7.2 非アーベル型ボソン化
前節では、(1+1)次元フェルミ粒子系のアーベル型のボソン化を議論した。この節では、この議論をアーベル型の場合に拡張する。具体的には非アーベル型のカレントが成すカッツ-ムーディ代数を導出する。そのために、N個の自由フェルミ粒子を導入する。このとき、2成分のディラック・スピノール\psiは
\psi = \left( \begin{array}{c} \psi_1 \\ \psi_2 \\ \end{array} \right) \, \rightarrow \, \left( \begin{array}{c} \psi_1^a \\ \psi_2^a \\ \end{array} \right) ~~~~ ( a = 1,2, \cdots , N ) \tag{7.77}
と表せる。前節の J_{-} = \psi_1^\dag \psi_1 に対応するカレントは J_{-}^{ab} \sim {\psi_1^\dag}^a \cdot \psi_1^b と書ける。これらはN^2個のエルミート演算子と見做すことができる。ここで、SU(N)対称性を導入し、N^2個のカレントを次のように分類する。
\left\{ \begin{array}{ll} {\psi_1^\dag}^{a} \, \psi_1^a & \mbox{トレース成分のカレント} \\ {\psi_1^\dag}^{a} ( T^\al )_{ab} \psi_1^b & \mbox{$SU(N)$カレント} \\ \end{array} \right. \tag{7.78}
ただし、T^\al (\al = 1,2, \cdots , N^2 -1 ) はSU(N)群の生成子であり、トレース・ゼロのN \times Nエルミート行列で表現される。SU(N)代数は
[ T^\al , \, T^\bt ] = i f^{\al \bt \ga} T^\ga \tag{7.79}
で与えられる。いつも通り、T^\alの規格化を
\Tr ( T^\al T^\bt ) = \hf \del^{\al\bt} \tag{7.80}
とする。アーベル型の場合、カレントJ_{-} (x) を
J_{-} (x) \, = \, \psi_1^\dag (x + \ep ) \, \psi_1 ( x - \ep ) \tag{7.24}
と定義した。ただし、x = ( x^0 , x^1 ), x \pm \ep = (x^0 , x^1 \pm \ep )であり、計算の最後に \ep \rightarrow 0 の極限を取った。これとの類推から、非アーベル型のカレントを
J_{-}^{\al} (x) \, = \, \psi_1^\dag ( x + \ep ) \, T^\al \, \psi_1 ( x - \ep ) \tag{7.81}
と定義できる。
これより、J_{-}^{\al} (x)の同時刻交換関係は
\begin{eqnarray} &&[ J_{-}^{\al} (x^0 , x^1 ) , \, J_{-}^{\bt} (x^0 , y^1 ) ] \nonumber \\ &=& \left[ \psi_1^\dag ( x + \ep ) T^\al \psi_1 ( x - \ep ), \, \psi_1^\dag ( y + \ep ) T^\bt \psi_1 ( y - \ep ) \right] \nonumber \\ &=& {\psi_1^\dag}^a (x + \ep ) ( T^\al )_{ab} \left\{ \psi_1^b ( x - \ep ) , \, {\psi_1^\dag}^c (y + \ep ) \right\} ( T^\bt )_{cd} \, \psi_1^d ( y - \ep ) \nonumber \\ && ~~ - {\psi_1^\dag}^a (y + \ep ) ( T^\bt )_{ab} \left\{ \psi_1^b ( y - \ep ) , \, {\psi_1^\dag}^c (x + \ep ) \right\} ( T^\al )_{cd} \, \psi_1^d ( x - \ep ) \nonumber \\ &=& \psi_1^\dag ( x + \ep ) T^\al T^\bt \psi_1 ( y - \ep ) \del ( x - y - 2 \ep ) \nonumber \\ && ~~~~ - \psi_1^\dag ( y + \ep ) T^\bt T^\al \psi_1 ( x - \ep ) \del ( x - y + 2 \ep ) \tag{7.82} \end{eqnarray}
と計算できる。ただし、スピノールの同時刻反交換関係
\left\{ \psi_1^a ( x^0 , x^1 ) , \, {\psi_1^\dag}^b ( x^0 , y^1 ) \right\} = \del^{ab} \del ( x^1 - y^1 ) \tag{7.83}
を用いた。(7.82)は前節のアーベル型の関係式
\begin{eqnarray} [ J_{-} (x) , \, J_{-} (x) ] &=& \left[ \psi_1^\dag (x + \ep ) \psi_1 (x - \ep ) , \, \psi_1^\dag (y + \ep ) \psi_1 (y - \ep ) \right] \nonumber \\ &=& \psi_1^\dag (x + \ep ) \psi_1 ( y - \ep ) \del (x- y- 2\ep ) \nonumber \\ && ~~~~ - \psi_1^\dag ( y + \ep ) \psi_1 ( x- \ep ) \del (x- y + 2\ep ) \tag{7.25} \end{eqnarray}
の非アーベル型の拡張になっており、以前と同様に
[ J_{-}^{\al} (x ) , \, J_{-}^{\bt} (y ) ] = if^{\al \bt \ga} J_{-}^{\ga} (x ) \del ( x - y ) - \frac{i}{2 \pi} \del^{\al \bt} \frac{\d}{\d x} \del ( x - y ) \tag{7.84}
と変形できる。ただし、SU(N)群の生成子T^\alについての関係式(7.79), (7.80)を用いた。また、アーベル型の場合と同様に {\psi_1^\dag}^a ( x + \ep ) \psi_1^b ( y - \ep ) と {\psi_1^\dag}^a ( y + \ep ) \psi_1^b ( x - \ep ) の x^1 \rightarrow y^1 での評価は
\begin{eqnarray} {\psi_1^\dag}^a ( x + \ep ) \psi_1^b ( y - \ep ) & \longrightarrow & \frac{i}{2\pi} \frac{1}{2 \ep} \del^{ab} ~~~~ ( x^1 \rightarrow y^1 ) \tag{7.85}\\ {\psi_1^\dag}^a ( y + \ep ) \psi_1^b ( x - \ep ) & \longrightarrow & \frac{i}{2\pi} \frac{1}{2 \ep} \del^{ab} ~~~~ ( x^1 \rightarrow y^1 ) \tag{7.86} \end{eqnarray}
で与えられることを用いた。交換関係(7.84)は非アーベル型のカッツ-ムーディ代数に対応する。この代数はカレント代数としても知られている。(7.84)の座標成分を明示的に書くと
[ J_{-}^{\al} (x^0 , x^1 ) , \, J_{-}^{\bt} (x^0 , y^1 ) ] = if^{\al \bt \ga} J_{-}^{\ga} (x^0 , x^1 ) \del ( x^1 - y^1 ) - \frac{i}{2 \pi} \del^{\al \bt} \frac{\d}{\d x^1} \del ( x^1 - y^1 ) \tag{7.87}
となる。もう一方のフェルミオン・カレント J_+^\al (x) = \psi_2^\dag ( x + \ep ) T^\al \psi_2 (x - \ep ) の代数も同様に計算でき
[ J_{+}^{\al} (x^0 , x^1 ) , \, J_{+}^{\bt} (x^0 , y^1 ) ] = if^{\al \bt \ga} J_{+}^{\ga} (x^0 , x^1 ) \del ( x^1 - y^1 ) + \frac{i}{2 \pi} \del^{\al \bt} \frac{\d}{\d x^1} \del ( x^1 - y^1 ) \tag{7.88}
と求まる。
ここで、カレントJ_-^\al (x)を用いて新しいカレントJ_n^\alを
J_n^\al = J_n^\al ( x^0 ) = \int_{0}^{2 \pi R} \!\! e^{in \frac{x^1}{R}} J_-^\al (x^0 , x^1 ) dx^1 \tag{7.89}
とパラメータ表示しよう。ただし、nは整数である。このJ_n^\al ( x^0 )を用いると、カレント代数の異なる表現を求めることができる。つまり、J_-^\al (x)の代数(7.87)に \exp \left( in \frac{x^1}{R} \right) \exp \left( i m \frac{y^1}{R} \right) を掛けて、半径Rの円周に沿ってx^1とy^1の積分を取ると
\begin{eqnarray} [ J_n^\al , \, J_m^\bt ] &=& i f^{\al\bt\ga} \int_{x^1} \int_{y^1} e^{i n \frac{x^1}{R} + i m \frac{y^1}{R} } J^\ga (x) \del ( x^1 - y^1 ) dx^1 dy^1 \nonumber \\ && - \frac{i}{2 \pi} \del^{\al\bt} \int_{x^1} \int_{y^1} e^{in \frac{x^1}{R} } \frac{\d}{\d x^1} \del ( x^1 - y^1 ) e^{im \frac{y^1}{R} } dx^1 dy^1 \nonumber \\ &=& i f^{\al\bt\ga} J_{n+m}^\ga + m \del^{\al\bt} \del_{n+m, 0} \tag{7.90} \end{eqnarray}
を得る。ここで、第2項の導出に関係式
\int_{0}^{2 \pi R} \!\! e^{i (n+m) \frac{x^1}{R}} dx^1 \, = \, 2 \pi R \, \del_{n+m, 0} \tag{7.91}
を用いた。m= n= 0 の場合、(7.90)は通常のSU(N)代数に帰着する。よって、非アーベル型のカッツ-ムーディ代数(7.90)は拡張されたSU(N)代数と解釈できる。
数学の文献では、カレント代数に付随するレベル数kが存在し、これを含めると(7.90)は
[ J_n^\al , \, J_m^\bt ] = i f^{\al\bt\ga} J_{n+m}^\ga + k m \del^{\al\bt} \del_{n+m, 0} \tag{7.92}
と表せる。カレント代数のレベル数kはユニタリー性の要請から整数であることが知られている。(7.90)はk = 1の場合に相当する。実際、「k=1のカッツ-ムーディ代数はユニタリー既約表現を唯一つだけ持つ」という(カッツの)定理が存在し、これは代数(7.68)のユニタリー既約表現の唯一性を保証する。この意味でこの定理は1, 4, 6章で議論したハイゼンベルク代数のストーン-フォン・ノイマンの定理と類似している。