Sq=∫[12Aaμ(−∂2)Aaμ+ˉca(−∂2)ca+gfabcAbμAcν∂μAaν +14g2fabcfapqAbμAcνApμAqν−gfabc∂μˉcaAcμcb]d4x
で与えられる。またフェルミ粒子との相互作用はnote13の式(5)より
Sint=∫ˉq(γ⋅D+m)q=∫[ˉq(γ⋅∂+m)q−igˉqγ⋅Aq]
と表せる。これよりグルーオン伝播関数のg2オーダーでの補正は下記の(1), (2), (3), (4)のファインマン図で与えられることが分かる。
ただし、(1),(2)はグルーオンのループ補正、(3)はゴースト場のループ補正、(4)はフェルミ粒子によるループ補正を表す。ここでは、例として(4)の1ループ量子補正の計算を行う。
e−Sint=1−Sint+(−ig)22!⟨ˉqA/⋅tq ˉqA/⋅tq⟩+⋯
なので、グルーオン伝播関数のg2オーダーの項は
I1loop=(−ig)22!∫Aaμ(x)⟨ˉq(x)taγμq(x)ˉq(y)taγνq(y)⟩Abν(y)d4xd4y=g22∫Aaμ(x)taijtbkltrγμ⟨qj(x)ˉqk(y)⟩γν⟨ql(y)ˉqi(x)⟩Abν(y)d4xd4y=g22∫Aaμ(x)Abν(y)tr(tatb) tr∫γμep(x−y)ip/+md4p(2π)4∫γνeq(y−x)iq/+md4q(2π)4 d4xd4y
ここで、
Aaμ(x)=∫d4(2π)4Aaμ(k)eikx
などの運動量表示Aaμ(k)を用いると
I1loop=g22∫tr(tatb)Aaμ(k)Abν(k′)δ(p−q+k)δ(q−p+k′) tr(γμ1ip/+mγν1iq/+m)d4p(2π)4d4q(2π)4d4kd4k′=g22∫tr(tatb)Aaμ(k)Abν(−k)tr(γμ1ip/+mγν1i(p/+k/)+m)d4k(2π)4d4p(2π)4
ここで一時的にフェルミ粒子の質量を無視すると
tr(γμ−ip/p2γν−i(p/+k/)(p+k)2)=−tr[γμp/γν(p/+k/)]p2(p+k)2=−4[pμ(p+k)ν+pν(p+k)μ−δμνp⋅(p+k)]p2(p+k)2
なので
I1loop=−2g2∫d4k(2π)4tr(tatb)Aaμ(k)Abν(−k) Iμν(k)
となる。ただし、
Iμν(k)=∫d4p(2π)4[pμ(p+k)ν+pν(p+k)μ−δμνp⋅(p+k)]p2(p+k)2=∫d4p(2π)4∫10dz[pμ(p+k)ν+pν(p+k)μ−δμνp⋅(p+k)][p2(1−z)+(p+k)2z]2=∫d4p(2π)4∫10dz[pμ(p+k)ν+pν(p+k)μ−δμνp⋅(p+k)][(p+kz)2+k2z(1−z)]2
ここで、ファインマン積分公式
1AB=∫10dz1[A(1−z)+Bz]2
を用いた。p→p−kzと変数変換すると
Iμν(k)=∫10dz∫d4p(2π)42pμpν−p2δμν+z(z−1)(2kμkν−k2δμν)[p2+k2z(1−z)]2
となる。分子の計算でpの次数が奇数の場合はpについての対称積分のため消去されることに注意。つぎに、d次元ユークリッド空間での積分
∫ddp(2π)d1(p2+m2)n=1(4π)d/2Γ(n−d2)Γ(n)(1m2)n−d2∫ddp(2π)dp2(p2+m2)n=1(4π)d/2d2Γ(n−d2−1)Γ(n)(1m2)n−d2−1
を使って式(5)を変形する。
ループ運動量pμが特定な成分を持つと仮定するとpμpν=1dp2δμνとおけるので
∫ddp(2π)d2pμpν−p2δμν[(p+kz)2+k2z(1−z)]2=(21d−1)δμν1(4π)d/2d2Γ(1−d2)Γ(2)(1k2z(1−z))1−d2=δμν1(4π)d/2Γ(1−d2)(k2z(1−z))1−d2
となる。ただし、Γ(z+1)=zΓ(z)を用いた。式(5)の分子にpが現れない項も同様に変形すると
Iμν(k)=∫10dz1(4π)d/2Γ(2−d2)(k2z(1−z))2−d2z(z−1)(2kμkν−2k2δμν)=2(4π)d/2∫10dzΓ(2−d2)(k2z(1−z))2−d2z(1−z)(k2δμν−kμkν)
と計算できる。ただし、Γ(2−d2)=(1−d2)Γ(1−d2)を用いた。
ここで、
ϵ=4−d≃0
とすると
Γ(2−d2)=Γ(ϵ2)=2ϵ−γE+O(ϵ)(1m2)2−d2=e−ϵ2logm2=1−ϵ2logm2+O(ϵ2)
ただし、γE≈0.5772 はオイラー・マスケローニ定数。式(7)に代入すると
Iμν(k)≃18π2∫10dz z(1−z)(2ϵ−γE+O(ϵ))(1−ϵ2logk2z(1−z)+O(ϵ2))(k2δμν−kμkν)≃18π216(k2δμν−kμkν)[2ϵ−γE−logk2−6∫10dzz(1−z)logz(1−z)]
したがって、式(4)から
I1loop=∫d4k(2π)412Aaμ(k)(k2δμν−kμkν)I(k2)Abν(−k)I(k2)=−g212π2tr(tatb)[2ϵ−γE−logk2−6∫10dzz(1−z)logz(1−z)]=−αs3πT(R)δab[2ϵ−γE−logk2−6∫10dzz(1−z)logz(1−z)]
となる。ただし、αs=g24π, tr(tatb)=T(R)δabである。式(8)を古典的なグルーオン伝播関数の導出
e−Sint≃1−12∫d4k(2π)4Aaμ(k)(k2δμν−kμkν)Abν(−k)
と比較すると1ループ補正の効果はゲージ群の生成子の因子を別にすると
(k2δμν−kμkν)⟶(k2δμν−kμkν)[1−I(k2)]
で与えられることが分かる。
ここで
I0=−αs3πT(R)[2ϵ−γE−6∫10dzz(1−z)logz(1−z)]
とする。g2は(4−ϵ)-次元で定義されているので、4次元の結合定数をg4とすると実際には
g2=(g24)(μ2)2−d2
とおける。式(8), (9)よりこれはk2→k2/μ2を意味する。以上の結果をまとめると(10)の変換は
(k2δμν−kμkν)⟶(k2δμν−kμkν)[1−I0−αs3πT(R)ln(k2μ2)]=(k2δμν−kμkν)(1−I0)[1−αs3πT(R)ln(k2μ2)+O(α2s)]
となる。ここで更に(1−I0)をAの繰り込み因子として吸収する。つまり、A=AR/√1−I0とすると
(k2δμν−kμkν)⟶(k2δμν−kμkν)[1−αs3πT(R)ln(k2μ2)]
を得る。よって、運動量空間でグルーオン伝播関数は1ループ補正を含めて
D(k2)=1k2[1−αs3πT(R)ln(k2μ2)]
と表せる。
ツリーレベルでのグルーオン伝播関数のファインマン図
より、1ループ補正の効果は「走る」結合定数を次のように再定義することで吸収できる。
αs(k2)=αs(μ2)1−αs(μ2)3πT(R)ln(k2μ2)
これまでの計算は冒頭で言及したようにフェルミ粒子のループ補正であった。グルーオンとゴースト場の1ループ補正も含めると式(12)は
αs(k2)=αs(μ2)1+αs(μ2)4π[113C2(G)−43NfT(R)]ln(k2μ2)
となる(ことが知られている)。ただし、Nfはフェルミ粒子のフレーバー数、C2(G)はゲージ群の随伴表現に対する2次のカシミール演算子を表す。G=SU(N)の場合、構造定数fabcを用いて、
fabcfbcd=C2(G)δab=Nδab
となる。QCDのゲージ群はSU(3)なので
C2(G)=3 , T(R)=12
これを式(13)に代入すると、Nf<332のときk2→∞の極限でαs(k2)→0となることが分かる。つまり、QCDは高エネルギーでは自由理論になる傾向があり、漸近的自由性と呼ばれる。(これが基本的にGross-Wilczek, Politzerによる結果であり、2004年ノーベル物理学賞の受賞理由である。)一方、グルーオンの自己相互作用がないQED(量子電磁気学)ではk2→∞の極限でαs(k2)→∞となる。
式(13)は次のように変形できる。
αs(k2)=12π12παs(μ2)+[11C2(G)−4NfT(R)](lnk2−lnμ2)
ここで
12παs(μ2)−[11C2(G)−4NfT(R)]lnμ2=−[11C2(G)−4NfT(R)]lnΛ2
と定義すると式(14)は
αs(k2)=12π[11C2(G)−4NfT(R)]ln(k2Λ2QCD)
となる。結合定数αsはΛQCDによって決まる。よって、次元のない定数αsが理論のエネルギースケールを設定する(次元を持つ)パラメータΛQCDと交換されることが分かる。これを次元の転化(dimensional transmutation)と呼ぶ。ΛQCDの値はQCDだけから決まるのではなく、電弱相互作用などのエネルギースケールを破る相互作用にも依存する。
最後に、低エネルギー極限k2→0ではαs(k2)は増大する。この時、理論は強結合状態となり1ループの計算は信頼できないものとなる。一般にこのような漸近状態のスペクトルを理論的に理解するのはとても困難である。
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