2020年9月25日

最近のarXivから:2008.11261

前回の続きです。ナイアの最近の論文 "Matter-gravity coupling for fuzzy geometry and the Landau-Hall problem"

https://arxiv.org/abs/2008.11261

をフォローします。前回は Jackiw-Nair-Pi-Polychronakos 流体モデルの発展に関するものでしたが、今回はファジィ空間における物質場(ファジィ空間で表される物理系と結合する自由度)についての考察です。そのような物質場の有効理論はある種のチャーン・サイモンズ作用で与えられるというのが結論ですが、そのチャーン・サイモンズ項が一般にディラック指数密度で特徴づけられるとのことです。そこで、ディラック指数密度(Dirac index density)って何?ということになりますが、これはドルボー指数密度(Dolbeault index density)から複素構造を除いたもののようです。物質場の無い場合、ファジィ空間の背景場の揺らぎの有効理論はこのドルボー指数密度と関連したチャーン・サイモンズ項を用いて記述できることが、Karabali-Nair によって指摘されていました。

https://arxiv.org/abs/1604.00722

今回の論文は、同様な物理系において物質場と重力の相互作用がどのように現れるかを複素構造を持たないより一般的な場合にも拡張して調査したものであり、先行研究について知識が無いと読み進めるのに苦労すると思います。私も参考文献を読み返したりしているうちにいつの間にか一週間経ってしまいました。さすがにこれ以上放っておいても埒が明かないので強引にまとめてみます。

まず、なぜドルボー指数が出てくるかというと、論文(10頁)でさらっと触れていますが、ファジィ空間上での物理系における正則偏極(holomorphic polarization)条件から、系の状態数が反正則微分の核(カーネル)の次元に対応しているため、この状態数はドルボー作用素の指数定理からドルボー指数で表されるからです。具体的にファジィ$S^2$, $\cp^2$空間の場合についてドルボー指数密度が書き下されています。ただし、物理系の時空間は$\M_F \times \R$($\M_F$がファジイ空間、$\R$が時刻)で表される。これらのドルボー指数密度は$U(1)$ゲージ背景場$A$の場の強さ$F=dA$と背景場の曲率$R=d \om$($\om$はスピン接続)で記述され、これらに対応するチャーン・サイモンズ作用は$A$, $\om$の関数として与えられる。この時、問題となる物質場の動力学はチャーン・サイモンズ作用の$A$を物理系のラグランジアン密度分だけシフトさせることで得られるというのが、この論文の要旨である。ただし、論文では量子ホール系との関連からハミルトニアンを使ってポアンカレ・カルタン形式(Poincare-Cartan form)という用語が出てくるが、これは物理系のラグランジアン密度と解釈するほうがすっきりする。

さらに、ドルボー指数密度に替えて、ディラック指数密度を用いるとより一般化された背景場についても同様の議論を行うことができる。これらの結果から対象となる物理系において物質場のダイナミックスは$S_{eff} = \int \rho (A, \om) \L$という有効理論で記述できることが分かる。ただし、$\rho$は指数密度で与えられ、$\L$は系のラグランジアン密度である。$S_{eff}$の具体的な形から、状態数が大きいとき(つまり可換極限では)物質場の有効作用において$U(1)$ゲージ場による項($F$で表される項)が優勢であるが、その次に優勢な項として曲率に依存した項($R$で表される項)が存在することが分かる。このような曲率依存項の存在は暗黒物質の問題と関連して興味深い研究対象となっている。

今回の論文では重力理論と量子ホール系さらにその背後にある数学的トピック(非可換幾何学、幾何学的量子化、指数定理)などが織り交ざり、これまでのナイアの研究の豊かさとその奥深さを垣間見た気がします。導出されたチャーン・サイモンズ項は重力理論と有限温度の場の理論でもある thermofield dynamics との関連

https://arxiv.org/abs/hep-th/0605007

からも理解できるとのことです。同じ日に流体力学についてのプレプリントも投稿されているしどんだけ守備範囲が広いのかと浅学の私はクラクラしてきました。今後もできる範囲で先生の論文をフォローしたいと思います。

2020年9月17日

最近のarXivから:2008.11260

遅くなりましたが、先月末にナイアがプレプリントを連投していたのでフォローします。先ずは、"Topological Terms and Diffeomorphism Anomalies in Fluid Dynamics and Sigma Models"

https://arxiv.org/abs/2008.11260

から。毎度のことですがナイアの論文を読んでいると学生に戻った気分になり身が引き締まる思いです。今回の論文では、まずターゲット空間が$\cp^2$となる(2+1)-次元シグマ模型にトポロジカル項がある場合、エネルギー・運動量テンソルの交換関係にはそのトポロジカル項で表される異常項が現れること、そしてそれはターゲット空間の座標変換不変性に起因することが詳説されています。このシグマ模型との類推で、非アーベル型に拡張できる流体モデルにトポロジカル項を追加することを考えるというのがこの論文のメインテーマです。

ここで非アーベル型流体モデルというのは Jackiw-Nair-Pi-Polychronakos によって開発された手法です。私がナイアの学生だった頃にナイアがJackiw達と精力的に研究していたテーマで、私より一つ上の学生の研究課題でもありました。Brookhaven National Laboratory (BNL) でのクォーク・グルーオンプラズマの物理現象を解析することがモチベーションの一つだったと記憶しています。この手法では(流体)速度のクレブシュ表示 (Clebsch parametrization)をもちいて完全流体のラグランジアンを書き下すことにより理論の非アーベル化や量子化、また磁気ヘリシティや渦と言った物理量に関連する項についての考察が可能となります。非アーベル化について詳しくはこちらを参照ください。

さて、論文2008.11260ではこの(非アーベル化されていない)流体モデルにどのようなトポロジカル項が追加できるかを前出のシグマ模型との類推で考察したものです。具体的に3つのトポロジカル項が構成され、その一つは(2+1)次元の流体において知られている渦のダイナミクスを記述する有効理論を導くことが示されています。さらに(3+1)次元に拡張するとこのトポロジカル項が渦糸の流体力学を記述すること、また別のトポロジカル項をもちいると渦糸で表される結び目や絡み目の流体力学が記述できることが予想されています。ここでは、さらっと結果だけまとめましたが当然ながら実際にはそれぞれの場合について具体的にエネルギー・運動量テンソルの交換関係が計算されその物理的な意味が議論されています。

2020年9月10日

コロナ禍でILC誘致どころじゃない?!

これまで興味深くウォッチしてきた東北へのILC誘致についてですが、コロナ禍でオリンピックも延期という今の状況ではさすがに積極的に推進するのは難しくなったようです。最近の記事

https://digital.asahi.com/articles/ASN9964JLN99ULBJ005.html?pn=4
https://mainichi.jp/articles/20200908/k00/00m/040/171000c

によると、KEKが国内大型研究の基本構想「ロードマップ」へのILCの申請を取り下げたとのことです。これでILC計画は頓挫してしまうのでしょうか。早期実現を期待していたので残念ですが、これからは既に建設予算の下りた「ハイパーカミオカンデ」の方へ精力を集中していただければと思います。

2020年9月7日

Python2.7が入っているCentOS6.7にPython3.6インストール

表題の通りpython2.7が入っているCentOS6.7サーバにpython3.6をインストールしたので記録しておきます。

https://kaoru2012.blogspot.com/2019/09/centos67python36.html
http://tatsudoya.blog.fc2.com/blog-entry-271.html

を参考にして

# yum install -y https://centos6.iuscommunity.org/ius-release.rpm

としましたが、python3.4までしか入らなかったので調べたところ


に紹介されているように上記のURLが古かったようです。新しいURLを使って

# yum install -y https://repo.ius.io/ius-release-el6.rpm

とすると無事通りました。

# yum list available | grep ^python3.u*

で見てみると

python36.x86_64                            3.6.8-2.el6.ius        ius
python36-debug.x86_64                      3.6.8-2.el6.ius        ius
python36-devel.x86_64                      3.6.8-2.el6.ius        ius
python36-gunicorn.noarch                   19.8.1-2.el6.ius       ius
python36-idle.x86_64                       3.6.8-2.el6.ius        ius
python36-libs.x86_64                       3.6.8-2.el6.ius        ius
python36-lxml.x86_64                       4.2.5-4.el6.ius        ius
python36-mod_wsgi.x86_64                   4.6.2-2.el6.ius        ius
python36-pip.noarch                        9.0.1-2.el6.ius        ius
python36-redis.noarch                      2.10.6-2.el6.ius       ius
python36-setproctitle.x86_64               1.1.10-3.el6.ius       ius
python36-setuptools.noarch                 39.2.0-4.el6.ius       ius
python36-test.x86_64                       3.6.8-2.el6.ius        ius
python36-tkinter.x86_64                    3.6.8-2.el6.ius        ius

などとなっていてpython3.6がインストールできるようになりました。

# yum --enablerepo=ius install python36

でインストールして確認すると

# python36 --version
Python 3.6.8

無事入っていました。コマンドラインで python3.6 あるいは python36 と打つとこれまでのpython2.7ではなく、python3.6に入ることが出来ました。ただ、ほぼ必ず使う numpy モジュールが読み込まれないので色々調べたところ、


を参考にすると上手くいきました。python3.6に対応しているpipコマンドのパスが

# which pip3.6
/usr/bin/pip3.6

と判明したので

# ln -s /usr/bin/pip3.6 /usr/local/bin/pip

とシンボリックリンクをかけてバージョン確認。

# pip --version
pip 20.2.2 from /usr/local/lib/python2.7/site-packages/pip (python 2.7)
# pip3.6 --version
pip 9.0.1 from /usr/lib/python3.6/site-packages (python 3.6)

python2.7, 3.6 それぞれについてpipコマンドが通ったようなので

# pip3.6 install numpy

として無事numpyモジュールがインストールされました。その他のモジュールも必要に応じて適宜インストールできるはずです。

2020年9月6日

YAMAHA NMAX 納車から2週間

6月に原付二種の免許を取ることに決めて7月に免許取得。その後、7/25にバイク王府中店で中古車購入を決めました。ヤマハのNMAX(走行距離1029km)です。納車はお盆明けでOKとは伝えていたのですが、ようやく8/23にNMAXが我が家にやってきました。2016年モデルでリコール対象車でしたが納車前にネットで調べたところ修理済みだったので安心しました。納車に時間が掛かっていたのでちょっと不安でしたがその間、マニュアル詳しい解説サイトを見たりして予習できたのでよかったです。中古車ということで鍵が1つしかなかったため納車後すぐにスペアキーを作成しました。ヤフオクでVM885という型のブランクキーを購入してシャッターキーのスペアを作成後、合鍵屋さんで削ってもらいました。合鍵屋さんも見て直ぐヤマハのバイクと分かったようで、シャッターキーのスペアをどう作るのか気になったようです。私も初めてのことだったので少し手間取りましたが強力な小型磁石を複数配置してシャッターキーを作成するとは知りませんでした。ブランクキーにはTLHと刻印されていて合鍵屋さんはすぐにこれは東京のフキのブランドでTLHってなんだと思うとおっしゃるので門外漢の私は答えに窮していると"To Lock Home"だとのこと。その合鍵屋さんにはリアボックスのスペアキーも作ってもらいました。(バイクキーと合わせて1000円)これでスペアキーもできたのでとりあえず安心です。中古バイクにはスペアキーが無いことが多いそうなので皆さんどうしているのでしょうか?さすがに1つだけだと不安ですよね。

納車前にとりあえず胸部のプロテクターとバイクカバーを購入しましたが、今のところ使っていません。プロテクターは納車後の帰宅途中に一度使ったきりです。遠くにツーリングする機会があれば着用しようと思います。カバーはリアボックスがあるので大きめのものを購入しましたが取り外しが面倒だし、風があると風圧をもろに受けてしまうので外す必要ありとのことなので、新車でもないし自転車同様吹きっ晒しで置いておくことにしました。これまでは近場で乗っていましたが、今日の午前中に時間があったので以前から行ってみたかった大國魂神社までお参りに行きました。ナビが無いので事前にルートを調べて行きました。そういえば車にナビを付ける前はいつもルート確認してから出発していたことを思い出しました。車両にスマホホルダーを取り付けるか検討しましたが、当分は多摩地区でしか移動しないので付けずにいこうと思います。

都内20kmぐらいの移動なら125ccバイクは便利ですね。乗ってて楽しかったです。無事目的地到着。