2019年12月25日

最近のarXivから:spinor-helicity形式の質量化(massive deformation)

PC関連の作業現実逃避の読書で後回しになっていましたが、最近とても興味深いプレプリントがいくつか出ています。著者名、タイトルを割愛してリンクだけ紹介すると

https://arxiv.org/abs/1912.03324
https://arxiv.org/abs/1910.13407
https://arxiv.org/abs/1909.10551
https://arxiv.org/abs/1905.11433
https://arxiv.org/abs/1902.07204

です。これらは2017年の論文

https://arxiv.org/abs/1709.04891

に触発される形で、散乱振幅の計算手法の発展を現象論的に興味深い模型(特に、ヒッグス機構を含めた電弱理論)へ応用しようという試みです。最近の散乱振幅計算の発展は以前も触れたように2次元共形場理論の理解と密接に関わっているため対象となる粒子は必然的に質量ゼロのボソンとなります。ただ、現実的には当然、質量のある粒子(ヒッグス粒子やクォーク)を取り扱う必要があります。その為には、散乱振幅の計算で用いられているspinor-helicity形式の質量化(massive deformation)を考えなければなりません。散乱振幅を計算するに当たりファインマン図の内線にあたる仮想粒子(virtual particle)が現れるのでそのような質量化は以前から知られていましたが、2017年の論文では代数的な手法を用いてこの質量化が簡素に表示されることが示され、その表示法のもとでヒッグス機構が記述されました。

2017年当時、私も興味深くフォローしていましたが数値的に予言能力があるのかどうか不明なままでした。その前に、まず以前の reference spinor を用いたspino-helicity形式の質量化とどう関係しているのか明らかにしなければと思いながら、別の研究(の泥沼)にはまり込んでどうしようもなくなっていました。今回、上記2番目の論文 1910.13407 でそのあたりのことがクリアにされているようなので、今度時間を見つけてホロノミー形式の研究に戻りたいと思います。

2019年12月23日

最近読んだ本:想像力は知識よりも強い、空海の生涯

最近の土曜日は子供の習い事の付き添いに行くことが増えました。その空き時間に本屋によって偶然目にした『眠れないほど面白い空海の生涯』(由良弥生著)


を立ち読みしたところ面白そうだったので先週購入して、昨日読み終わりました。由良さんの作品は初めてでしたが、女性らしい直感を信じる大胆さと緻密な文献渉猟力に感服しました。特に空海の生涯を丹念に調べ上げて、読者を飽きさせない大河ドラマ風の伝記に仕上げる筆力には圧倒されました。空海が生きた時代の時代背景や空海の手紙の内容を詳細にわたり解説している部分については学術的にも貴重な資料ではないでしょうか。私はどちらかというと物語性よりもこれまで知らなかった歴史資料に興味があったので、とても勉強になりました。文献紹介だけなら無味乾燥な読み物となり、文庫として世に出るのは難しかったかもしれませんが、そこは、筆者が本文中でいみじくも述べているように「想像力は知識よりも強い」(34頁)という信念のもと興味深く楽しい読み物に仕上がっています。想像力を羽ばたかせて書かれた部分と知識を伝える目的で書かれた部分が織り交ざって、その配合が上手くいっている部分とそうでない部分が気になりはしました。特に終盤はどうしても歴史的事実の羅列になってしまいがちで読み進めるのに苦労しました。しかし、全体的に文献紹介のレポートとして割り切って考えると非常に良くまとまっているので空海、真言宗について興味のある方は是非手に取ってみて、自分なりの空海像を想像してみてはいかがでしょうか?

由良さんの本を読みながらこういったジャンルの本は以前読んだなあと思い返してみると阿刀田高さんの有名な知っていますかシリーズでした。

  

大学生のころに立て続けによんでとても勉強になった記憶があります。「アイヤーヨ!」でアブラハム、イサク、ヤコブ、ヨセフを覚えるというのは今でも頭に残っています。宗教について一般向けに本を著すのはいろいろな意味で大変だと思いますが、教養としての宗教を知識として楽しく正しく軽妙に伝えてくれる本が今後も著されることを期待します。

2019年12月17日

Dynabook T652 メモリ増設、SSD化

今のノートPC Dynabook T652/58FBK


を購入したのは2012年の夏なのでもう7年半前のことですが、未だに現役で使っています。

CPU Core i7
Display 15.6型ワイドHD(LED液晶)
Memory 8GB (4GB$\times$2) DDR3-1600
HDD 750GB 5,400rpm
OS Windows7 (64bit)

Win7のサポートが終わるらしいですが利用しているソフトの関係でバージョンアップせずに頑張ってます。ウイルスバスターのサポートが2022年まであるのでそれまで様子見ようかと考えています。ただ、最近特に起動が遅い(4,5分かかる)ので、リソースモニタで調べてみると、メモリが常に70%以上でハードフォールトが頻発していることが分かりました。そこで、以前から気になっていたメモリ増設をすることにしました。カタログによると最大16GB (8GB$\times$2) とのこと。折角なので最大限まで増設しようと思い早速



を購入(6,780円)。このときはじめてノートPCを解体しましたが、このサイトがとても参考になりました。取り付けたのが12/13(金)。メモリ増設後、物理メモリの使用率は30%ちょっとになり確かにPCの動きは早くなりましたが、思っていたよりも起動時間は短縮されませんでした。そこで、調べてみるとHDDをSSD (Solid State Drive)にすると起動時間が劇的に速くなり、サクサクと動くそうなので恐る恐る試してみることにしました。

2019年12月11日

ピクセラのテレビチューナーが起動しなくなった件

以前こちらで紹介しましたが、我が家では自作PCに「ピクセラ Windows10対応 PCIe接続 テレビチューナー」


を入れてテレビを視聴・録画しています。上の子が10歳ぐらいまではテレビを見ない生活を続けていましたが、最近はちょっと見過ぎなぐらいです。子供たちが勝手に好きな番組(ドラマやバラエティ)を録画してみているので良くないなあと思っていたら、先週12/5に都合よくテレビチューナーに連動している Station TV X というアプリが起動しなくなりました。ダブルクリックすると「録画情報管理ツールで[復元開始]をクリックしてください。」といったエラーメッセージが表示され、指示通りに復元開始をしても全く何も起こらず、再度 Station TV X を起動しても同じことの繰り返し、PCを再起動してもどうにもならなかったのでこれを機会にTVを見るのをやめることにしました。

一週間ほどTVなしで問題なく過ごせましたが、折角受信料払っているのにTVを見ないのは勿体ないし、そろそろ高校駅伝も始まるのでどうやって修復するのかネットで調べてみました。すると、

https://plaza.rakuten.co.jp/kinchan07/diary/201606280000/

というとても親切で参考になるサイトが見つかりました。2016年から同じ現象が起きているのですね。 想像通り復旧するには録画情報管理ツールで[録画情報削除]するしかないようです(サーポートセンターの回答)。ただ、「STVLERec」フォルダの中のフォルダ「StationTV_X_Bk」の名前を変更して Station TV X を起動すると直る場合もあるとのことで、一縷の望みを託して私も同様にファイル名を変更して起動してみましたがダメでした。

2019年12月4日

シングルス市民大会

去年も同じでしたが市民駅伝の次の週にテニスのシングルス市民大会がありました。去年はケガの影響もあって一回戦負けでしたが、今年は嬉しいことに2回勝つことができました。今年から45歳以上のシニアのカテゴリで出場できる資格があったのですが日程の都合で参加できなかったため去年同様Aクラスにエントリーしました。1,2回戦ともテニス関係者(テニススクールのアシスタントや兼業テニスコーチ)の若者でしたが、何とか年の功で勝つことができました。相手のバックハンドにボールを集めてバックを意識させて逆を突いたり、チャンスボールを攻めるという基本戦術が上手くはまりました。あと、フラットサーブを無理に打たないことを意識したのが良かったです。いつもサーブからリズムを崩すことが多いので今年はそうならないように注意しました。三回戦の相手はレベルが違いました。バックハンドが非常に上手くフラット気味でショートクロスにもダウンザラインへも打ち分けられるため私の戦術が全く通用しませんでした。途中からフォアハンドを攻めたり、サーブアンドボレーを混ぜたりして単発でポイントは取れましたがストローク戦で完全に押されたため成す術がありませんでした。1-6で完敗でした。試合後に反省した点は以下の通りです。

1.序盤で相手のバックハンドがいいことが分かったのだから、もう少し早めに戦術を変えるべきだった。(サーブアンドボレーをしたのは0-3になってからだったし、せっかくポイント取れたのに続けなかったのは良くなかった。相手は再度ストローク戦になったので楽だったでしょう。)
2.サービスエースをねらうショットが足りなかった。サーブは2回打てるのだからストローク戦で分が悪い相手にはファーストサーブはエース狙いでリスクを負わないとサービスキープが厳しい。
3.相手を前後に揺さぶることができなかった。ドロップショットや前に出してからのロブなど当然試すべきショットを打つことができなかった。バックハンド攻撃への意識が強すぎて、通用しないときの対処法まで事前に想定していなかったのが原因。

来年からはシニアで出場予定ですが、今回の反省点を活かしてまだまだ通用するようならAクラスでもう少し頑張ってみたいと思います。

高次元共形場理論がすごい!

近刊の紹介です。中山優著『高次元共形場理論への招待 3次元臨界 Ising 模型を解く』


です。結論から言うと、とにかく素晴らしい解説書なので最近の理論物理学の発展に興味ある方はぜひ手に取ってみてください。タイトルにあるように招待されるがままに読み始めると流れるようなナラティブに引き込まれ、一気に読み進めました。途中からテクニカルな部分は飛ばしながらでしたが、読みながら著者の明快な解説に納得しきりでした。特に後半部分は知らなかったことばかりでとても勉強になりました。また本文だけでなく脚注のコメントも機知に富み楽しめました。「こういう本が読みたかった!」と物理の教科書を読んで久しぶりに感動しました。

以前のエントリーで紹介したナイアのエッセイでも言及されている通り、最近の理論物理学の成果として3次元イジング模型の臨界指数が共形ブートストラップの手法で精度よく求められることが知られています。水の臨界点に代表される相転移現象は、一般に臨界現象の普遍性 (universality) から3次元イジング模型を用いて解析できるのでこの成果は画期的なことです。2次元の場合は臨界点での臨界指数を2次元共形場理論で分類できることが知られていましたが、3次元の場合も同様に共形不変性から臨界指数を求めることができるという最先端の話を共形場理論の基礎から分かり易く・楽しく解説されています。特に、(3次元以上の)高次元共形場理論の基礎的だけど難解で敷居の高い内容(例えば、4点相関関数の導出、共形代数の表現論、共形ブロックなど)を扱う日本語の教科書は(私の知る限り)本書が初めてでしょう。これらの準備を踏まえて最終的に共形ブートストラップの手法が丁寧に解説されています。具体的には、$\mathbb{Z}_2$対称性を持つ3次元共形場理論の4点相関関数の自己無撞着条件から3次元イジング模型の臨界指数(の存在可能範囲)を数値的に求めるプログラムを紹介しています。この分野の第一人者の一人である著者でなければ書けない内容ばかりではないでしょうか。若い研究者、学生さんは是非この本で高次元共形場理論を勉強してください。

なんといっても我々が普段目にする自然現象が3次元の共形不変性から数値的に説明できるというのは驚きです。相転移と臨界現象については歴史的な側面も含めて田崎・原著『相転移と臨界現象の数理』


で詳しく解説されています。中山さんの近著はこれら伝統的な臨界現象の理解と共形ブートストラップを使った最先端の理解との間のギャップを埋めることを目標にして著されたそうですが、見事にその目標を達成されています。