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2024-01-25

2. 水素原子の束縛状態と散乱状態 vol.2

2.2 束縛状態


この節では前節で導いた代数
{ [Li,Lj]=iϵijkLk[Li,Rj]=iϵijkRk[Ri,Rj]=iϵijk(2Hm)Lk[Li,H]=[Ri,H]=0
においてH0の場合を考える。これは水素電子の束縛状態に対応する。はじめにルンゲ-レンツ・ベクトルを
Mi=m2HRi
と規格化すると、(2.29)は
{[Li,Lj]=iϵijkLk[Li,Mj]=iϵijkMk[Mi,Mj]=iϵijkLk
となる。これはO(4)代数であり、4次元回転の生成子に対応する。この代数を
Si=Li+Mi2,  Ti=LiMi2
で表すと
[Si,Tj]=14[Li+Mi,LjMj]=i4ϵijk(LkMk+MkLk)=0[Si,Sj]=14[Li+Mi,Lj+Mj]=i4ϵijk(Lk+Mk+Mk+Lk)=iϵijkSk[Ti,Tj]=14[LiMi,LjMj]=i4ϵijk(Lk+LkMkMk)=iϵijkTk
となる。よって、O(4)代数は2つの独立な(互いに可換な)角運動量代数Si, Tiで表せる。

 水素原子のエネルギー・スペクトルを理解するためにハミルトニアンをSiTiで表す必要がある。そのためにまずR2を計算する。
R2=(1mϵijkpjLkimpiκˆxi)(1mϵiabpaLbimpiκˆxi)=[1m2pjLk(pjLkpkLj)im2ϵijkpjLkpiκmϵijkpjLkˆxi                 +iκmpˆxκmϵiabˆxipaLb+iκmˆxp+κ2p2m2]=1m2p2L2+2p2m22κmrL2+iκm(ˆxppˆx)+κ2p2m2=p2m2(L2+1)2κmrL22κmr+κ2=(p2m22κmr)(L2+1)+κ2=2mH(L2+1)+κ2
ただし、(ˆxppˆx)の因子を変形するのに前節で導いた関係式
ˆxppˆx=xirpipixir=xirpiixi(xir)xirpi=(3rxir2xir)=i2r
を用いた。(2.30), (2.36)からハミルトニアンは
H=mκ221M2+L2+1
と表せる。式(2.32)に戻ると
S2=14(L2+M2+LM+ML)
が分かる。ここで、LM and MLの因子はゼロになる。これは
RL=1mϵijkpjLkLi=1mϵijkpjLkLiLiLk2=i2mϵijkpjϵkimLm=0
からすぐに分かる。あるいは、LRが直交していることから自明である。


これより、
S2+T2=L2+M22
(S2=T2) が分かる。よって、ハミルトニアンは
H=mκ2212(S2+T2)+1
と表せる。Siは角運動量代数に従うので、S2+T2 as S2+T2=2S2=2s(s+1)と書ける。ただし、s=12q (q=0,1,2,) である。すなわち、
S2+T2=q(q2+1)
となる。よって、ハミルトニアンは
H=mκ221n2      (nq+1=1,2,3,)
と書き換えられる。この結果はHの固有値であり、正しい水素原子のエネルギー・スペクトルに対応する。これはボーア理論と同じ結果であり、シュレディンガー方程式から得られる結果とも一致する。上式のnは主量子数に相当することが分かる。

縮退度

 角運動量演算子がLi=Si+Tiと書けるので、SiTiを用いて固有状態の縮退度を数えることができる。よって、固有状態は|s,ms,t,mtとラベルできる。ここで、s=tであり、ms,mt=s,s1,,sとおける。こりより縮退状態の数は(2s+1)2=(q+1)2=n2と数えられ、量子力学の結果と同じである。Liの量子数はl=0,1,2,,q=n1(=2s)の値をとる。よって、水素原子のエネルギー・スペクトルの縮退度もシュレーディンガー方程式から得られる結果と同じになる。

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