3月7日にあったILC(国際リニアコライダー)誘致について「関心を持って議論を継続する」との政府の見解表明をうけて、その反応をまとめてみました。先日のエントリーでも紹介したように、私は誘致断念に傾いていたであろう政府としては精一杯の対応をしたのではないかと評価しましたが、このまま問題を先送りしていては国際協力は見込めないだろうし最悪誘致も頓挫するのではとの危機感を抱いています。せっかく政界・財界から力強い支援を得たのだから学界内で足の引っ張り合いをせずに早くまとまってくれよというのが率直な感想です。
「ILCの議論、前に進んでいる」 文科省局長会見(産経新聞 3/7付)
前回のエントリーで紹介できなかった3月7日付の記事を列挙します。
次世代加速器「現時点で誘致せず」=関心持ち、意見交換継続-文科省(時事通信 3/7付)
<ILC>「誘致表明至らず」文科省見解 検討は継続の方針(河北新報 3/7付)
中立的な記事が多い中、推進派寄りの記事が産経新聞から配信されていました。
「ILCの議論、前に進んでいる」 文科省局長会見(産経新聞 3/7付)
柴山昌彦文科相「立地地域への効果考慮」 ILCの見解表明で(産経新聞 3/7付)
「日本がILC計画支持と確認」 国際会議議長が会見で評価(産経新聞 3/7付)
一夜明けて3月8日付のニュースを見ると
ILCで文科省見解、岩手県など前向きに受け止め(日経 3/8付有料記事)
研究者「結論すぐ出ぬ」 加速器誘致、見守る意向(毎日新聞 3/8付有料記事)
次世代加速器、議論見守る=菅官房長官(時事通信 3/8付)
ILC「関心」示した政府 研究者組織に期待(岩手日報 3/8付)
ILC誘致表明に至らず(文科省担当局長が政府見解)[胆江日日新聞 ILCニュース 3/8付]
「積極的対応してほしかった」「うれしさ半分、悲しさ半分」(奥州市民、思い複雑)[胆江日日新聞 ILCニュース 3/8付]
文科省見解、受け止め「前向き」(達増岩手県知事ら)[胆江日日新聞 ILCニュース 3/8付]
前進? 現状維持? 後退?(判断迷う文科省見解)[胆江日日新聞 ILCニュース 3/8付]
誘致表明に至らず 文科省担当局長が政府見解 学術会議の所見を重視 正式プロセスで議論を 研究者サイド「残念」の声も 実現へ現実的な対応継続(ILC)[胆江日日新聞 PICKUP 3/8付]
<ILC>誘致結論先送り 文科省表明に至らず、検討継続(河北新報 3/8付)
<ILC>岩手県南、玉虫色の見解に困惑(河北新報 3/8付)
<ILC>「誘致へ働き掛け強める」「実現に一つ進んだ」関係者、今後の進展に期待(河北新報 3/8付)
「積極的対応してほしかった」「うれしさ半分、悲しさ半分」(奥州市民、思い複雑)[胆江日日新聞 ILCニュース 3/8付]
文科省見解、受け止め「前向き」(達増岩手県知事ら)[胆江日日新聞 ILCニュース 3/8付]
前進? 現状維持? 後退?(判断迷う文科省見解)[胆江日日新聞 ILCニュース 3/8付]
誘致表明に至らず 文科省担当局長が政府見解 学術会議の所見を重視 正式プロセスで議論を 研究者サイド「残念」の声も 実現へ現実的な対応継続(ILC)[胆江日日新聞 PICKUP 3/8付]
<ILC>誘致結論先送り 文科省表明に至らず、検討継続(河北新報 3/8付)
<ILC>岩手県南、玉虫色の見解に困惑(河北新報 3/8付)
<ILC>「誘致へ働き掛け強める」「実現に一つ進んだ」関係者、今後の進展に期待(河北新報 3/8付)
などがあります。個人的に注目している胆江日日新聞はやはり良質な記事を掲載しています。河北新報もそうですが、地元の地方紙だけにILC誘致への関心が高く記事の内容に大手メディアには無い熱意を感じます。胆江日日新聞では引き続き3/9付でも関連記事を配信しています。
前向きな受け止め歓迎(ILC研究者側会見受け、小沢市長らコメント)[胆江日日新聞 ILCニュース 3/9付]
ILC誘致「継続」も関門多く(他分野の理解どう得る)[胆江日日新聞 ILCニュース 3/9付]
ずべての記事(有料記事は除く)に目を通しましたが、今後のスケジュール感が分かりづらかったので以下にまとめてみます。
政府としては 2, 3, 4の研究者コミュニティーの議論を踏まえて対応するとのことです。このことについては、柴山文部科学大臣が会見で明言しています。(平成31年3月8日の会見の2:38以降をご覧ください。)
前向きな受け止め歓迎(ILC研究者側会見受け、小沢市長らコメント)[胆江日日新聞 ILCニュース 3/9付]
ILC誘致「継続」も関門多く(他分野の理解どう得る)[胆江日日新聞 ILCニュース 3/9付]
今後の流れ
ずべての記事(有料記事は除く)に目を通しましたが、今後のスケジュール感が分かりづらかったので以下にまとめてみます。
- 今月が締め切りとなっている日本学術会議が策定する「大型施設計画・大規模研究計画に関するマスタープラン」へILC推進派の研究者(素粒子実験物理学者)が応募。
- 今年10月に学術会議がマスタープランの候補プロジェクトの選定を行う。(そこでILCが候補に入らなければ誘致は断念せざるを得ないでしょう。)
- 最終的な学術会議マスタープランの策定は2020年の2月ごろの予定。
- さらに次期欧州素粒子戦略の策定が2020年5月ごろなっているそうです。
政府としては 2, 3, 4の研究者コミュニティーの議論を踏まえて対応するとのことです。このことについては、柴山文部科学大臣が会見で明言しています。(平成31年3月8日の会見の2:38以降をご覧ください。)
行政側としては、あとは研究者の人達で意見を集約してもらってその結果を待って判断するということでしょう。つまり、ボールは学界側に投げられているということです。上記の1.についてですが、既に学術会議はILC誘致に否定的な意見を公表しているので、推進派がマスタープランへ応募したところで、学術会議の人達にもメンツがあるから学術会議の意見が覆ることは難しいと考えるのが自然かもしれません。しかし、学術会議が費用などの懸念からILC誘致を「支持するには至らない」と結論付けたのは、経済界からの全面的な支援(2/20の経済三団体によるILC誘致推進を期待する共同声明)が発表される前の2018年12月でした。したがって、経済・産業界からの財政・技術支援が以前よりは見込める現段階においては、費用などの懸念は軽減されているはずです。経済・産業界と学術界の橋渡しができる人の協力を得て、学術会議のエライ人たちのメンツを保てるように上手く軌道修正してくれればと思います。
このまま学界任せで、ILC誘致の最終決定を学術会議のマスタープランの策定に一任してしまうと 財界、政界、地元の後押しが無駄になってしまいかねません。慎重派の研究者の本音は素粒子分野に大型の予算が配分されてしまうと他分野の研究が先細りしてしまうから困る、ということでしょうから他分野への予算も配慮することを行政側が保証してしまえば話は早いはずです。学界が誘致に向け一枚岩にならないのであれば、行政主導で誘致に動いてもらうしかありません。政府は「議論を継続する」と公表しましたが、具体的には
このまま学界任せで、ILC誘致の最終決定を学術会議のマスタープランの策定に一任してしまうと 財界、政界、地元の後押しが無駄になってしまいかねません。慎重派の研究者の本音は素粒子分野に大型の予算が配分されてしまうと他分野の研究が先細りしてしまうから困る、ということでしょうから他分野への予算も配慮することを行政側が保証してしまえば話は早いはずです。学界が誘致に向け一枚岩にならないのであれば、行政主導で誘致に動いてもらうしかありません。政府は「議論を継続する」と公表しましたが、具体的には
<ILC>誘致結論先送り 文科省表明に至らず、検討継続(河北新報 3/8付)
の記事にあるように、
国際的な意見交換の枠組みについては日米両政府が実施する加速器コスト削減の共同研究を挙げた。ドイツ、フランスとも同様の事業を始める考えを示した。(下線筆者)ということのようです。日本国内でいつまでも決められないと、最終的にはアメリカとの政府間交渉でプレッシャーをかけてもらうしかないのでしょうか!?(それはさすがに情けないですね。)大型プロジェクトと言っても国防や通商に関わるような国の方向性を決める話ではなく、国際的な大型実験施設を国内に誘致するかどうかを決める比較的予算規模の小さい事案なのですから、自国で主導権を持って決めてもらいたいです。
産官学が一体となってILCを誘致する機運は醸成されました。あとは、研究者コミュニティーが一丸となってILC推進へ傾いてくれればいいだけです。ラグビーのワールドカップ、東京オリンピックというビックイベントに次ぐ国家プロジェクトとしてILC誘致に向け国民的な興味が喚起されることを期待します。
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