2023-07-05

Mathematical Review 115: IKKT行列模型、最近の進展

私が大学院に入ったのは1999年でしたが、その頃の素粒子論は弦理論全盛でその中でも特に全てのタイプの超弦理論を統一するという(Witten先生が発見し命名した)${\cal M}$理論が注目されていました。${\cal M}$理論がもつ時空の非可換性との関連で${\cal M}$理論が行列模型で表されるというBFSS行列模型が提唱され、またほぼ同時期にあるタイプ(Type IIBと呼ばれる)超弦理論が行列模型として記述できるというIKKT行列模型が提唱されました。当然ながらこれらについて多くの論文が出ました。博士課程の頃、私もこの流れに乗らないとポスドクが見つからないだろうという思いもあり、これらの行列模型について論文を書きました。20年ぐらい昔の話です。

結局、ポスドクは見つからずその後これらの行列模型についてあまりフォローしていなかったのですが、先日、AMS の Mathematical Reviews からIKKT模型についての論文のレビューを依頼されたので少し読んでみました。昔のことを思い出しながら、ざっと見た感じで表面的にレビューしただけですが、とりあえずこちらを寄稿しました。最近、偶然にも長谷部さんからIKKT行列模型についての関連論文を教えてもらっていたので、こちらについても読んでみました。IKKT行列模型から高次元スピンのゲージ理論やゲージ場の散乱振幅を導くという話です。何故そのようなことを考えるのか今の私には良くわかりませんが、20年にわたり同じトピックを深めていくSteinacker氏の研究スタイルには感服します。今後もシミュレーションではない解析的な手法でIKKT行列模型の研究を続けて行ってもらいたいと思います。

0 件のコメント: