9.3 シュワルツシルト計量
太陽の周りの物質分布は質点 ρ=Mδ(3)(x) を物質場の源(ソース)とするエネルギー・運動量テンソル Tμν=T00=ρ で記述できる。このような Tμν に対応するアインシュタイン方程式の解はシュワルツシルト計量
ds2=(1+2Φ)dt2−(1+2Φ)−1dr2−r2dθ2−r2sin2θdφ2
で与えられる。ただし、宇宙定数はゼロとする。また、Φはこれまで通り重力ポテンシャル
Φ=−GMr
を表す。
以下では先ず、エネルギー・運動量テンソルを Tμν=T00=ρ としてシュワルツシルト計量がアインシュタイン方程式を満たすことを確認する。計量テンソルは
g00=(1+2Φ), g11=−(1+2Φ)−1, g22=−r2, g33=−r2sin2θg00=(1+2Φ)−1, g11=−(1+2Φ), g22=−1r2, g33=−1r2sin2θ
と書き下せる。これらから直接、クリストッフェル記号
Γλμν=12gλα(∂μgνα+∂νgμα−∂αgμν)
とリッチ・テンソル
Rνα=∂λΓλνα−∂νΓλλα+ΓλλβΓβνα−ΓλνβΓβλα
を計算できる。ゼロでない成分は以下で与えられる。
Γ100=(1+2Φ)(∂rΦ), Γ111=−(1+2Φ)−1(∂rΦ)Γ122=−r(1+2Φ), Γ133=−rsin2θ(1+2Φ), Γ233=−sinθcosθΓ010=(1+2Φ)−1(∂rΦ)Γ212=Γ313=1r2, Γ323=cosθsinθ R00=[∂r+2(Γ111+Γ212)]Γ100R11=(∂r−2Γ111)Γ111−2(∂r−Γ111)Γ212−2Γ212Γ212R22=∂rΓ122−(∂θ+Γ323)Γ323R33=∂rΓ133+(∂θ−Γ323)Γ233
リッチ・テンソルをΦで表すと
R00=(1+2Φ)∇2rΦR11=−(1+2Φ)−1∇2rΦR22=−2(Φ+r∂rΦ)R33=sin2θR22
となる。ただし、
∇2rΦ=∂2rΦ+2r∂rΦ
である。r≠0 の場合、明らかに R00=R11=R22=R33=0 であり、アインシュタイン方程式
Rαβ=8πG(Tαβ−12gαβT)
を満たす。
前回の非相対論的な解析と同様に、ポアソン方程式を用いて特異点 r=0 を含むアインシュタイン方程式(9.39)を確認できる。例えば、方程式の(0,0)成分は
R00=8πG(T00−12g00T)=4πGρ
で与えられる。ただし、T=Tμνgμν=(1+2Φ)−1ρ を用いた。よって、(9.55)から相対論的なポアソン方程式
∇2rΦ=4πGT
を得る。ただし、r≠0 において∇2rΦはゼロとなるので、∇2rΦの表現には符号の曖昧さがあることに注意する。例えば、(9.57)のR22は R22=−2(Φ+r∂rΦ)=±r2∇2rΦ と明示できる。同様に、(9.55)-(9.58)のいずれも符号の曖昧さをもつ。これはポアソン方程式の解の一意性と関係している。ここでは、(0,0)成分のアインシュタイン方程式がポアソン方程式(9.61)を導くようにR00を(9.55)の通りに定めた。これは、ミンコフスキー符号(+−−−)とTμνの定義に沿うものである。R11, R22, R33 の符号はアインシュタイン方程式の残りの成分が(9.61)と矛盾しないように決めればよい。言い換えると、一旦 R00 が定まれば、あとはポアソン方程式の一意性のもとで R11, R22, R33 を決めることができる。これより、関係式
R11=(1+2Φ)−1∇2rΦR22=r2∇2rΦR33=r2sin2θ∇2rΦ
が求まる。(9.55)と合わせて、スカラー曲率は
R=R00g00+R11g11+R22g22+R33g33=−2∇2rΦ
となる。これは、(9.37)の条件式 R=−8πGT と一致する。よって、シュワルツシルト計量(9.53)は確かにアインシュタイン方程式を満たすことが分かる。
実際、シュワルツシルト計量についてバーコフの定理と呼ばれる定理が存在する。この定理によると、
球対称なアインシュタイン方程式 (ただし、Λ=0) のうち非回転・非電化な唯一の解はシュワルツシルト解で与えられる。
シュワルツシルト計量は rsc=2GM に特異点を持つ。rscはシュワルツシルト半径と呼ばれる。動径距離rがrscより小さくなると、g00のg11符号が変化する。これは r<rsc の内側では解が静的ではなくなることを示唆する。この内側の領域 r<rsc はブラックホールと呼ばれる。一般に、ブラックホールには回転する解、電荷をもつ解があるいはその両方の解が存在する。カー計量の場合と同じく、これら一般解についてもバーコフの定理が適用される。これはブラックホール唯一性定理として知られている。
シュワルツシルト計量 ds2 を用いると、惑星運動の作用を S=−m∫ds と記述できる。非相対論的な近似のもとでこの作用は次のように変形できる。
S=−m∫dt√(1+2Φ)−(1+2Φ)−1˙r2−r2˙θ2−r2sin2θ˙φ2=−m∫dt(1+2Φ)12[1−11+2Φ(˙r21+2Φ+r2˙θ2+r2sin2θ˙φ2)]≈−m∫dt(1+Φ)[1−12(1−2Φ)((1−2Φ)˙r2+r2˙θ2+r2sin2θ˙φ2)]≈−m∫dt(1+Φ−12v2)
ただし、v2=˙r2+r2˙θ2+r2sin2θ˙φ2 である。近似等号 ≈ において非相対論的な近似 |Φ|≪1, |v|≪1 を用いた。光速 c の因子を明示すると、この作用は
S≈∫dt[−mc2+12mv2−(−GMmr)]
と表せる。よって、相対論的に不変な作用 S=−m∫ds にシュワルツシルト計量を適用すると、非相対論的な近似のもとでニュートン重力が導かれる。上記で省略した相対論的な効果は計算可能であり、惑星運動に対する一般相対論からの補正を与える。水星の近日点移動はその有名な一例である。
以前議論したように光の伝播は測地線方程式
d2xλds2+Γλαβdxαdsdxβds=0
で記述される。シュワルツシルト計量を適用すると、
¨r=−Γ100=−(1+2Φ)∂rΦ=rsc(rsc−r)2r3¨θ=¨φ=0
となる。ブラックホールの外側では通常の万有引力 ¨r<0 を受けるが内側 r<rsc ではこれは破綻する。ブラックホールの内側 r<rsc に始点を持ち外側 r>rsc に終点を持つような測地線は存在しない。内側 r<rsc の領域がブラックホールと呼ばれるのはこのためである。日心重力定数 GMsun=1.327×1020 m3⋅s−2 から太陽質量に対応するシュワルツシルト半径は
rsc=GMsunc2=2.95km
と算出できる。これはもちろん実際の太陽半径 rsun=6.96×105km よりも十分に小さい。
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