前回のエントリー「
グラスマン多様体上の超幾何関数1: 青本流の一般化」の続きです。前回は青本先生の一般化された超幾何関数のレビューを行いました。結果の羅列にならないよう、丁寧に解説したつもりですがいかがでしたでしょうか。ナイーブに考えると、多粒子系の物理現象を解析するには多変数関数を用いるのが自然なので、今後は大学の授業でも多変数関数の講義が増えるのではないでしょうか。グラスマン多様体上の超幾何関数の場合は、定義から(部分)線形空間が保証されているので量子論へもスムーズに拡張できるので物理への応用には適しているはずです。一般の多変数関数論では、最近
などの素晴らしい教科書が刊行されているので興味ある人は手に取ってみてください。ただ、単に私の理解・勉強不足なだけかもしれませんが、物理への応用という点からは抽象的すぎる印象です。
前回のエントリーで見たように一般化された超幾何関数 $F (Z)$ では定義から $F (Z)$ の満たす微分方程式が決まっているので、もし $F (Z)$ を汎関数とみなして量子系に拡張できれば、系の物理量は $F (Z)$ の積分表示から求まると解釈できます。この考えを敷衍すると多粒子系の物理ではラグランジアンやハミルトニアンから始めるのではなく、物理量を導く$S$-行列汎関数を $F (Z)$ から直接求めることができるのではないでしょうか。粒子間の相互作用はすべて $F (Z)$ を定義する微分方程式
\begin{eqnarray}
\sum_{j = 0}^{n} z_{ij} \frac{\d F}{\d z_{pj}} &=& - \del_{ip} F
~~~ ( 0 \le i, p \le k )
\tag{1-2} \\
\sum_{i = 0}^{k} z_{ij} \frac{\d F}{\d z_{ij}} &=& \al_{j} F
~~~ ( 0 \le j \le n )
\tag{1-3} \\
\frac{\d^2 F}{\d z_{ip}\d z_{jq}} &=& \frac{\d^2 F}{\d z_{iq}\d z_{jp}}
~~~ ( 0 \le i, j \le k \, ; ~ 0 \le p, q \le n )
\tag{1-4}
\end{eqnarray}
に支配されるという立場です。私が提唱している
ツイスター空間上のホロノミー形式というのはこの考えを推し進めたものです。
前回のエントリーでは(ツイスト)コホモロジーとか聞きなれない用語が出てきましたが、物理の言葉ではこれは基本的にアーベル型ゲージ理論と同じことです。コホモロジー類を議論するときに出てきた共変微分
\[
\nabla \, = \, d + d \log \Phi \wedge \, = \,
d + \sum_{j = 0}^{n} \al_j \frac{ d l_j}{l_j} \wedge
\tag{1-14}
\]
がこのコホモロジーのエッセンスですがこれはゲージ理論の見方ではゲージポテンシャルとして $d \log \Phi = \frac{d \Phi}{\Phi}$ を選ぶことに対応します。最後に日本語への翻訳にあたり用語は青木・喜多先生の教科書に従いました。そのため英語の twisted は全て「ツイスト」と略されているので(とくに英語で話すときは)注意してください。それでは本題に入ります。