∂ψ1∂x0−∂ψ1∂x1=0, ∂ψ2∂x0+∂ψ2∂x1=0
に従う。フェルミオンのカレント J=ˉψγψ は
J=ˉψγψ=(ψ†1ψ1+ψ†2ψ2−ψ†1ψ1+ψ†2ψ2)≡(J0J1)
と計算できた。ここで、カレントJ±を
ψ†1ψ1=J0−J12 ≡ J−ψ†2ψ2=J0+J12 ≡ J+
で定義し、これらのカレントの代数を考える。J−を
J−(x)=ψ†1(x+ϵ)ψ1(x−ϵ)
とおき、特異点の振る舞いに注意して計算の最後に ϵ→0 の極限をとることにする。x, x±ϵは複合記号であり、それぞれx=(x0,x1), x±ϵ=(x0,x1±ϵ) を表す。このとき、J−(x)の交換関係はフェルミオン場の同時刻反交換関係
ψ(x0,x1)ψ(x0,y1)+ψ(x0,y1)ψ(x0,x1)=0ψ†(x0,x1)ψ†(x0,y1)+ψ†(x0,y1)ψ†(x0,x1)=0ψ(x0,x1)ψ†(x0,y1)+ψ†(x0,y1)ψ(x0,x1)=δ(x1−y1)1
を用いると
[J−(x),J−(x)]=[ψ†1(x+ϵ)ψ1(x−ϵ),ψ†1(y+ϵ)ψ1(y−ϵ)]=ψ†1(x+ϵ)ψ1(y−ϵ)δ(x−y−2ϵ) −ψ†1(y+ϵ)ψ1(x−ϵ)δ(x−y+2ϵ)
と計算きる。ここで、δ(x−y±2ϵ)は
δ(x−y±2ϵ)=δ(x−y)±2ϵ∂∂xδ(x−y)+O(ϵ2)
と展開できるので、ϵ→0 の極限で(7.25)がゼロとならないためには関係式
ψ†1(x+ϵ)ψ1(y−ϵ)∼1ϵ (x→y)
を要請する必要がある。
(1+1)次元のフェルミオン伝播関数
上式のψ†1(x+ϵ)ψ1(y−ϵ) を評価するには2通りの方法がある。1つはモード展開を利用するもので、もう1つはフェルミオンの伝播関数を用いるものである。ここでは、後者のアプローチを採用する。フェルミオンψ1の伝播関数は
S−(x,y)=⟨0|ψ1(x0,x1)ψ†1(y0,y1)|0⟩θ(x0−y0) −⟨0|ψ†1(y0,y1)ψ1(x0,x1)|0⟩θ(y0−x0) =⟨0|[ψ1(x)ψ†1(y)θ(x0−y0)−ψ†1(y)ψ1(x)θ(y0−x0)]|0⟩
と定義される。ここで、θ(x0−y0)はヘヴィサイドのステップ関数
θ(x0−y0)={ 1 (x0>y0)0 (x0<y0)
である。(7.28)の負号はx0=y0におけるディラック場ψ1の同時刻反交換関係に由来する。(7.17)で示したように、ψ1はディラック方程式
(∂∂x0−∂∂x1)ψ1=0
に従う。つぎに、この方程式を用いてS−(x,y)の微分を計算すると
∂∂x0S−(x,y)=⟨0|[θ(x0−y0)∂ψ1(x)∂x0ψ†1(y)−θ(y0−x0)ψ†1(y)∂ψ1(x)∂x0]|0⟩+⟨0|[δ(x0−y0)ψ1(x)ψ†1(y)+δ(y0−x0)ψ†1(y)ψ1(x)]|0⟩⏟=δ(x0−y0)⟨0|{ψ1(x),ψ†1(y)}|0⟩=δ(x0−y0)δ(x1−y1)∂∂x1S−(x,y)=⟨0|[θ(x0−y0)∂ψ1(x)∂x1ψ†1(y)−θ(y0−x0)ψ†1(y)∂ψ1(x)∂x1]|0⟩
となる。ただし、関係式
∂∂x0θ(x0−y0)=δ(x0−y0)
を用いた。(7.31)と(7.32)から
(∂∂x0−∂∂x1)S−(x,y)=δ(x0−y0)δ(x1−y1)
となることが分かる。この解は
S−(x,y)=∫d2p(2π)2ie−ip0(x0−y0)+ip1(x1−y1)p20−p21(p0−p1)=i(∂0+∂1)∫∞−∞dp02π∫∞−∞dp12πie−ip0(x0−y0)+ip1(x1−y1)p20−p21⏟≡G(x,y)
で与えられる。積分G(x,y)は、下図に示すようにp1からpE=−ip1への解析接続を行うと、2次元ラプラス方程式のグリーン関数に変形できる。
p1からpEへのウィック回転 |
G(x,y)=∫∞−∞dp02π∫∞−∞dpE2πe−ip0(x0−y0)−ipE(i(x1−y1))p20+p2E=14πlog((x0−y0)2−(x1−y1)2)
ただし、解析接続を適切に行うには被積分関数の分母を (pE+ip0−η)(pE−ip0+η) と理解しなければならない。ここで、ηは正の微小量であり、最終的に η→0 の極限をとる。このような実軸から虚軸への回転はウィック回転と呼ばれる。
(7.35), (7.36)から、S−(x,y)は
S−(x,y)=i2π1(x0−y0)+(x1−y1)
と求まる。J+=ψ†2ψ2 の場合も同様に
S+(x,y)=i2π1(x0−y0)−(x1−y1)
が得られる。係数i2πは次のように確認することもできる。定数cを用いてS−(x,y)を
S−(x,y)=c(x0−y0)+(x1−y1)=c(x0−y0)−(x1−y1)(x0−y0)2−(x1−y1)2+ϵ2
と表し、伝番関数の満たす方程式(7.34)からcを決定する。(7.34)は (∂0−∂1)S−(x,y)=δ(2)(x−y) を意味するので、両辺の積分をとると
c(∂0−∂1)∫∞−∞dx0∫∞−∞dx1x0−x1(x0)2−(x1)2+ϵ2=1
となる。左辺は次のように計算できる。
2c∫∞−∞dx0∫∞−∞dx1ϵ2[(x0)2−(x1)2+ϵ2]2=−i2c∫∞−∞dx0∫∞−∞dxEϵ2[(x0)2+(xE)2+ϵ2]2=−i2c∫∞0πdr2ϵ2(r2+ϵ2)2=−i2πc
ただし、x1からxE=ix1へのウィック回転を用いた。(7.40), (7.41)から(7.37)の係数i2πが正しいことが確認できる。
伝播関数S−(x,y)を同時刻 x0→y0 (x0>y0) で評価すると
⟨0|ψ1(x)ψ†1(y)|0⟩=i2π1(x1−y1)
を得る。これは冒頭で要請した関係式
ψ†1(x+ϵ)ψ1(y−ϵ)∼1ϵ (x→y)
に他ならない。
ψ1(x)ψ†1(y)=i2π1x1−y1+f(x1−y1)O
と表せる。ただし、⟨0|O|0⟩=0 であり、f(x1−y1)は(x1−y1)の関数を表す。f(x1−y1)は x1→y1 の極限で特異点を持たないと主張できる。これは次元解析から分かる。まず、⟨0|ψ1ψ†1|0⟩∼1x1 であるので、ψ1は (長さ)−1/2=L−1/2 の次元をもつ。Oは真空期待値がゼロでスピノールの双線形の形を持つので、ψ†1ψ1, ψ†1∇ψ1の線形結合で表せる。前者の場合、Oの次元は O(ψ†1ψ1)∼L−1 となり、次元解析から f(x1−y1)∼log(x1−y1)∼L0 が分かる。後者の場合は、O(ψ†1∇ψ1)∼L−2 から、f(x1−y1)∼L となる。よって、任意のOに対してf(x1−y1)は x1→y1 の極限で特異点を持たない。
(1+1)次元フェルミオン系の観測量代数
(7.27)の具体的な形が分かったので、(7.25)の計算を再開しよう。上の結果から、ψ†1(x+ϵ)ψ1(y−ϵ) と ψ†1(y+ϵ)ψ1(x−ϵ) の x1→y1 での値はϵ−1のオーダーで
ψ†1(x+ϵ)ψ1(y−ϵ)=i2π1(x1+ϵ)−(y1−ϵ)⟶i2π12ϵ (x1→y1)ψ†1(y+ϵ)ψ1(x−ϵ)=i2π1(y1+ϵ)−(x1−ϵ)⟶i2π12ϵ (x1→y1)
と計算できる。したがって、カレントJ−の代数は
[J−(x0,x1),J−(x0,y1)]=−iπ∂∂x1δ(x1−y1)
となる。(7.23)と同様にカレントJ+を J+(x)=ψ†2(x+ϵ)ψ2(x−ϵ) と定義すると、 J+の代数は
[J+(x0,x1),J+(x0,y1)]=iπ∂∂x1δ(x1−y1)
となる。よって、代数(7.46), (7.47)は(1+1)次元フェルミオン系の観測量代数を与える。この代数はアーベル型のカッツ-ムーディ代数に対応する。次節ではこの代数の非アーベル型へ一般化を解説する。
カレントのボソン表示
つぎに、実変数で表されるボソン場ϕ(x0,x1)を導入して、観測量J−(x0,x1)のボソン表示を考える。このボソン場の時間微分 ∂∂x0ϕ(x0,x1)=˙ϕ(x0,x1) は独立変数であり、次の同時刻交換関係を満たす。
[ϕ(x0,x1),ϕ(x0,y1)]=0[˙ϕ(x0,x1),˙ϕ(x0,y1)]=0[ϕ(x0,x1),˙ϕ(x0,y1)]=iδ(x1−y1)
これらの同時刻交換関係はボソン演算子の交換関係
[ak,al]=0, [ak,a†l]=δkl, [a†k,a†l]=0
と等価である。これは、ボソン場ϕ(x)のモード展開
ϕ(x)=∑k1√2k0L(ake−ikx+a†keikx)
を用いれば確認できる。ただし、ikx=ik0x0−ik1x1 とし、kの和はL→∞ の極限で
∑k→L∫dk12π
と置き換えられる。
カレントJ−のボソン表示は
J−=α(∂ϕ∂x0−∂ϕ∂x1)
で与えられる。ただし、αは定数である。実際にJ−の交換関係を計算すると
[J−(x0,x1),J−(x0,y1)]=α2[˙ϕ(x)−∂∂x1ϕ(x),˙ϕ(y)−∂∂y1ϕ(y)]=−α2∂∂y1[˙ϕ(x),ϕ(y)]−α2∂∂x1[ϕ(x),˙ϕ(y)]=iα2∂∂y1δ(y1−x1)−iα2∂∂x1δ(x1−y1)=−iα2∂∂x1(δ(y1−x1)+δ(x1−y1))=−i2α2∂∂x1δ(x1−y1)
となる。ただし、デルタ関数の定義
δ(x1−y1)=∫∞−∞dk2πeik(x1−y1)
から、∂∂x1δ(x1−y1)=−∂∂y1δ(x1−y1) となることを用いた。(7.46)と(7.52)を比較すると、定数αをα2=12πと決められる。したがって、フェルミオン観測量(カレント)J−=ψ†1ψ1 のボソン表示の1つは
J−(x)=ψ†1(x)ψ1(x)=1√2π(∂∂x0−∂∂x1)ϕ(x)
で与えられる。同様に、J+=ψ†2ψ2 のボソン化も
J+(x)=ψ†2(x)ψ2(x)=1√2π(∂∂x0+∂∂x1)ϕ(x)
と表示できる。
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