前回に引き続いてアーベル型ボソン化の話を進めよう。
ボソン場とフェルミオン場の一対一対応
前回導いた関係式
J−(x)=ψ†1(x)ψ1(x)=1√2π(∂∂x0−∂∂x1)ϕ(x)
はフェルミオン・カレントJ−(x)がボソンのスカラー場ϕ(x)の関数として表せることを示している。フェルミオン場ψ1(x)についても同様にψ1(x)をボソン場ϕ(x)の関数として表せるだろうか?アーベル型の場合、これは可能であり、マンデルスタムによる次の関係式が知られている。
ψ1(x)=Aexp(iϕ(x)+iπ∫∞x1˙ϕ(x0,˜x1)d˜x1)≡eiΦ1(x)
ただし、Aは規格化定数。上式を用いるとψ†1(x)とψ1(y)の反交換関係を次のように確認できる。
ψ†1(x)ψ1(y)=A2e−iΨ1(x)eiΦ1(y)=A2e−iΦ1(x)+iΦ1(y)e12[Φ1(x),Φ1(y)]=−ψ1(y)ψ†1(x)
ただし、ϕの交換関係
[ϕ(x0,x1),˙ϕ(x0,y1)]=iδ(x1−y1)
を用いた。また、演算子A, Bについて
eAeB=eA+Be12[A,B]
が成り立つことを用いた。ここで、[A,B]はc数である。因子exp(iπ∫∞x1˙ϕ(x0,˜x1)d˜x1)はクライン変換(7.8)で現れた因子exp(iπ∑k<iNk)と類似した働きをすることに注意しよう。
反交換関係(7.57)の導出は関係式(7.56)を
ψ1(x)=Aexp(i√πϕ(x)+i√π∫∞x1˙ϕ(x0,˜x1)d˜x1)
と置き換えても変わらない。また、スピノールのカイラリティからもう一方のスピノールψ2(x)を
ψ2(x)=Aexp(−i√πϕ(x)+i√π∫∞x1˙ϕ(x0,˜x1)d˜x1)
と定義できる。規格化因子Aは、例えば
ψ†1(x+ϵ)ψ1(y−ϵ)=i2π1(x1+ϵ)−(y1−ϵ)⟶i2π12ϵ (x1→y1)
から決定でき、A=1√2π(2ϵ)となることが分かる。これより、ψ†1(x+ϵ)ψ1(x−ϵ) を計算すると
ψ†1(x+ϵ)ψ1(x−ϵ)=12π12ϵe−iΦ1(x+ϵ)eiΦ1(x−ϵ)=i2π12ϵe−i(Φ1(x+ϵ)−Φ2(x−ϵ))=i2π12ϵ+12π∂∂x1Φ1(x0,x1)+O(ϵ)=i2π12ϵ−1√2J−(x)+O(ϵ)
と求まる。ここで、Φ1(x)は
Φ1(x)=√πϕ(x)+√π∫∞x1˙ϕ(x0,˜x1)d˜x1
で与えられる。また、関係式(7.54)から
∂∂x1Φ1=√π(∂∂x1ϕ−∂∂x0ϕ)=−√2πJ−(x)
であることを用いた。同様に、関係式
ψ1(x+ϵ)ψ†1(x−ϵ)=i2π12ϵ+1√2ψ†1(x+ϵ)ψ1(x−ϵ)+O(ϵ)
が得られる。これは、前回紹介した同時刻における関係式
ψ1(x)ψ†1(y)=i2π1x1−y1+f(x1−y1)O
の具体的な表現である。(つまり、ψ1を(7.59)で定義すると真空期待値がゼロとなる演算子Oは具体的にψ†1ψ1と求まる。)
モード展開
つぎに、(7.49)と同様にボソン場Φ1(x)のモード展開を考える。
Φ1(x)=∑k≥11√2k0L(ake−ik0x0−ik1x1+a†keik0x0+ik1x1)
ただし、ここではユークリッド計量を用いた。質量がゼロの場合(m=0)、k0=√k21+m2=|k1| であり、Φ1はスケール不変な演算子となる。このとき、Φ1(x)は
Φ1(x)=1√2L∑k≥11√k(ake−ik(x0+x1)+a†keik(x0+x1))
と書ける。ここで、空間方向を円周上にコンパクト化 0≤x1≤2π (L=2π) して、Φ1(x)に周期性を課すと、モード展開は一般に整数 n∈Z で展開できるので、
Φ1(x)=1√4π∑n<01√|n|(ane−in(x0+x1)+a†nein(x0+x1)) +1√4π∑n>01√n(ane−in(x0+x1)+a†nein(x0+x1))+ϕ0=1√π∑n>01√n(ane−in(x0+x1)+a†nein(x0+x1))+ϕ0
となる。ただし、a−m=a†m, a†−m=am (m>0) を用いた。また、自由ボソン場Φ1のゼロモードϕ0も含めた。ゼロモードϕ0の正準共役は π0=˙ϕ0 で与えられ、正準交換関係
[ϕ0,π0]=i
∂ψ1∂x0−∂ψ1∂x1=0
を満たすので、ψ1(x)は(x0+x1)の関数である。よって、関係式 ψ1(x)=ψ1(x0+x1)∼exp(iΦ1(x0+x1)) からΦ1(x)も(x0+x1)の関数である。このことに注意すると、 上式でのゼロモードによる寄与は正しくは ϕ0+π0(x0+x1) で与えられることが分かる。Φ1のようにカイラル・フェルミオンと関係するボソンはカイラル・ボソンと呼ばれる。以上より、Φ1のモード展開は
Φ1(x0+x1)=∑n>01√n(ane−in(x0+x1)+a†nein(x0+x1))+ϕ0+π0(x0+x1)
と再定義できる。
前回言及したようにフェルミオン伝播関数⟨0|ψ1ψ†1|0⟩はモード展開を利用して計算することもできる。ここでは上式を用いて伝播関数を計算する。通常用いられる手法は、上述の通り空間方向がコンパクト化されているとして複素変数
z=ei(x0+x1)
を導入して、zについての場の理論を考えることである。(1+1)次元でのこのような手法は動径量子化と呼ばれる。このとき、モード展開は
Φ1(z)=∑n>01√n(anz−n+a†nzn)+ϕ0−iπ0logz
と表せる。(7.59)からψ1(z)は ψ1(z)=exp(iΦ1(z)) と定義できる。ただし、規格化定数はΦ1に吸収した。よって、ψ†1(z)|0⟩を計算すると
ψ†1(z)|0⟩=exp(−i∑n≥11√n(anz−n+a†nzn))e−iϕ0−π0logz|0⟩=exp(−i∑n≥1a†nzn√n)exp(12∑n≥11n)e−iϕ0z12|0⟩
となる。ただし、関係式(7.1), (7.58), (7.68)と真空状態の定義 an|0⟩=π0|0⟩=0 を用いた。因子∑n≥11nは明らかに発散する。真空期待値として有限な物理量をψ1(z)から得るには、eiΦ1(z)の正規順序積を用いてψ1(z)を再定義する必要がある。つまり、
ψ1(z)=:eiΦ1(z):≡exp(i∑n≥1a†nzn√n)exp(i∑n≥1anz−n√n)eiϕ0eπ0logz
と定義し直す。この演算子は2次元共形場理論におけるカイラル・ボソンの頂点演算子に対応している。これより、伝播関数⟨0|ψ1ψ†1|0⟩の計算は次のように実行できる。
⟨0|ψ1(z)ψ†1(w)|0⟩=⟨0|exp(i∑n≥1anz−n√n)exp(−i∑m≥1a†mzw√m)eπ0logze−iϕ0|0⟩=⟨0|exp(∑n,mz−nwm√nm[an,a†m])e−i[π0,ϕ0]logz|0⟩=exp(∑n≥11n(wz)n)z−1=e−log(1−wz)z−1=1z−w
ただし、関係式
eAeB=eBeAe[A,B]
を用いた。z=ei(x0+x1) と w=ei(y0+y1) を代入すると
1z−w=1ei(x0+x1)−ei(y0+y1)∼1(x0−y0)+(x1−y1) (z→w)
となる。これは以前に導いた伝播関数
S−(x,y)=i2π1(x0−y0)+(x1−y1)
の結果と一致する。
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