2021-08-02

ワインバーグ・サラム理論 note02: $SU(2) \times U(1)$ゲージ理論

歴史的なモチベーション:
(a) V-A型カレント・カレント相互作用は繰り込み可能でない

(b) カレント・カレント相互作用は 300GeVのエネルギー・スケールでユニタリー性が破れる

ただし、V-A型カレント・カレント相互作用はベクトル・ボソン$W^{\pm}_{\mu}$の低エネルギー現象論(のラグランジアン)を与える。詳しくはnote05の式(6)を参照のこと。

ユニタリー性の概要: 

相互作用 $\bar{\mu}_e + e \rightarrow \bar{\mu}_e + e$ を考えると、そのカレント・カレント相互作用のラグランジアンは $\L_I = \frac{G}{\sqrt{2}} J^{+}_{\mu} J^{-}_{\mu} $の形になるので、次元解析から全散乱断面積は$ \si_{tot} \sim G^2 s $ となる。不変な散乱振幅は一つの部分波のみを持つ。(質量を無視、運動方向の角運動量は1となる。)このときユニタリー性から $\im F(s, 0) = 24 \pi \frac{\om}{k}f_1 \le \frac{24 \pi \om}{k}$と書ける。光学定理より $\si = \frac{1}{2k \sqrt{s}} \im F \le \frac{48 \pi}{s}$ $(\om = \sqrt{s} \approx 2k )$ よって、カレント・カレント相互作用は $G^2 s \sim \frac{48 \pi }{s}$ のエネルギーレベルでユニタリー性を破る。最も強い制限は $\bar{\mu}_\mu + e \rightarrow \bar{\mu}_e + \mu$ に由来する。

ユニタリー性と繰り込み可能性の問題は互いに関係している。質量のある$W^{\pm}_{\mu}$ボソンをつかったベクトル・ボソンによる手法はカレント・カレント相互作用の現象を再現することが出来ることが示されている。また、質量のあるベクトル・ボソンを導入する場合、繰り込み可能なものは自発的対称性の破れのあるゲージ理論だけであることが知られている。したがって、ある電弱相互作用の群 $G_W (= SU(2) \times U(1))$ にもとづいたゲージ理論を構築したい。ただし、$G_W$の特徴は以下の通り。
(1) $W^{\pm}_{\mu}$は荷電粒子で相互作用するので、$G_W$は$U(1)_{em}$を含む必要がある。

(2) $W^{\pm}_{\mu}$に質量を持たせ、$G_W$の対称性を破って$U(1)_{em}$を得るために、ヒッグス粒子を導入する必要がある。 

次回以降はシンプルな1世代モデルから始めて、具体的にどのような理論が構築されるのかを見て行く。

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