2018-10-30

弦理論についてのコメント:ナイアの教科書から

ナイアの最近の教科書は学部生に行った標準模型の講義をまとめたものです。


内容については場の理論の教科書と重複するものばかりだし、日本から注文すると高いので買わずにいましたがやはり何が書いてあるのか気になって半年ほど前に購入しました。その後、ざっと目を通しただけで放っておいたのですが先日また手に取ってみると私が博士課程の時に知りたかった弦理論についてのナイアのコメントが最後に載っていたので以下に(無断になりますが)一部翻訳します。私が博士課程の時は弦理論真っ盛りでブレイン動力学やAdS/CFT対応などのトッピックが精力的に研究されていて私も直接論文を読んでなんとか理解に努めましたが、指導教官のナイアは弦理論とは距離をおいた研究を行っていたので先生が弦理論についてどう考えているか興味を持っていました。何度か直接質問することもありましたが、当時の流行のトッピックよりもChern-Simons理論や2次元共形場理論のWess-Zumino-Witten模型について詳しく教えてもらうことが多かった気がします。ここで紹介するナイアのコメントは体験的にも貴重なものなので日本語にして残しておくことにしました。式番号などは読みやすいように変更してあります。内容は標準的なものですが、弦理論やその他の量子重力理論についての概略を知りたい学部生や大学院生の参考になればと思います。翻訳部分は原文の292-297ページに対応します。原文が気になる方は上記の教科書をぜひ直接手に取ってみてください。

2018-10-25

数式表示のモバイル対応

MathJaxによる数式表示がモバイル対応されていなかったので修正しました。このブログではgoogleのBloggerサービスを使用しているのでモバイルのテーマを「カスタム」に変更しました。するとPCで使っているレイアウトをjavascriptも含めてモバイル向けに変更してくれます。ところが、PCではタイトルを白抜き文字(正確にはアイボリーホワイト)で書いていたため、モバイルでは読めなくなりました。初めはどうすればいいのかよく分かりませんでしたが、

http://oboe-programming.blogspot.com/2013/12/blogger_21.html

の記述を参考にしてヘッダー部分のCSSに

.mobile .header h1{
  color: #000000;
}
.mobile .header h1 a {
  color: #000000;
}

2018-10-23

庭木の剪定5:フェイジョア、ツツジほか

庭木としてあとフェイジョアとツツジがあります。フェイジョアは葉っぱが奇麗な木です。とくに新葉が日光に当たると柔らかく光るようで感じのいい様子になります。ただ、成長が早くあまりスペースのないところに植えると剪定が難しくなります。以前は伸び放題にしていたのですが、他の木ともぶつかり収拾がつかなくなったため80cmほどの高さでちょん切りましたが切り口付近から細い枝がすくすく育っています。

2018-10-22

庭木の剪定4:金木犀

ついでにキンモクセイの剪定も行いました。


ご覧のように我が家のキンモクセイは隣の家との境ぎりぎりに植えてあるためどうしてもスリムな形にせざるを得ません。しかしながら、公園などで見かけるキンモクセイは根元のほうから広がってキノコ状にカットされている場合がほとんどです。枝付きが良く密度の高い木なので自然とそういう剪定になるのでしょうが、我が家の場合はそういう訳にはいきません。中古の家なので詳しいことは分かりませんが新築建売の際にデベロッパーの方はその辺のことを考慮しなかったのか不思議です。こんなわずかなスペースでどうやってキンモクセイを育てればいいのでしょう!? 引っ越してきた頃にはすでに隣の家の敷地にまで広がっていたので、とにかく迷惑にならないように縦切りにしました。それでも南に植わっているのですくすくと育ち気付くとまた伸びていることがあります。もう少し低くして剪定しやすい形にする必要があるかもしれません。

庭木の剪定3:シマトネリコ

以前キジバトを追い払ったときに上のほうをすっきりさせたシマトネリコも剪定しました。車の屋根に当たるぐらい枝垂れてきた枝を落としました。また両脇に広がった枝も落としてスッキリさせました。剪定後の様子は以下の通り。


庭木の剪定2:ハナミズキ

ヒイラギの次はハナミズキの剪定です。先日赤い実がなり鳥たちがついばんでいました。小さなつぼみがあるため剪定するのは勿体なかったですが、出入りの邪魔になることもあるので切ることにしました。我が家のハナミズキはいつも春になるとピンク色の花を咲かせます。白い花を咲かせる木もあり、近くの街路樹によく見かけます。数年前、街路樹や公園の木がなんなのか興味を持ち、


庭木の剪定1:ヒイラギモクセイ

昨日は秋晴れのいい天気だったので久しぶりに庭木の剪定をしました。庭木と言っても庭というより玄関前のスペースに植わっている木です。今の家に引っ越すまで特に植木を剪定する機会がなかったので、引っ越して一年ぐらいは自然に任せて放っていました。ところが、玄関周りに生い茂ったヒイラギ(正しくはヒイラギモクセイ)の木に虫が大量発生し新葉がぼろぼろに食われてしまったので見た目も良くないし、木がかわいそうだったので定期的に剪定することにしました。虫の名前はヘリグロテントウノミハムシといって、検索すれば画像がすぐ出てきます。見た目はテントウムシのようですが黒色で赤い斑点が二つあります。初めは変わったテントウムシだなあなんて呑気に考えていましたが、どうやら近所のヒイラギも同じ被害にあっているようで私も本格的に対応しないと、我が家が繁殖地になってさらに被害を拡大させかねないと危機感を持つようになりました。ヒイラギは垣根として用いられることが多いため密度が濃いのですが、風通しを良くしないと被害にあいやすいとのことだったので、先ずは被害が目立つ外回りの枝と内側に伸びている枝を落としました。被害にあった葉を落としていくとほとんど枯れ枝のようになりそうだったため、若い葉や被害が半分程度の葉っぱは残しておきました。また、調べによると落ち葉の中で越冬するようなので根元の落ち葉をすべて除去しました。それでも翌年の4月ごろになると柔らかい新葉に卵が植えつけられ黄色い幼虫が大量発生したので当時は毎日のように目視できる限り手で幼虫を除去しました。(心を鬼にして押しつぶしました。)成虫になると手で潰そうとしてもポンと飛び跳ねて逃げてしまうので幼虫のうちに除去する方が断然効率がいいです。農薬を使いたくなかったので手動で除去するしかありませんでした。例年、新芽がでて若い葉っぱが生えてくるころに卵が植えつけられるのでその時期(4月初旬)は特に注意して葉っぱの裏を見るようにしています。2年ほどそのように対応しているとようやく被害もおさまって今ではあまりカリカリせずに穏やかに過ごしていますが、以前は夢でヘリグロテントウノミハムシが出てくるほどでした。今年も被害にあいましたが許容範囲なのでこれからはうまく共生できればと考えています。

2018-10-21

ソーラーパネルのバッテリー充電

今年の夏に設置した簡易ソーラーパネルですが、最近日照時間が短くなり太陽も低くなってきたため発電量が少なくなってきました。その為か気付くとチャージコントローラーのディスプレイが表示されなくなっていました。配線を接続し直しても同じだったのでバッテリーをテスターで測るとなんとゼロVになっていました。そこで、とにかくバッテリーを復活させなければということでアマゾンで12Vカーバッテリー用の充電器(1280円)を購入しました。

早速、コンセントにつないで充電を開始したのですが説明書を読むとバッテリーの残量が6.8V以下では充電できませんとのことで、充電中のランプが点灯せず困りました。これはバッテリーを買い替えないといけないのか、バッテリーの処分はどうするのだろうなどと不安になりましたが、とりあえず充電器をそのままコンセントにつないだままにしておきました。半日ほどすると充電中のランプが点灯し、チャージコントローラーの表示も薄くではあるけれど現れてきました。バッテリーの値が8.6Vになっていたのでまさかと思いテスターで測ってみるとまだゼロ表示でした。先日の台風の時テスターを箱ごと屋外に置いていたので、テスターが壊れていたようです!2日ほどするとバッテリーが12.8Vにまで充電されチャージコントローラーも以前のように作動し始めました。

チャージコントローラーはそれ自体に電力がかかるので発電量が下がり、バッテリーに蓄電できなくなるとバッテリーの残量がいつのまにか下がってしまい表示されなくなるようです。マニュアルを見ると確かにそう書いてありました。


見えづらいですが中段の Load icon off の場合は Battery low が原因でリチャージする必要がありました。あるいは下段の Power off の場合は Battery too low となっています。せっかくソーラーパネルで発電しているのにコンセントで充電し直さないとシステムが回復しないというのはなにか本末転倒のような気もしますが、そうしないと動かないので仕方ありません。おそらく充電前のバッテリー残量は6.8V以下だけど何とか充電器が作動できる分は残っていたのでしょう。今回は無事リチャージできましたがもし出来なかったらせっかくのシステムが無駄になってしまうところでした。夏の間は問題なく動いていたので安心しきっていましたが、冬になるとこのような問題が起きるのですね。これからは天候不順の際はこまめにチャージコントローラーとバッテリー残量をチェックしてすぐにバッテリーを回復できるように対応したいと思います。

2018-10-19

今年の将門ハーフは出場断念

毎年健康診断代わりに7年連続で出場していた坂東市いわい将門ハーフマラソン大会ですが、今年は家族の集まりがあるため出場を取りやめることにしました。エントリー代がもったいないけど家族優先です(当然です、ハイ)。私は中学生の時は陸上部でしたが短距離が専門で長距離はいつも横っ腹が痛くなるので嫌いでした。高校で野球部の時も合宿などではなぜか長距離を延々と走らされた記憶がありますがその頃はタイムは気にせずマイペースで走ることを意識していました。大学・大学院のころもたまに気分転換に家の周りをジョギング程度で走っていました。子供が生まれてからはあまり走ることは無かったのですが、7年前に保育園のパパ友たちに誘われて市民駅伝に出ることになったためその練習を兼ねて(なぜか)ハーフマラソンを走ろうということでわざわざ都内から茨城県の坂東市にまで遠征しました。駅伝の区間は3キロ程度なので21キロも走る準備などしていなかったので初めて走った時は「撃沈」しました。初めの10キロぐらいは順調に周りについて行ったのですが、12キロあたりから脚が急に動かなくなりそれからは罰ゲームのようなレースでした。17キロあたりから歩く人がちらほらいたので、「歩いていいんだ~」と甘い誘いに乗っかるように給水時に少し歩くとその後走り出すのが大変でした。最後までホントしんどかったです。結局、初めてのハーフマラソンのタイムは 2:24:35 でした。

今思い出したのですがアメリカに居た頃、たしか2001年に一度ボストンマラソンを走りました。あの爆破事件があったのでいまでは無理でしょうが、当時はエントリーしなくても勝手に自分でゼッケンのような名札を付けて走ってもOKだったので、その時も誘われるままにぶっつけで走りました。何とか完走できたもののあれはハーフマラソンよりきつかったです。まだ若かったので初めの20キロぐらいは地元のランナーズクラブのTシャツを着た人について順調に走っていたのですが、途中から付いていけなくなり30キロあたりで足がつりそうになり、35キロぐらいの市街地の坂道でとうとうふくらはぎがつってしまいそれ以降はほぼ歩きながらで何とかゴールしました。タイムは5時間半ぐらいでした。その日のうちにNYにバスで帰りましたが地下鉄の階段がつらかったです。翌日右足親指の爪がはがれてしまいました。

2018-10-14

科研費奨励研究への応募履歴あるいは応募して不採択になり続ける実例3:平成27年度から平成29年度

前回のエントリー「科研費奨励研究への応募履歴あるいは応募して不採択になり続ける実例2:平成24年度から平成26年度」の続きで、このシリーズの最終回です。直前の3年間の審査結果から評価が年々下がっていることは分かりましたが、奨励研究としての適切性や研究経費の妥当性の審査基準が掴めないままでした。そもそも審査委員の方々の専門分野と私の専門分野(素粒子理論、場の量子論)が一致しているのかよく分からないし、自己完結的な研究計画書を読まされる審査委員の方々も大変だろうなと考えるに至りました。この頃にはすでに採択されることはほぼ諦めて、奨励研究への応募の機会を毎年恒例の研究計画書作成のためのいい機会だととらえてやりたいことを好き勝手に書くことを意識しました。前年度(平成26年度)の手抜き申請の反省を込めて平成27年度はこれまでの論文の数学的基礎づけを行うことにしました。計画書の文体もエッセイ風に変えてみましたが、あまり効果なかったようです。採択目指す人にとっては常識かもしれませんがエッセイ風の文体は避けた方が無難でしょう。

2018-10-13

科研費奨励研究への応募履歴あるいは応募して不採択になり続ける実例2:平成24年度から平成26年度

前回のエントリー「科研費奨励研究への応募履歴あるいは応募して不採択になり続ける実例1:平成21年度から平成23年度」の続きです。久しぶりに昔に書いた研究計画書を読んでみると懐かしいですね。そう言えばこんなこと考えていたな、少しは進歩したかななど古いアルバムを開くような気分です。さて、早速今回の本題に入って平成24年度から平成26年度の奨励研究への応募書類の一部(研究目的・研究計画の項目)を紹介します。繰り返しになりますが、不採択になったものですので反面教師として参考にしてください。

科研費奨励研究への応募履歴あるいは応募して不採択になり続ける実例1:平成21年度から平成23年度

さてタイトルからして自虐的ですが皆様の反面教師となればと思いご報告します。科研費の奨励研究とは研究機関に所属していない人でも申請できる研究費です。民間就職してすぐのころには研究会やセミナーにもお邪魔することがあったのですが、その時に科研費に「奨励研究」というのがあって、企業からでも応募できるので出してみるといいですよと殊勝にも励ましてくれる方々がいらしたので、2008年(平成21年度の申請)から奨励研究に応募しています。しかしながら、恥ずかしながら、まだ一度も採用に至っていません!これから企業や小中高校に所属しながら奨励研究に応募しようという研究熱心な方々への励みにも何にもならず、返ってディスカレッジするようで恐縮ですが、このエントリーでは備忘録としてこれまでの申請内容の一部を紹介します。賢明なる皆様はどうか私と同じ轍を踏まないよう参考にしてください。

去年から奨励研究の応募は電子化されました。それまでは、研究計画書(ワード)と応募カード(エクセル)を用意して、研究計画書については正本とコピーの2部をそれぞれ両面印刷して糊付けして、特定記録郵便で郵送していました。受付期間も例年12月の第1週に指定されていたので、いつも11月下旬に準備を始めてやっつけ仕事のようにササッと提出していました。去年も同様に11月末に準備を始めようと思ったところ、なんと電子申請の手続き期限が過ぎていたのでせっかく9年連続で申請し続けていた(不採択)記録が途絶えてしまいました。そこで今年は早めにサイトをチェックして先日申請しました。ファイルを印刷する必要もなく、糊付けしたり郵便局に行かずに好きな時に送信できるのでだいぶ手間が省けました。もっと早くから電子化して欲しかったくらいです。

2018-10-11

自宅でロープ登り、テニス再開

左肩の腱板損傷・骨挫傷のためドクターストップがかかり一ヵ月ほど安静にしていましたが、肩を動かしたときのピキッという感じの痛みがだいぶ取れてきたのでテニスを再開しました。これまで定期的に週2回ぐらいはテニスをしていたのでこれほど休んだのは久しぶりです。体重も増えてきたようなのでこれからは当分無理をせず健康維持を目的としたエンジョイ・テニスに徹しようと思います!?

さて、以前自己分析したように今回のケガは懸垂のやり過ぎが間接的な原因であったので最近はフルレンジで懸垂することはやめ肘を曲げた状態から3,4回程度軽く動かすだけにしています。また話題になったNHKの「みんなで筋肉体操」という番組に影響されて少し頑張りましたが最近は続いていません。腹筋やスクワットなどストイックに続けられるといいのですが、昔からいつも途中でつまらなくなりやめてしまう癖があります。とくに腹筋は大事なのはわかっているのですが、続かないですね。

2018-10-07

グラスマン多様体上の超幾何関数3: ガウスの超幾何関数への還元

前回のエントリー「グラスマン多様体上の超幾何関数2: Gr(2,n) の場合」の続きで、このシリーズの最終回です。今回は $Gr( 2, 4)$ 上の超幾何関数が通常のガウス超幾何関数になることを丁寧に復習します。とくに青本流の手法による超幾何関数の積分表示から、超幾何関数の満たす1階のFuchs型微分方程式を系統的に導出しました。これらの1階微分方程式はすべて通常の2階のガウス超幾何微分方程式に変形できます。このような1階微分方程式の一部はすでに文献で知られていましたが、今回は新しい結果も含めてツイスト・コホモロジー、ホモロジーを用いて系統的に求められることを示しました。これらの1階微分方程式には $\cp^1$ 上の正則関数がもつ広域共形対称性である $SL(2, \C)$対称性が自然に現れることが見て取れますが、実際の算出においてはツイスト・コホモロジーの同値性(あるいはアーベル型ゲージ不変性)を考慮する必要があり、これらの微分方程式を具体的に求めるのは自明ではありません。詳しくは下記の 3.4, 3.5 節を参照してください。今回のエントリーでは式が大量(合計80個)でてくるので読み進めるのは大変かもしれませんが、話の流れは上記の通りなので結果だけ知りたい人は細部にこだわらずに読み進めてください。なお、引用される式番号 (1-xx) は一つ目のエントリー、(2-xx) は二つ目のエントリーにでてくる式番号に対応しているので、気になる人はそちらのページも参照してください。それでは、どうぞ!

2018-10-05

グラスマン多様体上の超幾何関数2: Gr(2,n) の場合

前回のエントリー「グラスマン多様体上の超幾何関数1: 青本流の一般化」の続きです。前回は青本先生の一般化された超幾何関数のレビューを行いました。結果の羅列にならないよう、丁寧に解説したつもりですがいかがでしたでしょうか。ナイーブに考えると、多粒子系の物理現象を解析するには多変数関数を用いるのが自然なので、今後は大学の授業でも多変数関数の講義が増えるのではないでしょうか。グラスマン多様体上の超幾何関数の場合は、定義から(部分)線形空間が保証されているので量子論へもスムーズに拡張できるので物理への応用には適しているはずです。一般の多変数関数論では、最近



などの素晴らしい教科書が刊行されているので興味ある人は手に取ってみてください。ただ、単に私の理解・勉強不足なだけかもしれませんが、物理への応用という点からは抽象的すぎる印象です。

前回のエントリーで見たように一般化された超幾何関数 $F (Z)$ では定義から $F (Z)$ の満たす微分方程式が決まっているので、もし $F (Z)$ を汎関数とみなして量子系に拡張できれば、系の物理量は $F (Z)$ の積分表示から求まると解釈できます。この考えを敷衍すると多粒子系の物理ではラグランジアンやハミルトニアンから始めるのではなく、物理量を導く$S$-行列汎関数を $F (Z)$ から直接求めることができるのではないでしょうか。粒子間の相互作用はすべて $F (Z)$ を定義する微分方程式
\begin{eqnarray}
    \sum_{j = 0}^{n} z_{ij} \frac{\d F}{\d z_{pj}} &=& - \del_{ip} F
    ~~~ ( 0 \le i, p \le k )
    \tag{1-2} \\
    \sum_{i = 0}^{k} z_{ij} \frac{\d F}{\d z_{ij}} &=&  \al_{j} F
    ~~~ ( 0 \le j \le n )
    \tag{1-3} \\
    \frac{\d^2 F}{\d z_{ip}\d z_{jq}} &=& \frac{\d^2 F}{\d z_{iq}\d z_{jp}}
    ~~~ ( 0 \le i, j \le k \,  ; ~ 0 \le p, q \le n  )
    \tag{1-4}
\end{eqnarray}
に支配されるという立場です。私が提唱しているツイスター空間上のホロノミー形式というのはこの考えを推し進めたものです。

前回のエントリーでは(ツイスト)コホモロジーとか聞きなれない用語が出てきましたが、物理の言葉ではこれは基本的にアーベル型ゲージ理論と同じことです。コホモロジー類を議論するときに出てきた共変微分
\[
    \nabla  \, = \, d  + d \log \Phi \wedge \, = \,
    d + \sum_{j = 0}^{n} \al_j \frac{ d l_j}{l_j} \wedge
   \tag{1-14}
\]
がこのコホモロジーのエッセンスですがこれはゲージ理論の見方ではゲージポテンシャルとして $d \log \Phi = \frac{d \Phi}{\Phi}$ を選ぶことに対応します。最後に日本語への翻訳にあたり用語は青木・喜多先生の教科書に従いました。そのため英語の twisted は全て「ツイスト」と略されているので(とくに英語で話すときは)注意してください。それでは本題に入ります。

2018-10-04

グラスマン多様体上の超幾何関数1: 青本流の一般化

私のようなフリーの研究者でも論文を発表していると、所謂ハゲタカジャーナルから雑誌に投稿しないかとか本を書かないかとかの怪しいお誘いがあるのですが、それらは全て迷惑メールとして選別されています。ところが先日迷惑フィルターに掛からない勧誘があったのでおかしいなと思って調べてみると今年の夏に日本とインドの2国間交流事業として共同研究計画を図りませんかというお誘いがあったインド人の数学者からのものでした。その際、私は国の定める研究機関に所属していないので資格がないと丁寧にお断りしたのですが、今回は特殊関数と微分方程式の進展についての本を編集するので1章寄稿してくれとの話でした。分野が違うのでなぜ私に話しが来るのか不思議でしたが、以前に書いた論文でグラスマン多様体上の超幾何関数についてレビューしたのでそのあたりのことをまとめればすぐに書けるはずだと考え快諾しました。この論文はグラスマン多様体上の関数の積分として散乱振幅をとらえるという最近話題になった研究を理解することが動機でしたが、そのためにはまずグラスマン多様体上の関数、特に以前から気になっていたがよく分かっていなかったグラスマン多様体上の超幾何関数


について勉強する必要があったのでまとめのノートを作成しました。この超幾何関数は青本の一般化された超幾何関数と呼ばれています。このときとても参考になった教科書が原岡先生の