今回はνμ+e→νμ+e 散乱過程を考える。これはnote05で議論した中性カレントだけが関与する散乱過程であり、相互作用のラグランジアンは
−LI=g22M2WJμJμJμ=gνLˉν(μ)Lγμν(μ)L+geLˉeLγμeL+geRˉeRγμeR+⋯
で与えられる。ただし、中性カレントの一般形はnote05の式(11)で表され、gνL=12, geL=−12−sin2θW, geR=−sin2θWである。νμ+e→νμ+e 散乱に関与するLIは
−LI=g22M2W2gνLˉνLγμνL(geLˉeLγμeL+geRˉeRγμeR)=2GF√2gνLˉνγμ(1−γ5)ν[geLˉeγμ(1−γ5)e+geRˉeγμ(1+γ5)e]
と表せる。ただし、g28M2W=GF√2である。
これより散乱振幅は
M=−∫LId4x=2GF√2gνLˉνk′γμ(1−γ5)νk[geLˉep′λ′γμ(1−γ5)epλ +geRˉep′λ′γμ(1+γ5)epλ](2π)4δ(k+p−k′−p′)
となる。この2乗を取ると
|M|2=4(GF√2)2(gνL)2[ˉνk′γμ(1−γ5)νkˉνkγα(1−γ5)νk′] ×[(geL)2ˉep′γμ(1−γ5)epˉepγα(1−γ5)ep′+(geR)2ˉep′γμ(1+γ5)epˉepγα(1+γ5)ep′] ×(2π)4δ(k+p−k′−p′)VT
ただし、VTは時空間体積。また、偏極のラベルλ,λ′を省略した。フェルミ粒子の伝播関数は
⟨f(x)ˉf(y)⟩=∫d4p(2π)4−ip/p2eip(x−y)
正の振動数部分はp/2Epd3p(2π)3となる。よって、運動量表示では⟨νkˉνk⟩=k/として相空間因子d3k(2π)312Ekを付随させればよい。入射電子のスピンについては平均をとる。これより(2)は
|M|2=2(GF√2)2(gνL)22tr[γμk/γαk/′(1+γ5)] ×2[(geL)2tr[γμp/γαp/′(1+γ5)]+(geR)2tr[γμp/γαp/′(1−γ5)]] ×(2π)4δ(k+p−k′−p′)VT[d3k(2π)312Ekd3p(2π)312Ep][d3k′(2π)312Ek′d3p′(2π)312Ep′]
と書ける。nν, neを整数、V=L3として、k=2πnνL, p2πneLとおく。nν, neを固定値として入射状態を固定すると
|M|2=2(GF√2)2(gνL)22tr[γμk/γαk/′(1+γ5)] ×2[(geL)2tr[γμp/γαp/′(1+γ5)]+(geR)2tr[γμp/γαp/′(1−γ5)]] ×(2π)4δ(k+p−k′−p′)TV12Ek12Ep[d3k′(2π)312Ek′d3p′(2π)312Ep′]
散乱断面積dσは散乱確率|M|2TをフラックスvVで割ったものである。ここでvはνμとeの相対速度である。入射電子の静止系で考えるとv=c(光速、c=1)とおけるので、
dσ=∫12Ek12Ep2(GF√2)2(gνL)2Lμα(k,k′)[(geL)2Lμα(p,p′)+(geR)2Rμα(p,p′)]d(phase)
Lμα(k,k′)=2tr[γμk/γαk/′(1+γ5)]=8[kμk′α+kαk′μ−(k⋅k′)δμα+ϵμναβkνk′β]Rμα(p,p′)=2tr[γμp/γαp/′(1−γ5)]=8[pμp′α+pαp′μ−(p⋅p′)δμα−ϵμναβpνp′β]
ただし、
tr[γμγνγαγβ]=4(δμνδαβ−δμαδνβ+δμβδνα)tr[γμγνγαγβγ5]=4ϵμναβ
を用いた。また、(5)の相空間因子は
∫d(phase)=∫(2π)4δ(4)(k+p−k′−p′)d3k′(2π)312Ek′d3p′(2π)312Ep′
→k′と→p′の成す角をθとおく。
に注意すると
∫d(phase)=116π2∫δ(Ek+me−Ek′=Ep′)d3P′Ep′Ek′|→k′=→k−→p′=18π∫1−1d(cosθ)∫p′2dp′1Ep′Ek′δ(Ek+me−Ek′=Ep′)=18π∫d(cosθ) δ(f(cosθ)) p′dEp′Ek′=18π1Ekp′Ek′p′dEp′Ek′=18πdEp′Ek
ただし、
f(cosθ)=k+me−√k2−2kp′cosθ+p2−√p′2+m2ef′(cosθ)=kp′√k2−2kp′cosθ+p2=Ekp′Ek′
を用いた。
式(6)より
Lμα(k,k′)Lμα(p,p′)=64[(kμk′α+kαk′μ−(k⋅k′)δμα)(pμp′α+pαp′μ−(p⋅p′)δμα)+ϵμναβϵμσατkνk′βpσp′τ]=64[2(k⋅p)(k′⋅p′)+2(k⋅p′)(k′⋅p)+2(k⋅p)(k′⋅p′)−2(k⋅p′)(k′⋅p)]
ここで、k2=k′2=0, p2=p′2=−m2e, k+p=k′+p′から
k⋅p=k′⋅p′ , k⋅p′=k′⋅p
なので、
Lμα(k,k′)Lμα(p,p′)=256(k⋅p)(k′⋅p′)=256(k⋅p)2=256(Ekme)2Lμα(k,k′)Rμα(p,p′)=256(k⋅p′)(k′⋅p)=256(k′⋅p)2=256(Ek′me)2
が得られる。したがって、(5)は
dσdEp′=132π1E2kmeG2F(gνL)2256[(geL)2(Ekme)2L+(geR)2(Ek′me)2]=8G2Fmeπ(gνL)2[(geL)2+(geR)2(Ek′Ek)2]
となる。慣習的な(エネルギー遷移比率の)スケール変数
y=Ep′Ek (Ek≫me)
を用いると
dσ(νμe)dy=8G2FπmeEk(gνL)2[(geL)2+(geR)2(1−y)2]
となり、散乱断面積は
dσ(νμe)=8G2FπmeEk(gνL)2[(geL)2+13(geR)2]
で与えられる。式(9)の(1−y)2が式(10)から13因子が出てくるが、この項は入射ニュートリノと反対のヘリシティをもつ項に対応する。よって、反ニュートリノの散乱過程ˉνμe→ˉνμeの散乱断面積は同様の解析から
dσ(ˉνμe)=8G2FπmeEk(gνL)2[13(geL)2+(geR)2]
となることが類推できる。
これまでνμとeの散乱を考えたが、同一世代のνeとeの散乱過程ˉνee→ˉνeeの場合は、荷電カレントと中性カレントの両方が寄与する。
この場合、散乱断面積は次のように計算できる。
dσ(νee)=8G2FπmeEk(gνL)2[(1+geL)2+13(geR)2]dσ(ˉνee)=8G2FπmeEk(gνL)2[13(1+geL)2+(geR)2]
(geL)2ではなく(1+geL)2となっているのは荷電カレントの効果であることに注意。
Wボソン崩壊過程
次にW−μ→e+ˉνの崩壊過程を考える。
W±ボソンとフェルミ粒子の結合はnote05の式(4)で見たように荷電カレントW±と荷電カレントの相互作用で記述される。多世代モデルの場合クォーク・レプトンセクターでのW±と荷電カレントの相互作用はそれぞれnote06の式(7), (13)で表される。
LW=−ig2√2W+μ[(ˉνe ˉνμ ˉντ)γμ(1−γ5)(eντ)+(ˉu ˉc ˉt)γμ(1−γ5)V(dsb)]+h.c.
ただし、VはCKM行列、レプトンセクターでは世代間の混合は無いとした。この相互作用項(13)を用いて様々な崩壊モードを計算できる。例えば、W−μ(k)→e(p)+ˉν(q)を考えよう。行列要素は
M=ig2√2ˉes(p)γμ(1−γ5)νs′(q)ϵμ(k,λ)
ただし、ϵμ(k,λ)はWボソンの偏極ベクトル。フェルミオンのスピンについて和を取り、Wボソンの偏極の平均をとると
13∑λ,s,s′|M|2=13g28∑λϵμ(k,λ)ϵ∗ν(k,λ)[∑s,s′ˉes(p)γμ(1−γ5)νs′(q)ˉνs′(q)γν(1−γ5)es(p)]
となる。ここで、
∑λ=0,±1ϵμ(k,λ)ϵ∗ν(k,λ)=δμν+kμkνM2W∑sˉesα(p)esβ(p)=(p/+me)αβ∑s′νs′α(q)ˉνs′β(q)=(q/)αβ
∑s,s′ˉes(p)γμ(1−γ5)νs′(q)ˉνs′(q)γν(1−γ5)es(p)=tr[(p/+me)γμ(1−γ5)q/γν(1−γ5)]=2tr[(p/+me)γμq/γν(1−γ5)]=2pαqβtr[(γαγμγβγν(1−γ5)]=8pαqβ(δαμδβν+δανδβμ−δαβδμν−ϵαμβν)=8[pμqν+pνqμ−δμν(p⋅q)−ϵαμβνpαqβ]
ただし、tr(奇数個のγ)=0, tr(γμγνγαγ5)=0を使った。(16)はμ,νについて対称であるがϵαμβνは添え字について完全反対称であるので、(16)の最後の項は(14)に寄与しない。よって、
13∑λ,s,s′|M|2=g23[pμqν+pνqμ−δμν(p⋅q)](δμν+kμkνM2W)=g23M2W[2(p⋅k)(q⋅k)−M2W(p⋅q)]
ここで、k2=−M2W, p+q=kなのでme(≪MW)を無視すると
13∑λ,s,s′|M|2≃13g2M2W
を得る。
このとき、Wボソンの静止系 (Ek=MW,Ep=√p2+m2e,Eq=|→q|=q) で崩壊確率Γe(W−→eˉνe)は
Γe(W−→eˉνe)=12MW∫(2π)4δ(4)(k−p−q)13∑λ,s,s′|M|2d3p(2π)32Epd3q(2π)32Eq=12MWg23M2W1(2π)2∫δ(MW−Ep−Eq)d3p2Ep2Eq|→p+→q=0=g2MW64π16π2∫δ(MW−√p2+m2e−p)p2dpp√p2+m2e
ここで、
f(p)=MW−√p2+m2e−pf′(p)=−p√p2+m2e−1∫δ(MW−√p2+m2e−p)p2dpp√p2+m2e=1p+√p2+m2e√p2+m2ep√p2+m2e≃12 (p2≫m2e)
なので
Γe(W−→eˉνe)≃g2MW48π=GF√2M3W6π
となる。ただし、GF√2=g28M2Wを用いた。この崩壊確率はフェルミ定数GFに比例する。通常、弱い相互作用の崩壊確率はG2Fに比例するので、この過程はsemi-weakな崩壊と言える。
最後に3世代に拡張して崩壊確率を計算する。レプトンへの崩壊はこれまでと同様に
Γe(W−→eˉνe)=Γμ(W−→μˉνμ)=Γτ(W−→τˉντ)
となる。クォークへの崩壊は荷電カレントが
J+μ=ˉEiLγμNiL+VijˉDiLγμUjL
なので、終状態のクォーク対について和を取ること以外はΓeと同じである。例えば、
Γ(W−→ˉud)≃3|V11|2GF√2M3W6π
となる。ここで、VijはCKM行列の要素、因子3は色の数(クォークがQCDのSU(3)群の3重項であること)を表す。2世代の場合は|Vij|=1となる。よって、W−からクォークへの崩壊確率は
Γ(W−→all quarks)≃3∑allowed (i,j)|Vij|2 GF√2M3W6π
と表せる。
Zボソン崩壊過程
Zボソンは冒頭で示した中性カレントと相互作用するので、Z \rightarrow \nu \bar{\nu} の崩壊確率も動力学的に全く同様に計算できる。
\Ga (Z \rightarrow \nu \bar{\nu}) \simeq \hf \frac{G_F}{\sqrt{2}} \frac{M_Z^3}{6\pi} \simeq 0.18 ~ GeV
ここで、\hf因子はZボゾンと中性カレントとの相互作用
-i \frac{g}{\cos \th_W} Z_\mu \hf \bar{\nu}_L \ga_\mu \nu_L
とW^-ボソンと荷電カレントとの相互作用
-i \frac{g}{\sqrt{2}} W_\mu^- \bar{e}_L \ga_\mu \nu_L
の係数が異なることに起因する。つまり、g^\primeの効果であると考えられる。Z \rightarrow \nu \bar{\nu} は中性の崩壊過程なので精度よく観測できる。よって、観測値\Ga_{exp.} ( Z \rightarrow \nu \bar{\nu})を用いてニュートリノの数 N_\nu を推測できる。
\Ga_{exp.} ( Z \rightarrow \nu \bar{\nu}) = N_\nu \frac{G_F}{\sqrt{2}} \frac{M_Z^3}{12 \pi}
実験値から N_\nu \simeq 3 が知られている。
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