu - p^2 \del_{\mu\nu} + z(z-1) \left( 2 k_\mu k_\nu - k^2 \del_{\mu\nu}  \right)}{\big[ p^2+ k^2 z (1- z) \big]^2} \tag{5} \]
となる。分子の計算で$p$の次数が奇数の場合は$p$についての対称積分のため消去されることに注意。つぎに、$d$次元ユークリッド空間での積分
\[ \begin{eqnarray} \int \frac{d^d p}{(2 \pi )^d} \frac{1}{( p^2 + m^2 )^n} &=&  \frac{1}{(4 \pi)^{d/2}}\frac{\Ga (n-\frac{d}{2})}{\Ga (n)} \left( \frac{1}{m^2} \right)^{n - \frac{d}{2}} \\ \int \frac{d^d p}{(2 \pi )^d} \frac{p^2}{( p^2 + m^2 )^n} &=&   \frac{1}{(4 \pi)^{d/2}} \frac{d}{2} \frac{\Ga (n-\frac{d}{2} -1)}{\Ga (n)} \left( \frac{1}{m^2} \right)^{n - \frac{d}{2}-1} \end{eqnarray} \tag{6}\]
を使って式(5)を変形する。

2021-08-27

QCD 量子色力学 note13: 色力学の量子化

古典的な作用は
\[ S = \int \qu F_{\mu\nu}  F_{\mu\nu} \tag{1}\]
で与えられる。前回のノートnote12の式(8)から、
\[ S_q = \int \left[ \qu F^2  + \frac{1}{2 \al} f^2 - \bar{c} \left( \frac{\del f }{\del \La} \right) c \right] \tag{2} \]
を使って摂動論を定義できる。今の場合はゲージ群が$SU(3)$なので8個のゲージパラメータがあり、ゲージ固定に必要な$f$の数も8となる。例えば、$f^a ( A) = \d \cdot A^a$ $(a = 1,2, \cdots, 8)$ とおける。(一般にゲージ群を$G$とすると$a = 1,2, \cdots , {\rm dim} G$となる。)
\[ \begin{eqnarray} \frac{\del f^a}{\del \La^b } &=& \frac{\del}{\del \La^b} (\d_\mu A_\mu^a ) = \frac{\del}{\del \La^b} (\d_\mu D_\mu \La^a ) \\ &=& \frac{\del}{\del \La^b} \d_\mu \left(\d_\mu \La^a + g f^{apq} A_\mu^p \La^q \right) \\ &=& \d_\mu \left( \d_\mu \del^{ab} - g f^{abc} A_\mu^c \right) \del ( x- y) \end{eqnarray} \tag{3} \] 
よって、式(2)のゴースト項は
\[ - \int \bar{c}^a \d_\mu  \left( \d_\mu \del^{ab} - g f^{abc} A_\mu^c \right)  c d^4 x = \int \d_\mu \bar{c}^a \left( \d_\mu c^a -g f^{abc}A_\mu^c c^b \right) d^4 x \]
となる。また、
\[ F_{\mu\nu}^{a} = \d_\mu A_\nu^a - \d_\nu A_\mu^a + g f^{abc}A_\mu^b A_\nu^c \]
なので
\[ \qu F_{\mu\nu}^{a} F_{\mu\nu}^{a} = \hf \left[ \d_\mu A_\nu^a \d_\nu A_\mu^a - (\d \cdot A )^2 \right] + g f^{abc}A_\mu^b A_\nu^c (\d_\mu A_\nu^a ) + \qu g^2 f^{abc}f^{apq}A_\mu^b A_\nu^c  A_\mu^p A_\nu^q \]
以上より、$\al = 1$とすると式(2)は
\[\begin{eqnarray} S_q &=& \int \Big[ \hf A_\mu^a (- \d^2 ) A_\mu^a + \bar{c}^a ( -\d^2 ) c^a + g f^{abc} A_\mu^b A_\nu^c \d_\mu A_\nu^a  \\ && ~~~~~~~~~~~~~~~~ + \qu g^2 f^{abc}f^{apq}A_\mu^b A_\nu^c  A_\mu^p A_\nu^q - g f^{abc} \d_\mu \bar{c}^a A_\mu^c c^b \Big] \tag{4} \end{eqnarray} \]
となる。これより理論に出てくるファインマン図は


2021-08-26

QCD 量子色力学 note12: 汎関数積分表示 QEDの場合

このノートでは量子電磁気学 (QED) を例にゲージ理論の汎関数積分表示を考える。汎関数積分の基本についてはナイアの教科書(基礎編)


の第8章を参考にして下さい。自由場のラグランジアンは
\[ \L = -\qu F_{\mu\nu}F_{\mu\nu} \]
で与えられる。スカラー場やフェルミオン場の理論からの類推で $S$ 行列の生成汎関数として
\[ Z[ J] = \int e^{ -\qu \int F_{\mu\nu} F_{\mu\nu} d^4 x }e^{\int J_\mu A_\mu} [d A_\mu ] \tag{1} \]
を考える。ここで、
\[ \begin{eqnarray} \int \qu F_{\mu\nu} F_{\mu\nu} d^4 x  &=& \int \hf \left[ \d_\mu A_\nu \d_\mu A_\nu - \d_\nu A_\nu \d_\nu A_\mu \right] d^4 x \\ &=& \int \hf \left[ \d_\mu A_\nu \d_\mu A_\nu - ( \d \cdot A )^2 \right] d^4 x \\ &=& \int \hf A_\mu \left[ - \d^2 \del_{\mu \nu} + \d_\mu \d_\nu \right] A_\nu d^4 x \end{eqnarray} \]
なので、
\[ M_{\mu \nu} (x, y) = \left( - \d^2 \del_{\mu \nu} + \d_\mu \d_\nu \right) \del (x- y) \tag{2}\]
とおく。このとき、$M$ の逆行列 $M^{-1}$ は存在しない。というのも $4 \times 4$ 行列 $( - \d^2 \del_{\mu \nu} + \d_\mu \d_\nu )$ が特異行列、つまり光子 $k^2 = 0$ に対して $\det ( - k^2 \del_{\mu\nu} - k_\mu k_\nu ) = 0$ となるためである。この問題はゲージ不変性に起因する。それを見るためにゲージ変換 $A_\mu \rightarrow A_\mu + \d_\mu \La$ を考えよう。 $\phi_\mu = \d_\mu \La$ の形で表せるモードに対して
\[ \int d^4 y M_{\mu\nu} (x , y) \phi_\nu (y)  = \left( -\d^2 \phi_\mu + \d_\mu ( \d \cdot\phi ) \right) = 0 \tag{3} \]
となる。つまり、$\phi_\mu = \d_\mu \La$ は固有値がゼロとなる $\M_{\mu\nu}$ の固有ベクトルである。汎関数積分(1)を定義するに当たりそのようなゲージあるいは物理的でない自由度は $A_\mu$ から除かれる必要がある。

そこでまず関数空間$\A$を
\[ \A = \{ A_\mu (x) \}= \{ \mbox{すべてのポテンシャルの空間} \} \]
と定義する。$A_\mu (x)$ はリー代数の要素でもある。
\[ [dA_\mu ] = \prod_{x, \mu , a} A_\mu^a (x) \]
$\A$ はアフィン空間である。
\[ A_\mu (x) = A_{\mu}^{(0)} + \xi_\mu \]
ただし、$\xi_\mu (x)$ はリー代数の値をもつベクトル場。理論の物理空間 $\A_{phys}$ は
\[ \A_{phys}  = \A / {\cal G}_* \]
\[ {\cal G}_* = \{ \La (x) \} = \{ \mbox{$|\vec{x}| \rightarrow 0$のとき$\La (x) \rightarrow 0$}となるすべてのゲージ変換 \} \]
と表せる。${\cal G}_*$ の要素は理論の中で非物理的な(重複のある)変数を表す。その意味で ${\cal G}_*$ は理論の真のゲージ対称性と言える。

$\La = 0$ から始めて変換の連続を考えると、ゲージ変換は $\A$ においてある流れを生成することが分かる。ゲージ自由度を除外するには、これらの流れのラインを横断するような断面 $S$ を選ぶ必要がある。$S$ 上の点は $\A_{phys}$ の表現を与える。$S$ をどのように選ぶかはポテンシャルに課される条件によって決まる。そのような条件はゲージ固定条件と呼ばれ、例えば、$\d \cdot A = 0$ や $f(A)=0$ などがある。($f(A)$ は $A$ の汎関数。)

2021-08-17

QCD 量子色力学 note11: 強い相互作用のゲージ理論、フレーバーカイラル対称性の破れの階層性

これまでワインバーグ・サラム理論というタイトルで昔のノートをデジタル化してきましたがnote11からは標準模型のQCD部分を扱っているためタイトルを変更します。
 QCD(量子色力学)は強い相互作用のゲージ理論である。ゲージ群は$SU(3)$で与えられ、クォークとはベクトルのように結合する。3はカラー(色)の数である。

(a) なぜ3つのカラーなのか?
1.ハイペロン(hyperon)のスピン統計から:$\Om^- \sim sss$  スピン$\frac{3}{2}$
2.中性パイオン崩壊 $\pi^0 \rightarrow 2 \ga$ の振幅は低エネルギー近似でABJアノマリーで計算できるがその振幅の値は実験値よりも3分の1小さい。(詳しくはCheng and Li, Gauge theory of elementary particle physics, pp182 参照のこと。)
3.実験によるカラー数 $N_c$ 予測:$\frac{e^+ e^- \rightarrow q \bar{q}}{e^+ e^- \rightarrow \mu^+ \mu^-} \sim N_c \sum_f Q_f^2$(ただし、$Q_f$ はフレーバー $f$ のクォークの電荷。取りうる $f$ の範囲は観測のエネルギーレベルに依存する。)

(b) クォークの束縛機構として可能なもの
繰り込み可能な相互作用として:スカラー場、ゲージ場によるものが挙げられるが、スカラー場は除外され、$U(1)$ ゲージ群も漸近自由性から除外される。

(c) QCDラグランジアン
\[ \L = - \qu F_{\mu\nu}^a F_{\mu\nu}^a  - \sum_i \bar{q}_i \ga \cdot ( \d + g A ) q_i + \sum_i m_i \bar{q}_i q_i \]
質量項を無視するとラグランジアンは $U(N_f )_L \times U(N_f )_R$ のカイラル対称性をもつ。ただし、$N_f$ はフレーバー(クォークの種類)の数。

このカイラル対称性には階層がある。クォークの質量差を無視できるエネルギースケールでは
\[ U (6)_L \times U (6)_R \]
とみなせるが、$1GeV$ のQCDスケールでは $c, b, t$ クォーク ($m_c \approx 1.27~ GeV$,  $m_b \approx 4.18 ~GeV$, $m_t \approx 173 ~GeV$) によりこの対称性は
\[ U (3)_L \times U (3)_R \]
に自明的に破れる。これはQCDのフレーバーカイラル対称性と呼ばれる。$U(1)_L$, $U(1)_R$ 対称性はそれぞれ次のように作用する。
\[ \begin{eqnarray} U(1)_L &:& q_L \rightarrow e^{i\th} q_L ~~~~~~~~ q_R \rightarrow q_R \\ U(1)_R &:& q_L \rightarrow  q_L ~~~~~~~~~~~~ q_R \rightarrow e^{i\al} q_R \end{eqnarray} \]
これより次のような $U(1)_V$, $U(1)_A$ の組み合わせを取ることが出来る。
\[ \begin{eqnarray} U(1)_V &:& q_L \rightarrow e^{i\varphi} q_L ~~~~~~~~ q_R \rightarrow e^{i\varphi} q_R  \\ U(1)_A &:& q_L \rightarrow e^{i\la} q_L ~~~~~~~~ q_R \rightarrow e^{- i\la} q_R  \end{eqnarray} \]
これらはそれぞれベクトル対称性、軸性ベクトル対称性を与える。よって、QCDのフレーバーカイラル対称性は
\[ SU(3)_L \times SU(3)_R \times U(1)_V \times U(1)_A \]
と表せる。$U(1)_V$ はバリオン数を与える。

この対称性は以下のような要因により階層的に破れる。

2021-08-16

ワインバーグ・サラム理論 note10: ヒッグス粒子

2012年7月に質量$m_\et = 125$ GeV をもつヒッグス粒子が観測されました。今回のノート(というよりむしろメモ)はその10年ほど前に書かれたものなので内容的には古いですが、ヒッグス粒子は質量の起源を説明するものであり、その理解は標準模型を超える枠組みを考えるうえでも重要です。
note04の結果からヒッグス粒子に関するラグランジアンは
\[ \L_H = ( D \Phi )^\dagger (D \Phi ) - \la \left( \Phi^\dagger \Phi - \frac{v^2}{2} \right)^2 ~, ~~~~~ \Phi = \begin{pmatrix} 0 \\ \frac{v+\et}{\sqrt{2}} \end{pmatrix}  \tag{1}\] 
となる。粒子の質量は真空期待値$v$を用いて
\[ \begin{eqnarray}  && M_W = \frac{gv}{2}~, ~~ M_Z = \frac{v}{2} \sqrt{g^2 + g^{\prime 2}} = \frac{gv}{2}\frac{\sqrt{g^2 + g^{\prime 2}}}{g} = \frac{M_W}{\cos \th_W} \\ && m_H = \sqrt{2 \la} v ~,~~ m_e = \frac{f_{(e)}}{\sqrt{2}} v ~,~~ m_u = \frac{f_{(u)}}{\sqrt{2}} v ~,~~ m_d = \frac{f_{(d)}}{\sqrt{2}} v   \tag{2}\end{eqnarray} \]
と表せる。

中性ヒッグススカラー粒子$\et = H$についてはまだ分からないことが多い。ここでは、ヒッグス質量についてその上限下限について簡単に議論する。まず、下限についてはポテンシャル
\[ V( \Phi^\dagger \Phi ) = - \la ( \Phi^\dagger \Phi )^2 + \la v^2 ( \Phi^\dagger \Phi ) + \cdots + (\mbox{量子補正項}) \]
に対する1ループ補正の考察から得られる。もし$m_\et$が極端に小さく、量子補正が対称性を保つ真空に優位に働くなら対称性の破れは起きないと予想される。したがって、真空でのヒッグス場のポテンシャルは体操性の破れを引き起こすポテンシャルのエネルギーレベルよりも大きくなる必要がある。1ループ量子補正後のポテンシャル$V( \Phi^\dagger \Phi)$に$\Phi = \begin{pmatrix} 0 \\ \frac{v+\et}{\sqrt{2}} \end{pmatrix} $を代入し$\et$で展開したものを
\[ V = V^{(0)} + V^{(1)} \et + \hf V^{(2)} \et^2 + \cdots \]
と表す。$V^{(0)}(v)$がヒッグスポテンシャル(シャンパンボトルの底)の形をしていることから対称性の破れを引き起こす条件は
\[ V^{(0)}_{v \ne 0} <  V^{(0)}_{v = 0} \]
で与えられる。この条件と$V^{(2)} = m_{\et}^2$から$m_\et$の下限が
\[ m_\et \ge 7.9~ GeV \]
となることが知られている。ただし、この制限はヒッグス粒子が1つの場合に適用され、複数のヒッグス2重項がある理論では一般にこのような下限は存在しない。

次にヒッグス粒子質量の上限について考える。もし$\la$が充分に大きければ摂動論を適用することが出来ない。もし摂動論が正しいと仮定するなら$\la \le 1$の要請から$m_\et = \sqrt{2\la} v \le 350~ GeV$となる。繰り込み群を用いるとモデルの安定性についてより洗練された解析を行うことが出来る。この場合、$m_\et \le 130 ~GeV$の上限が知られている。

2021-08-15

ワインバーグ・サラム理論 note09: $CP$対称性の破れと$K^0$-$ \bar{K}^0$系

 $K^0$-$ \bar{K}^0$系での$CP$対称性の破れについては以前「中性$K$粒子系と弱い相互作用での$CP$対称性の破れ」という一連のエントリー


で解説したのでそちらを参照して下さい。

2021-08-14

ワインバーグ・サラム理論 note08: $\nu_\mu + e \rightarrow \nu_\mu + e$ 散乱など

今回は $\nu_\mu + e \rightarrow \nu_\mu + e$ 散乱過程を考える。これはnote05で議論した中性カレントだけが関与する散乱過程であり、相互作用のラグランジアンは
\[ \begin{eqnarray} - \L_I &=& \frac{g^2}{2 M_W^2} J_\mu J_\mu \\ J_\mu &=& g_L^\nu \bar{\nu}_{L}^{(\mu )} \ga_\mu \nu_{L}^{(\mu )} + g_L^e \bar{e}_L \ga_\mu e_L + g_R^e \bar{e}_R \ga_\mu e_R + \cdots \end{eqnarray}\]
で与えられる。ただし、中性カレントの一般形はnote05の式(11)で表され、$g_L^\nu = \hf $, $g_L^e = -\hf - \sin^2 \th_W$, $g_R^e = - \sin^2 \th_W$である。$\nu_\mu + e \rightarrow \nu_\mu + e$ 散乱に関与する$\L_I$は
\[ \begin{eqnarray} - \L_I &=& \frac{g^2}{2 M_W^2} 2 g_L^\nu \bar{\nu}_L \ga_\mu \nu_L \left( g_L^e \bar{e}_L \ga_\mu e_L + g_R^e \bar{e}_R \ga_\mu e_R \right) \\ &=& 2 \frac{G_F}{\sqrt{2}} g_L^\nu \bar{\nu} \ga_\mu ( 1 - \ga_5 ) \nu \left[ g_L^e \bar{e} \ga_\mu (1 - \ga_5 ) e + g_R^e \bar{e} \ga_\mu (1 + \ga_5 ) e \right] \end{eqnarray} \tag{1}\]
と表せる。ただし、$\frac{g^2}{8 M_W^2} = \frac{G_F}{\sqrt{2}}$ である。


これより散乱振幅は
\[ \begin{eqnarray} \M &=&  - \int \L_I d^4 x \\ &=& 2 \frac{G_F}{\sqrt{2}} g_L^\nu \bar{\nu}_{k^\prime} \ga_\mu ( 1 - \ga_5 ) \nu_{k} \left[ g_L^e \bar{e}_{p^\prime \la^\prime} \ga_\mu (1 - \ga_5 ) e_{p \la} \right. \\ && ~~~~~~~~\left. + g_R^e \bar{e}_{p^\prime \la^\prime} \ga_\mu (1 + \ga_5 ) e_{p \la} \right]  (2\pi)^4 \del ( k + p - k^\prime - p^\prime ) \end{eqnarray} \]
となる。この2乗を取ると
\[  \begin{eqnarray} | \M |^2 &=& 4 \left( \frac{G_F}{\sqrt{2}} \right)^2 ( g_L^\nu )^2 \Big[ \bar{\nu}_{k^\prime} \ga_\mu ( 1 - \ga_5 ) \nu_{k} \bar{\nu}_{k} \ga_\al ( 1 - \ga_5 ) \nu_{k^\prime}  \Big] \\ && ~ \times  \Big[ ( g_L^e )^2 \bar{e}_{p^\prime} \ga_\mu (1 - \ga_5 ) e_{p } \bar{e}_{p} \ga_\al (1 - \ga_5 ) e_{p^\prime} + ( g_R^e )^2 \bar{e}_{p^\prime } \ga_\mu (1 + \ga_5 ) e_{p } \bar{e}_{p} \ga_\al (1 + \ga_5 ) e_{p^\prime } \Big] \\ && ~~~~~~~ \times (2 \pi )^4 \del (k + p - k^\prime - p^\prime ) VT \end{eqnarray} \tag{2}\]
ただし、$VT$ は時空間体積。また、偏極のラベル $\la, \la^\prime$ を省略した。フェルミ粒子の伝播関数は
\[ \bra f (x) \bar{f} (y) \ket =  \int \frac{d^4 p}{(2 \pi)^4} \frac{-i{p \!\!\! /}}{p^2} e^{ip(x-y) }  \]
正の振動数部分は $\frac{{p \!\!\! /}}{2 E_p} \frac{d^3 p}{(2 \pi )^3}$ となる。よって、運動量表示では $\bra \nu_k \bar{\nu}_k \ket = {k \!\!\! /} $ として相空間因子 $\frac{d^3 k}{(2 \pi )^3}\frac{ 1 }{2 E_k } $ を付随させればよい。入射電子のスピンについては平均をとる。これより(2)は
\[ \begin{eqnarray} | \M |^2 &=& 2\left( \frac{G_F}{\sqrt{2}} \right)^2 ( g_L^\nu )^2  2 \tr \big[ \ga_\mu {k \!\!\! /} \ga_\al {k \!\!\! /}^\prime ( 1 + \ga_5 )  \big] \\ && ~ \times 2 \Big[ ( g_L^e )^2 \tr \big[ \ga_\mu {p \!\!\! /} \ga_\al  {p \!\!\! /}^\prime (1 + \ga_5 ) \big] + ( g_R^e )^2 \tr \big[ \ga_\mu {p \!\!\! /} \ga_\al  {p \!\!\! /}^\prime (1 - \ga_5 )\big]   \Big] \\ && ~ \times (2 \pi )^4 \del (k + p - k^\prime - p^\prime ) VT   \left[ \frac{d^3 k}{(2 \pi )^3}\frac{ 1 }{2 E_k }  \frac{d^3 p}{(2 \pi )^3}\frac{ 1 }{2 E_p } \right] \left[ \frac{d^3 k^\prime}{(2 \pi )^3}\frac{ 1 }{2 E_{k^\prime} }  \frac{d^3 p^\prime }{(2 \pi )^3}\frac{ 1 }{2 E_{p^\prime} } \right] \end{eqnarray} \tag{3} \]
と書ける。$n^\nu$, $n^e$ を整数、$V= L^3$ として、$k = \frac{2\pi n^{\nu}}{L}$, $p \frac{2\pi n^{e}}{L}$ とおく。$n^\nu$, $n^e$ を固定値として入射状態を固定すると
\[ \begin{eqnarray} | \M |^2 &=& 2\left( \frac{G_F}{\sqrt{2}} \right)^2 ( g_L^\nu )^2  2 \tr \big[ \ga_\mu {k \!\!\! /} \ga_\al {k \!\!\! /}^\prime ( 1 + \ga_5 )  \big] \\ && ~ \times 2 \Big[ ( g_L^e )^2 \tr \big[ \ga_\mu {p \!\!\! /} \ga_\al  {p \!\!\! /}^\prime (1 + \ga_5 ) \big] + ( g_R^e )^2 \tr \big[ \ga_\mu {p \!\!\! /} \ga_\al  {p \!\!\! /}^\prime (1 - \ga_5 )\big]   \Big] \\ && ~ \times (2 \pi )^4 \del (k + p - k^\prime - p^\prime ) \frac{T}{V}   \frac{ 1 }{2 E_k }  \frac{ 1 }{2 E_p } \left[ \frac{d^3 k^\prime}{(2 \pi )^3}\frac{ 1 }{2 E_{k^\prime} }  \frac{d^3 p^\prime }{(2 \pi )^3}\frac{ 1 }{2 E_{p^\prime} } \right] \end{eqnarray} \tag{4} \]
散乱断面積 $d \si$ は散乱確率 $ \frac{|\M |^2}{T}$ をフラックス $\frac{v}{V}$ で割ったものである。ここで $v$ は $\nu_\mu$ と $e$ の相対速度である。入射電子の静止系で考えると $v=c$(光速、$c=1$)とおけるので、
\[ d \si = \int \frac{1}{2E_k}\frac{ 1 }{2 E_p } 2\left( \frac{G_F}{\sqrt{2}} \right)^2 ( g_L^\nu )^2  L_{\mu\al} (k, k^\prime ) \Big[  ( g_L^e )^2 L_{\mu\al} (p, p^\prime ) + ( g_R^e )^2 R_{\mu\al} (p, p^\prime ) \Big] d \mbox{(phase)} \tag{5}\]
\[ \begin{eqnarray} L_{\mu\al} (k, k^\prime ) &=&  2 \tr \big[ \ga_\mu {k \!\!\! /} \ga_\al {k \!\!\! /}^\prime ( 1 + \ga_5 )  \big]  = 8 \big[ k_\mu k_\al^\prime + k_\al k_\mu^\prime -(k \cdot k^\prime ) \del_{\mu\al} + \ep_{\mu\nu\al\bt} k_\nu k_\bt^\prime  \big]  \\ R_{\mu\al} (p, p^\prime )  &=&  2 \tr \big[ \ga_\mu {p \!\!\! /} \ga_\al  {p \!\!\! /}^\prime (1 - \ga_5 )\big]  = 8 \big[ p_\mu p_\al^\prime + p_\al p_\mu^\prime -(p \cdot p^\prime ) \del_{\mu\al} - \ep_{\mu\nu\al\bt} p_\nu p_\bt^\prime \big]   \end{eqnarray} \tag{6}\]
ただし、
\[ \begin{eqnarray} \tr \big[ \ga_\mu \ga_\nu \ga_\al \ga_\bt \big] &=& 4 ( \del_{\mu\nu}\del_{\al\bt} - \del_{\mu\al}\del_{\nu\bt} + \del_{\mu\bt}\del_{\nu \al} ) \\ \tr \big[ \ga_\mu \ga_\nu \ga_\al \ga_\bt \ga_5 \big] &=& 4 \ep_{\mu\nu\al\bt}  \end{eqnarray} \]
を用いた。また、(5)の相空間因子は
\[ \begin{eqnarray} \int d \mbox{(phase)}&=& \int (2 \pi )^4 \del^{(4)} (k + p - k^\prime - p^\prime ) \frac{d^3 k^\prime}{(2 \pi )^3}\frac{ 1 }{2 E_{k^\prime} }  \frac{d^3 p^\prime }{(2 \pi )^3}\frac{ 1 }{2 E_{p^\prime} } \end{eqnarray} \]
$\vec{k}^\prime$ と $\vec{p}^\prime$ の成す角を $\th$ とおく。


2021-08-12

ワインバーグ・サラム理論 note07: 量子異常(アノマリー)

今回の内容は(宣伝になりますが)ナイアの教科書


の13章(量子異常Ⅰ)と一部重複しています。教科書の方が解説が丁寧なので興味ある方はそちらも参照して下さい。

場の古典論がある対称性 $G$ を持ち、$G$ は局所的あるいは広域的な対称性どちらも含むものとする。量子論を定義するには、ループ・ダイヤグラムを扱う必要があるが、これは発散する可能性があるため、正則化と共に定義する必要がある。このとき、全ての対称性 $G$ を保存する正則化が存在しない場合がある。(正則化を選択する過程で生じる)量子補正によって古典論の対称性が破れるとき、この対称性は異常 (anomalous)であると言われる。この異常な対称性に対応するカレントはゼロでない発散をもち、量子異常(アノマリー)と呼ばれる。

アノマリーの例:
1.次元正則化:ローレンツ不変性とベクトル・ゲージ不変性を保つ。しかし$\ga_5$は4次元以外では適切に定義できないのでカイラル対称性は潜在的に量子異常をきたす。
2.パウリ-ヴィラース (Pauli-Villars) 正則化:非物理的なヒルベルト空間にある質量粒子を追加する。質量項 $M \bar{q}_L q_R$ はカイラルゲージ変換のもとで不変とならない。

アノマリーには広域対称性が異常となる場合とゲージ対称性が異常となる場合の2種類ある。

広域対称性のアノマリー:この場合、対称性は破れるが理論自体は無矛盾である。例としてQEDの軸性 $U(1)$ 対称性が挙げられる。このとき対称性が自発的に破れると古典的にはゴールドストン・ボソンが生成される。量子的には対称性がなくなるためゴールドストン・ボソンは現れない。実際には、量子補正効果により潜在的なゴールドストン・ボソンに質量が与えられる。

ゲージ対称性のアノマリー:理論のゲージ不変性は $S$ 行列のユニタリー性の証明に欠かせない。もしゲージ不変性が無ければ、ゲージボソンの非物理的なモードが伝搬しユニタリー性は失われる。よって、量子論を矛盾なく構築するにはゲージ対称性のアノマリーをキャンセルしなければならない。

アノマリーの計算

4次元ではアノマリーはフェルミオン1ループ・ダイヤグラムだけに由来する。以下では、そのことを見ていく。$N$ 種類のフェルミ粒子があるとしてカイラル対称性 $U(N)_L \times U_R (N)$ を考える。このカイラル対称性がゲージ対称性でもあるとしてベクトルゲージ場 $V_\mu =  \hf (L_\mu + R_\mu )$ と軸性ゲージ場 $A_\mu = \hf (L_\mu -R_\mu )$ を定義する。ただし、$L_\mu = it^a L_\mu^a$, $R_\mu = i t^a R_\mu^a$ であり、$t^a$ は $U(N)$ 群の生成子。このときラグランジアン
\[ \L = - \qu F^2  + \bar{q} \ga \cdot ( \d + V + \ga_5 A ) q \]
を考える。ただし、
\[\begin{eqnarray} F^2 &= &F_L^2 + F_R^2  \\  F_{L \mu\nu}^{a} &=& \d_\mu L_\nu^a - \d_\nu L_\mu^a  + f^{abc} L_\mu^b L_\nu^c \\  F_{R \mu\nu}^{a} &=& \d_\mu R_\nu^a - \d_\nu R_\mu^a  + f^{abc} R_\mu^b R_\nu^c  \end{eqnarray}\]
このとき(1)に次の形の項
\[ F_{L \mu\nu} \frac{\D^2}{M^2} F_{L \mu\nu} + F_{R \mu\nu} \frac{\D^2}{M^2} F_{R \mu\nu} \tag{1} \]
を追加することが出来る。ただし、$\D$ は共変微分を表す。この項は高階の微分のを持つのでゲージボソンの伝播関数は 
\[ G \sim \frac{M^2}{k^4 + M^2 k^2} \sim \frac{M^2}{k^4} ~~~~ ( k^2 \rightarrow \infty ) \]
と振る舞う。この項は1ループ・ダイヤグラムを除いて全てのファインマン図をゲージ不変な形で正則化する。よって、潜在的なアノマリーは1ループ・ダイヤグラムから生じる。発散時数の計算から、この1ループ・ダイヤグラムはフェルミ粒子によるものであることが分かる。

これより発散するファインマン図は下の3つの図で表される。


ただし、波線で書かれた外線はベクトルボソン $(V)$ あるいは軸性ベクトルボソン $(A)$ を表す。2点関数は具体的に計算でき、アノマリーを与えない。以下では、三角ダイヤグラムを考える。フェルミ粒子の荷電共役不変性から $V$ が奇数個寄与する三角ダイヤグラムはゼロとなる。これは
\[ \bar{q} \ga \cdot ( \d + V + \ga_5 A ) q = \bar{q}^C \ga \cdot ( \d - V + \ga_5 A ) q^C \]
から分かる。ただし、$q = C \ga_0 (q^{C})^*$ を用いた。これより $VVV$, $AAV$ タイプの三角ダイヤグラムからの寄与は消える。 $AVV$ タイプの三角ダイヤグラム


の有効作用は
\[ \begin{eqnarray} \Ga^{(3) } &=& \int \tr \left[ S(x, y) \ga_5 {A \!\!\!/} (y) S(y,z)  {V \!\!\!\!/} (z) S(z, x) {V \!\!\!\!/} (x) \right] d^4 x d^4 y d^4 z \\ &=& \int {\rm Str} \left[ A_\mu (2q) V_\al (p_1 ) V_\bt (p_2 ) \right] \del^{(2)} (2 q - p_1 - p_2 ) \frac{d^4 (2q)}{(2 \pi)^4 }\frac{d^4 p_1}{(2 \pi)^4 }\frac{d^4 p_2}{(2 \pi)^4 }\\ && ~~~~~~~\times \int \tr \left[ \frac{1}{i ( {k \!\!\!/} -  {q\!\!\!/} )} \ga_5 \ga_\mu   \frac{1}{i ( {k \!\!\!/} +  {q\!\!\!/} )} \ga_\al  \frac{1}{i ( {k \!\!\!/} -  {r \!\!\!/} )} \ga_\bt  \right] \frac{d^4 k}{(2 \pi)^4 }\end{eqnarray} \tag{2}\] 
ただし、${A \!\!\!/} = \ga \cdot A = \ga_\mu A_\mu$, $r =\hf ( p_1 - p_2 )$, $S(x,y)$ はフェルミオンの伝播関数である。${\rm Str}$ は群の生成子について対称トレースを取ることを意味する。
\[ {\rm Str} [ A VV ] = \frac{1}{3} \tr [ AVV + VAV + VVA ] \] 
ここで、ゲージ変換
\[ V_\al \rightarrow V_\al + \D_\al \La ~ , ~~~~ A_\mu \rightarrow A_\mu + \D_\mu \varphi \]
を考える。運動量空間では
\[ \begin{eqnarray} V_\al ( p_1 ) & \rightarrow & V_\al ( p_1 ) + i p_{1 \al } \La ( p_1 ) + \cdots \\  A_\mu ( q) & \rightarrow & A_\mu ( q ) + i q_{ \mu } \varphi ( q ) + \cdots \end{eqnarray} \]
と表される。ベクトルゲージ、軸性ゲージ場の変換のもとで有効作用 $\Ga^{(3) }$ の変分はそれぞれ
\[ \begin{eqnarray} \del_\La \Ga^{(3)} &=& - \frac{1}{8 \pi} \int \tr \left( A_\mu \d_\nu \La \d_\al V_\bt \right) \ep_{\mu\nu\al\bt} d^4 x \\ \del_\varphi \Ga^{(3)} &=& - \frac{1}{8 \pi} \int \tr \left( \varphi \d_\mu V_\nu \d_\al V_\bt \right) \ep_{\mu\nu\al\bt} d^4 x  \end{eqnarray} \tag{3} \]
と計算できる。この導出は長くなるのでここでは省略する。興味ある方は上記の教科書を参考にして下さい。

2021-08-10

ワインバーグ・サラム理論 note06: 多世代モデル、CKM行列


今回のノートでは後半でCKM(カビボ-小林-益川)行列を解説しました。先月、益川先生が亡くなられたそうです。ワインバーグに続いての訃報で一時代が過ぎ去ってしまった感じですが、標準模型は今後も素粒子物理学の古典として学び継がれるべき分野です。これらのノートが素粒子に興味のある学生あるいは一般の方々に役立てば幸いです。

$\mu$-, $\tau$-世代を追加してモデルを拡張する。これまでとほぼ同様に構築できるが、湯川結合の部分がより複雑になる。これによりクォーク・セクターに混合が起きる。

表記法:
\[ \begin{eqnarray} ( e, \mu , \tau  ) &=& E_i \\  ( \nu_e, \nu_\mu , \nu_\tau ) &=& N_i \\ (u, c ,t)  &=& U_i \\ (d, s ,b)  &=& D_i \\ \end{eqnarray} \]
\[ \begin{pmatrix} N_i \\ E_i \end{pmatrix}_L  \, = \, l_{L  i} ~, ~~~~~~~~~ \begin{pmatrix} U_i \\ D_i \end{pmatrix}_L  \, = \, q_{L  i} \]
ただし、ここでは3世代 $(i = 1,2,3)$ を考える。1世代モデルの湯川結合と同様に一般に多世代モデルの湯川結合は
\[  \L_{yuk} = f_{ij}^{(e)} \bar{l}_{Li} \Phi E_{Rj} +  f_{ij}^{(u)} \bar{q}_{Li} \widetilde{\Phi} U_{Rj} +  f_{ij}^{(d)} \bar{q}_{Li} \Phi D_{Rj} + h.c. \tag{1}\]
となる。自発的対称性の破れにより質量行列が現れる。まずはクォーク・セクターについて考えてみる。
\[ \L_{mass} = M_{ij}^{(u)} \bar{U}_{Li} U_{Rj} + M_{ij}^{(d)} \bar{D}_{Li} D_{Rj}   + h.c. \tag{2}\]
物理的な粒子は質量の固有状態であるので、質量行列を対角化する必要がある。これには双ユニタリー変換 (biunitary transformations) を用いればよい。これは非対称で非エルミートな行列を対角するためのテクニックである。
\[ M = S^\dagger M_{\diag} T \tag{3} \]
ただし、$S^\dagger$, $T$ はユニタリー行列、$M_{\diag}$ は対角行列。任意の行列はエルミート行列とユニタリー行列につねに分解できるというのがこの手法で基本となるポイントである。
\[ M = H \, {\cal U} \]
$H$はエルミート行列、${\cal U}$ はユニタリー行列。$H$ はユニタリー変換 $S$ によって対角化できる:
\[ SHS^\dagger = M_\diag ~ , ~~~~ H = S^\dagger M_\diag S \]
\[  \rightarrow ~~ M = S^\dagger M_\diag S {\cal U} = S^\dagger M_\diag T \]
ここで、$T= S \cal{U}$ は $T^\dagger T = {\cal U}^\dagger S^\dagger S {\cal U} = 1$ なのでユニタリー行列であることが確認できる。$M$ と $M_\diag = m$ に双ユニタリー表現を使うと
\[ \L_{mass} =  \bar{U}_{L} S_{(u)}^{\dagger} m_{(u)} T_{(u)} U_{R} + \bar{D}_{L} S_{(d)}^{\dagger} m_{(d)} T_{(d)} D_{R}  + h.c. \tag{4}\]
と書ける。クォーク場を
\[ \begin{eqnarray} U_R \rightarrow  T_{(u)}^{\dagger} U_R  &~ , ~~~ & D_R  \rightarrow  T_{(d)}^{\dagger} D_R \\  \bar{U}_{L}  \rightarrow \bar{U}_{L} S_{(u)} & ~ , ~~~ & \bar{D}_{L} \rightarrow  \bar{D}_{L} S_{(d)} \\ U_L \rightarrow  S_{(u)}^{\dagger} U_L &~ , ~~~ & D_L \rightarrow S_{(d)}^{\dagger} D_L  \end{eqnarray} \tag{5} \]
と再定義すると(4)は
\[ \L_{mass} =  \bar{U}_{L}  m_{(u)}  U_{R} + \bar{D}_{L}  m_{(d)}  D_{R}  + h.c. \]
となる。クォーク場の再定義により$W$ボソンとフェルミ粒子の相互作用項が変わる。クォーク部分の相互作用は前回note05の(5)で見たように
\[ \begin{eqnarray}  J_\mu^+  = \bar{D}_L \ga_\mu U_L  & \longrightarrow & \bar{D}_L  S_{(d)}  \ga_\mu  S_{(u)}^{\dagger} U_L   \\ J_\mu^-  = \bar{U}_L \ga_\mu D_L  & \longrightarrow & \bar{U}_L  S_{(u)}  \ga_\mu  S_{(d)}^{\dagger} D_L  \end{eqnarray} \tag{6} \]
となる。よって、クォークと $W$ ボソンの相互作用項は
\[ \L_{q-int} = - \frac{i g}{\sqrt{2}} \left( W_\mu^+ \bar{U}_{Li} \ga_\mu V_{ij} D_{Lj} + W_\mu^- \bar{D}_{Lj} V^{*}_{ij} \ga_\mu U_{Lj}  \right) \tag{7}\]
ただし、
\[ V_{ij} = \left(  S_{(u)} S_{(d)}^{\dagger}  \right)_{ij} \]
は CKM(Cabibbo-Kobayashi-Maskawa) 行列と呼ばれる。$V_{ij}^{\dagger} = V_{ji}^{*}$ となることに注意。
note05の式(8)より、電磁気カレント(のクォーク部分)は
\[ J_{\mu}^{em} = \frac{2}{3} \left( \bar{U}_{L} \ga_\mu  U_{L} +  \bar{U}_{R} \ga_\mu  U_{R}  \right) - \frac{1}{3} \left( \bar{D}_{L} \ga_\mu  D_{L} + \bar{D}_{R} \ga_\mu  D_{R} \right) \]
明らかにこれは双ユニタリー変換(5)に影響を受けない。同様に、
\[ J_{\mu}^{3} = \hf \left( \bar{U}_{L} \ga_\mu  U_{L} - \bar{D}_{L} \ga_\mu  D_{L} \right) \]
も双ユニタリー変換のもとで不変である。よって、中性カレントは混合項を含まない。これはGIM (Glashow-Iliopoulos-Maiani) 機構のひとつの特徴である。GIM機構では、チャーム・ストレンジクォークで構成される第2の弱いアイソスピン二重項 $\begin{pmatrix} c \\ s \end{pmatrix}_L$ を追加することで、フレーバーが変化する中性カレントを除外できる。

クォーク・ヒッグス相互作用は(1)から
\[ \L_{q-H} = \frac{1}{v} \bar{U}_L m_{(u)} U_R \et + \frac{1}{v} \bar{D}_L m_{(d)} D_R \et  \tag{8}\]
で与えられる。これは明らかに対角化されている。よって、中性ヒッグス粒子はフレーバーが変化する過程を媒介することはない。

フレーバーが変化する中性散乱過程が抑えられることについての備考

1.中性カレント演算子はアップ・セクターで $\mathbb{1}$ に比例し、これはダウン・セクターでも同様である。つまり、
\[ J_\mu^{(0)} = J_\mu^3 - \sin^2  \th_W J_{\mu}^{em} \sim ( I_3 - Q \sin^2 \th_W ) \]
全ての $u$-クォークは同じ電荷とアイソスピンをもち、これは $d$-クォークも同様である。よって、クォークのユニタリー変換によって混合が起こることは無い。

2.クォーク・ヒッグス相互作用は質量行列の対角化によって対角化される。(なぜなら、クォーク・ヒッグス相互作用の結合定数は $m/v$ なので。2つのヒッグス場 $\Phi_1$, $\Phi_2$ があり、$\Phi_1$ が $u$-クォークと $\Phi_2$ が $d$-クォークと個別に結合する場合にもこの対角化は適用される。しかし、あるクォークと複数のヒッグス場が相互作用する場合はこの適用されない。
\[ \L_{mass} \sim \bar{U} (m_1 + m_2 ) U ~, ~~~ m= m_1 + m_2 \]
\[ \L_{q-H} \sim \bar{U} m_1 U \et_1 + \bar{U} m_2 U \et_2 + h.c. \]
なので、$m=m_1 + m_2$ の対角化により $m_1$ と $m_2$ が同時に対角化されることは無い。 

CKM行列のパラメータ数え上げ

世代数を $n$ とするとCKM行列 $V_{ij}$ は $n\times n$ ユニタリー行列である。($V_{ij} = (S_{(u)} S_{(d)}^{\dagger} )_{ij}$ なので $V^\dagger V =  S_{(d)} S_{(u)}^{\dagger} S_{(u)}S_{(d)}^{\dagger} = 1$)行列成分は $n^2$ 個あるが、これら全てが物理的なパラメータ(角度)ではない。例えば、対角化されたユニタリー行列 $S_\diag ( \al, \phi ) = e^{i \al } \diag ( e^{i \phi_1},  e^{i \phi_2}, \cdots ,  e^{i \phi_n})$, $S^\prime_\diag ( \th ) = \diag ( e^{i \th_1},  e^{i \th_2}, \cdots ,  e^{i \th_n})$ を使って
\[ V = S_\diag ( \al, \phi ) \widetilde{V} S^\prime_\diag ( \th ) \]
とおける。ただし、$\sum \phi_i = 0$, $\sum \th_i = 0$ である。というのも、もし $\sum \phi_i \ne 0$, $\sum \th_i \ne 0$ ならこれらの和は $\al $ に吸収できるためである。クォーク場を再定義すると $ S_\diag ( \al, \phi )$ と $ S^\prime_\diag ( \th )$ を除外することができる。双ユニタリー変換(5)から
\[ \bar{U}_L \rightarrow \bar{U}_L S_{\diag}^{\dagger} ( \al, \phi ) ~, ~~~~~ D_L \rightarrow S_{\diag}^{\prime \dagger} ( \th ) D_L \]
とおくと(6)の荷電カレント $J_\mu^\pm$ は $\widetilde{V}$ にのみ依存する。つまり、このような双ユニタリー変換は $\bar{U}_L \ga_\mu U_L$, $\bar{D}_L \ga_\mu D_L$ に影響を与えない。影響を受ける項は(8)の $\L_{q-H}$ にある $\bar{U}_L m_{(u)} U_R$, $\bar{D}_L m_{(d)} D_R$ だけであるが、これらについても
\[ U_R \rightarrow S_\diag (\al, \phi) U_R ~, ~~~~~ D_R \rightarrow S_{\diag}^{\prime \dagger} ( \th ) D_R \]
とすればよい。これで全ての項が以前と同じに書ける。よって、物理的なパラメータの数は
\[ n (\widetilde{V} ) = 2n^2 - n^2 -2 (n-1) -1 = (n-1)^2 \tag{9} \]
となる。ここで、$2n^2$ は行列要素の実数の数、$n^2$ はユニタリー条件の数、$2(n-1)$ は $\sum \phi_i = \sum \th_i =0$ の条件(クォーク状態の再定義する仕方の数)であり、最後の $1$ は $\al$ の選択(グローバルな位相回転)を表す。

2世代の場合 $(n= 2)$:
$\widetilde{V}$ は1つの物理的パラメータ(角)$\th_c$ をもつ。これはカビボ角と呼ばれる。
\[ \widetilde{V} = \begin{pmatrix} \cos \th_c & \sin \th_c \\ - \sin \th_c & \cos \th_c \end{pmatrix} \]
3世代の場合 $(n=3)$:
$\widetilde{V}$ は4つの物理的パラメータ(角)をもつ。一方、$3 \times 3$ 直交行列は3つの角をもつので、1つの角が余り、これが位相となる。つまり、$\widetilde{V}$ は実行列では表されないことが分かる。これが $CP$ 対称性の破れを導く。

2021-08-07

ワインバーグ・サラム理論 note05: 低エネルギー近似でのカレント・カレント相互作用

前回のノートでは1世代モデルのラグランジアンを導いた。
\[ \L  = \L_{gauge+Higgs} + \L_{fermion} \tag{1}\]
\[\begin{eqnarray}  \L_{fermion} &=&  \bar{\nu}_L  \ga_\mu \d_\mu \nu_L + \bar{e} \ga_\mu ( \d_\mu + i e A_\mu ) e  + \bar{u} \ga_\mu \left( \d_\mu - i \frac{2}{3}e A_\mu \right) u + \bar{d} \ga_\mu \left( \d_\mu + i \frac{1}{3}e A_\mu \right) d \\ && - i \frac{g}{\sqrt{2}} \left[ \left(\bar{\nu}_L  \ga_\mu e_L + \bar{u}_L \ga_\mu d_L  \right) W_\mu^+  +  \left(  \bar{e}_L  \ga_\mu \nu_L + \bar{d}_L \ga_\mu  u_L  \right) W_\mu^- \right] \\&& - i \frac{g}{\cos \th_W} Z_\mu \left[ \hf \left(\bar{\nu}_L  \ga_\mu  \nu_L - \bar{e}_L  \ga_\mu  e_L + \bar{u}_L \ga_\mu u_L - \bar{d}_L \ga_\mu d_L \right)  \right. \\&& ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ \left. - \sin^2 \th_W \left(  \bar{e} \ga_\mu  e +\frac{2}{3} \bar{u} \ga_\mu u - \frac{1}{3} \bar{d} \ga_\mu d \right) \right]  \\ && - \left( m_e \bar{e} e +  m_u \bar{u} u +  m_d \bar{d} d   \right)  - \frac{1}{v} \left( m_e \bar{e} e \et +  m_u \bar{u} u \et +  m_d \bar{d} d \et \right) \end{eqnarray} \tag{2}\]
\[\begin{eqnarray} \L_{gauge+Higgs} &=& \qu f_{\mu\nu}^{2} ( A ) + \qu f_{\mu\nu}^{2} ( Z) + \hf \left| D_\mu W_\nu^- - D_\nu W_\mu^- \right|^2 \\ && + i \left( e  f_{\mu\nu} ( A ) + g \cos \th_W f_{\mu\nu} ( Z ) \right)   W_\mu^+ W_\nu^- -\frac{g^2}{4} \left(  W_\mu^+ W_\nu^-  - W_\nu^+ W_\mu^-  \right)^2 \\&& + M_W^2 W_\mu^+ W_\mu^-  + \hf M_Z^2 Z_\mu Z_\mu + \hf ( \d_\mu \et )^2 \\ && +  2 \frac{M_W^2}{v} W_\mu^+ W_\mu^- \et + \frac{M_W^2}{v^2} W_\mu^+ W_\mu^-  \et^2  + \frac{M_Z^2}{v} Z_\mu^2 \et  + \frac{M_Z^2}{2 v^2} Z_\mu^2  \et^2 \\ && +   \hf m_H^2 \et^2 + \frac{m_H^2}{2 v} \et^3 + \frac{m_H^2}{8 v^2} \et^4  \end{eqnarray} \tag{3}\]
ただし、
\[ f_{\mu\nu} ( A ) = \d_\mu A_\nu - \d_\nu A_\mu \]
\[ f_{\mu\nu} ( Z ) = \d_\mu Z_\nu - \d_\nu Z_\mu \]
低エネルギー近似ではこのラグランジアンからカレント・カレンを相互作用を再現することができる。$W^-$粒子の運動量を$q_\mu$とすると
\[ W_\mu \sim e^{i qx} W_\mu (q) ~ , ~~~~~ \left( \d_\mu W_\nu^- - \d_\nu W_\mu^- \right)^2 \sim q^2  \]
なので、$q^2 \ll M_W^2$のとき運動項は無視できる。
\[ - \L = M_W^2 W_\mu^+ W_\mu^-  - i \frac{g}{\sqrt{2}} \left( W_\mu^+ J_\mu^- + W_\mu^- J_\mu^+ \right) + \cdots  \tag{4} \]
ただし、
\[ J_\mu^+ = \bar{e}_L \ga_\mu \nu_L + \bar{d}_L \ga_\mu u_L + \cdots  \]
\[ J_\mu^- = \bar{\nu}_L \ga_\mu e_L + \bar{u}_L \ga_\mu d_L + \cdots \tag{5} \]
省略された項はヒッグス場に関わる項を表す。ここで、$W$ボソンはヘリシティが左巻き状態のクォークとレプトンにしか結合しないことに注意しよう。$W$ボソン場の運動方程式は
\[ M_W^2 W_\mu^+ - \frac{ig}{\sqrt{2}} J_\mu^+  = 0 ~, ~~~~~ M_W^2 W_\mu^- - \frac{ig}{\sqrt{2}} J_\mu^-  = 0 \]
これを解いて再度(4)に代入すると
\[ \begin{eqnarray} - \L_{l-W} &=& \frac{g^2}{2 M_W^2} J_\mu^+ J_\mu^- \\ &=& \frac{g^2}{8M_W^2}  \left[ \bar{e} \ga_\mu ( 1 - \ga_5 ) \nu + \bar{d} \ga_\mu ( 1 - \ga_5 ) u \right]  \left[ \bar{\nu} \ga_\mu ( 1 - \ga_5 ) e + \bar{u} \ga_\mu ( 1 - \ga_5 ) d \right]    \tag{6}\end{eqnarray}\]
ここで、$\bar{e}_L \ga_\mu \nu_L = \hf \bar{e} \ga_\mu (1 - \ga_5 ) \nu$などを使った。$\bar{e} \ga_\mu \ga_5 \nu$は擬ベクトル(axial-vector)なので、この相互作用はV-A型カレント・カレント相互作用と呼ばれる。

$M_W = \frac{gv }{2}$より
\[ \frac{g^2}{8M_W^2} = \frac{1}{2 v^2} = \frac{G_F}{\sqrt{2}} \]
ラグランジアン$\L_{l-W}$は媒介ベクトルボソンの低エネルギー現象論を与える。
\[ G_F \simeq  \frac{10^{-5}}{m_p^2} \]
が知られているので真空期待値のパラメータ$v$は
\[ v \simeq 250 ~ GeV \]
と求まる。

2021-08-06

ワインバーグ・サラム理論 note04: 対称性の破れとユニタリーゲージでの粒子スペクトル

前回の続きから。1世代モデルのラグランジアンは
\[ \begin{eqnarray} \L &=& \L_0 + \L_g + \L_q + \L_\Phi + \L_{yuk} \\ &=& -\qu ( F_{\mu\nu}^{a} )^2 -\qu  ( G_{\mu\nu} )^2 - \bar{q}_L \ga_\mu \left( \d_\mu - ig b_\mu^a t^a - i \frac{g^\prime}{6} C_\mu \right) q_L \\ && - \bar{u}_R \ga_\mu \left( \d_\mu - i \frac{2}{3}g^\prime C_\mu \right) u_R - \bar{d}_R \ga_\mu \left( \d_\mu + i \frac{1}{3}g^\prime C_\mu \right) d_R  \\ &&   - \bar{l}_L \ga_\mu \left( \d_\mu - ig b_\mu^a  t^a + i \hf g^\prime C_\mu \right) l_L - \bar{e}_R \ga_\mu \left( \d_\mu + ig^\prime C_\mu \right) e_R \\ && - ( D_\mu \Phi )^\dagger (D_\mu \Phi ) - \la \left( \Phi^\dagger \Phi - \frac{v^2}{2} \right)^2 \\ && + \left[  f_{(e)} \bar{l}_L \Phi e_R +  f_{(u)} \bar{q}_L \widetilde{\Phi} u_R +  f_{(d)} \bar{q}_L \Phi d_R + h.c. \right] \end{eqnarray} \tag{1} \]
となることを見てきたが、このモデルの真空(基底)状態のエネルギーを極小化することを考えたい。$\la > 0$, $v^2 > 0$ のとき、真空状態は期待値 $\bra \Phi^\dagger \Phi \ket = \frac{v^2}{2}$ となり、対称性の破れを意味する。つまり、
\[ \bra \Phi \ket = \bra 0 | \Phi | 0 \ket = \binom{0}{v/\sqrt{2} }  \]
が要請される。では、残りの対称性はどうなるだろうか?

$U(1)_Y$:  $\Phi^\prime = e^{i \al} \Phi $, $\Phi = \binom{\phi^+}{\phi_0}$ より$\phi_0^\prime = e^{i \al} \phi_0$ なので $U(1)_Y$は破れる。
$SU(2)_L$:  $\Phi^\prime = g \Phi$ なので、3成分はすべて破れる。
$U(1)_{em}$:  $Q= \left( I_3 + \frac{Y}{2} \right)$, $\phi_0^\prime = e^{-i \frac{\al}{2} + i \hf \al} \phi_0 = \phi_0$ なので $U(1)_{em}$ は保存される。これが前回note03で $Y(\Phi ) = +1$ とした理由である。

真空からの場の揺らぎを考えよう。これらは摂動論の枠内における粒子に対応する。ヒッグス・スカラー場を次のようにパラメータ表示する。
\[ \Phi (x) = U^{-1} (\zeta ) \begin{pmatrix} 0 \\ \frac{v + \et (x) }{\sqrt{2}} \end{pmatrix} \]
\[ U (\zeta ) = \exp \left[ i \frac{\zeta^a (x) t^a }{v} \right] \]
元々の複素スカラー場 $\phi^+ (x)$ と $\phi_0 (x)$ が4つの実スカラー場 $\zeta_i (x)$ と $\eta (x)$  ($i = 1,2,3$) でパラメータ表示されている。これらの揺らぎ場の真空期待値 (VEV) はゼロとなる。
\[ \bra \zeta_i \ket  = \bra \eta \ket = 0 ~~ \longrightarrow ~~ \bra \Phi \ket = \begin{pmatrix} 0 \\ \frac{v }{\sqrt{2}} \end{pmatrix} \]
これらを式(1)に代入する。$\bra b_\mu \ket = \bra C_\mu \ket = 0$ であり、フェルミ粒子にも同様の関係が成り立つので、これらの揺らぎ場は場そのものと同様に扱える。
\[ \L_\Phi = - \left[ D_\mu \left(  U^{-1} (\zeta ) \begin{pmatrix} 0 \\ \frac{v + \et  }{\sqrt{2}} \end{pmatrix} \right) \right]^\dagger \left[ D_\mu \left(  U^{-1} (\zeta ) \begin{pmatrix} 0 \\ \frac{v + \et }{\sqrt{2}} \end{pmatrix} \right) \right] - \la \left[ \begin{pmatrix} 0 &  \frac{v + \et }{\sqrt{2}} \end{pmatrix} \begin{pmatrix} 0 \\ \frac{v + \et }{\sqrt{2}} \end{pmatrix} -\frac{v^2}{2} \right]^2 \]
ここで、ゲージ場とフェルミ場を次のように再定義する。
\[ \begin{eqnarray} U \d_\mu U^{-1}  - ig U b_\mu^a  t^a   U^{-1}  &=&  - i g b_{\mu}^{\prime a} t^a \\ - i g^\prime C_\mu &=& -i g^\prime C_{\mu}^{\prime} \\ U l_L &=& l_L^\prime \\ U q_L &=& q_L^\prime \\ e_R &=& e_R^\prime \\ u_R &=& u_R^\prime \\ d_R &=& d_R^\prime \end{eqnarray} \]
プライムのついた新しい場は元の場とゲージ変換によって関係づけられており、新しい変数を使うことはあるゲージ固定を行うことと等価である。ここで選択されるゲージは「ユニタリーゲージ」と呼ばれる。このユニタリーゲージを使うとラグランジアン(1)は次のように変形できる。
\[ \begin{eqnarray} \L &=&  -\qu ( F_{\mu\nu}^{a} )^2 -\qu  ( G_{\mu\nu} )^2 - \bar{q}_L \ga \cdot \left( \d - ig b \cdot t - i \frac{g^\prime}{6} C \right) q_L \\ && - \bar{u}_R \ga \cdot \left( \d - i \frac{2}{3}g^\prime C \right) u_R - \bar{d}_R \ga \cdot \left( \d + i \frac{1}{3} g^\prime C \right) d_R  \\ &&   - \bar{l}_L \ga \cdot \left( \d - i g b \cdot  t + i \hf g^\prime C \right) l_L - \bar{e}_R \ga \cdot \left( \d + ig^\prime C \right) e_R \\ && - \left[ D_\mu \begin{pmatrix} 0 \\ \frac{v + \et  }{\sqrt{2}} \end{pmatrix} \right]^\dagger \left[ D_\mu \begin{pmatrix} 0 \\ \frac{v + \et  }{\sqrt{2}} \end{pmatrix}  \right] - \la \left( \frac{(v + \et )^2 }{2} - \frac{v^2}{2} \right)^2 \\ && + \left[  f_{(e)} \bar{l}_L \begin{pmatrix} 0 \\ \frac{v + \et  }{\sqrt{2}} \end{pmatrix} e_R +  f_{(u)} \bar{q}_L \begin{pmatrix} \frac{v + \et }{\sqrt{2}}  \\ 0\end{pmatrix} u_R +  f_{(d)} \bar{q}_L \begin{pmatrix} 0 \\ \frac{v + \et  }{\sqrt{2}} \end{pmatrix} d_R + h.c. \right] \end{eqnarray} \tag{2} \]

ヒッグス・ラグランジアンの変形
\[ - ig b_\mu^a t^a - i \frac{g^\prime}{2} C_\mu = \begin{pmatrix} -ig \frac{b_\mu^3}{2} - i \frac{g^\prime}{2} C_\mu & - ig \frac{b_\mu^1 - i b_\mu^2 }{2} \\ - ig \frac{b_\mu^1 + i b_\mu^2 }{2} & ig \frac{b_\mu^3}{2} - i \frac{g^\prime}{2} C_\mu \end{pmatrix} \]
なので
\[ \frac{b_\mu^1 \pm i b_\mu^2 }{2} = W_{\mu}^{\mp} \]
と定義すると
\[ D_\mu \Phi  = \left( \d_\mu - ig b_\mu^a t^a - i \frac{g^\prime}{2} C_\mu  \right) \begin{pmatrix} 0 \\ \frac{v + \et  }{\sqrt{2}} \end{pmatrix}  = \begin{pmatrix} -i \frac{g}{\sqrt{2}}W_\mu^+ \frac{v + \et}{\sqrt{2}} \\ \frac{1}{\sqrt{2}} \d_\mu \et + \frac{i}{2} ( g b_\mu^3 - g^\prime C_\mu ) \frac{v + \et}{\sqrt{2}} \end{pmatrix} \]
\[ \begin{eqnarray} ( D_\mu \Phi )^\dagger ( D_\mu \Phi )  &=& \frac{g^2}{4} W_\mu^+ W_\mu^- (v + \et )^2 + \hf ( \d_\mu \et )^2 + \frac{( g b_\mu^3 - g^\prime C_\mu )^2 }{4} \frac{(v + \et )^2}{2} \\ &=& \frac{g^2 v^2}{4} W_\mu^+ W_\mu^- + \frac{g^2 v}{2} W_\mu^+ W_\mu^- \et + \frac{g^2 }{4} W_\mu^+ W_\mu^-  \et^2 + \hf ( \d_\mu \et )^2 \\ && + \frac{v^2}{8} \begin{pmatrix} b_\mu^3 &  C_\mu \end{pmatrix}  \begin{pmatrix} g^2 & -g g^\prime \\ -g g^\prime & g^{\prime 2}  \end{pmatrix} \begin{pmatrix} b_\mu^3 \\  C_\mu \end{pmatrix}  + \frac{v}{4} ( g b_\mu^3 - g^\prime C_\mu )^2  \et \\ && +  \frac{1}{8} ( g b_\mu^3 - g^\prime C_\mu )^2  \et^2 \tag{3}\end{eqnarray} \]
と求まる。質量行列
\[\begin{eqnarray} \hf M_Z^2 Z_\mu Z_\mu &=&  \frac{v^2}{8} \begin{pmatrix} b_\mu^3 &  C_\mu \end{pmatrix}  \begin{pmatrix} g^2 & -g g^\prime \\ -g g^\prime & g^{\prime 2}  \end{pmatrix} \begin{pmatrix} b_\mu^3 \\  C_\mu \end{pmatrix}  \\ &=& \hf  \begin{pmatrix} Z_\mu &  A_\mu \end{pmatrix}  \begin{pmatrix} M_Z^2 & 0 \\ 0 & 0  \end{pmatrix} \begin{pmatrix} Z_\mu^3 \\  A_\mu \end{pmatrix} \end{eqnarray} \]
と対角化する。ただし、次の直交変換を用いた。
\[\begin{eqnarray} Z_\mu &=& \cos \th_W b_\mu^3 - \sin \th_W C_\mu = \frac{g b_\mu^3 - g^\prime C_\mu}{\sqrt{g^2 + g^{\prime 2}}} \\ A_\mu &=& \sin \th_W b_\mu^3 + \cos \th_W C_\mu = \frac{g^\prime b_\mu^3 + g C_\mu}{\sqrt{g^2 + g^{\prime 2}}} \tag{4} \end{eqnarray}\]
\[ \tan \th_W = \frac{g^\prime}{g} ~~~~~ \mbox{$\th_W$: Weinberg angle} \]
\[ M_Z^2 = \frac{v^2}{4} ( g^2 + g^{\prime 2} ) ~~ \longrightarrow ~~ M_{Z^0} = \frac{v}{2} \sqrt{g^2 + g^{\prime 2}} \]
式(3)の第1項は荷電ベクトルボソン $W^\pm$ の質量項になる。
\[  \frac{g^2 v^2}{4} W_\mu^+ W_\mu^-  = M_{W^\pm} W_\mu^+ W_\mu^-  ~ , ~~~~~~ W_\mu^+ W_\mu^- = \hf (b_\mu^1 )^2 + \hf (b_\mu^2 )^2 \]
\[ ~~ \longrightarrow ~~~ M_{W^\pm}  = \frac{gv }{2} \]
よって、式(3)は次のように表せる。
\[ \begin{eqnarray} ( D_\mu \Phi )^\dagger ( D_\mu \Phi )  &=& M_W^2 W_\mu^+ W_\mu^-  + \hf M_Z^2 Z_\mu Z_\mu + \hf ( \d_\mu \et )^2 \\ && +  2 \frac{M_W^2}{v} W_\mu^+ W_\mu^- \et + \frac{M_W^2}{v^2} W_\mu^+ W_\mu^-  \et^2  \\ && + \frac{M_Z^2}{v} Z_\mu Z_\mu \et  + \frac{M_Z^2}{2 v^2} Z_\mu Z_\mu   \et^2 \tag{5}\end{eqnarray} \]
さらに式(2)の項を考えていく。
\[\begin{eqnarray} \frac{\la}{4} \left[ (v + \et )^2 - v^2 \right]^2 &=& \frac{\la}{4} ( 2 v \et + \et^2 )^2 = \la v^2 \et^2 + \la v \et^3 + \frac{\la}{4} \et^4 \\ &=& \hf m_H^2 \et^2 + \frac{m_H^2}{2 v} \et^3 + \frac{m_H^2}{8 v^2} \et^4 \tag{6}\end{eqnarray}\]
ただし、\( m_H = \sqrt{2 \la v^2 } \) とした。また、
\[ \begin{eqnarray} f_{(e)} \bar{l}_L \begin{pmatrix} 0 \\ \frac{v + \et  }{\sqrt{2}} \end{pmatrix} e_R + h.c. &=&  f_{(e)} \bar{e}_L \frac{v + \et }{\sqrt{2}} e_R + h.c. \\ &=&   \frac{f_{(e)} v}{\sqrt{2}}  \bar{e} e + \frac{f_{(e)} }{\sqrt{2}}  \bar{e} e \et \end{eqnarray} \]
となる。ここで、$\bar{e}_L e_R + h.c. = \bar{e} e$, $e = e_L + e_R$ を用いた。同様に、
\[ \begin{eqnarray} f_{(u)} \bar{q}_L \begin{pmatrix} \frac{v + \et }{\sqrt{2}}  \\ 0\end{pmatrix} u_R + h.c. &=& \frac{f_{(u)} v}{\sqrt{2}}  \bar{u} u + \frac{f_{(u)} }{\sqrt{2}}  \bar{u} u \et  \\ f_{(d)} \bar{q}_L \begin{pmatrix} 0 \\ \frac{v + \et  }{\sqrt{2}}  \end{pmatrix} d_R + h.c. &=& \frac{f_{(d)} v}{\sqrt{2}}  \bar{d} d + \frac{f_{(d)} }{\sqrt{2}}  \bar{d} d \et \end{eqnarray} \]
以上から、次のような質量スペクトルが得られる。
\[ \begin{eqnarray}  && M_W = \frac{gv}{2}~, ~~ M_Z = \frac{v}{2} \sqrt{g^2 + g^{\prime 2}} = \frac{gv}{2}\frac{\sqrt{g^2 + g^{\prime 2}}}{g} = \frac{M_W}{\cos \th_W} \\ && m_H = \sqrt{2 \la} v ~,~~ m_e = \frac{f_{(e)}}{\sqrt{2}} v ~,~~ m_u = \frac{f_{(u)}}{\sqrt{2}} v ~,~~ m_d = \frac{f_{(d)}}{\sqrt{2}} v   \tag{7}\end{eqnarray} \]

2021-08-03

ワインバーグ・サラム理論 note03: 1世代モデル

 前回からの続き。新しいタイプのフェルミ粒子がないとすると、フェルミ粒子の基本構成は
\[\begin{matrix} \nu_e & \nu_\mu & \nu_\tau \\ e & \mu & \tau \\ u & c & t \\ d & s & b \end{matrix} \]
で与えられる。

第1世代 $( \nu_e , e, u, d )$ だけを使って、後知恵ではあるが、数学的に矛盾のないモデルを構成できることが知られている。

備考:
(a) もし新しいフェルミ粒子が導入されると別の可能性がある。例えば、$O(3) \rightarrow U(1)_{em}$となるGeorgi-Glashow模型があるが、これは中性カレントの発見により除外された。
(b) $s$クォークを$u, d$クォークと同様に扱ってみることもできるが、ストレンジネス($s$クォークのこと)が変化する中性カレントが存在しないことからその可能性は排除される。

まず1世代モデルを考えるが、この段階で既に、量子異常の問題を別にすると、レプトン・セクターを個別に扱えることが知られているので、ここでは $\nu_e$ と $e$ を考える。

カイラルな組み合わせ: $\nu_{e_L}= \nu_L $, $e_L$, $e_R$(質量ゼロを仮定して$\nu_R = 0$)
\[ e_L = \frac{1- \ga_5}{2} e , ~~~ e_R = \frac{1+ \ga_5}{2} e \]
自由場のラグランジアン:\( \L_0 =  - [  \bar{e}_L \ga \cdot \d \, e_L  + \bar{e}_R \ga \cdot \d \, e_R + \bar{\nu}_L \ga \cdot \d \, \nu_L] \)  

左巻きのレプトン場を$ l_L = \begin{pmatrix} \nu_L \\ e_L \end{pmatrix} $とまとめると
\[ \L_0 = - \bar{l}_L \ga \cdot \d \, l_L - \bar{e}_R \ga \cdot \d \, e_R \tag{1} \]
となる。ただし、$\bar{l}_L = l^\dagger_L \ga_0$

対称性は$U(2)_L \times U(1)_R$となる。というのも、$U^\dagger U = 1$のとき $l^\prime_L = U l_L$ でラグランジアンは不変となり、$e^\prime_R = (e^{i \al} ) e_R$が$U(1)_R$を定義するため。$U(2)_L \sim SU(2)_L \times U(1)_L$なので対称性は
\[ SU(2)_L \times U(1)_L \times U(1)_R = SU(2)_L \times U(1)_Y \times U(1)_l \tag{2} \]
$U(1)_L \times U(1)_R$の一つの組み合わせがレプトン数$U(1)_l$に対応する。もしレプトン数をゲージ固定すると電弱相互作用の群$G_W$は$SU(2)_L \times U(1)_Y$の形になる。

ここで$U(1)$群は電荷$Q$が$U(1)$生成子と$SU(2)$の$t^3$の線形結合で表されるように選ばれる。
\[ Q \cdot l_L =  \begin{pmatrix} 0&0 \\ 0&-1 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} \nu_L \\ e_L \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 0 \\ -1 \end{pmatrix} \]
\[ (Q - t^3) l_L =  \begin{pmatrix} -\hf & 0 \\ 0 & -\hf \end{pmatrix} l_L = -\hf l_L \]
ただし、$SU(2)_L$の生成子は$t^a = \frac{\si^a}{2}$で与えられる。$Y  = 2(Q - t^3) $を弱いハイパーチャージと呼ぶ。上記より$l_L$に施されると$Y_L = -1$となる。また弱いアイソスピン一重項である$e_R$については、$Q e_R = - e_R$なので$Y_R = -2$となる。したがって、$U(1)_Y = U(1)_{(L+2R)}$と書ける。

備考:電荷$Q$を$SU(2)_L$に完全に埋め込むことはできない。つまり、余計な$U(1)$部分をゲージ変換させずに$SU(2)_L$に埋め込めない。もしそうなれば$e_R$の電荷がゼロとなってしまうためである。

$SU(2)$の生成子$I^a$について $(a=1,2,3)$:
基本表現: $I^a = t^a = \frac{\si^a}{2}$,  $[t^a ,t^b ] = i \ep^{abc}t^c$
随伴表現: $I^a = (T^a)_{kl} = -i (\ep^a )_{kl}$

まとめるとレプトン数を別にすると利用可能なゲージ群は$SU(2)_L \times U(1)_Y$となる。

それぞれの群について次のようにゲージ場を導入する。

$SU(2)_L$: ゲージ場 $b_\mu^a$  結合定数 $g$
$U(1)_Y$:   ゲージ場 $c_\mu$  結合定数 $g^\prime$

共変微分は
\[ D_\mu \Psi  = \left( \d_\mu -i g b_\mu^a t^a - i g^\prime C_\mu \frac{Y}{2} \right) \Psi \]
となる。$\Psi$はフェルミオン場であり、具体的には
\[ D_\mu l_L  = \left( \d_\mu -i g \frac{\si^a}{2} b_\mu^a  + i \hf g^\prime C_\mu \right) l_L \]
\[ D_\mu e_R = \left( \d_\mu + i g^\prime C_\mu \right) e_R \]
レプトン・セクターの自由場ラグランジアンは
\[ \L_0 = - \bar{l}_L \ga \cdot \left( \d - ig b \cdot t + i \hf g^\prime C \right) l_L - \bar{e}_R \ga \cdot \left( \d + ig^\prime C \right) e_R \]
と表せる。

次に$b_\mu^a$と$C_\mu$の運動項を導入する。それぞれについて場の強さテンソルは
\[ F_{\mu\nu}^{a} (b)  = \d_\mu b_\nu^a -\d_\nu b_\mu^a + g \ep^{abc}b_\mu^b  b_\nu^c \]
\[ G_{\mu\nu}^{a} (C) = \d_\mu C_\nu^a -\d_\nu C_\mu^a \]
となる。ゲージ場の運動項は
\[ \L_{g} = \qu F_{\mu\nu}^{a} (b) F_{\mu\nu}^{a} (b) - \qu G_{\mu\nu}^{a} (C) G_{\mu\nu}^{a} (C) \]