前回のエントリでは一様等方宇宙のFLRW計量からフリードマン方程式
˙a2a2+ka2=8πG3(ρ+Λ)˙ρ+3˙aa(ρ+P)=0
を導出した。今回はこの方程式の解を考えることで、一様等方宇宙を3つの時代に分類する。
1. 暗黒エネルギー優勢時代
まず、宇宙定数Λが優勢となる場合 Λ≫ρ を考える。宇宙定数は暗黒エネルギーの主な候補の1つなので、この場合は暗黒エネルギー優勢時代と呼ばれる。このとき、方程式(10.43)は
˙a2a2+ka2=8πG3Λ
となる。平坦空間 k=0 の場合、
˙aa=±√8πGΛ3
を得る。観測によると宇宙は膨張しているので、正の符号を選択すると
a(t)=a(0)exp(√8πGΛ3t)
と求まる。これは、暗黒エネルギー優勢時代では宇宙がインフレーション(急激な膨張)を起こしていることを示す。ここでは k=0 を仮定したので、インフレーション宇宙における空間は基本的に平坦である。現在の宇宙では宇宙定数Λは未知の何か別の理由によってその大部分が相殺されている。よって、現在の宇宙ではインフレーション宇宙の段階から抜け出していると考えられる。
2. 放射優勢時代
この時代は宇宙がほとんど光子で満たされる相対論的な極限に対応する。等方宇宙が断熱膨張しているとすると、関係式
P=13ρ
が成り立つ。よって、方程式(10.47)は
˙ρρ+4˙aa=0 ⟶ ρ=σa4
a˙a=√8πGσ3
と書ける。この一般解は
a2=2√8πGσ3t ⟶ a∼√t
で与えられる。宇宙の温度 T∼1/a は時間とともに冷却する。これは、ある時点で荷電粒子(主に電子と陽子)の再結合が起こり電気的に中性なガス(主に水素原子)が現れることを示唆する。さらに、物質から光子の放射が分離される(宇宙の晴れ上がり)。宇宙が中性化し膨張すると宇宙はさらに冷却する。こような宇宙の熱的な遷移の描像は宇宙マイクロ波背景放射の観測やヘリウム、リチウムの元素合成の割合についての観測結果から正しいと確認されている。
3. 物質優勢時代
宇宙の晴れ上がりが起きると、エネルギー密度 ρ が優勢になり、圧力 P と宇宙定数 Λ を無視できる。さらにインフレーション宇宙では k=0 と仮定できる。このとき、基本方程式(10.47), (10.43)はそれぞれ
ρ=σ′a3√a˙a=√8πGσ′3
と書ける。ただし、σ′は定数である。(10.57)から
ddt(a32)=32√8πGσ′3 ⟶ a∼t2/3
が分かる。(10.56)と合わせると、ρ∼σ′/t2 となる。ρ と t の関係性は放射優勢時代(10.53)と変わらない。また、(10.55)と(10.58)から宇宙の膨張率は放射優勢時代よりも物質優勢時代のほうが大きいことが分かる。
ハッブル定数は
[˙aa]today=H0≃h0[100kmsec1Mpc]
で定義される。ただし、H0はハッブル定数H(t)の現在の値を表す。h0は規格化されたハッブル定数であり、現在の観測値は h0≃0.70 で与えらえる。
H0を用いると、フリードマン方程式(10.43)は
1+ka20H20=8πGρ3H20+8πGΛ3H20
と表せる。右辺の Ωm=8πGρ3H20 と ΩΛ=8πGΛ3H20 は物質と宇宙定数の密度パラメータを表す。観測データによると
Ωm≈0.3, ΩΛ≈0.7
と与えらえる。(10.60)と(10.61)から、現在の宇宙空間は平坦 (k=0) であることが予測できる。この事実を説明する良い理論はまだ存在しない。この問題と関連して宇宙論には次のような未解決問題がある。
- なぜ現在の宇宙が平坦なのかを自然に説明するには宇宙のインフレーションが必要である。(インフレーションはいわゆる地平線問題を解消するためにも必要である。)
- 現在の宇宙がどのようにインフレーションを抜け出したのかは不明である。
- 初期宇宙では物質の密度パラメータ Ωmが優勢であったはずであるが、このことと今日の宇宙定数の密度パラメータ ΩΛ(≈0.7) の値との整合性はどのようにつくのか?
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