最近、久しぶりに手元にある宇宙論の本を見直したので少し古いですが紹介します。入門書としておススメは断然、真貝寿明(著)「現代物理学が描く宇宙論」
歴史的な側面も理論的な側面も初学者に分かりやすく充分に説明してくれている意欲作。図解や人物画もふんだんに取り入れていて、内容に親しみが持てるようとても配慮されています。ハッキリ言って素晴らしい。大学は入ったときにこういう本で勉強したかった!いまの学生はいいですね。
つぎに、ある程度全体像が分かったらおススメなのが松原隆彦(著)「現代宇宙論――時空と物質の共進化」
より最近の話題も含めた教科書としては辻川信二(著)「現代宇宙論講義」
がとても良かったです。最後まで読み通せていませんが、大学院レベルの講義録が手軽に読めるのはありがたいです。宇宙論の全体像を把握した後で読むとより理解が深まることでしょう。
あのゲージ理論の教科書で有名なChengが書いた相対論、宇宙論の入門書。素粒子論と同じく$(+---)$符号を用いているのかと思いきや、宇宙論の慣例にならって$(-+++)$符号を用いていたのにはすこし驚きました。
より発展的な教科書として参考になったのは "Modern Cosmology" by Scott Dodelson
理論と観測のデータがバランスよく解説されていて、宇宙論研究の熱気が伝わってくる充実した内容です。最新版が今年の11月に発刊されるそうです。
最後に理論的な発展に興味のある読者におススメなのは "Physical Foundations of Cosmology" by V. Mukhanov
ランダウ-リフシッツからの伝統でしょうか、ロシア人によるこの教科書も$(+---)$符号で書かれており、場の理論との関連に興味のある私にはありがたい。この本を読むまであまり気にしなかったのですが、フリードマン、サハロフ、リンデと、ロシアは伝統的に宇宙論が盛んです。
改めて宇宙論を概観すると、基礎理論となるアインシュタインの一般相対性理論の偉大さに感動します。抽象的な幾何学から曲がった空間、計量、トーション・ゼロの概念を導入しリーマン多様体の定義まで、ごく自然な考えからアインシュタイン方程式、一様等方宇宙のフリードマン方程式が導出される流れは美しく芸術的でもあります。当初は理論先行型の分野であった宇宙論も今では観測、シミュレーション、理論の様々な要素で構成される総合科学的な分野となっています。とくに大きな謎とされる暗黒物質、暗黒エネルギーの起源の解明は人類にとって大きな課題です。一般相対性理論の場合と同様に、抽象的な幾何学の概念(アイソメトリーや共形対称性など)を発展させることで、新しい(量子)重力理論が構成され、これらの謎を解き明かしてくれるのではないかと期待しています。
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