File failed to load: https://cdnjs.cloudflare.com/ajax/libs/mathjax/2.7.0/extensions/TeX/mathtools.js

2024-05-27

11. 共形対称性 vol.1


この章では前章に引き続いてアイソメトリーについて考える。物理においてスケールに依らない事象が多々存在する。例えば、質量ゼロの光子の振る舞いはスケールに依らない。絶対温度 T2.7K での宇宙マイクロ波背景放射は 1eω/T1 の関数で表されるプランク分布で説明できる。(ω は光子の角運動量。) この関数は温度Tを適当に再定義すればスケール変換のもとで不変である。これは次のように理解できる。スケール因子を a=a(t) とすると、平坦なFLRW計量は ds2=dt2a2(dx2+dy2+dz2) となる。このとき光子の波動方程式は (2t21a22)A=0 と表せるので、平面波の解 Ae±ipx に対して、ω2k2a2 と求まる。ここで、k2=|k|2 であり、k は運動量ベクトルを表す。つまり、ω は光子が質量ゼロである限り ω1/a の形でスケール因子に依存する。一方、10.3節で議論したように温度は宇宙の膨張とともに下がり T1/a と振る舞う。よって、分布関数 1eω/T1 はスケール変換のもとで不変であることが分かる。しかし、この例ではスケール因子 a は計量の対称性ではない。理論のスケール不変性を実現するには、一般に、拡張された対称性が必要となる。これは計量のスケール変換のもとでの対称性であり、共形アイソメトリーあるいは共形対称性と呼ばれる。この章ではこの共形対称性について考える。

11.1 共形対称性と共形キリング方程式



共形対称性(あるいは共形アイソメトリー)は計量のスケール変換 gμνeΩgμν のもとでの対称性である。ここで、Ωは定数である。スケール変換のもとで計量の変分は
δgμν=λgμν
と表せる。ただし、λは定数。この対称性は深遠な意味を持つ。10.1節で議論したアイソメトリーとキリング方程式の導出(10.9)-(10.14)に従うと、共形アイソメトリーは
μξν+νξμ=λgμν
で定義されることが分かる。ただし、μ は共形微分(10.6)であり、ξμ は座標変換 xμxμ+ξμ(x) で与えられる。式(11.2)は共形キリング方程式と呼ばれる。計量テンソルの逆元 gμν で縮約をとると、(11.2)は 2μξμ=4λ となる。つまり、
λ=12ξ
を得る。よって、共形キリング方程式は
μξν+νξμ12(ξ)gμν=0
と表せる。この方程式の任意の解 ξμ は与えられた計量テンソル gμν に対する共形変換を与える。

 つぎに、簡単のため、平坦なミンコフスキー空間 gμν=ημν を考える。ただし、符号は ημν=(+) とおく。平坦空間ではクリストッフェル記号がゼロとなるので (Γλμν=0) 共形キリング方程式は
μξν+νξμ12(ξ)ημν=0
と書ける。この共形キリング方程式の解は以下で与えられる。
ξμ={aμ+ωμαxα: ポアンカレ変換ϵxμ: スケール変換bα(x2ημα2xμxα): 特殊共形変換
ただし、aμ, bμ は任意の4元ベクトルを表す。また、ϵ は定数である。ωμαμ, αについて反対称であるので、トレース・ゼロ ωμμ=0 となる。よって、ポアンカレ変換が共形キリング方程式の解であることは明らかである。スカラー変換 ξμ=ϵxμ の解は関係式
μξν+νξμ=2ϵημν(ξ)=ϵμxμ=4ϵ
から簡単に確認できる。また、特殊共形変換 ξμ=bα(x2ημα2xμxα) についても関係式
μξν=bα(2xμηνα2ημνxα2ημαxν)νξμ=bα(2xνημα2ημνxα2ηναxμ)ξ=bα(2xα8xα2xα)=8bαxα
から、ξμ が共形キリング方程式(11.5)を満たすことがチェックできる。以上から、共形アイソメトリーはポアンカレ変換で表される通常のアイソメトリーだけでなく、スカラー変換と特殊共形変換で表される対称性を含むことが分かる。

 特殊共形変換の物理的な意味を見るために、座標の逆元 yμ=xμ/x2 を考える。(複素座標の場合、逆座標 z1/z=ˉz/(zˉz) をとることは正則性の変換に対応することに注意。)|bμ|が微小であるとしてyμの微小変換 yμyμ+bμ を考えると、この変換のもとで xμ=yμ/y2 の変換 xμxμ
xμ=(y+b)μ(y+b)2yμ+bμy2+2ybyμy2+bμy2yμy22yby2=xμ+bα(x2ημα2xμxα)
と計算できる。これより、特殊共形変換は逆座標 yμ=xμ/x2 の4元ベクトル bμ 分の並進変換であると見做せることが分かる。

2024-05-23

宇宙論:入門書から専門書まで紹介

 最近、久しぶりに手元にある宇宙論の本を見直したので少し古いですが紹介します。入門書としておススメは断然、真貝寿明(著)「現代物理学が描く宇宙論」


歴史的な側面も理論的な側面も初学者に分かりやすく充分に説明してくれている意欲作。図解や人物画もふんだんに取り入れていて、内容に親しみが持てるようとても配慮されています。ハッキリ言って素晴らしい。大学は入ったときにこういう本で勉強したかった!いまの学生はいいですね。

つぎに、ある程度全体像が分かったらおススメなのが松原隆彦(著)「現代宇宙論――時空と物質の共進化」


専門的な分野についてもとても丁寧に解説されていて、これを読み通せば現代宇宙論の研究が始められるのではないでしょうか。宇宙論を目指す学生必読の書です。

より最近の話題も含めた教科書としては辻川信二(著)「現代宇宙論講義」


がとても良かったです。最後まで読み通せていませんが、大学院レベルの講義録が手軽に読めるのはありがたいです。宇宙論の全体像を把握した後で読むとより理解が深まることでしょう。

2024-05-22

10. アイソメトリーと宇宙論的な解 vol.4

前回のエントリでは一様等方宇宙のFLRW計量からフリードマン方程式
˙a2a2+ka2=8πG3(ρ+Λ)˙ρ+3˙aa(ρ+P)=0
を導出した。今回はこの方程式の解を考えることで、一様等方宇宙を3つの時代に分類する。

1. 暗黒エネルギー優勢時代

 まず、宇宙定数Λが優勢となる場合 Λρ を考える。宇宙定数は暗黒エネルギーの主な候補の1つなので、この場合は暗黒エネルギー優勢時代と呼ばれる。このとき、方程式(10.43)は
˙a2a2+ka2=8πG3Λ
となる。平坦空間 k=0 の場合、
˙aa=±8πGΛ3
を得る。観測によると宇宙は膨張しているので、正の符号を選択すると
a(t)=a(0)exp(8πGΛ3t)
と求まる。これは、暗黒エネルギー優勢時代では宇宙がインフレーション(急激な膨張)を起こしていることを示す。ここでは k=0 を仮定したので、インフレーション宇宙における空間は基本的に平坦である。現在の宇宙では宇宙定数Λは未知の何か別の理由によってその大部分が相殺されている。よって、現在の宇宙ではインフレーション宇宙の段階から抜け出していると考えられる。

2. 放射優勢時代

 この時代は宇宙がほとんど光子で満たされる相対論的な極限に対応する。等方宇宙が断熱膨張しているとすると、関係式
P=13ρ
が成り立つ。よって、方程式(10.47)は
˙ρρ+4˙aa=0    ρ=σa4
となる。ただし、σは定数である。シュテファン-ボルツマンの法則 (ρT4) と比較すると、放射ガスの温度は T1/a と見做せる。k=0 の場合、方程式(10.43)は
a˙a=8πGσ3
と書ける。この一般解は
a2=28πGσ3t    at
で与えられる。宇宙の温度 T1/a は時間とともに冷却する。これは、ある時点で荷電粒子(主に電子と陽子)の再結合が起こり電気的に中性なガス(主に水素原子)が現れることを示唆する。さらに、物質から光子の放射が分離される(宇宙の晴れ上がり)。宇宙が中性化し膨張すると宇宙はさらに冷却する。こような宇宙の熱的な遷移の描像は宇宙マイクロ波背景放射の観測やヘリウム、リチウムの元素合成の割合についての観測結果から正しいと確認されている。

3. 物質優勢時代

 宇宙の晴れ上がりが起きると、エネルギー密度 ρ が優勢になり、圧力 P と宇宙定数 Λ を無視できる。さらにインフレーション宇宙では k=0 と仮定できる。このとき、基本方程式(10.47), (10.43)はそれぞれ
ρ=σa3a˙a=8πGσ3
と書ける。ただし、σは定数である。(10.57)から
ddt(a32)=328πGσ3    at2/3
が分かる。(10.56)と合わせると、ρσ/t2 となる。ρt の関係性は放射優勢時代(10.53)と変わらない。また、(10.55)と(10.58)から宇宙の膨張率は放射優勢時代よりも物質優勢時代のほうが大きいことが分かる。

2024-05-20

10. アイソメトリーと宇宙論的な解 vol.3

10.3 FLRW計量と宇宙論的な解


この節では宇宙の計量として最も蓋然性の高いものとその解を考える。まず初めに、宇宙の計量に時間並進の不変性を課すことはできない。というのも、もしそうなら歴史は存在しないためである。そこで、宇宙について次の二つの原理を課す。
  1. 特別な原点を持たない一様宇宙(空間並進不変性)
  2. 特別な方向を持たない等方宇宙(空間回転不変性)
よって、宇宙の計量は空間並進と空間回転のキリング・ベクトルを持つと推測できる。そのような計量の試行関数はフリードマン・ルメートル・ロバートソン・ウォーカー計量 (FLRW計量) 
ds2=dt2a2(t)(dr21kr2+r2dθ2+r2sin2θdφ2)
で与えらえる。ただし、a(t)は時間に依存するスカラー因子を表す。動径座標rの規格化はaに吸収されるので、kとして3つの場合のみを考えればよい。すなわち、 k=0,+1,1 である。k=0 の場合、FLRW計量の空間部分は dr2+r2dθ2+r2sin2θφ2=dx2+dy2+dz2 と書けるので、計量は平坦な空間を表す。k=+1 の場合、FLRW計量の空間部分は
dr21r2+r2dθ2+r2sin2θdφ2=dα2+sin2α(dθ2+sin2θdφ2)
となる。ただし、rr=sinα とパラメータ表示した。これは3次元曲面S3の計量を与える。同様に、k=1 の場合は r=sinhα とパラメータ表示すると、負の曲率を持つ3次元双曲面(ロバチェフスキー多様体)の計量となる。よって、空間の幾何学はkによっては次のように分類できる。
k={0ユークリッド幾何学 (平坦空間)1曲率が正のリーマン幾何学 (3次元球面)1曲率が負のリーマン幾何学 (双曲幾何学)

 一様等方な宇宙を仮定すると宇宙は理想流体で満たされていると近似できる。このときアインシュタイン方程式は
Rμν12gμνR8πGΛgμν=8πGTμν
と書ける。ただし、Tμνは理想流体のエネルギー・運動量テンソル
Tμν=(ρ+P)uμuνPgμν
で与えられる。ここで、uμは流体の4元速度ベクトルであり、ρPはそれぞれ流体のエネルギー密度と圧力を表す。一様等方宇宙では空間成分の速度 ui をゼロとおける。つまり、静的な座標フレームを選ぶことができる。よって、Tμνのゼロでない成分は
T00=ρ,  T11=Pg11,  T22=Pg22,  T33=Pg33
となる。ただし、u0u0=1 を用いた。つぎに、FLRW計量に対応するアインシュタイン方程式を求める。計量テンソルを書き下すと
g00=1,  g11=a21kr2,  g22=a2r2,  g33=a2r2sin2θg00=1,  g11=1kr2a2,  g22=1a2r2,  g33=1a2r2sin2θ
となる。ゼロでないクリストッフェル記号の成分は以下で与えらえる。
Γ100=a˙a1kr2,  Γ111=kr1kr2Γ022=a˙ar2,  Γ122=(1kr2)r  Γ033=a˙ar2sin2θ,  Γ133=(1kr2)rsin2θ,  Γ233=sinθcosθΓ101=Γ202=Γ303=˙aa,  Γ212=Γ313=1r,  Γ323=cosθsinθ
必要となるリッチ・テンソルは
R00=3(0+Γ101)Γ101=3¨aaR11=(0+Γ101)Γ0112(1+(Γ111Γ212))Γ212=11kr2(2˙a2+a¨a+2k)R22=(0+Γ202)Γ022+(1+Γ111)Γ122(2+Γ323)Γ323=r2(2˙a2+a¨a+2k)R33=(0+Γ303)Γ033+(1+Γ111)Γ133+(2Γ323)Γ233=r2sin2θ(2˙a2+a¨a+2k)
と計算できる。これより、スカラー曲率は
R=R00g00+R11g11+R22g22+R33g33=6(¨aa+˙a2a2ka2)
と求まる。よって、アインシュタイン方程式(10.35)は2つの方程式
3(˙a2a2+ka2)=8πG(ρ+Λ)(˙a2a2+2¨aa+ka2)=8πG(PΛ)
に変形できる。(10.43)の時間微分を取ると
3˙aa(2¨aa2˙a2a22ka2)=8πGdρdt
を得る。一方、(10.43)と(10.44)の和は
(2¨aa2˙a2a22ka2)=8πG(ρ+P)
と表せる。(10.45)と(10.46)から
˙ρ+3˙aa(ρ+P)=0
と求まる。これはエネルギー・運動量の保存則 μTμ0=0 あるいは連続方程式と考えられる。連続方程式であることは、T00がエネルギー密度、T0iがエネルギー・フラックスを表すことから分かる。実際、共変微分の定義(10.7)から μTμ0
μTμ0=μTμ0+ΓμμλTλ0Γλμ0Tμλ=0T00+(Γ110+Γ330+Γ330)T00(Γ110T11+Γ220T22+Γ330T33)=˙ρ+3˙aa(ρ+P)
と計算できる。よって、一様等方宇宙は2つの基本方程式
˙a2a2+ka2=8πG3(ρ+Λ)˙ρ+3˙aa(ρ+P)=0

2024-05-17

曲面の数学、ポアンカレ群

大学に入ったとき「新入生に紹介する本」という読み物があり、(今もありますが)向学心のあった私はそこで紹介されていた長野正(著)「曲面の数学」を書店で購入。


著者が自由闊達に議論を展開していて引き込まれるような思いでした。私の力不足から最後まで読み切れませんでしたが、いまでも何故か序文の言葉が記憶に残っています。
驚くべきことに過去百年の日本の数学の歴史のうちには、ある分野の人々全部が妙な迷路に入り込んで時代に取り残されてしまった例もきわめて少なくはないのである。

当時、そんなことあるかぁ~。なんて思ってましたが今では意味するところがよくわかる気がします。 本文の内容でなく序文だけ覚えているってちょっとダメですね。 

 大学院で読んだ教科書に似たようなテイストの本がありました。大貫義郎(著)「ポアンカレ群と波動方程式」


前回のエントリーでポアンカレ代数の話が出たので久しぶりに手に取りました。「まえがき」からやはり引き込まれます。1976年に著された本書がまだ教科書として充分に通用し推薦に値することは驚くべきことです。「曲面の数学」に関しては初版が1963年とのこと。両著作とも今後も読み継がれてほしい良書です。

2024-05-16

10. アイソメトリーと宇宙論的な解 vol.2

10.2 アイソメトリーと演算子代数


アイソメトリーはキリング方程式の解で与えられる。(なお、超対称性が含まれるキリング方程式はキリング・スピノール方程式として知られている。)アイソメトリーは物理で重要である。例えば、第9章で扱ったように、点粒子の運動は相対論的に不変な作用 S=mds で記述される。これは、点粒子の動力学の対称性は背景となる時空間のアイソメトリーと等しいことを意味する。

 別の例として、相対論的なスカラー粒子が挙げられる。この粒子はクライン-ゴルドン方程式
(+m2)ϕ=0
に従う。ただし、ダランベール演算子ϕ はスカラー場を表す。リーマン多様体上で  は共変微分 μ を用いて gμνμν と表せる。よって、ϕ
ϕ=gμνμ(νϕ)=gμν(μνϕΓλμνλϕ)
と書ける。ただし、共変微分の定義(10.7)を用いた。クリストッフェル記号 Γλμν は(8.33)で定義した通り
Γλμν=12gλα(μgλν+νgμααgμν)
と書けるので、gμνΓλμνλϕ を計量テンソルで表せる。
gμνΓλμνλϕ=12(μgαν+νgμααgμν)αϕ=(gμνμgαν12αgμνgμν)αϕ=μgμν(νϕ)12μgμν(νϕ)
一方、 関係式(9.22)から
μg=12ggαβμgαβ
が分かる。ただし、g=det(gμν) である。よって、関係式
1ggμν(μg)νϕ=12μgμν(νϕ)
を得る。これらの式からリーマン多様体上で  は
=2μ=1gxμ(gμνgxν)
と表せることが分かる。曲がった空間でのクライン-ゴルドン方程式を導く作用は
S=d4xg(12gμν(μϕ)(νϕ)12m2ϕ2)
で与えられる。この作用は曲がった空間上の量子論を定義する。この作用の対称性もまた背景となる時空間のアイソメトリーで与えられる。これは第8章の最後に触れたように曲がった空間上の物理は「計量の理論」として解釈できることからも自然に理解できる。

ポアンカレ代数など

 ここで、アイソメトリーは曲がった空間上の量子論における演算子の完全な集合を与えると主張できる。物理系の演算子の完全な集合が分かれば、そのユニタリー既約表現によって量子論を定義できる。これは量子論の1つの定義であり、この定義は座標の選択に依らないという意味で不変である。

 この主張について最も簡単な例は、平坦なミンコフスキー空間
ds2=dx20dx21dx22dx23=ημνdxμdxν
で与えられる。ただし、ημν=(+) である。この場合、クリストッフェル記号はゼロとなるのでキリング方程式(10.14)は
μξν+νξμ=0
と書ける。この一般解は
ξμ=aμ+ωμνxν
で与えられる。ただし、aμは4元-定ベクトルであり、ωμν は添え字について反対称である。
ωμν+ωνμ=0
これらを用いると、座標変換は
xμxμ+ξμ=xμ+aμ+ωμνxν
と表せる。これより、aμは並進変換、ωμνは空間回転とローレンツ変換を表すことが分かる。これらの変換の組み合わせはポアンカレ群を成す。場の演算子の変換は
ϕ(x)  ϕ(x+ξ)=ϕ(x)+ξμϕxμϕ(x)+iOϕ
と書ける。(10.19)から演算子O
O=aμ(ixμ)+ωμνxν(ixμ)=aμPμωμν2Mμν
と読み取ることができる。ただし、Pμ=ixμ, Mμν=xμPνxνPμ である。これらは、それぞれスカラー場に対する時空間の並進と回転の生成子である。これらの演算子の代数は閉じた代数を成す。
[Pμ,Pν]=0[Mμν,Pα]=i(ημαPνηναPμ)[Mμν,Mαβ]=i(ημαMνβηναMμβημβMνα+ηνβMμα)
これはポアンカレ代数と呼ばれる。

2024-05-15

10. アイソメトリーと宇宙論的な解 vol.1

10.1 共変微分、アイソメトリー、キリング方程式


リーマン多様体上の共変微分

 前章でリッチ・スカラーの変分を計算する際に共変微分
DμVν=μVνΓλμνVλ
を導入した。この節では先ずこのリーマン多様体上の共変微分について復習する。ϕaを一般の曲がった多様体上のスカラー関数とする。8章の(8.24)で見たように、ϕaの共変微分は
(Dμϕ)a=μϕa+ωabμϕb
と表せる。ただし、ωabμ はスピン接続である。8章では局所ローレンツ変換 ϕaϕa=Rabϕb のもとで微分が共変であることの要請 (Dμϕ)a=Rab(Dμϕ)b からこの共変微分を導出した。

 ここで、ϕaをフレーム場で展開する。
ϕa=eaαϕα
すると、(10.1)は
(Dμϕ)a=(μeaα+ωabμebα)ϕα+eaαμϕα=eaλ(μϕλ+Γλμαϕα)
と書ける。ただし、リーマン多様体の基本的な関係式
μeaα+ωabμebα=Γλμαeaλ
を用いた。(10.3)から μϕλ+Γlaμαϕα は斉次テンソルであることが分かる。よって、リーマン多様体上の共変微分を
μϕα=μϕα+Γαμβϕβ
と定義できる。これは前章で定義した共変微分
DμVν=μVν+ΓνμαVα
に他ならない。以下では、共変微分をDμではなくμで表示する。ここでは微分の反対称化を課していない。そのため、μは対称共変微分とも呼べる。

 つぎに、ϕαχαとして添え字の縮約を考える。ただし、χαは別のスカラー関数を表す。(10.2)に対応するχαの展開式は
χa=(e1)αaχα
と表せる。よって、χαの共変微分は
μχα=μχαΓβμαχβ
と定義される。これは冒頭の定義式(9.24)に対応する。

 一般形のテンソル Tα1α2αpβ1β2βq に対する共変微分は
μTα1α2αpβ1β2βq=μTα1αpβ1βq+Γα1μαTαα2αpβ1βq++ΓαpμαTα1αp1αβ1βq          Γβμβ1Tα1αpββ2βqΓβμβqTα1αpβ1βq1β
と表せる。特に、計量テンソル g_{\mu\nu} の共変微分は
    \nabla_\al g_{\mu\nu} \, = \,    \d_\al g_{\mu\nu} - \Ga^{\la}_{\mu \al} g_{\nu \la} - \Ga^{\la}_{\nu\al} g_{\mu\la}    \, = \, 0    \tag{10.8}
で与えられる。ただし、関係式
\d_\mu g_{\al \bt} = \Ga^{\la}_{\mu \al} \, g_{\la \bt} +  \Ga^{\la}_{\mu \bt} \, g_{\al \la} \tag{8.30}
を用いた。これは共変微分が計量と互換性を持つことを意味する。つまり、g_{\mu\nu}は共変計量テンソルである。

アイソメトリーとキリング方程式

 計量 ds^2 = g_{\mu\nu} (x) dx^\mu dx^\nu を不変に保つ座標変換
    x^\mu \, \rightarrow \, x^\mu + \xi^\mu (x)    \tag{10.9}
をアイソメトリーと呼ぶ。変換(10.9)のもとでds^2の変化量は
\begin{eqnarray}    ( d s^2 )_{x+\xi} - ( d s^2 )_{x}    &=&    \xi^\al \d_\al g_{\mu\nu} dx^\mu dx^\nu    + g_{\mu\nu} \frac{\d \xi^\mu}{\d x^\al} d x^\al d x^\nu    + g_{\mu\nu} d x^\mu \frac{\d x^\nu}{\d x^\al} d x^\al    \nonumber \\    &=&    \left[    \xi^\al \d_\al g_{\mu\nu} + g_{\al\nu}\frac{\d \xi^\al}{\d x^\mu}    + g_{\mu\al} \frac{\d \xi^\al}{\d x^\nu}    \right] dx^\mu dx^\nu     \tag{10.10} \end{eqnarray}
と計算できる。よって、条件式
    \xi^\al \d_\al g_{\mu\nu} + g_{\al\nu}\frac{\d \xi^\al}{\d x^\mu}    + g_{\mu\al} \frac{\d \xi^\al}{\d x^\nu}    \, = \, 0     \tag{10.11}
が満たされるとき、\xi^\mu はアイソメトリーである。この条件式はキリング方程式と呼ばれる。また、ベクトル \xi^\mu はキリング・ベクトルと呼ばれる。計量 g_{\mu\nu} が与えられると、(10.11)からキリング方程式を書き出すことができ、これを \xi^\al について解くことでアイソメトリーが得られる。すなわち、アイソメトリーはキリング方程式の解である。

2024-05-14

ランダウ-リフシッツ「場の古典論」ほか

前回のエントリーでシュワルツシルト計量がアインシュタイン方程式を満たすこと確認した。その際に久しぶりに手に取ったランダウ-リフシッツ「場の古典論」


ロシア語では Ландау и Лифшиц と書く。(英語では Landau and Lifshitz) 学部生の時に購入してすぐに挫折したけど、今ならだいぶ読めますね。少しは成長したか。一般相対性理論、宇宙論の分野では伝統的に (-+++) のミンコフスキー符号が用いられる。この分野の有名な教科書もこれに倣う。



ランダウ-リフシッツでは場の量子論で慣習的な (+---) 符号を使うので個人的にはとても参考になりました。ただ、ソ連時代の教科書だけあってレベルが高い。多くの途中計算が省略してあり初学者には読みこなすのが大変です。調べてみたところそんな学徒にとって待望のサイトを見つけました。


なかでも、Schwarzschild解の導出過程(PDF)のファイルは、符号の問題で自分の計算が合っているのか不安になっている最中だったので、丁寧な計算過程がとても参考になりました。作成者が謳っている「理論物理学の脱商品化」という標語には少し意表を突かれましたが、作成者の意気込みが伝わり共感しました。

2024-05-13

9. アインシュタイン方程式の現代的な導出 vol.4

9.3 シュワルツシルト計量


太陽の周りの物質分布は質点 \rho = M \del^{(3)} (x) を物質場の源(ソース)とするエネルギー・運動量テンソル T_{\mu \nu} = T_{00} = \rho で記述できる。このような T_{\mu \nu} に対応するアインシュタイン方程式の解はシュワルツシルト計量
    d s^2 = ( 1 + 2 \Phi ) dt^2  - ( 1 + 2 \Phi )^{-1} d r^2 - r^2 d \th^2 - r^2 \sin^2 \th d \varphi^2     \tag{9.53}
で与えられる。ただし、宇宙定数はゼロとする。また、\Phiはこれまで通り重力ポテンシャル
    \Phi =    - \frac{GM}{r}     \tag{9.54}
を表す。

 以下では先ず、エネルギー・運動量テンソルを T_{\mu \nu} = T_{00} = \rho としてシュワルツシルト計量がアインシュタイン方程式を満たすことを確認する。計量テンソルは
\begin{eqnarray}    && g_{00} = ( 1 + 2 \Phi ) , ~~ g_{11} = - ( 1 + 2 \Phi )^{-1}  , ~~ g_{22} = -r^2   , ~~ g_{33} = -r^2 \sin^2 \th    \nonumber  \\    && g^{00} = ( 1 + 2 \Phi )^{-1} , ~~ g^{11} = - ( 1 + 2 \Phi )  , ~~ g^{22} = - \frac{1}{r^2}       , ~~ g^{33} = \frac{-1}{r^2 \sin^2 \th}     \nonumber \end{eqnarray}
と書き下せる。これらから直接、クリストッフェル記号
    \Ga_{\mu \nu}^{\la} = \frac{1}{2} g^{\la \al} ( \d_\mu g_{\nu \al} + \d_\nu g_{\mu \al} - \d_\al g_{\mu \nu} )    \nonumber
とリッチ・テンソル
    {\cal R}_{\nu \al} = \d_\la \Ga_{\nu \al}^{\la} - \d_\nu \Ga_{\la \al}^{\la}  + \Ga_{\la\bt}^{\la}\Ga_{\nu \al}^{\bt}    -  \Ga_{\nu \bt}^{\la}\Ga_{\la \al}^{\bt}     \nonumber
を計算できる。ゼロでない成分は以下で与えられる。
\begin{eqnarray}    && \Ga_{00}^{1} = ( 1 + 2 \Phi ) (\d_r \Phi ) , ~~ \Ga_{11}^{1} = -( 1 + 2 \Phi )^{-1} (\d_r \Phi )    \nonumber \\    && \Ga_{22}^{1} = -r ( 1 + 2 \Phi ) , ~~ \Ga_{33}^{1} = -r \sin^2 \th ( 1 + 2 \Phi ) , ~~     \Ga_{33}^{2} = - \sin \th \cos \th    \nonumber \\    && \Ga_{10}^{0} = ( 1 + 2 \Phi )^{-1} (\d_r \Phi ) \nonumber \\    &&  \Ga_{12}^{2} = \Ga_{13}^{3} = \frac{1}{r^2} , ~~  \Ga_{23}^{3} = \frac{\cos\th}{\sin \th} \nonumber \end{eqnarray} \begin{eqnarray}    {\cal R}_{00} &=& \left[ \d_r + 2 ( \Ga_{11}^{1} + \Ga_{12}^{2} ) \right] \Ga_{00}^{1} \nonumber \\    {\cal R}_{11} &=& ( \d_r - 2 \Ga_{11}^{1} ) \Ga_{11}^{1} - 2 ( \d_r -\Ga_{11}^{1} ) \Ga_{12}^{2} -2 \Ga_{12}^{2}\Ga_{12}^{2}    \nonumber \\    {\cal R}_{22} &=& \d_r  \Ga_{22}^{1} - ( \d_\th + \Ga_{23}^{3}) \Ga_{23}^{3} \nonumber \\    {\cal R}_{33} &=&  \d_r  \Ga_{33}^{1} + ( \d_\th - \Ga_{23}^{3}) \Ga_{33}^{2} \nonumber \end{eqnarray} 
リッチ・テンソルを\Phiで表すと
\begin{eqnarray}    {\cal R}_{00} &=& (1 + 2 \Phi ) \nabla_r^2 \Phi \tag{9.55} \\    {\cal R}_{11} &=& - (1 + 2 \Phi )^{-1} \nabla_r^2 \Phi \tag{9.56} \\    {\cal R}_{22} &=& - 2 (  \Phi + r \d_r \Phi ) \tag{9.57}  \\    {\cal R}_{33} &=&  \sin^2 \th \, {\cal R}_{22} \tag{9.58} \end{eqnarray}
となる。ただし、
    \nabla_r^2 \Phi = \d_r^2 \Phi + \frac{2}{r} \d_r \Phi     \tag{9.59}
である。r \ne 0 の場合、明らかに {\cal R}_{00}={\cal R}_{11}={\cal R}_{22}={\cal R}_{33} = 0 であり、アインシュタイン方程式
    {\cal R}_{\al\bt} \, = \,  8 \pi G \left( T_{\al\bt} - \frac{1}{2} g_{\al \bt} T \right)      \tag{9.39}
を満たす。

 前回の非相対論的な解析と同様に、ポアソン方程式を用いて特異点 r = 0 を含むアインシュタイン方程式(9.39)を確認できる。例えば、方程式の(0,0)成分は
    {\cal R}_{00} = 8 \pi G \left( T_{00} - \frac{1}{2} g_{00} T \right) = 4 \pi G \rho    \tag{9.60}
で与えられる。ただし、T = T_{\mu\nu} g^{\mu \nu} = (1 + 2 \Phi )^{-1} \rho を用いた。よって、(9.55)から相対論的なポアソン方程式
    \nabla_r^2 \Phi = 4 \pi G T     \tag{9.61}
を得る。ただし、r \ne 0 において\nabla_r^2 \Phiはゼロとなるので、\nabla_r^2 \Phiの表現には符号の曖昧さがあることに注意する。例えば、(9.57)の{\cal R}_{22}{\cal R}_{22} = - 2 (  \Phi + r \d_r \Phi ) = \pm r^2 \nabla_r^2 \Phi と明示できる。同様に、(9.55)-(9.58)のいずれも符号の曖昧さをもつ。これはポアソン方程式の解の一意性と関係している。ここでは、(0,0)成分のアインシュタイン方程式がポアソン方程式(9.61)を導くように{\cal R}_{00}を(9.55)の通りに定めた。これは、ミンコフスキー符号(+---)T_{\mu\nu}の定義に沿うものである。{\cal R}_{11}, {\cal R}_{22}, {\cal R}_{33} の符号はアインシュタイン方程式の残りの成分が(9.61)と矛盾しないように決めればよい。言い換えると、一旦 R_{00} が定まれば、あとはポアソン方程式の一意性のもとで {\cal R}_{11}, {\cal R}_{22}, {\cal R}_{33} を決めることができる。これより、関係式
\begin{eqnarray}    {\cal R}_{11} &=& ( 1 + 2 \Phi )^{-1}  \nabla_r^2 \Phi \tag{9.62} \\    {\cal R}_{22} &=& r^2  \nabla_r^2 \Phi \tag{9.63} \\    {\cal R}_{33} &=& r^2  \sin^2 \th \nabla_r^2 \Phi \tag{9.64} \end{eqnarray}
が求まる。(9.55)と合わせて、スカラー曲率は
    {\cal R} = {\cal R}_{00} g^{00} + {\cal R}_{11} g^{11} + {\cal R}_{22} g^{22} + {\cal R}_{33} g^{33} = -2 \nabla_r^2 \Phi     \tag{9.65}
となる。これは、(9.37)の条件式 {\cal R} = - 8 \pi G T と一致する。よって、シュワルツシルト計量(9.53)は確かにアインシュタイン方程式を満たすことが分かる。

 実際、シュワルツシルト計量についてバーコフの定理と呼ばれる定理が存在する。この定理によると、
球対称なアインシュタイン方程式 (ただし、\La = 0) のうち非回転・非電化な唯一の解はシュワルツシルト解で与えられる。 
回転する解を許容すると、アインシュタイン方程式はカー計量と呼ばれる解で一意に決まる。(これは Roy Kerr によって1964年頃に発見された。)

 シュワルツシルト計量は r_{\rm sc} = 2 GM に特異点を持つ。r_{\rm sc}はシュワルツシルト半径と呼ばれる。動径距離r r_{\rm sc}より小さくなると、g_{00}g_{11}符号が変化する。これは r < r_{\rm sc} の内側では解が静的ではなくなることを示唆する。この内側の領域 r < r_{\rm sc} はブラックホールと呼ばれる。一般に、ブラックホールには回転する解、電荷をもつ解があるいはその両方の解が存在する。カー計量の場合と同じく、これら一般解についてもバーコフの定理が適用される。これはブラックホール唯一性定理として知られている。

2024-05-10

2024年GW家族ドライブ:水戸、鹿島、香取

 春の川越が良かったので近場の名所に行くことにしました。まだ行ったことのない水戸の偕楽園。連休中なので予想通り渋滞につかまり、常磐道を敬遠して東北道から圏央道で遠回りしました。途中で五霞(ごか)の道の駅に寄りました。


地元の野菜やお花が格安で提供されていてお得でした。その後、常磐道に合流し友部SAへ。


北関東道の常陸那珂方面は渋滞していましたが水戸方面は問題なし。仙波公園の駐車場も大丈夫でした。


五霞で買った昼食をとってから偕楽園へ。



2024-05-09

9. アインシュタイン方程式の現代的な導出 vol.3

前回、真空のアインシュタイン方程式を導出する際に、{\cal R}_{\al\bt} g^{\al \bt} が共変微分の全微分として表せることを用いた。以下では、まずこの点を明らかにする。

共変微分とリッチ・テンソルの変分

 ベクトルV_\nuの共変微分\D_\mu V_\nu
    \D_\mu V_\nu = \d_\mu V_\nu - \Ga_{\mu\nu}^{\la} V_\la    \tag{9.24}
で定義される。ただし、V_\nuをフレーム場e^a_\nu (x )を用いて V_\nu (x) = e^a_\nu (x ) V^a と展開した。V^axに依存しない係数と解釈できる。リーマン多様体を解説した8.3節の結果、D_\mu = \d_\mu + \om_\mu, \om_\mu = e \Ga_\mu e^{-1} - \d_\mu e \, e^{-1}, ( D_\mu e_\nu )^a = \Ga_{\mu \nu}^{\la} e_\la^a を用いると、( \D_\mu e_\nu )^a  = ( \d_\mu e_\nu - e_\la \Ga_{\mu \nu }^{\la} )^{a} を得る。よって、(9.24)の共変微分\D_\muは8.3節で紹介したリーマン多様体の共変微分D_\muと同じであることが分かる。行列表示をすると \D_\mu = e ( \d_\mu - \Ga_\mu ) e^{-1} と書ける。これは共変微分\D_\muが微分 ( \d_\mu - \Ga_\mu ) の局所ローレンツ変換として表せることを示している。

 同様に、逆ベクトルV^\nu = (e^{-1})^{\nu a} (x) V^aの共変微分も定義することができる。すなわち、関係式
    D_\mu (e^{-1})^{\nu a} = \d_\mu (e^{-1})^{\nu a} - (e^{-1})^{\nu b} \om_{\mu}^{ab}     \tag{9.25}
を用いると、\D_\mu V^\nu
    \D_\mu V^\nu = \d_\mu V^\nu + \Ga_{\mu\al}^{\nu} V^\al     \tag{9.26}
と表せる。

 共変微分\D_\muのもとで、計量テンソルは定数である。つまり、\D_\al g_{\mu \nu} = 0 となる。この意味で共変微分\D_\muは非常に有用である。具体的に書き出すと、
\begin{eqnarray}    \D_\al g_{\mu \nu} &=& \D_\al ( e_\mu^a  e_\nu^a ) \nonumber \\    &=& \d_{\al} g_{\mu \nu} - \Ga_{\al \mu}^{\la} g_{\la \nu} - \Ga_{\al \nu}^{\la} g_{\mu \la}    \, = \, 0     \tag{9.27} \end{eqnarray}
となる。ここで、クリストッフェル記号の定義式(8.30)を用いた。言い換えると、\Ga_{\mu \nu}^{\la}は関係式 \D_\al g_{\mu \nu} = 0 で定義されると解釈することもできる。\Ga_{\mu \nu}^{\la}はその局所座標変換
   \widetilde{\Gamma}^{\la}_{\mu\nu} = \Gamma_{\al \bt }^{\si}    \frac{\d x^\al}{\d y^\mu} \frac{\d x^\bt}{\d y^\nu} \frac{\d y^\la}{\d x^\si}   +  \frac{\d^2 x^\la }{\d y^\mu \d y^\nu}  \frac{\d y^\la}{\d x^\si}    \tag{8.34}
から分かるようにテンソル量ではなかった。しかし、(8.34)から明らかなように、変分\del \Ga_{\mu \nu}^{\la}はテンソルとなる。よって、\del \Ga_{\mu \nu}^{\la}の共変微分をとることに問題はない。(9.24)と(9.26)から、\D_\mu \del \Ga_{ \nu \al}^{\la}
    \D_\mu \del \Ga_{ \nu \al}^{\la} = \d_\mu \del \Ga_{ \nu \al}^{\la}    - \Ga_{\mu \nu}^{\si} \del \Ga_{ \si \al}^{\la} - \Ga_{\mu \al}^{\tau} \del \Ga_{ \nu \tau}^{\la}    + \Ga_{\mu \rho}^{\la} \del \Ga_{\nu \al}^{\rho}     \tag{9.28}
と計算できる。リーマン曲率テンソル
    {\cal R}^{\la}_{\mu \nu \al}    \, = \,    \d_{\mu} \Ga^{\la}_{\nu \al} -  \d_{\nu} \Ga^{\la}_{\mu \al}    + \Ga^{\la}_{\mu \bt}\Ga^{\bt}_{\nu \al}    - \Ga^{\la}_{\nu \bt}\Ga^{\bt}_{\mu \al}    \tag{9.14}
の変分は
\begin{eqnarray}    \del {\cal R}^{\la}_{\mu \nu \al} & = &    \d_{\mu} \del \Ga^{\la}_{\nu \al} -  \d_{\nu} \del \Ga^{\la}_{\mu \al}    + \del \Ga^{\la}_{\mu \bt}\Ga^{\bt}_{\nu \al} + \Ga^{\la}_{\mu \bt} \del \Ga^{\bt}_{\nu \al}    - \del \Ga^{\la}_{\nu \bt}\Ga^{\bt}_{\mu \al}- \Ga^{\la}_{\nu \bt} \del \Ga^{\bt}_{\mu \al}    \nonumber \\    &=&  \left( \D_\mu \del \Ga_\nu - \D_\nu \del \Ga_\mu \right)_\al^\la    \tag{9.29} \end{eqnarray}
と表せる。ただし、\Ga_{\mu \nu}^{\si} = \Ga_{\nu \mu}^{\si} を用いた。よって、リッチ・テンソルの変分は
    \del {\cal R}_{\nu \al} = \del {\cal R}^{\la}_{\la \nu \al} =     \D_\la \del \Ga_{\nu \al}^{\la} - \D_\nu \del \Ga_{\la \al}^{\la}     \tag{9.30}
で与えられる。これより、\del {\cal R}_{\al\bt} g^{\al \bt} は
    \del {\cal R}_{\al\bt} g^{\al \bt} = \D_\la \left(     \del \Ga_{\al \bt}^{\la} g^{\al\bt} - \del \Ga_{\al \bt}^{\al} g^{\la \bt}    \right)     \tag{9.31}
と求まる。

アインシュタイン方程式

上式より、(9.23)の最後の項の被積分関数は表面積分となり積分は無視できる。よって、変分原理により計量の運動方程式は
    {\cal R}_{\al\bt} \, - \, \frac{1}{2} g_{\al\bt} {\cal R}    \, - \, 8 \pi G \La \, g_{\al\bt} \, = \, 0     \tag{9.32}
となる。これは真空のアインシュタイン方程式と呼ばれる。

 つぎに、自由場の作用
   \S = -   \int d^4 x \sqrt{- \det g }    \left[    \frac{1}{16\pi G} {\cal R} - \La    \right]    \tag{9.18}
に物質の源(ソース)を追加する。\S_{\rm m}を物質場の作用
    \S_{\rm m} \, = \, \int d^4 x \sqrt{- \det g} \, \L_{\rm m}     \tag{9.33}
とする。計量について変分をとると物質場の作用は
    \frac{\del \S_{\rm m}}{ \del g^{\mu \nu} }    \, = \,    \frac{1}{2} T_{\mu\nu}    \tag{9.34}
と定義される。ただし、T_{\mu \nu}エネルギー・運動量テンソルである。この定義は
    \del \S_{\rm m} \, = \,    \int d^4 x \sqrt{- \det g} \, \left(    \frac{1}{2} T_{\mu\nu} \del g^{\mu \nu}    \right)     \tag{9.35}
とも表せる。エネルギー・運動量テンソルは物理的に重要である。その(0,0)成分 T_{00} はエネルギー密度を与え、T_{0i} (i=1,2,3) はx_i方向のエネルギー・フラックスを表す。電磁場( \vec{E} , \vec{B} )の場合、T_{00} = \frac{E^2 + B^2}{2}, T_{0i} = ( \vec{E} \times \vec{B} )_i となる。後者はポインティング・ベクトルと呼ばれる。\del \S_{\rm m}
   \del \S =  - \int d^4 x \sqrt{- \det g}    \left[    - \frac{1}{2} g_{\al\bt} \left(    \frac{1}{16 \pi G} {\cal R} - \La    \right) + \frac{1}{16 \pi G} {\cal R}_{\al\bt}    \right] \del g^{\al\bt}      \tag{9.23}
に追加すると、対応する運動方程式は物質場も含めたアインシュタイン方程式
    {\cal R}_{\al\bt} \, - \, \frac{1}{2} g_{\al\bt} {\cal R}    \, - \, 8 \pi G \La \, g_{\al\bt} \, = \,  8 \pi G \, T_{\al\bt}     \tag{9.36}
となる。

 \La = 0 の場合、{\cal R}_{\al\bt}  -  \frac{1}{2} g_{\al\bt} {\cal R} =  8 \pi G \, T_{\al\bt} となる。両辺に g^{\al \bt} を施すと、関係式
    {\cal R} \, =  \, - 8 \pi G T    \tag{9.37}
を得る。ただし、g^{\al \bt} g_{\al \bt} = \del^{\al}_{\al} =4 を用いた。Tはエネルギー・運動量テンソルのトレースであり、
    T \, = \, g^{\al \bt} T_{\al\bt}    \tag{9.38}
と定義される。これより、宇宙定数項の無いアインシュタイン方程式は
    {\cal R}_{\al\bt} \, = \,  8 \pi G \left( T_{\al\bt} - \frac{1}{2} g_{\al \bt} T \right)      \tag{9.39}
とも表せる。

ニュートン重力への回帰

 つぎに、非相対論的な近似を考えてアインシュタイン方程式に現れるGがニュートン定数と同定できることを見てみよう。重力ポテンシャル \Phi = - \frac{GM}{r} のもとで非相対論的な点粒子の運動は9.1節で議論したように作用
\begin{eqnarray}    \S &=& - m \int \sqrt{ g_{\mu\nu} d x^\mu d x^\nu }    \nonumber \\    &=& -m \int \sqrt{ g_{00} -v^2 } dt    \nonumber \\    &\simeq & \int dt \left( - m + \hf m v^2 - m \Phi \right)     \tag{9.40} \end{eqnarray}
で記述される。ただし、g_{ij} = - \del_{ij} (i,j = 1,2,3) を用いた。ここで、非相対論的な極限 ( v \ll c = 1 ) では、計量テンソルの(0,0)成分は
    g_{00} \, \simeq \, 1 + 2 \Phi \, = \, 1 - \frac{2GM}{r}     \tag{9.41}
と近似できることに注意する。また、非相対論的な極限では測地線方程式(9.12)は
    \frac{d^2 x^i}{ d t^2} \simeq - \Ga_{00}^{i}     \tag{9.42}
と近似できる。クリストッフェル記号の定義(9.15)から、\Ga_{00}^{i}成分は
    \Ga_{00}^{i}  = \d_i \Phi    \tag{9.43}
と計算できる。よって、方程式(9.42)は
    \frac{d^2 x^i}{ d t^2} \simeq - \d_i \Phi     \tag{9.44}
となる。これはニュートン重力の運動方程式である。

 つぎに、\La = 0としてアインシュタイン方程式(9.36)に非相対論的な近似を適用する。エネルギー・運動量テンソル T_{\mu\nu} の非自明な成分はエネルギー密度の成分 T_{00} = \rho = M \del^{(3)} (x) で与えられる。このとき、エネルギー・運動量テンソルのトレースT
    T  = g^{00} T_{00} = ( 1 + 2 \Phi )^{-1} \rho     \tag{9.45}
と計算できる。よって、アインシュタイン方程式(9.39)は
    {\cal R}_{00} \, = \,  4 \pi G \rho     \tag{9.46}
と書ける。リッチ・テンソル{\cal R}_{00}は非相対論的な計量 g_{00} = 1 + 2 \Phi , g_{11} = g_{22} =g_{33} = -1 から素朴に計算できる。ゼロでないクリストッフェル記号の成分は
    \Ga_{00}^{i} = \d_i \Phi \, , ~~~~ \Ga_{0i}^{0} = ( 1 + 2 \Phi )^{-1} \d_i \Phi    \tag{9.47}
で与えられる。リッチ・テンソルの定義
    {\cal R}_{\nu \al} =    \d_{\la} \Ga^{\la}_{\nu \al} -  \d_{\nu} \Ga^{\la}_{\la \al}    + \Ga^{\la}_{\la \bt}\Ga^{\bt}_{\nu \al}    - \Ga^{\la}_{\nu \bt}\Ga^{\bt}_{\la \al}     \tag{9.16}
から {\cal R}_{00}
\begin{eqnarray}    {\cal R}_{00} &=&  \d_i \Ga_{00}^{i} - \Ga_{0i}^{0} \Ga_{00}^{i} \nonumber \\    &=&  \nabla^2 \Phi - (1+ 2 \Phi )^{-1} ( \d_i \Phi )^2     \tag{9.48} \end{eqnarray}
と求まる。ただし、ラプラシアン\d_i (\d_i \Phi )\nabla^2 \Phiと表記した。{\cal R}_{00}\Phiの1次のオーダーで近似するすると、アインシュタイン方程式(9.46)は重力ポテンシャルのポアソン方程式
    \nabla^2 \Phi \, \simeq \, 4 \pi G \rho     \tag{9.49}
となる。これより、アインシュタイン方程式の定数Gはニュートン定数と同定できることが分かる。