File failed to load: https://cdnjs.cloudflare.com/ajax/libs/mathjax/2.7.0/extensions/TeX/mathtools.js

2021-08-26

QCD 量子色力学 note12: 汎関数積分表示 QEDの場合

このノートでは量子電磁気学(QED)を例にゲージ理論の汎関数積分表示を考える。汎関数積分の基本についてはナイアの教科書(基礎編)


の第8章を参考にして下さい。自由場のラグランジアンは
L=14FμνFμν
で与えられる。スカラー場やフェルミオン場の理論からの類推でS行列の生成汎関数として
Z[J]=e14FμνFμνd4xeJμAμ[dAμ]
を考える。ここで、
14FμνFμνd4x=12[μAνμAννAννAμ]d4x=12[μAνμAν(A)2]d4x=12Aμ[2δμν+μν]Aνd4x
なので、
Mμν(x,y)=(2δμν+μν)δ(xy)
とおく。このとき、Mの逆行列M1は存在しない。というのも4×4行列(2δμν+μν)が特異行列、つまり光子k2=0に対してdet(k2δμνkμkν)=0となるためである。この問題はゲージ不変性に起因する。それを見るためにゲージ変換 AμAμ+μΛ を考えよう。 ϕμ=μΛの形で表せるモードに対して
d4yMμν(x,y)ϕν(y)=(2ϕμ+μ(ϕ))=0
となる。つまり、ϕμ=μΛは固有値がゼロとなるMμνの固有ベクトルである。汎関数積分(1)を定義するに当たりそのようなゲージあるいは物理的でない自由度はAμから除かれる必要がある。

そこでまず関数空間A
A={Aμ(x)}={すべてのポテンシャルの空間}
と定義する。Aμ(x)はリー代数の要素でもある。
[dAμ]=x,μ,aAaμ(x)
Aはアフィン空間である。
Aμ(x)=A(0)μ+ξμ
ただし、ξμ(x)はリー代数の値をもつベクトル場。理論の物理空間Aphys
Aphys=A/G
G={Λ(x)}={|x|0のときΛ(x)0}
と表せる。Gの要素は理論の中で非物理的な(重複のある)変数を表す。その意味でGは理論の真のゲージ対称性と言える。

Λ=0から始めて変換の連続を考えると、ゲージ変換はAにおいてある流れを生成することが分かる。ゲージ自由度を除外するには、これらの流れのラインを横断するような断面Sを選ぶ必要がある。S上の点はAphysの表現を与える。Sをどのように選ぶかはポテンシャルに課される条件によって決まる。そのような条件はゲージ固定条件と呼ばれ、例えば、A=0f(A)=0などがある。(f(A)Aの汎関数。)

汎関数積分の測度は[dAμ]=[dAphys][dΛ]となるので[dΛ]を落とさなければならない。そこで[dAμ]を保ちつつゲージ固定条件をデルタ関数として入れることを考える。ゲージ固定条件をf(A)=0としてこの条件のもとでSがゲージ軌道(ゲージ変換の流れ)を1度だけ切断すると仮定すると
[dAμ]det(δfδΛ)δ(f)=[dAphys]dΛ(det(δfδΛ))δ(f)=[dAphys]dfδ(f)=[dAphys]
Aphysは断面Sに対して接線方向の成分をもつ。f(A)=0の解をA0とすると(4)より
[dAphys]F(A0)=[dAμ]det(δfδΛ)δ(f)F(A0)
F(A0)がゲージ不変な汎関数である場合は一般にF(A0)=F(A)と表せる。det(δfδΛ)はファデーエフ・ポポフ行列式と呼ばれる。以上より式(1)のS行列の生成汎関数は物理的な積分測度を用いて
Z[J]=[dAμ]det(δfδΛ)δ(f) e14F2μν+JμAμ
と表せる。

式(5)を変形するのに以下の2つのことを利用する。

(a) 一般に行列式はグラスマン数の汎関数積分を使って表せることから、ファデーエフ・ポポフ行列式は
det(δfδΛ)=[dcdˉc]eˉc(δfδΛ)c
と変形できる。

(b) 式(5)はゲージ固定条件f(A)=0についてのZ[J]を与える。g(x)Aに依らない関数としてfg(x)=0をゲージ固定条件とするとZ
Zfg[J]=[dAμ]det(δfδΛ)δ(fg) e14F2μν+JμAμ
と書ける。これはもちろん(5)とは異なるが、S行列の要素はf(A)に依存しないので(6)を使うこともできる。g(x)は任意に取れるのでS行列を導くのにZfg, Zfgあるいは[dg]F(g)Zfgのどれを用いてもいい。(F(g)gの任意の汎関数。)つまり、これらは全て同じS行列を定義する。

したがって、S行列を計算するという目的でF(g)=exp[12αg2(x)]と選んで改めてZ[J]を定義できる。ただし、αは実数とする。
Z[J]=[dg]e12αg2(x)Zfg=[dAμ]det(δfδΛ)ef22αe14F2μν+AJ=[dAμdcdˉc]eSq+AJ
ここでSq
Sq=[14FμνFμν+f22αˉc(δfδΛ)c]d4x
で定義される。式(7)が我々の求めるべきS行列の生成汎関数を与える。αは任意に実数パラメータである。得られる断面Sがゲージの流れのラインをただ一回だけ横切る場合、そのゲージ固定は「良いゲージ固定」と考えられる。そのような断面が存在するかどうかはA/Gの広域的な性質に依存する。もしそのような断面が存在しなければ、断面上の全ての点を積分すると自由度を重複して数えることになってしまう。この問題はグリボフ問題と呼ばれる。グリボフ問題は汎関数積分(7)を摂動的に計算する分には影響を与えない。

具体例

(1) f(A)=μAμの場合
f(x)δΛ(y)=2δ(xy)  (=ΔFP :Faddeev-Popov演算子)
α=1として式(8)に代入すると
Sq=[14F2μν+12(A)2+ˉc(2)c]=[12Aμ(2)Aμ+ˉc(2)c]
これは通常のファインマン・ゲージ選択に対応する。c, ˉcの項は定数因子det(2)を与えるだけなので、規格化定数の中に吸収できる。光子の伝播関数は
Aμ(x)Aν(y)=12δμν=δμνd4k(2π)4eik(xy)k2
で与えられる。α0の極限はランダウ・ゲージとして知られている。

(2) f(A)=μAμ+AμAμ=A+A2の場合
δfδΛ=2+2A
なのでα=1として式(8)に代入すると
Sq=[14F2μν+12((A)2+2A2(A)+A4)+ˉc(22A)c]=[12Aμ(2)Aμ++A2(A)+12A4+ˉc(22A)c]
となる。これより光子の伝播関数の可能な頂点ダイヤグラムは以下のように書ける。


この場合、ˉc(A)cの項があるのでゴースト場cは光子Aと相互作用する。しかし、(9)と(10)は同じ物理を別のゲージ選択で表現していることから(9)に表れる上記の3つの頂点作用素の効果はS行列の計算においてすべて相殺される(はずである)。

0 件のコメント: