2019-02-28

地震本部が「日本海溝沿いの地震活動の長期評価」公表

政府の地震調査機関である地震調査研究推進本部(文部科学省研究開発局地震・防災研究課)が2/26に日本海溝沿いの地震活動の長期評価を公表しました。

https://www.jishin.go.jp/evaluation/long_term_evaluation/subduction_fault/#sanriku-boso_t

メインの公表結果(PDF)は144ページもある膨大なものなので、参考資料の「日本海溝沿いの地震活動の長期評価 概要資料(PDF)」というファイルに要点が分かり易くまとめられています。日本海溝沿いの地震活動で被害が予想されるのは東北から関東にかけての太平洋側の地域です。今回の長期予想では2019年1月1日時点から30年以内にこの地域で地震が起きる発生確率を予想しています。上記参考資料の8ページに結果がまとめられています。とくに「宮城県沖」と「青森県東方沖及び岩手県沖北部」で指定された地域でマグニチュード7.0から7.5程度のプレート間地震が発生される確率がなんと90%と予想されています。東北地方太平洋沖地震後の2011年にも同様の長期予想が公表されていましたが、そのときは「青森県東方沖及び岩手県沖北部」と「茨城県沖」でのM7.0~7.5程度の地震発生確率が90%でした。今回は「茨城県沖」は80%に減少しています。そして、新たに「宮城県沖」という評価対象地域を設定し直して、そこでの長期地震発生確率を90%と予測しています。

M7.0程度の地震は東北地方太平洋沖地震のM9.0クラスの巨大地震とはマグニチュードが2も小さいのでエネルギー換算すると1000分の1の規模ではありますが、震源が地表に近ければ被害が大きくなります。この規模のプレート間地震の発生確率をどのように計算しているかは、上記資料の11,12ページに解説されています。基本的にこれまでの地震頻度から予測しているようです。また、宮城県沖の地域については、2005年までに陸寄りで繰り返し発生していた同規模の地震をもちいて発生率を評価しているため発生率が高くなっているとのことです。

公表結果は国民の社会生活に大きな影響を与えるものなのでもっとニュースで取り上げられてもいい気がします。取り上げすぎると返って住民の不安を煽るのではと慎重になっているメディアも中にはあるのかも知れません。確かに、東日本大震災後の原発問題における政府の対応を思い起こせば、政府機関の発表を全面的に信用することには注意が必要です。ただ、せっかく税金を使って(優秀な)学者の方々が調査した結果であるのでもっと広く国民に流布すべき情報だと思います。

私としては東北での地震発生率の長期予測がなぜこの時期に公表されたのかが少し疑問でした。というのも、3/7に迫っているILC誘致の意思表明の期限の直前にこのような公表を文科省の機関が行うということは、うがった見方をすれば、ILC誘致に否定的な回答をするための1つの言い訳を用意しているように感じたからです。ILC誘致見送りへのフラグではないかと直感しましたが、少し考えすぎでしょうか。地震本部によると「長期評価による地震発生確率値の更新」の理由は

https://www.jishin.go.jp/evaluation/long_term_evaluation/chousa_19feb_kakuritsu_index/

で解説されています。ただ、参考資料の2ページもあるようにこの地域(三陸沖から房総沖)の地震活動の長期評価は2002年、2009年、(東北地方太平洋沖地震後の)2011年と公表されてきたので、私の印象としては、2019年のこの時期に突然長期評価を更新・公開しているように感じました。

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