夏休み気分で好き勝手にブログ書いていましたが、そろそろ研究再開しようということで、今年中にライフワークのツイスター空間上のホロノミー形式の研究を進めたいと考えています。具体的には、第7弾の論文の修正に取り組む予定です。と申しましても私以外の人にはチンプンカンプンでしょうから少しだけ背景を説明して、皆さんに興味を持ってもらえればと思います。私は素粒子理論の研究者志望でアメリカの大学院でPh.D.を取得しましたが、取得する前年も合わせると200校近くポスドクと言われる研究職に願書を出しましたがどこからも声がかからず、子供も生まれるというので日本に帰って民間就職することにしました。研究を続けながら働くつもりでしたがフルタイムの仕事では難しかったため、一年足らずで辞めて、パートタイムで働きながら研究をする今のスタイルを続けています。最近は色々と言い訳して研究がおろそかになっていますが、転職した当初は論文書いて大学に戻るぞ!と意気込んでいました。当時、気になっていたのがグルーオンの散乱振幅を導出する$S$-行列汎関数は一体何なのだろうということでした。場の理論の枠組みでは相互作用項が決まれば$S$-行列は決まるので、グルーオンつまり強い相互作用を媒介する素粒子(電磁相互作用の光子に当たるもの)のダイナミクスを多粒子系として理解したいという目標を立てました。そのヒントとなるのが私の指導教官だったナイアが何年も前に発表していた論文です。その中で彼はヘリシティーの配位が特定の場合グルーオンの散乱振幅はツイスター空間上で定義されたWZW模型と呼ばれる共形場理論の相関関数として理解できることを示しました。詳しくはナイア本人による解説
https://arxiv.org/abs/hep-th/0312171
です。この論文の後、ツイスター空間の変数を用いた散乱振幅の計算方法に飛躍的な進歩がみられました。特に
https://physicstoday.scitation.org/doi/10.1063/1.1825256
があるのでそちらを参照してください。(専門家向けです。)この散乱振幅はヘリシティーが最大限にそろった非自明な振幅という意味からMHV振幅 (Maximally Helicity Violating amplitudes) と呼ばれています。2003年の暮れにウィッテンがこのアイデアをさらに発展させ、MHV型以外の散乱振幅についてもトポロジカルな弦理論と関連付けて理解できることを示しました。その論文が
https://arxiv.org/abs/hep-th/0312171
です。この論文の後、ツイスター空間の変数を用いた散乱振幅の計算方法に飛躍的な進歩がみられました。特に
- non-MHV振幅をMHV頂点作用素の組み合わせで理解するMHV則(CSW則とも呼ばれる)と
- MHV振幅の複素解析性から得られる再帰的な公式(BCFW公式とも呼ばれる)を用いてnon-MHV振幅を求める手法