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2020-10-13

日本学術会議改革でILC誘致へ前進か?(10兆円規模の研究基金創設、政府主導のILC誘致へ期待)

 菅(すが)首相による推薦候補者の任命拒否をきっかけに最近話題沸騰中の日本学術会議ですが、このブログではILC(国際リニアコライダー)誘致の意思決定にかかわる日本学術会議の動向に注目してきました。今年2月のエントリー「ILC誘致は内閣主導で!(もはや学術界の意見集約は困難)」で紹介したように、ILC誘致に行政・民間が推進に向け力強いメッセージを発している中、学術界の取りまとめ(学者の国会?!)である日本学術会議がILC誘致に否定的な声明を発表したのはとても残念でした。以前のエントリーを引用すると、

学術会議としてはILCは強くは推薦できないという従来の提言を踏襲したものとなっています。結局、政財界からの後押しがあったのに学術界が一枚岩になってILC推進に動けなかったというとても残念な結果になりました。今後ものらりくらりと時間だけが過ぎていくのでしょうか?

との印象は未だ変わりません。ただ、今回の騒動で学術会議のあり方に様々な意見が出たこと及び学術会議の会長にニュートリノ質量の発見でノーベル賞を受賞した梶田先生が選ばれたことから、素粒子実験の大型プロジェクトであるILCの誘致が一気に加速するのではないかと期待しています。東京オリンピックの開催もまだ不透明な中、ILC誘致を次の国家プロジェクトとして官民学が連携して取り組んでもらえればと思います。これまで同様、学術界の意見集約が難しいようであれば行政改革を推進する内閣主導でILC誘致に向けて動き出してもらえないでしょうか。国際理解・平和貢献・科学技術立国といったキーワードでILC誘致を丁寧に説明すれば国民はみんな納得すると思います!

追記:既に研究支援のための10兆円規模のファンド創設が閣議決定されているそうです。例えば、こちらこちら。年間で数千億円の支援ができるそうなのでILC建設費用の約8千億円もこのファンドがあれば問題ないでしょう。つまり学術会議が懸念している予算問題も解決するのでILC誘致に向けた日本政府による公式な意思表明が来年にも発表されると思います。

2020-09-10

コロナ禍でILC誘致どころじゃない?!

これまで興味深くウォッチしてきた東北へのILC誘致についてですが、コロナ禍でオリンピックも延期という今の状況ではさすがに積極的に推進するのは難しくなったようです。最近の記事

https://digital.asahi.com/articles/ASN9964JLN99ULBJ005.html?pn=4
https://mainichi.jp/articles/20200908/k00/00m/040/171000c

によると、KEKが国内大型研究の基本構想「ロードマップ」へのILCの申請を取り下げたとのことです。これでILC計画は頓挫してしまうのでしょうか。早期実現を期待していたので残念ですが、これからは既に建設予算の下りた「ハイパーカミオカンデ」の方へ精力を集中していただければと思います。

2020-02-24

ILC誘致は内閣主導で!(もはや学術界の意見集約は困難)

最近は新型コロナウイルスの話題ですっかり忘れていましたが、ILC誘致について進展があったようです。このブログではILCの誘致について何度か取り上げてきました。

https://yasuabe.blogspot.com/search/label/ILC

以前の話では学術会議のマスタープランは昨年の10月には選定されるということでしたが、先月末にようやく大型研究計画のマスタープランが策定されました。

http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/kohyo-24-t286-1.html

これによるとILC計画は「学術大型研究計画(区分I 146件)」

http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-24-t286-3-1.pdf#page=10

には選ばれているものの、その中でも特に重要となる「重点大型研究計画(31件)」には選ばれませんでした。学術会議の提言によると重点大型研究計画の選定方針は
区分Ⅰの学術大型研究計画として選定された計画の中から、計画の成熟度、我が国としての戦略性、緊急性等も考慮して速やかに実施すべき計画として重点大型研究計画を選定した。
とのことなので、学術会議としてはILCは強くは推薦できないという従来の提言を踏襲したものとなっています。結局、政財界からの後押しがあったのに学術界が一枚岩になってILC推進に動けなかったというとても残念な結果になりました。今後ものらりくらりと時間だけが過ぎていくのでしょうか?

2019-09-27

ILC誘致:10月、学術会議の決定はいかに?!

以前のエントリーでILC誘致に向けての「今後の流れ」をまとめましたが、その中で
今年10月に学術会議がマスタープランの候補プロジェクトの選定を行う。(そこでILCが候補に入らなければ誘致は断念せざるを得ないでしょう。)
と書きましたがその10月が迫ってきました。ILC誘致について最近は全くフォローしていなかったので最新情報をこちらで確認しました。

9月15日の産経新聞、論説委員・中本哲也さんの記事
 約50カ国の物理学者らが、東北の北上山地への建設を目指す次世代加速器「国際リニアコライダー(ILC)」は、暗黒物質の正体に迫る実験施設だ。素粒子物理と宇宙物理の距離をさらに縮め、「新しい物理学」の扉を開く可能性がある。
 日本と欧米だけでなくロシア、中国などの参加も見込まれる広範な国際協力プロジェクトでもある。政府は誘致の判断を先送りにしてきた。国際社会から日本への期待と信頼を損なう「遅延行為」に等しい。
 30年後の日本が国際社会から必要とされ、尊敬される国であるために、政府は早急にILC誘致を表明すべきである。(なかもと てつや)
と結ばれています。私もおおむね賛成ですが、政府(文科省)のギリギリまでの折衝努力をもう少し評価してあげてもいいのではと感じました。せっかく柴山大臣が頑張ってくれていたのに大臣が代わってしまい引き継ぎは大丈夫なのか少し心配です。萩生田大臣の座右の銘は"One for all, All for one"だそうなのでその精神でILC誘致へ向けリーダーシップを発揮してもらいたいです。

もう一つ気になった関連情報として日刊サイゾーによる山下特任教授へのインタビュー記事があります。最後の質問とその答えは以下の通り。
ーーでは、山下さんはILCがつくられることによって、どんな未来が待っていると思いますか?
山下:世界の人が集まれる知のフロンティアができることがまず第一。きっと人類の歴史に残る大発見がある。そして技術の波及と国際的な人材の宝庫になることが2つ目。何万年もかかる核廃棄物の処理も、超電導加速器を使って100年単位に短くなる可能性があるし、原子核を変えて新しい物質を作り出すことで、がん治療などにも効果を発揮することが期待されます。また、インターネットを普及させた基盤技術WWW(ワールド・ワイド・ウェブ)も、粒子線がん治療もPET診断も、もともとは素粒子物理学の分野から生み出されたもの。ディープラーニングの前のニューラルネットワークも20年以上前から使ってきたし、超電導の大規模施設の初めての実用も米国の加速器施設です。新しいものを開発することだけしかできない研究者が何千人も集まることによって、副次的にもさまざまな先端技術が生み出されていきます。
 それに、ILCの建設は、技術的な面だけでなく、日本人の心理的な面にも大きな影響を及ぼすでしょう。世界でも最先端の施設が生み出されることによって、新しいことにチャレンジしていくマインドが生まれます。科学技術は何よりも、人の気持ちを変えるもの。ILCによって「日本はすごい!」という自信を持つことができ、「これもできるんじゃないか?」と未来への希望を生み出すことができれば、日本人のメンタリティは大きく変わっていくはず。ILCを通じて、日本人を、どんどんチャレンジをしていくメンタルに変えていきたいですね。
若者向けの(ゴシップ)雑誌にILC誘致の話題が取り上げられるとは意外でした。山下先生も堅苦しい表現は避け、若者にも分かり易くILC誘致の意義を説かれているようで概ね共感しました。WWWやニューラルネットワークについては以前から誇大広告のように感じていましたが、サイゾー向けなら仕方ないでしょう。それよりも「何万年もかかる核廃棄物の処理も、超電導加速器を使って100年単位に短くなる可能性がある」との言葉に原発処理の問題も誘致の交渉カードとして使っているのではと勘ぐってしまいました。もちろん東北に誘致するのだからILCの科学的な役目が充分に果たされた遠い将来には原発の廃炉処理や核廃棄物の処理へ転用されうることは理解できますが、もしそうする可能性があるのなら、誘致の段階から情報公開しておいて欲しいです。

2019-03-16

An analysis of recent statement by the Japanese government on the ILC project

Recently, on March 7, Japan made an official statement on a long-pending issue of hosting the International Linear Collider (ILC) in Iwate prefecture. The statement is, however, very ambiguous and may have brought about some confusions among those concerned with the ILC project domestically and internationally as well. Basically, the Japanese government says that it is interested in the ILC project but has no intentions to host the ILC yet. The government representative also says that Japan is ready to continue the international discussion on the ILC project. For those who have expected a conclusive decision from the Japanese side, these statements are disappointing with an impression of lack of leadership by the Japanese government. Indeed, there are many reports in such a tone.

Japanese government punts on decision to host the International Linear Collider (Science, March 7, 2019)
Plans for world's next major collider stuck in limbo (Nature, March 7, 2019)
Japan puts plans for the world's next big particle collider on hold (Science News, March 7, 2019)
Disappointment as Japan fails to commit to hosting the International Linear Collider (Physics World, March 7, 2019)
Japan defers ILC decision (Symmetry, March 7, 2019)

It is understandable that oversea media respond negatively, given that the deadline of the statement has been postponed. Note that last December the Science Council of Japan (SCJ), a special organization under the cabinet office, reported that due to financial obscurity and other circumstantial situations (such as lack of communication among researchers) the SCJ is not fully convinced to support the ILC program in Japan, although it admits the scientific significance of the ILC. In response to this negative opinion, the European representatives of the ILC project decided to postponed the due date from the end of last year to March 7, 2019.

At the end of last year I felt that SCJ's report was somewhat reasonable because of the followings.
  1. Japan is an earthquake country and we are still in a way of recovering from the Tohoku earthquake and tsunami disaster on March 11, 2011. Thus, financially it may be difficult to get public and political supports for the ILC which allegedly costs 800 billion yen (over 7 billion US dollar) in total.
  2. An international experimental project such as ILC should be constructed in a stable continent with little risk of earthquakes and should be hosted by a relatively rich country. In the current situation China or India would be the best choice.
  3. The reason why Iwate prefecture in Tohoku region was chosen as a proposed site (or why Saga prefecture was not selected) was not clear at least for me. Some people speculate that it is related to the financially demanding decommissioning process of the Fukushima nuclear power plant.
  4. The very situation that Japan is asked by other countries to host the ILC is not a good sign to convince the public to support the project. If Japan has unique technologies to build the ILC and takes an initiative to lead the project with international cooperation, then the public would be eager to support the ILC project but the situation is different.
Since the SCJ is an organization under the government, I have speculated that the Japanese government might well deny the ILC project. But on a day before March 7, I have come to know via the Japanese media that the government has not decided anything yet. Personally, I found this news perplexed because it is impolite not to say anything decisive, having kept the European representatives so long time. I was and am still afraid that the international ILC representatives are getting fed up with the ambiguous responses from the Japanese government and eventually withdraw the ILC plan from Japan, meaning that Japan may lose trust in international academia. I guess this is the worst scenario I could think of for the future of the Japanese particle-physics community. Thus I urge the Japanese government to make a final decision on whether it hosts the ILC or not as soon as possible.

2019-03-10

ILC誘致検討へ 政府見解への反応まとめ

3月7日にあったILC(国際リニアコライダー)誘致について「関心を持って議論を継続する」との政府の見解表明をうけて、その反応をまとめてみました。先日のエントリーでも紹介したように、私は誘致断念に傾いていたであろう政府としては精一杯の対応をしたのではないかと評価しましたが、このまま問題を先送りしていては国際協力は見込めないだろうし最悪誘致も頓挫するのではとの危機感を抱いています。せっかく政界・財界から力強い支援を得たのだから学界内で足の引っ張り合いをせずに早くまとまってくれよというのが率直な感想です。

中立的な記事が多い中、推進派寄りの記事が産経新聞から配信されていました。

「ILCの議論、前に進んでいる」 文科省局長会見(産経新聞 3/7付)
ILC誘致表明に至らず(文科省担当局長が政府見解)[胆江日日新聞 ILCニュース 3/8付]
「積極的対応してほしかった」「うれしさ半分、悲しさ半分」(奥州市民、思い複雑)[胆江日日新聞 ILCニュース 3/8付]
文科省見解、受け止め「前向き」(達増岩手県知事ら)[胆江日日新聞 ILCニュース 3/8付]
前進? 現状維持? 後退?(判断迷う文科省見解)[胆江日日新聞 ILCニュース 3/8付]
誘致表明に至らず 文科省担当局長が政府見解 学術会議の所見を重視 正式プロセスで議論を 研究者サイド「残念」の声も 実現へ現実的な対応継続(ILC)[胆江日日新聞 PICKUP  3/8付]
<ILC>誘致結論先送り 文科省表明に至らず、検討継続(河北新報 3/8付)
<ILC>岩手県南、玉虫色の見解に困惑(河北新報 3/8付)
<ILC>「誘致へ働き掛け強める」「実現に一つ進んだ」関係者、今後の進展に期待(河北新報 3/8付)

などがあります。個人的に注目している胆江日日新聞はやはり良質な記事を掲載しています。河北新報もそうですが、地元の地方紙だけにILC誘致への関心が高く記事の内容に大手メディアには無い熱意を感じます。胆江日日新聞では引き続き3/9付でも関連記事を配信しています。

前向きな受け止め歓迎(ILC研究者側会見受け、小沢市長らコメント)[胆江日日新聞 ILCニュース 3/9付]
ILC誘致「継続」も関門多く(他分野の理解どう得る)[胆江日日新聞 ILCニュース 3/9付]

今後の流れ


ずべての記事(有料記事は除く)に目を通しましたが、今後のスケジュール感が分かりづらかったので以下にまとめてみます。

  1. 今月が締め切りとなっている日本学術会議が策定する「大型施設計画・大規模研究計画に関するマスタープラン」へILC推進派の研究者(素粒子実験物理学者)が応募。
  2. 今年10月に学術会議がマスタープランの候補プロジェクトの選定を行う。(そこでILCが候補に入らなければ誘致は断念せざるを得ないでしょう。)
  3. 最終的な学術会議マスタープランの策定は2020年の2月ごろの予定。
  4. さらに次期欧州素粒子戦略の策定が2020年5月ごろなっているそうです。

政府としては 2, 3, 4の研究者コミュニティーの議論を踏まえて対応するとのことです。このことについては、柴山文部科学大臣が会見で明言しています。(平成31年3月8日の会見の2:38以降をご覧ください。)

2019-03-07

ILC誘致へ一歩前進、早期実現へ向け政府のリーダーシップに期待

さて昨日から固唾を飲んで見守っていた日本政府によるILC(国際リニアコライダー)誘致の意思表明がスケジュール通り行われました。今後の日本の科学行政を左右する事案なので発表された内容は早速ネットで配信されています。

次世代加速器「国際リニアコライダー」誘致 文科省が結論先送り(毎日新聞3/7付)
次世代加速器ILC 誘致検討へ米欧と意見交換 文科省が見解発表(産経新聞 3/7付)
三番目の記事に政府見解全文が紹介されています。長くなりますがその全文を以下に引用します。
 本日のリニアコライダー国際推進委員会開催にあたり、本レターを送付できることは大変光栄です。

 国際リニアコライダー(ILC)計画は、国際的な研究者組織において検討が進められてきた素粒子物理学分野における学術の大型プロジェクトであると承知しています。

 これまで我が国においては、ILC計画について、我が国の科学コミュニティの代表機関である日本学術会議における「国際リニアコライダー計画に関する所見(2013年9月)」を契機として、文部科学省において「国際リニアコライダー(ILC)に関する有識者会議」を設置し、科学的意義、コスト及び技術的成立性、人材の確保・育成方策、体制及びマネジメントの在り方等の観点から、検証を進めてきました。

 2017年11月には、ILCに関する国際的な研究者組織において、欧州CERNにおけるLHC実験を踏まえて、ILCの衝突エネルギーを500ギガ電子ボルトから250ギガ電子ボルトとする見直し案(250ギガ電子ボルトILC計画)が公表されました。

 これを受けて、有識者会議においてILC計画について改めて検証を行い、2018年7月に「ILC計画の見直しを受けたこれまでの議論のまとめ」を取りまとめ、計画の全体像を可能な限り明確に示した上で、日本学術会議に対して、ILC計画について改めて審議を依頼しました。

 2018年12月には、日本学術会議より文部科学省への回答として「国際リニアコライダー計画の見直し案に関する所見」が取りまとめられ、「政府における、ILCの日本誘致の意思表明に関する判断は慎重になされるべきであると考える」とされました。

 文部科学省においては、同所見の内容を精査しつつ、ILCに関する意義や効果について、学術的な観点のみならず、関係省庁とも連絡を密にして意見を聴取し、検討を行いました。 
 ここに現時点のILC計画に関する見解を述べます。

 国際リニアコライダー(ILC)に関する有識者会議による「ILC計画の見直しを受けたこれまでの議論のまとめ」を受け、日本学術会議が審議を行い公表した「国際リニアコライダー計画の見直し案に関する所見」において、「現状で提示されている計画内容や準備状況から判断して、250ギガ電子ボルトILC計画を日本に誘致することを日本学術会議として支持するには至らない」「大型計画について学術会議として更に検討するとすれば、マスタープランの枠組みで行うのが適切」とされたことを踏まえ、ILC計画については、現時点で日本誘致の表明には至らないが、国内の科学コミュニティの理解・支持を得られるかどうかも含め、正式な学術プロセス(日本学術会議が策定するマスタープラン等)で議論することが必要であると考えます。 
 併せて、国外においても、欧州素粒子物理戦略等における議論の進捗(しんちょく)を注視することとします。

 また、ILC計画については、日本学術会議の所見において、諸分野の学術コミュニティとの対話の不足、成果が経費に見合うか、技術的課題の克服、実験施設の巨大化を前提とする研究スタイルの持続性といった懸念が指摘されている一方、素粒子物理学におけるヒッグス粒子の精密測定の重要性に関する一定の学術的意義を有するとともに、ILC計画がもたらす技術的研究の推進や立地地域への効果の可能性に鑑み、文部科学省はILC計画に関心を持って国際的な意見交換を継続します。
学術会議の提言を受け政府はやはり誘致には消極的でもしかしたら誘致断念の発表もあり得ると予想していましたが、昨日のエントリーで紹介したように経済界からの全面的な支援が得られたのだから、技術的・財政的な懸念材料は以前より軽減されるはずなので、誘致推進に向けて様々な意見を集約できるのではとも期待していました。結局、経済三団体の共同声明が2/20と遅すぎたきらいもあり、文科省としては意見のとりまとめを行う時間的余裕がなかったということでしょう。内情を知らない部外者から見れば、3ヵ月も待ってもらったのに、行政側のリーダシップが発揮されずガッカリとの印象を受けますが、(誘致断念へ傾いていた)政府としてはギリギリの判断だったのではないでしょうか。とにかく今日でILC誘致へ国としても一歩踏み出したと言えるのではないでしょうか。繰り返しになりますが経済・産業界からの後押し(推進要望の共同声明)が大きかった気がします。

2019-03-06

ILC誘致検討へ! 産学官協力のもと日本主導での建設・運営に期待

いよいよILC(国際リニアコライダー)誘致の意思表明の期限が明日に迫っているなか、思いがけないニュースが飛び込んできました!


産経新聞の記事はyahooのヘッドラインでも紹介されています。昨年末に内閣府の特別機関である日本学術会議がILC誘致に否定的な意見を公表したので日本政府はILCの誘致には消極的なのかなと思っていましたが、そんなことありませんでした!

最近のILC誘致の話についてはフォローしていなかったのでまさか誘致に向け話が進んでいるとは知りませんでした。先日のエントリーで政府の地震調査研究推進本部(地震本部)が2/26に東北地方の長期地震予測を公表したのは唐突な印象を受けたと述べました。もしかしてILC誘致に否定的な声明を出すためのフラグではないかと邪推してしまいましたが、とんだ勘違いでした。ILC誘致推進へ話が傾いてきたために慎重派(反対派)の人達が動いたと見るべきでした。というのも学術会議の声明以降の流れから何も起こっていなければ慎重派が何か行動を起こす理由はないからです。実際、胆江日日新聞 ILCニュースによるとこの地震本部の公表結果を受けて慎重派の市民団体は2/27付で政府に要請文を送ったそうです。

ILC意思表明「慎重に」(慎重派の市民団体が柴山文科相へ要請文 )

以前のエントリーでも紹介したようにこの胆江日日新聞 ILCニュースのサイトは誘致について賛否両論取り上げていてとてもジャーナリスティックでおすすめです。このサイトで最近の動向を追ってみると、一気に流れが変わったのは2/20に経済三団体(経団連、日本商工会議所、経済同友会)が「国際リニアコライダー誘致に関する意思表明への期待」という共同声明を出してからでした。この共同声明についてはそれぞれの団体ののサイト
で紹介されています。声明文のPDFファイルはこちらこちらにリンクがあります。この共同声明については地元の岩手日報でも詳しく報じられていました。


経団連(中西宏明会長)、日本商工会議所(三村明夫会頭)、経済同友会(小林喜光代表幹事)の方々の英断に拍手を送りたいですね。私の父親世代(団塊世代)のエネルギーのある民間の方々の協力があれば心強いです。地震が頻発する不安定な地盤でも日本の土木・掘削技術の粋を結集すれば克服できる気がしてきました。以前は不安定な地盤に国際的な実験施設を建設することに疑問を抱いていましたが、最近の高速道路や地下鉄工事で発展したシールド工法を駆使すれば地下施設の建設については問題ないと考え直しました。地下の場合は地盤とともに揺れるので地震の影響も少ないですし。地上の施設の耐震性についても高層の建物を建設しない限り問題ないでしょう。実際、東北の大震災の際にも原発施設は地震によって倒壊していません。(原発が被害を受けたのは津波によって非常用電源装置が使えなくなったからでした。もちろん地震によって外部電源を失ったこともありますが、それは施設自体の耐震性とは別問題でしょう。)経済界・産業界からの全面的な協力があれば8千億を超えると言われる建設予算の分担でもいくらか勉強できるのではないでしょうか。費用負担を50%以下にケチって建設のイニシアチブを失うよりは、過半数(75%ぐらい!)負担してでも日本主導で施設の建設・運営を全面的に任せてもらえるよう交渉してもらいたいです。そうすれば国内に最先端の技術が蓄積され技術立国を推進することができます。これは防衛費を上げて(軍事)技術力を高めるよりもよっぽど平和的で国際的そして文字通り科学的な予算の使い方ではないでしょうか。日本の目指すべき方向性はこちらだと、経済界の方々から後押しを受けた気分です。

2019-02-28

地震本部が「日本海溝沿いの地震活動の長期評価」公表

政府の地震調査機関である地震調査研究推進本部(文部科学省研究開発局地震・防災研究課)が2/26に日本海溝沿いの地震活動の長期評価を公表しました。

https://www.jishin.go.jp/evaluation/long_term_evaluation/subduction_fault/#sanriku-boso_t

メインの公表結果(PDF)は144ページもある膨大なものなので、参考資料の「日本海溝沿いの地震活動の長期評価 概要資料(PDF)」というファイルに要点が分かり易くまとめられています。日本海溝沿いの地震活動で被害が予想されるのは東北から関東にかけての太平洋側の地域です。今回の長期予想では2019年1月1日時点から30年以内にこの地域で地震が起きる発生確率を予想しています。上記参考資料の8ページに結果がまとめられています。とくに「宮城県沖」と「青森県東方沖及び岩手県沖北部」で指定された地域でマグニチュード7.0から7.5程度のプレート間地震が発生される確率がなんと90%と予想されています。東北地方太平洋沖地震後の2011年にも同様の長期予想が公表されていましたが、そのときは「青森県東方沖及び岩手県沖北部」と「茨城県沖」でのM7.0~7.5程度の地震発生確率が90%でした。今回は「茨城県沖」は80%に減少しています。そして、新たに「宮城県沖」という評価対象地域を設定し直して、そこでの長期地震発生確率を90%と予測しています。

M7.0程度の地震は東北地方太平洋沖地震のM9.0クラスの巨大地震とはマグニチュードが2も小さいのでエネルギー換算すると1000分の1の規模ではありますが、震源が地表に近ければ被害が大きくなります。この規模のプレート間地震の発生確率をどのように計算しているかは、上記資料の11,12ページに解説されています。基本的にこれまでの地震頻度から予測しているようです。また、宮城県沖の地域については、2005年までに陸寄りで繰り返し発生していた同規模の地震をもちいて発生率を評価しているため発生率が高くなっているとのことです。

2019-01-25

どうなる次世代LHC

以前のエントリーで日本国内での国際リニアコライダー(ILC)の誘致には否定的な意見を述べましたが、加速器の建設自体には私は賛成です。ヨーロッパでの次世代加速器計画についての詳細が報告されたようなので興味深く読みました。

https://home.cern/news/press-release/accelerators/international-collaboration-publishes-concept-design-post-lhc

ヒッグス粒子検出で沸いたLHC(Large Hadron Collider)をさらに大型にして(1周100km)これまで以上のエネルギースケール(100TeV)を目指すそうです。予算は 9-billion-euro (およそ1兆円)なので、ILCと同程度です。21年先の2040年から運用予定だそうです。21年後にはいろいろと状況が変わっているでしょうから計画通りにはいかないと思いますが、夢のある話です。人類がコントロールできるエネルギースケールを上げることは高エネルギー物理学が当然目指すべき方向性ではないでしょうか。未知の領域を探索することでこれまでにない物理現象が見つかるかもしれません、あるいは見つからないかもしれません。実際に実験してみないと分からないことなので物理学者の本音としては、「どうなるか約束できないけど面白そうなので実験させて」という感じでしょう。そのようなプロジェクトに1兆円の予算をつけられるかという政治的な話になってしまいますが、私はヨーロッパ各国が協力することを考えると安いと思います。先日、ラジオで聞いたのですが日本のメーカーが海外で原発プラントを建設する費用がおよそ1兆円になるそうです。(福島の事故以前は半額だったそうですが、あれ以後規制が強まり費用が倍増し、結局日本のメーカーは海外での原発プラント建設から実質撤退することになったようです。)原発プラントを建設する費用で自然界の真理を探究できる人類初の実験装置を手に入れることができると考えればお得ではないでしょうか。ぜひ欧州各国には次世代LHCを推進してもらいたいと思います。

2018-12-13

ILC 誘致の意思表明、3月まで待ってくれるってよ

先日父から封筒が届いたので、何かと思い開封してみると


日刊工業新聞の記事のカラーコピーでした。いまのご時勢にカラーコピーとはいえ新聞の切り抜きを郵送してくるとはさすが父上と感心しながら読んでみると国際リニアコライダー(ILC)の誘致について学術会議の検討会が疑義を挟んだというニュースでした。私はもちろんこの話は知っていました。大学のエライ人が決める話なので他人事として静観していましたが、相当な予算(関連施設の建設費も含めて1兆円を超えるそうです)が費やされる巨大プロジェクトなので父のように突然この話に興味を持つ方もいらっしゃると思います。ILC誘致については膨大な時間と労力が費やされているので私のような部外者が意見をするのは不謹慎なようで躊躇われますが、父への私信として以下のように回答しました。(12/1付)