2019-03-06

ILC誘致検討へ! 産学官協力のもと日本主導での建設・運営に期待

いよいよILC(国際リニアコライダー)誘致の意思表明の期限が明日に迫っているなか、思いがけないニュースが飛び込んできました!


産経新聞の記事はyahooのヘッドラインでも紹介されています。昨年末に内閣府の特別機関である日本学術会議がILC誘致に否定的な意見を公表したので日本政府はILCの誘致には消極的なのかなと思っていましたが、そんなことありませんでした!

最近のILC誘致の話についてはフォローしていなかったのでまさか誘致に向け話が進んでいるとは知りませんでした。先日のエントリーで政府の地震調査研究推進本部(地震本部)が2/26に東北地方の長期地震予測を公表したのは唐突な印象を受けたと述べました。もしかしてILC誘致に否定的な声明を出すためのフラグではないかと邪推してしまいましたが、とんだ勘違いでした。ILC誘致推進へ話が傾いてきたために慎重派(反対派)の人達が動いたと見るべきでした。というのも学術会議の声明以降の流れから何も起こっていなければ慎重派が何か行動を起こす理由はないからです。実際、胆江日日新聞 ILCニュースによるとこの地震本部の公表結果を受けて慎重派の市民団体は2/27付で政府に要請文を送ったそうです。

ILC意思表明「慎重に」(慎重派の市民団体が柴山文科相へ要請文 )

以前のエントリーでも紹介したようにこの胆江日日新聞 ILCニュースのサイトは誘致について賛否両論取り上げていてとてもジャーナリスティックでおすすめです。このサイトで最近の動向を追ってみると、一気に流れが変わったのは2/20に経済三団体(経団連、日本商工会議所、経済同友会)が「国際リニアコライダー誘致に関する意思表明への期待」という共同声明を出してからでした。この共同声明についてはそれぞれの団体ののサイト
で紹介されています。声明文のPDFファイルはこちらこちらにリンクがあります。この共同声明については地元の岩手日報でも詳しく報じられていました。


経団連(中西宏明会長)、日本商工会議所(三村明夫会頭)、経済同友会(小林喜光代表幹事)の方々の英断に拍手を送りたいですね。私の父親世代(団塊世代)のエネルギーのある民間の方々の協力があれば心強いです。地震が頻発する不安定な地盤でも日本の土木・掘削技術の粋を結集すれば克服できる気がしてきました。以前は不安定な地盤に国際的な実験施設を建設することに疑問を抱いていましたが、最近の高速道路や地下鉄工事で発展したシールド工法を駆使すれば地下施設の建設については問題ないと考え直しました。地下の場合は地盤とともに揺れるので地震の影響も少ないですし。地上の施設の耐震性についても高層の建物を建設しない限り問題ないでしょう。実際、東北の大震災の際にも原発施設は地震によって倒壊していません。(原発が被害を受けたのは津波によって非常用電源装置が使えなくなったからでした。もちろん地震によって外部電源を失ったこともありますが、それは施設自体の耐震性とは別問題でしょう。)経済界・産業界からの全面的な協力があれば8千億を超えると言われる建設予算の分担でもいくらか勉強できるのではないでしょうか。費用負担を50%以下にケチって建設のイニシアチブを失うよりは、過半数(75%ぐらい!)負担してでも日本主導で施設の建設・運営を全面的に任せてもらえるよう交渉してもらいたいです。そうすれば国内に最先端の技術が蓄積され技術立国を推進することができます。これは防衛費を上げて(軍事)技術力を高めるよりもよっぽど平和的で国際的そして文字通り科学的な予算の使い方ではないでしょうか。日本の目指すべき方向性はこちらだと、経済界の方々から後押しを受けた気分です。

ILC誘致推進派の政治家たちも素晴らしいリーダーシップを発揮してくれました。経済界の共同声明を受けて、リニアコライダー国際研究所建設推進議員連盟(会長・河村建夫衆院議員、約130人)の方々がすぐに行動を起こしました。

ILC、3月7日「見解示す」 文科省議連に説明(岩手日報 2/22付)

また、地元の東北ILC推進協議会岩手県国際リニアコライダー推進協議会の代表者や地方自治体の代表者(岩手県副知事、一関市市長、奥州市市長)が文科省に緊急要望書を提出しました。


さらに、翌日にはILC推進の議員連盟が念押しのごとく「ILCを国家プロジェクトと位置づけ、政治・立法府の責務として実現を目指す」との決議文を文科省に手渡しました。

一連の流れを見てみるとやはり経済三団体からの共同声明が大きかったのではないでしょうか。日本学術会議よりの素粒子物理が専門でない研究者にとっては面白くないのかもしれませんが、ILC誘致の意思表明の期限直前に東北地方の長期地震予測をあえて公表するなどという姑息な手段で足を引っ張るのは止めてもらいたかったです。(本意ではないかもしれませんが状況的に私はそのように解釈しています。)

今日付けの胆江日日新聞 ILCニュースによると、
北上山地が有力候補地となっている素粒子実験施設、国際リニアコライダー(ILC)の誘致について文部科学省は7日、東京大学ダイワユビキタス学術研究館で開かれるILC関連の国際会議で、現時点でのILC計画に対する見解を示す。同日午前9時からの会議開始早々に、文科省研究振興局の磯谷桂介局長、または同局担当の千原由幸・大臣官房審議官が説明するとみられる。素粒子物理学会と政界、候補地の地元自治体、経済団体などを巻き込んだ誘致運動は、重要局面を迎えようとしている。
とのことです。個人的には、せっかく経済界からの強力な後押しが表明されたので産学官一体となってILCの建設・運営に向けて意思統一を図ってもらいたいです。政界、学界、産業(経済)界のエライ人たちには引き続き力強いリーダーシップを発揮してもらい、ILCを通して日本が将来平和的かつ国際的な科学技術推進国として世界をリードするようになれたら最高ですね。とにかく、明日発表される政府からの正式な意思表明がどういうものか固唾を呑んで見守りたいと思います。

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