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2021-08-14

ワインバーグ・サラム理論 note08: νμ+eνμ+e 散乱など

今回はνμ+eνμ+e 散乱過程を考える。これはnote05で議論した中性カレントだけが関与する散乱過程であり、相互作用のラグランジアンは
LI=g22M2WJμJμJμ=gνLˉν(μ)Lγμν(μ)L+geLˉeLγμeL+geRˉeRγμeR+
で与えられる。ただし、中性カレントの一般形はnote05の式(11)で表され、gνL=12, geL=12sin2θW, geR=sin2θWである。νμ+eνμ+e 散乱に関与するLI
LI=g22M2W2gνLˉνLγμνL(geLˉeLγμeL+geRˉeRγμeR)=2GF2gνLˉνγμ(1γ5)ν[geLˉeγμ(1γ5)e+geRˉeγμ(1+γ5)e]
と表せる。ただし、g28M2W=GF2である。


これより散乱振幅は
M=LId4x=2GF2gνLˉνkγμ(1γ5)νk[geLˉepλγμ(1γ5)epλ        +geRˉepλγμ(1+γ5)epλ](2π)4δ(k+pkp)
となる。この2乗を取ると
|M|2=4(GF2)2(gνL)2[ˉνkγμ(1γ5)νkˉνkγα(1γ5)νk] ×[(geL)2ˉepγμ(1γ5)epˉepγα(1γ5)ep+(geR)2ˉepγμ(1+γ5)epˉepγα(1+γ5)ep]       ×(2π)4δ(k+pkp)VT
ただし、VTは時空間体積。また、偏極のラベルλ,λを省略した。フェルミ粒子の伝播関数は
f(x)ˉf(y)=d4p(2π)4ip/p2eip(xy)
正の振動数部分はp/2Epd3p(2π)3となる。よって、運動量表示ではνkˉνk=k/として相空間因子d3k(2π)312Ekを付随させればよい。入射電子のスピンについては平均をとる。これより(2)は
|M|2=2(GF2)2(gνL)22tr[γμk/γαk/(1+γ5)] ×2[(geL)2tr[γμp/γαp/(1+γ5)]+(geR)2tr[γμp/γαp/(1γ5)]] ×(2π)4δ(k+pkp)VT[d3k(2π)312Ekd3p(2π)312Ep][d3k(2π)312Ekd3p(2π)312Ep]
と書ける。nν, neを整数、V=L3として、k=2πnνL, p2πneLとおく。nν, neを固定値として入射状態を固定すると
|M|2=2(GF2)2(gνL)22tr[γμk/γαk/(1+γ5)] ×2[(geL)2tr[γμp/γαp/(1+γ5)]+(geR)2tr[γμp/γαp/(1γ5)]] ×(2π)4δ(k+pkp)TV12Ek12Ep[d3k(2π)312Ekd3p(2π)312Ep]
散乱断面積dσは散乱確率|M|2TをフラックスvVで割ったものである。ここでvνμeの相対速度である。入射電子の静止系で考えるとv=c(光速、c=1)とおけるので、
dσ=12Ek12Ep2(GF2)2(gνL)2Lμα(k,k)[(geL)2Lμα(p,p)+(geR)2Rμα(p,p)]d(phase)
Lμα(k,k)=2tr[γμk/γαk/(1+γ5)]=8[kμkα+kαkμ(kk)δμα+ϵμναβkνkβ]Rμα(p,p)=2tr[γμp/γαp/(1γ5)]=8[pμpα+pαpμ(pp)δμαϵμναβpνpβ]
ただし、
tr[γμγνγαγβ]=4(δμνδαβδμαδνβ+δμβδνα)tr[γμγνγαγβγ5]=4ϵμναβ
を用いた。また、(5)の相空間因子は
d(phase)=(2π)4δ(4)(k+pkp)d3k(2π)312Ekd3p(2π)312Ep
kpの成す角をθとおく。


Ek=|k|=kEp=meEk=|kp|=k22kpcosθ+p2Ep=|p|2+m2e=p2+m2edEpdp=pp2+m2e=pEp
に注意すると
d(phase)=116π2δ(Ek+meEk=Ep)d3PEpEk|k=kp=18π11d(cosθ)p2dp1EpEkδ(Ek+meEk=Ep)=18πd(cosθ) δ(f(cosθ)) pdEpEk=18π1EkpEkpdEpEk=18πdEpEk
ただし、
f(cosθ)=k+mek22kpcosθ+p2p2+m2ef(cosθ)=kpk22kpcosθ+p2=EkpEk
を用いた。

式(6)より
Lμα(k,k)Lμα(p,p)=64[(kμkα+kαkμ(kk)δμα)(pμpα+pαpμ(pp)δμα)+ϵμναβϵμσατkνkβpσpτ]=64[2(kp)(kp)+2(kp)(kp)+2(kp)(kp)2(kp)(kp)]
ここで、k2=k2=0, p2=p2=m2e, k+p=k+pから
kp=kp ,      kp=kp
なので、
Lμα(k,k)Lμα(p,p)=256(kp)(kp)=256(kp)2=256(Ekme)2Lμα(k,k)Rμα(p,p)=256(kp)(kp)=256(kp)2=256(Ekme)2
が得られる。したがって、(5)は
dσdEp=132π1E2kmeG2F(gνL)2256[(geL)2(Ekme)2L+(geR)2(Ekme)2]=8G2Fmeπ(gνL)2[(geL)2+(geR)2(EkEk)2]
となる。慣習的な(エネルギー遷移比率の)スケール変数
y=EpEk      (Ekme)
を用いると
dσ(νμe)dy=8G2FπmeEk(gνL)2[(geL)2+(geR)2(1y)2]
となり、散乱断面積は
dσ(νμe)=8G2FπmeEk(gνL)2[(geL)2+13(geR)2]
で与えられる。式(9)の(1y)2が式(10)から13因子が出てくるが、この項は入射ニュートリノと反対のヘリシティをもつ項に対応する。よって、反ニュートリノの散乱過程ˉνμeˉνμeの散乱断面積は同様の解析から
dσ(ˉνμe)=8G2FπmeEk(gνL)2[13(geL)2+(geR)2]
となることが類推できる。

これまでνμeの散乱を考えたが、同一世代のνeeの散乱過程ˉνeeˉνeeの場合は、荷電カレントと中性カレントの両方が寄与する。


この場合、散乱断面積は次のように計算できる。
dσ(νee)=8G2FπmeEk(gνL)2[(1+geL)2+13(geR)2]dσ(ˉνee)=8G2FπmeEk(gνL)2[13(1+geL)2+(geR)2]
(geL)2ではなく(1+geL)2となっているのは荷電カレントの効果であることに注意。


Wボソン崩壊過程

次にWμe+ˉνの崩壊過程を考える。


W±ボソンとフェルミ粒子の結合はnote05の式(4)で見たように荷電カレントW±と荷電カレントの相互作用で記述される。多世代モデルの場合クォーク・レプトンセクターでのW±と荷電カレントの相互作用はそれぞれnote06の式(7), (13)で表される。
LW=ig22W+μ[(ˉνe ˉνμ ˉντ)γμ(1γ5)(eντ)+(ˉu ˉc ˉt)γμ(1γ5)V(dsb)]+h.c.
ただし、VはCKM行列、レプトンセクターでは世代間の混合は無いとした。この相互作用項(13)を用いて様々な崩壊モードを計算できる。例えば、Wμ(k)e(p)+ˉν(q)を考えよう。行列要素は
M=ig22ˉes(p)γμ(1γ5)νs(q)ϵμ(k,λ)
ただし、ϵμ(k,λ)Wボソンの偏極ベクトル。フェルミオンのスピンについて和を取り、Wボソンの偏極の平均をとると
13λ,s,s|M|2=13g28λϵμ(k,λ)ϵν(k,λ)[s,sˉes(p)γμ(1γ5)νs(q)ˉνs(q)γν(1γ5)es(p)]
となる。ここで、
λ=0,±1ϵμ(k,λ)ϵν(k,λ)=δμν+kμkνM2Wsˉesα(p)esβ(p)=(p/+me)αβsνsα(q)ˉνsβ(q)=(q/)αβ
s,sˉes(p)γμ(1γ5)νs(q)ˉνs(q)γν(1γ5)es(p)=tr[(p/+me)γμ(1γ5)q/γν(1γ5)]=2tr[(p/+me)γμq/γν(1γ5)]=2pαqβtr[(γαγμγβγν(1γ5)]=8pαqβ(δαμδβν+δανδβμδαβδμνϵαμβν)=8[pμqν+pνqμδμν(pq)ϵαμβνpαqβ]
ただし、tr(奇数個のγ)=0, tr(γμγνγαγ5)=0を使った。(16)はμ,νについて対称であるがϵαμβνは添え字について完全反対称であるので、(16)の最後の項は(14)に寄与しない。よって、
13λ,s,s|M|2=g23[pμqν+pνqμδμν(pq)](δμν+kμkνM2W)=g23M2W[2(pk)(qk)M2W(pq)]
ここで、k2=M2W, p+q=kなのでme(MW)を無視すると
13λ,s,s|M|213g2M2W
を得る。

このとき、Wボソンの静止系 (Ek=MW,Ep=p2+m2e,Eq=|q|=q) で崩壊確率Γe(Weˉνe)
Γe(Weˉνe)=12MW(2π)4δ(4)(kpq)13λ,s,s|M|2d3p(2π)32Epd3q(2π)32Eq=12MWg23M2W1(2π)2δ(MWEpEq)d3p2Ep2Eq|p+q=0=g2MW64π16π2δ(MWp2+m2ep)p2dppp2+m2e
ここで、
f(p)=MWp2+m2epf(p)=pp2+m2e1δ(MWp2+m2ep)p2dppp2+m2e=1p+p2+m2ep2+m2epp2+m2e12   (p2m2e)
なので
Γe(Weˉνe)g2MW48π=GF2M3W6π
となる。ただし、GF2=g28M2Wを用いた。この崩壊確率はフェルミ定数GFに比例する。通常、弱い相互作用の崩壊確率はG2Fに比例するので、この過程はsemi-weakな崩壊と言える。

最後に3世代に拡張して崩壊確率を計算する。レプトンへの崩壊はこれまでと同様に
Γe(Weˉνe)=Γμ(Wμˉνμ)=Γτ(Wτˉντ)
となる。クォークへの崩壊は荷電カレントが
J+μ=ˉEiLγμNiL+VijˉDiLγμUjL
なので、終状態のクォーク対について和を取ること以外はΓeと同じである。例えば、
Γ(Wˉud)3|V11|2GF2M3W6π
となる。ここで、VijはCKM行列の要素、因子3は色の数(クォークがQCDのSU(3)群の3重項であること)を表す。2世代の場合は|Vij|=1となる。よって、Wからクォークへの崩壊確率は
Γ(Wall quarks)3allowed (i,j)|Vij|2 GF2M3W6π
と表せる。

Zボソン崩壊過程

Zボソンは冒頭で示した中性カレントと相互作用するので、Z \rightarrow \nu \bar{\nu} の崩壊確率も動力学的に全く同様に計算できる。
\Ga (Z \rightarrow \nu \bar{\nu}) \simeq \hf \frac{G_F}{\sqrt{2}} \frac{M_Z^3}{6\pi}  \simeq 0.18 ~ GeV
ここで、\hf因子はZボゾンと中性カレントとの相互作用
-i \frac{g}{\cos \th_W} Z_\mu \hf \bar{\nu}_L \ga_\mu \nu_L
W^-ボソンと荷電カレントとの相互作用
-i \frac{g}{\sqrt{2}} W_\mu^-  \bar{e}_L \ga_\mu \nu_L
の係数が異なることに起因する。つまり、g^\primeの効果であると考えられる。Z \rightarrow \nu \bar{\nu} は中性の崩壊過程なので精度よく観測できる。よって、観測値\Ga_{exp.} ( Z \rightarrow \nu \bar{\nu})を用いてニュートリノの数 N_\nu を推測できる。
\Ga_{exp.} ( Z \rightarrow \nu \bar{\nu})  = N_\nu \frac{G_F}{\sqrt{2}} \frac{M_Z^3}{12 \pi}  
実験値から N_\nu \simeq 3 が知られている。

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