2020-01-18

最近読んだ本:米原万里のチャーム

以前のエントリーでも触れましたが、最近子供の習い事(バイオリン&英語)に付き添った際の空き時間に本屋に寄っています。先週もふらっと立ち寄り、何か面白いのあるかなあと珍しくワクワクしながら見回していたところ目に入ったのが井上ユリ著『姉・米原万里』


でした。米原万里と言えば私は『オリガ・モリゾウナの反語法』


を新刊で読んで読み返すほど感動した覚えがあります。この本は今も本棚の上の方に飾っています。2006年に夭折されたことは知っていましたが、妹さんの回想エッセイがあるとは知りませんでした。貴重なエピソードばかりで興味深く読みました。少し調べてみると、妹の井上ユリさんは「米原万里 公式サイト」も管理運営されているそうです。その中に作家の佐藤優さんが米原さんについて語った動画


があり興味深く視聴しました。また、以前ネットで見つけたプラハでの少女時代に出会った友達との再会を記録したNHKの番組




を久しぶりに見返しました。この頃の米原さんが私と同じ45歳、亡くなったのが56歳、もし生きていれば私の母と同じ70歳で今年古稀でした。そういえば1950年生まれだと自分の年齢がすぐわかるから嫌だと以前母が言っていました。私の親の世代で少女時代をプラハで過ごし、ロシア語で授業を受けていたなんて信じられません。当時の日本共産党幹部の御令嬢でないと体験しえないことでしょう。その少女時代の思いを大切に忘れずに心の拠りどころとし、私達と共有してくれたことに敬意と感謝の念を表したいです。これを機会にこの番組をもとにした『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』


を読みました。番組では触れられなかった米原さんの思いがストレートに語られていてとてもよかったです。特に表題にもなっているアーニャの話ではおそらく本人に直接言うと友人関係をぶち壊しかねないようなこともズバズバと書いていて、それを作品として公開するなんて勇気はアーニャ本人と半生をまたいで培った信頼関係がなければ持ち得なかったことでしょう。私は読みながらそんなことまで書いて大丈夫かぁと気をもみながらも、本当の友人だからこそ相手が傷つこうと自分の本音をぶつけ合いたいという米原さんの無邪気なまでの率直さというか中学生の少女がそのまま大人になったような純粋さに心打たれました。何とも奇跡的な人です。その精神はまるで真理を追究する(友達思いの)科学者のようでした。

私は残念ながら中欧・東欧諸国といえばロシアにしか行ったことはありませんが、ニューヨークに居た頃、ロシア、ウクライナ、ギリシャ、ルーマニア、アルバニア出身の大学院生やポスドク達とオーバーラップしたことがあります。一緒に食事に行ったり、居室で話し合ったりしたことを思い出しました。とくにロシア人とギリシャ人は皆、話し好きで楽しかったです。米原さんの本を読みながら彼らのことを思い出しました。いまでは誰も物理を続けてないかもしれないけれど、20代の若いときに世界各国の学生たちと切磋琢磨したことは私にとっても忘れられない大切な思い出です。

最後に米原さん晩年の闘病の様子は


に収められています。(アマゾンの履歴によると以前購入したようですが今は手元にありません。)米原さんはこのほか多くのエッセイを著されていますが、個人的にはやはり『オリガ・モリゾウナの反語法』は傑作だと思います。いつかバレエをやってる2人の娘が読んでくれる日が来ればいいのですが、どうなることでしょう。

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