2020-02-24

ILC誘致は内閣主導で!(もはや学術界の意見集約は困難)

最近は新型コロナウイルスの話題ですっかり忘れていましたが、ILC誘致について進展があったようです。このブログではILCの誘致について何度か取り上げてきました。

https://yasuabe.blogspot.com/search/label/ILC

以前の話では学術会議のマスタープランは昨年の10月には選定されるということでしたが、先月末にようやく大型研究計画のマスタープランが策定されました。

http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/kohyo-24-t286-1.html

これによるとILC計画は「学術大型研究計画(区分I 146件)」

http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-24-t286-3-1.pdf#page=10

には選ばれているものの、その中でも特に重要となる「重点大型研究計画(31件)」には選ばれませんでした。学術会議の提言によると重点大型研究計画の選定方針は
区分Ⅰの学術大型研究計画として選定された計画の中から、計画の成熟度、我が国としての戦略性、緊急性等も考慮して速やかに実施すべき計画として重点大型研究計画を選定した。
とのことなので、学術会議としてはILCは強くは推薦できないという従来の提言を踏襲したものとなっています。結局、政財界からの後押しがあったのに学術界が一枚岩になってILC推進に動けなかったというとても残念な結果になりました。今後ものらりくらりと時間だけが過ぎていくのでしょうか?

2020-02-20

確定申告、車内時計のバックライト交換、クルーズ船から下船

先日、恒例の確定申告に行きました。妻の分ですが。今年は証明書の収集を妻に任せていたため予定納税、生命保険控除、ふるさと納税(15部のうち1部)の証明書がどうしても見付からず、そのまま提出してきました。毎年のことながら確定申告の代理提出はめんどくさいです。そろそろ来年は本人がマイナンバーカードを取得して、自分でe-Tax してもらいたいです。(本人に何度言っても聞く耳を持ってくれないのでここで愚痴るしかないのが悲しいです!)

あと、平成14年式のカローラフィールダーの時計のバックライトが消えてしまい、夜の運転が不便だったので、ディーラーでバルブ交換をしてもらいました。ハザードランプ点灯時のバックライトも同時に切れたのでその電球も替えてもらいました。DIYでやるにはこちら

https://kurumaneta.com/2019/07/colora-120-inpane/

で丁寧に紹介されているようにインパネを取り外す必要があるようです。素人にはとても無理そうなのでディーラーに持って行って正解でした。工賃含めて3144円でした。ついでに帰りにホームセンターによってワイパーを交換しました。1500円ぐらい。

最後に以前報告しましたが、今日義理の両親がクルーズ船から無事に下船しました。2人ともウイルス検査陰性だったのでとりあえず安心しました。長い船旅&個室待機おつかれさまでした!ご自宅でじっくり休んでください。

2020-02-18

テニスのやり過ぎでテニス肘の疑い

以前のエントリー

https://yasuabe.blogspot.com/2018/07/blog-post_31.html
https://yasuabe.blogspot.com/2018/08/blog-post_37.html

で左肩の腱板損傷になった話をしましたが、今では肩の痛みはだいぶ取れてきました。ただ、サーブを強めに打つと次の日に痛みが残るので最近はスライスサーブばかりです。ここ最近調子に乗ってテニスの頻度を上げていると今度は左肘(ひじ)に鈍痛を覚えるようになりました。これまで肘や手首を痛めたことは無いので、まぁただの筋肉痛だろうと放っておいたところ、プレー中に肘の痛みが引かないことが続き、ようやく事の深刻さに気付きました。肘周りを右手で抑えると痛みが引く感じがするので強めに揉んでみたりして対応していましたが本当にこれで大丈夫か不安になったため、「テニス肘」を検索してみました。

すると、

https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/lateral_epicondylitis.html
https://www.matsuda-oh.com/%e3%83%86%e3%83%8b%e3%82%b9%e8%82%98/
https://okuno-y-clinic.com/itami_qa/01.html

といったとても参考になる情報が公開されていました。特に最後のURLでは45歳(ちょうど私の年齢!)ぐらいからテニス肘になる理由として、
テニス肘の正体は「外側上顆」という骨のでっぱりのところに「異常な血管が増えてしまう」ことだと考えられています。
と明記されています。この異常な血管は「モヤモヤ血管」と呼ばれ、こちら

https://okuno-y-clinic.com/itami_qa/01.html

で詳しく解説されています。痛みが生じる部分に不自然に毛細血管とそれに付随する神経線維が発達・増殖したためにその部分に血液が流れると痛みが誘発されるということらしいです。その部分の筋肉を酷使しているため勝手に血管が増殖していったということなのでしょう。歳を取るということはこういうことですか!とにかく血流が起きなければ痛みは生じないとのことで、テニス肘対策にはバンドやテーピングで血流を抑えると効果があるそうです。それ以外にも増殖した毛細血管自体を消してしまえばいいということで、15秒間ほど指圧してあげるのもいいそうです。私がやっていたように強く揉むだけでは効果がないそうです。当面この指圧法で対処しようと思います。

最近のarXivから:2001.05040

前回に引き続き、先月連投されたナイアのもう1つの論文 "Landau-Hall States and Berezin-Toeplitz Quantization of Matrix Algebras"

https://arxiv.org/abs/2001.05040

も簡単に紹介します。Berezin-Toeplitz量子化については

https://arxiv.org/abs/1003.2523

にまとめられていますが、そのエッセンスはナイアの論文のイントロ部分で丁寧に紹介されています。その内容を表面上だけ追ってみます。ケーラー空間 ${\cal M}$ 上の複素関数 $A(z, \bz )$ をケーラー空間上で定義される演算子 $\hat{A}$(の行列要素$A_{ij}$)に対応させる枠組みをBerezin-Toeplitz(BT)量子化と呼ぶ。${\cal M}$上のコヒーレント状態の波動関数(で正則条件を満たしたもの)の完全系の要素を$\Psi_i$で表すと、$A(z, \bz )$と$A_{ij}$の関係は
\[
A_{ij} = \int_{\cal M} d V ~ \Psi^{*}_{i}  A(z, \bz ) \Psi_{j}
\tag{1}
\]
で与えられる。ただし、$dV$ は ${\cal M}$ の体積要素。反対に $A_{ij}$ から古典的な関数を導出する式は
\[
(A) = {\cal C} \sum_{k,l} \Psi_k A_{kl} \Psi^{*}_{l}
\tag{2}
\]
で定義される。ただし、${\cal C}$ は規格化定数。BT量子化において、$A(z, \bz )$,  $(A)$ はそれぞれ反変シンボル、共変シンボルと呼ばれ、量子化における重要な要素を成す。これらは互いに変換可能ではない、つまり$A(z, \bz)$が与えられたとして、$(1)$, $(2)$を用いて算出された $(A)$ は $A(z, \bz)$ とはならない。なお、これらが一致するのは行列要素 $A_{ij}$ が対角成分だけをもつ場合(対角化されたコヒーレント状態表現)に限られる。

この論文では ${\cal M}$ として具体的に $S^2$ と $\cp^2 = SU(3)/U(2)$ を取り上げ、$A(z, \bz )$ と $(A)$ のスター積をシステマティックに算出しています。前回同様ナイアが長年研究してきたファジイ空間を使った量子ホール系の解析手法を用いて、上記のコヒーレント状態を量子ホール問題の最低ランダウ準位とみなすことで、BT量子化を場の理論の問題として再定義し、数学的なスター積の記述に物理的な意味を与えています。

共変シンボルのスター積はナイアが以前に導出した量子ホール系の有効作用の計算と同様です。一方、反変シンボルのスター積については、関係式$(1)$に注目して、最低ランダウ準位に制限された1粒子系の量子ホール問題の解析と関連付けられることが示されており、崎田・レイの論文
https://arxiv.org/abs/hep-th/9304033

で与えられたスター積について現代的な解釈がなされている点が興味深かったです。

2020-02-11

クルーズ船へ差し入れ

新型コロナウイルスの対応で世間を賑わせているクルーズ船(ダイヤモンド・プリンセス、しかし、すごい命名だなぁ)になんと義理の両親が乗船しています。幸いお元気なようで安心しましたが、ご高齢なので今後も体調には気を付けていただきたいです。まだ、1週間は下船できないようなので、今朝、家族で大黒埠頭へ差し入れに行きました。大黒PAには以前寄ったことがありましたが、大黒ふ頭出入り口を利用するのはこれが初めてです。客船ターミナルは首都高を出て直ぐでした。初めよく分からずにメディア関係者の駐車場に行ってしまったので迂回して、乗客家族用の入り口から入りました。

客船はテレビで見ていましたが実際に見ると大きさに圧倒されました。写真一枚には収まりませんでした。




クルーズ船内では洋食ばかりのようなので、栗、ミカン、お煎餅などを差し入れました。また、都合1か月の長期旅行&個室待機となったため爪切りも必要だったようです。客船の近くには救急隊や自衛隊の車両が駐車されていて、当然ながら家族は近くには寄れませんでした。


2020-02-06

最近読んだ本:ロシア外交、国策捜査、北方領土

前回の続きです。佐藤優さんのデビュー作『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』


の感想です。いわゆる鈴木宗男事件の裏側を当事者が誠実かつ詳細に記録した貴重なテクストです。本書の前半でロシア外交・インテリジェンスにおいてユダヤ系ロシア人の影響力の大きさからイスラエルとロシアの関係が重要であることが強調されています。理論物理学の世界でもユダヤ人の優秀さは圧倒的なのでこの部分は体感的に納得しました。(私はニューヨーク市立大学の物理学科でPhDを取得しましたが、ニューヨークだけあって優秀なユダヤ人の先生が数多く在籍されていました。中には政治力の強い先生もいたので懐かしいです。)

ライブドア事件、カルロス・ゴーン事件など国策捜査と呼ばれる事件がよくニュースに取り上げられますが、大手メディアのニュースに触れるだけでは内実については想像するしかありません。しかし、この鈴木宗男事件については佐藤さんがその内幕を検察の捜査手法も含めて赤裸々に記録しています。外務省内部の話や担当検察官の会話内容などが臨場感たっぷりに記述されているので興味深く読みました。公判内容は20年後に公開されるそうなのでその時に真実が明らかになるのでしょう。

最近読んだ本:ソ連崩壊前後のモスクワ雑感

以前のエントリーで米原万里さんの話をした際に佐藤優さんの動画を紹介しましたが、私は恥ずかしながら佐藤優さんの著作を一つも読んだことが無かったので今さらですが評価の高い『自壊する帝国』


を読んだところとても面白くすぐにデビュー作の『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』


も購入し立て続けに読みふけりました。先日、ようやく読み終わりました。2冊とも素晴らしかったです。佐藤さんは今年で還暦を迎えるそうですが、今後も益々言論界で活躍してもらいたいと思います。

さて、感想ですが、まとまりません。無骨、知性・インテリジェンス、情熱、体力、友情、裏切り、チェコ、ロシア、北海道、沖縄、鎮魂など単語の羅列がとりとめもなく出てきます。まぁ男が大好きな話です。独断ですがこれらの本に書かれていることに夢中にならない人は男性ホルモンが少ないかもしれません。『自壊する帝国』のほうから読んだのでまずそちらの感想から。

やはりモスクワ大学で知り合ったサーシャの話が良かったです。私は2005年の夏にドゥブニャの国際学会に出席した後に1週間ぐらいモスクワ、サンクトペテルブルグを歩き回ったことがあります。モスクワ大学にも行きました。スターリン様式と呼ばれるあの建物はとても威圧感がありました。どこだか忘れてしまいましたがモスクワの大通りを歩いているとドゥブニャで一緒だったイタリア人のポスドク2人と偶然出会ったので一緒にランチをしてその後、知り合いのロシア人女性(モスクワ大学の物理学科を卒業して会社勤めされている方)の案内で戦勝記念公園に行くというので厚かましく付いて行ったことがあります。別の日に赤の広場でアメリカ人に混ざって市内観光ツアーに参加した際、車内案内中にガイドの女性が突然、何かの文章を暗唱し参加者の様子を一通り窺ったあと、「これはパステルナークの『ドクトル・ジバゴ』の冒頭です」と控えめながらも得意気に教えてくれたのがとても印象に残っています。彼女のパステルナークの「ナーク」の発音が鼻に抜ける独特なものだったので耳に残っています。私は小説は読んでいませんが映画を観て感動した記憶があります。なんだか話が逸れました。ロシア人の人達はとっつきにくい印象があるかもしれませんが、一旦仲良くなればとてもフレンドリーで饒舌な人たちです。私は大学院の先輩のガーニクからそのことを学びました。サーシャの話を読みながら、今ではモスクワの銀行で働いているらしいガーニクのことやモスクワを歩き回ったときの風景を思い出しました。例えば、赤の広場近くの図書館前に鎮座するドストエフスキイの銅像の大きさや商売っ気の全くないおばちゃんが店先で読書にふけっている様子、ランチで飲んだグルジアの赤ワインが美味しかったこと、モスクワでは意外に新鮮な野菜が多いこと、地下鉄のエスカレーターが長いことなど。

最近のarXivから:2001.04957

まだよく理解してないのですが、気になって流し読みしたということで記録しておきます。私の指導教官だったNairのプレプリント

https://arxiv.org/abs/2001.04957

タイトルは "Entanglement for Quantum Hall states and a Generalized Chern-Simons Form" です。主な結論は「量子ホール状態における量子もつれのエントロピー(エンタングルメント・エントロピー、EE)を背景場の揺らぎの関数として表すと、それは一般化されたチャーン・サイモンズ項で与えられる。」というものです。この描像は重力の場の方程式がEEの極値化により求まることを示唆しており、今後このアイデアに沿った発展が期待されるとのことです。

エンタングルメント・エントロピー(EE)ってなんだっけと思い調べてみると

https://www.jsps.go.jp/seika/2015/vol2_004.html

で第一人者の高柳君が解説しているように、EEは反ドジッター空間の曲面の面積に相当するとのことなので、この面積の変分をゼロにすることで重力の方程式が導かれるというのは十分納得できます。ただ、その面積が一般化されたチャーン・サイモンズ項で与えられるってどういうことなのでしょうか。

論文に沿って議論の流れを見ていきましょう。まず、イントロからナイア節が炸裂しています。

1.ブラックホールに代表されるエントロピーと重力の関係
2.相対論的場の量子論におけるエンタングルメントの必然性
3.非可換幾何学における自由度は空間そのもので与えられる

という3つの観察から、非可換空間上で定義される状態間のEEを計算することができるのか、そしてそれを重力と関係づけることができるのかとの疑問が自然に生じると導入されています。第一段落目だけでこれだけの内容なので、背景知識の乏しい読者としては半ば置いて行かれた感がありますが、頑張って読み進めると、非可換幾何学の簡単な物理モデルとして量子ホール系があると紹介されています。この話は長年ナイアが研究してきたテーマなので私も知っていました。そこで、量子ホール系で2つの領域で定義された状態のもつれ(エンタングルメント)をモジュラー演算子のスペクトルを使って考えると言うのですが、モジュラー演算子って何??となり一旦詰まってしましました。分からないのでとりあえず飛ばして読み進めると論文の後半では上述の結論を導くとのこと。

さて、上記のモジュラー演算子(正しくは富田モジュラー演算子)については2章で定義されていました。この章の後半は富田・竹崎理論の解説となっていて、ウィッテン先生の最近のあの論文 "Notes on Some Entanglement Properties of Quantum Field Theory"

https://arxiv.org/abs/1803.04993

をナイアが咀嚼してまとめた内容が展開されています。私には抽象的すぎるのでそういう数学があるんだということを認めるしかありませんでした。場の量子論においてEEは密度行列を用いてフォン・ノイマンエントロピーとして定義できます。この密度行列を用いてモジュラー演算子を定義することもでき、EEとの関連では、このモジュラー演算子のスペクトルが正の実数となることが重要だということです。

2020-02-04

さくらVPSでSSL設定2:期限切れ更新

以前設定したSSLの期限が切れたので更新手続きを行いました。期限切れの前に案内があるはずなので、それで対応すればサーバの確認、証明書の新規発行は必要ないのでしょうが、私には案内が来ないしさくらインターネットの管理画面にアクセスできないので仕方ありません。とりあえず、以前の設定をできるだけ変えずに更新を行うという方針で作業開始しました。

まず、以前発行したserver.csr, server01.csrは同じものを使うことにします。サーバ情報に変更はないので大丈夫でしょう。次に、sever.csrの方を使って引き続き最安値のドメイン型認証SSL(今回は2年のもの)を1つ申し込みました。申請後、契約情報の画面

https://secure.sakura.ad.jp/menu/service/

から認証ファイルをダウンロードして指定通りにサーバへアップロード。アップロードの仕方は以前と同様です。15分ほど待ってファイルが確認されたら証明書 server.crt が発行されるので、認証ファイルの場合と同様にダウンロード。以前のファイルと差し替えます。このとき

/etc/httpd/conf/ssl.crt

以下の古いファイル名を

server.crt --> server2019aaa.crt
server01.crt --> server01_2019bbb.crt
internal.cer --> internalOld01.cer

などと変更しました。ここで、2019/8/1から中間CA証明書も更新されているので注意してください。


から新規に internal.cer を取得し古いものと差し替えます。server.crtとinternal.cerを差し替えただけだとSSL化されないので、アパッチ再起動するとserver01.crtがないので FAILED となりました。まあ当然なのですがFAILEDなんて久しぶりだったのであせりながらserver01_2019bbb.crtのファイル名を元に戻して、再起動すると無事SSL化されていました!