2018年8月14日

最近読んだ本:物理、バレエ

前回の続きです。最近の物理のトピックで外せないのは、やはりノーベル賞即決の重力波検出です。



私が学部生だった頃も天文台のTAMA300プロジェクトなどで精力的に重力波の検出を目指していましたが、当時は重力波の検出には何年かかるかわからない、もしかしたら自分たちが生きているうちはムリかもというような話を聞いていました。まさかあれから20年後に実際に検出、観測されるとは、実験家の方々の熱意と粘りに頭が下がります。私は性格的にも能力的にも実験には向いていなかったので尊敬の念しかありません。ノーベル賞が即断されたのは当然のことでしょう。重力波検出の原理は干渉計を使うシンプルなものですが、本でも紹介されているように重力波を検出できるぐらい観測の精度を上げるのが信じられないほど大変だったようです。以前、修士課程で重力波検出の研究室に行った関谷淳君から話しを聞いていましたが、このノイズ処理向上が一番の課題だったようです。私たちの学年では沼田健司君がとても優秀でこの分野で頑張っていると聞いていました。いまはNASAに居るそうです、頑張ってください!これからの天文・宇宙分野は重力波天文学の時代ですよね。ブラックホールの衝突だけでなく中性子星衝突の観測結果も立て続けに報告されています。これからの成果にも期待しています。

上記の2冊『重力波とは何か アインシュタインが奏でる宇宙からのメロディー』と『重力波は歌う――アインシュタイン最後の宿題に挑んだ科学者たち』を知ったのは大栗先生のブログエントリーからでした。大栗先生は長年、研究・アウトリーチ活動と素粒子理論のリーダーとして超人的なご活躍をされています。素晴らしいの一言です。こんな日本人今までにいたでしょうか!?若い人はみんな大栗先生を目標に頑張りましょう!(だからと言ってみんなが超弦理論をやればいいとは思いませんが。)

『素粒子論のランドスケープ』シリーズ



は大栗先生が一般向けに様々な媒体で発表された記事をまとめたものでお買い得ですよ。先生の文章は学者の理想形じゃないでしょうか。豊富な専門知識に裏打ちされた分かりやすい文章、論理的であるけど無機的ではなく深い文学的素養の感じられる味わいのある表現、研究の最前線に長年居るからこそ得られる知見を交えての興味深い体験談など読んでて自分も頭良くなった気分になります。いま何を読むか迷っている方は大栗先生の本どれでもいいので是非手に取ってみてください。

また宣伝文のようになってしまいましたが、大栗博司先生の本は日本人の共有財産なのでこれからも読み継がれて欲しいです。『素粒子論のランドスケープ2』には三浦雅士さんを交えての座談会の内容も収録されていますが、三浦雅士さんと言えば私にとっては『バレエ入門』です。娘がバレエ教室に通い始めて発表会の練習などを見守るようになってからそれまで全然知らなかったバレエの世界に触れましましたが、何かで勉強しなければと手に取ったのがこの本でした。


バレエの奥深さを知ることができ良かったです。その後、バレエ関係で読んだものでは『闘うバレエ』


が印象深かったです。

最後に物理の話に戻って、お薦めしたいのが風間先生の『宇宙の統一理論を求めて――物理はいかに考えられたか 』


です。第一級の研究者による素粒子理論、超弦理論の解説書です。この世界の相互作用を統一的に理解しようとしてきた科学者、理論物理学者の成果を歴史を紐解きながら分かりやすく解説しています。以前に著された内容に最近のトピックを追加してまとめられており読みごたえがあります。私は学部時代駒場で風間先生の相対論の講義を聴きましたが、あの時の分かり易い解説を思い出しました。大学院時代に駒場でセミナーをさせてもらった際には鋭い質問をしてもらい、第一線の研究者の凄みを感じました。セミナーの後先生からまたどこかで会いましょうと声をかけてもらったのはよい思い出です。(不肖な私はその後民間就職したため、先生との対話はそれっきりのままです。)

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