2012年7月に質量mη=125 GeV をもつヒッグス粒子が観測されました。今回のノート(というよりむしろメモ)はその10年ほど前に書かれたものなので内容的には古いですが、ヒッグス粒子は質量の起源を説明するものであり、その理解は標準模型を超える枠組みを考えるうえでも重要です。
note04の結果からヒッグス粒子に関するラグランジアンは
LH=(DΦ)†(DΦ)−λ(Φ†Φ−v22)2 , Φ=(0v+η√2)
となる。粒子の質量は真空期待値vを用いて
MW=gv2 , MZ=v2√g2+g′2=gv2√g2+g′2g=MWcosθWmH=√2λv , me=f(e)√2v , mu=f(u)√2v , md=f(d)√2v
と表せる。
中性ヒッグススカラー粒子η=Hについてはまだ分からないことが多い。ここでは、ヒッグス質量についてその上限下限について簡単に議論する。まず、下限についてはポテンシャル
V(Φ†Φ)=−λ(Φ†Φ)2+λv2(Φ†Φ)+⋯+(量子補正項)
に対する1ループ補正の考察から得られる。もしmηが極端に小さく、量子補正が対称性を保つ真空に優位に働くなら対称性の破れは起きないと予想される。したがって、真空でのヒッグス場のポテンシャルは体操性の破れを引き起こすポテンシャルのエネルギーレベルよりも大きくなる必要がある。1ループ量子補正後のポテンシャルV(Φ†Φ)にΦ=(0v+η√2)を代入しηで展開したものを
V=V(0)+V(1)η+12V(2)η2+⋯
と表す。V(0)(v)がヒッグスポテンシャル(シャンパンボトルの底)の形をしていることから対称性の破れを引き起こす条件は
V(0)v≠0<V(0)v=0
で与えられる。この条件とV(2)=m2ηからmηの下限が
mη≥7.9 GeV
となることが知られている。ただし、この制限はヒッグス粒子が1つの場合に適用され、複数のヒッグス2重項がある理論では一般にこのような下限は存在しない。
次にヒッグス粒子質量の上限について考える。もしλが充分に大きければ摂動論を適用することが出来ない。もし摂動論が正しいと仮定するならλ≤1の要請からmη=√2λv≤350 GeVとなる。繰り込み群を用いるとモデルの安定性についてより洗練された解析を行うことが出来る。この場合、mη≤130 GeVの上限が知られている。
note04よりヒッグス粒子とフェルミオン、ゲージボソンとの相互作用は
Lη−int=−mqvˉqqη+2M2WvW+μW−μη+M2Wv2W+μW−μη2+M2ZvZ2μη+M2Z2v2Z2μη2
で与えられる。よって、フェルミ粒子との結合の強さはフェルミ粒子の質量に比例する。同様にゲージボソンとの結合の強さもある程度大きいことがわかる。
興味深いη生成過程として以下のものがある。
最後にヒッグス粒子の最近の理論的な研究については
が参考になるので興味ある方は手に取ってみてはいかがでしょうか。
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