4.2 分数量子ホール効果の有効理論
前節では分数量子ホール効果のラフリン波動関数と正孔励起 (hole excitation) 状態を考えた。今節では、つぎの作用をもちいて分数量子ホール効果の有効理論を考える。
S=∫d3x[k4πϵμναaμ∂νaα+aμ(jμ−e2πBμ)]
ただし、aμ (μ=0,1,2) は新しい補助場であり、jμは正孔の3元電流密度(カレント)を表す。kはあとで決定される定数である。場の強さBμは
Bμ=ϵμνα∂νAα
で定義される。ここでは3次元共変表示を用いているので、B0は磁場を表し、Bi (i=1,2) は電場に対応する。作用(4.11)の電磁相互作用をより明示的に書くと
−e2π∫d3x aμϵμνα∂νAα=e2π∫d3x ∂νaμϵμναAα=−e2π∫d3x ϵαμν∂μaνAα≡∫d3x AαJαJα=−e2πϵαμν∂μaν
となる。ただし、Jμは電磁カレントである。
作用(4.11)でaμの変分をとると運動方程式
k2πϵμνα∂νaα+jμ−e2πBμ=0
が導かれる。(4.13)と(4.14)から
Jμ=ek(jμ−e2πBμ)=ekjμ−e22πkϵμνα∂νAα
が分かる。第1項は単位正孔あたりの電荷がe/kであることを示している。よって、前節の最後に触れた議論から、分数量子ホールの場合には
k=2p+1 (p=1,2,⋯)
と決めることが出来る。
正孔の動力学
正孔の動力学(ダイナミクス)を議論するには正孔の位置に時間依存性を導入すればよい。つまり、wμ=wμ(t) (μ=0,1,2, t=x0) と置く。正孔カレントは
jμ=˙wμδ(2)(→x−→w(t))
と表せる。ただし、→x, →wは2次元ベクトル→x=(x1,x2), →w=(w1,w2)である。以下では、ベクトルであることが明らかな場合は矢印を省略する。この正孔カレントを(4.11)に用いると、1-正孔動力学の有効作用は
Shole=∫d3xk4πϵμναaμ∂νaα+∫aμ(w)˙wμdt+∫m˙w22dt
と表せる。ただし、正孔の運動エネルギーを追加した。この有効作用でaμの変分を取ると運動方程式
k2πϵμνα∂νaα+˙xμδ(2)(x−w)=0
が求まる。μ=0のとき、これは
k2π(∂1a2−∂2a1)+δ(2)(x−w)=0
と書ける。ここで、便宜上、つぎの複素座標を導入する。
z=x1+ix2, ˉz=x1−ix2∂z=12(∂1−i∂2) ∂ˉz=12(∂1+i∂2)az=12(a1−ia2), aˉz=12(a1+ia2)
これらの組み合わせを用いると、(∂1a2−∂2a1)は
∂1a2−∂2a1=(∂z+∂ˉz)(aˉz−azi)−∂ˉz−∂zi(az+aˉz)=2i(∂zaˉz−∂ˉzaz)
と表せる。よって、運動方程式(4.20)はつぎの形になる。
∂zaˉz−∂ˉzaz=−iπkδ(2)(x−w)
ここで、複素座標とデルタ関数δ(2)(x)について調べよう。∂z1ˉz=0 (ˉz≠0) であり、
∫∂∂z(1ˉz)dzdˉz=∫dˉzˉz=−2πi
となることに注意すると
∂∂z(1ˉz)=Cδ(2)(x)
と置ける。定数Cはdzdˉz=−i2dx1dx2の関係式を用いて上式のx積分を考えるとC=πと決まる。∂ˉz1zの場合も同様の結果が得られる。よって、
∂∂z(1ˉz)=πδ(2)(x) , ∂∂ˉz(1z)=πδ(2)(x)
が求まる。2つ目の式は1つ目の複素共役である。これより、関係式
∂z1ˉz−ˉw=πδ(2)(x−w), ∂ˉz1z−w=πδ(2)(x−w)
が分かる。これらを用いると、(4.25)の解は
aˉz=−i2k1ˉz−ˉw, az=i2k1z−w
で与えられることが簡単に分かる。
つぎに、正孔の有効作用(4.18)に戻り、a0=0のゲージで座標z(≠w)にある正孔の動力学を考える。このとき、有効作用は
Shole=∫dt(12m˙ˉz˙z+az˙z+aˉz˙ˉz)=∫dt (12m˙x2+a1˙x1+a2˙x2)
と表せる。この作用の正準運動量は
pi=m˙xi+ai≡−i∂∂xi
で与えられる。複素座標(4.21)-(4.23)で表すと、これは
m˙z=2i(∂ˉz−iaˉz)m˙ˉz=2i(∂z−iaz)
と書ける。これは、通常のシュレーディンガー表現とは異なるハイゼンベルク代数の表現と解釈できる。次節ではこの解釈について詳しく見ていく。
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