2021-08-02

ワインバーグ・サラム理論 note01: ユークリッド計量、参考書など

先日、Steven Weinberg が亡くなられたそうです。


素粒子物理学の黄金時代を牽引した大御所の一人。場の量子論、宇宙論の教科書だけでなく一般向けの教養書でも有名でとても影響力のある理論物理学者でした。ノーベル賞受賞対象となった標準電弱理論(電弱統一理論あるいはワインバーグ・サラム理論とも呼ばれる)のキッカケとなったアイデア(ヒッグス機構)は公園に連れて行った娘さんがブランコをしている際に思いついたという話をどこかで読んだ記憶があります。

ワインバーグの業績やエピソードについては上記のブログを参考にして下さい。ここでは私が大学院の時にまとめたワインバーグ・サラム理論のノートを復習もかねてデジタル化しようと思います。このノートは指導教官のナイアにもらったノートを基にして作成したものです。

参考文献は以下の通り。

T-P Chen and L-F Li, Gauge theory of elementary particle physics
(Oxford 1984)

C. Quigg, Gauge theories of the strong, weak, and electromagnetic interactions (Benjamin 1983)

Peskin and Schroeder, An Introduction to Quantum Field Theory
(Perseus 1995)

H. Fritzsch and P. Minkowski, Flavordynamics of quarks and leptons
Phys. Rep. 73C 67 (1981)


Greiner and Müller, Gauge Theory of Weak Interactions
(Springer 1996)

Aitchison and Hey, Gauge Theories in Particle Physics, 2nd Ed.
(Adam Hilger 1989)

ノートの表紙、目次は以下の通り。



最初に使用する記号表記についてまとめておきます。このノートではシンプルなユークリッド計量を用いています。
\[ g_{\mu\nu} = \del_{\mu \nu} = \diag (1,1,1,1) \]
\[ x_\mu  = ( \vec{x}, i t ) , ~~~ \ep_{1234} = 1 \]
全てのガンマ行列はエルミート行列に選ばれている。
\[ \{ \ga_\mu , \ga_\nu \} = 2 \del_{\mu \nu} ,  ~~~ \ga_\mu^\dagger = \ga_\mu \]
\[ \ga_5 = \ga_1 \ga_2 \ga_3 \ga_4 = \frac{1}{4!} \ep_{\mu\nu\al\bt} \ga_{\mu}\ga_{\nu}\ga_{\al} \ga_{\bt} = \ga_{5}^{\dagger} \]
具体的な表現が必要な際は主に以下のものを用いる。
\[ \ga_4  = \ga_0 = \begin{pmatrix} 0 & 1 \\ 1 & 0 \\ \end{pmatrix} , ~~~ \ga_i  = \begin{pmatrix} 0 & i \si_i \\ -i \si_i & 0 \\ \end{pmatrix}\]
\[ \ga_5  = \begin{pmatrix} -1 & 0 \\ 0 & 1 \\ \end{pmatrix} , ~~~ C  = \begin{pmatrix} -\si_2 & 0 \\ 0 & \si_2 \\ \end{pmatrix} = C^\dagger = C^{-1} = i \ga_2 \ga_0 \]
\[ \si_1 = \begin{pmatrix} 0 & 1 \\ 1 & 0 \\ \end{pmatrix} , ~~~ \si_2 = \begin{pmatrix} 0 & -i \\ i & 0 \\ \end{pmatrix}, ~~~ \si_3 = \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & -1 \\ \end{pmatrix} \]
\[ [ \si_i , \si_j ] = 2 i \ep_{ijk} \si_k , ~~~   \{ \si_i , \si_j \} = 2 \si_{ij} \]
\[ C \ga_\mu  C^{-1} = - \ga_{\mu}^{T} \]
\[ \ga_{\mu\nu} = \hf ( \ga_\mu \ga_\nu - \ga_\nu \ga_\nu  ) = \ga_{[\mu} \ga_{\nu ]} , ~~~ \ga_{\mu\nu\al} = \ga_{[\mu} \ga_\nu \ga_{\al ] } \]
反交換スピノール$\ep$, $\et$についてのFierz変換
\[ \ep \bar{\et} = - \qu (\bar{\et} \ep ) - \qu (\bar{\et} \ga_5 \ep  )\ga_5 -\qu (\bar{\et} \ga_\mu \et ) \ga_\mu + \qu (\bar{\et} \ga_\mu \ga_5 \et) \ga_\mu \ga_5 + \frac{1}{8} ( \bar{\et} \ga_{\al \bt} \ep) \ga_{\al\bt}  \]
で与えられる。
ガンマ行列のトレース:
\[ \Tr ( \ga_\mu \ga_nu ) = 4 \del_{\mu\nu} , ~~~ \Tr( \ga_5 \ga_\mu \ga_\nu \ga_\al \ga_\bt ) = 4 \ep_{\mu \nu\al\bt} \]
\[ \Tr( \ga_\mu \ga_\nu \ga_\al \ga_\bt ) = 4 (\del_{\mu\nu} \del_{\al\bt} - \del_{\mu \al}\del_{\mu \bt} + \del_{\mu \bt}\del_{\nu \al} ) \]
カイラル射影:
\[ \La_{L} = \frac{1 - \ga_5 }{2} , ~~~ \La_{R} = \frac{1 + \ga_5 }{2} \]
最近の教科書ではミンコフスキ計量 ($\diag (-1,1,1,1)$あるいは$\diag(1, -1,-1,-1)$) が使われることが多いです。ユークリッド計量が使われているものとしてはだいぶ古いですが古典的な J.J. Sakurai著 Advanced Quantum Mechanics が良かったです。日本語にも翻訳されています。



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