2025-09-03

関数のグラフ表示は GeoGebra が便利!

 ブラウザですぐに表示してくれるのでとても便利!


こんなのがあるとは知りませんでした。だいぶ前からあったようです。関数グラフと言えば gnuplot だと思っていましたが、GeoGebra なら中学生でも使えるし解析関数の理解に役立つこと間違いなし。先生方も問題作成が楽になりますね。

2025-09-01

14. 自発的対称性の破れ vol.1

物理系は一般にハミルトニアン $\H$ で定義される。このハミルトニアンが対称性群 $G$ の生成子 $Q^a$ $( a = 1, 2, \cdots , \dim G )$ と交換可能な場合、すなわち $[ Q^a , \H ]=0$ のとき、ハミルトニアン $\H$ は対称性 $G$ をもつと言う。ハミルトニアン $\H$ に $Q^a$ と交換可能でない項が含まれる場合、この対称性は完全ではない。1.4節で述べたように系の物理状態は対称群 $G$ の既約表現で分類される。(各既約表現に属す物理状態は互いに縮退している。) 基底状態が対称性変換のもとで不変でないときこの対称性は自発的に破れる。すなわち、自発的対称性の破れは基底状態 $| \Om \ket$ が条件式
\[    Q^a \, | \Om \ket \, \ne \,  | \Om \ket     \tag{14.1} \]
を満たす場合に起きる。

14.1 自発的対称性の破れの例


強磁性体のハイゼンベルク模型

 自発的対称性の破れの典型的な例として強磁性体のハイゼンベルク模型がある。このハミルトニアンは
\[    \H \, = \, - \sum_{i,j} J_{ij} \, \vec{S}_i \cdot \vec{S}_j    \tag{14.2} \]
で与えられる。ただし、$i,j$ は格子点、$J_{ij}$ は結合係数、$\vec{S}_i = S^a_i$ ($a=1,2,3$) は格子点 $i$ でのスピン・ベクトルを表す。格子点の添え字について縮約を取るので、ハミルトニアンは完全な回転対称性を持つ。全スピン角運動量はスピン・ベクトルの和で
\[    L^a \, = \, \sum_i S^a_i     \tag{14.3} \]
と表せ、これは交換関係
\[    \left[ L^a , S^b_i \right] \, = \, i \ep^{abc} S^c_i     \tag{14.4} \]
を満たす。よって、
\[    \left[ L^a , \H \right] \, = \, 0     \tag{14.5} \]
と求まり、物理系が回転対称性を確かに持つことが分かる。強磁性体の基底状態は一定方向の磁化を持つので、基底状態は回転のもとで不変でない。つまり、条件式(14.1)は
\[    L^a \, | \Om \ket \, \ne \, | \Om \ket    \tag{14.6} \]
として実現される。ただし、$| \Om \ket$ は強磁性体の基底状態を表す。

 ここで、自発的対称性の破れはないものとして基底状態は回転変換のもとで不変であると仮定して、回転群 $O(3)$ のテンソル演算子 $A_M$ の基底状態における期待値 $\bra \Om | A_M | \Om \ket$ を考えよう。群の要素は $ g = \exp ( i L^a \th^a )$ と表せる。ただし、$L^a$  $(a = 1,2,3)$ は角運動量演算子、$\th^a$ は実数パラメータである。上の仮定は関係式 $e^{i L^a \th^a } | \Om \ket = | \Om \ket$ を意味する。よって、期待値 $\bra \Om | A_M | \Om \ket$ は
\[\begin{eqnarray}    \bra \Om | A_M | \Om \ket    &=&    \bra \Om | e^{- i L \cdot \th} A_M \, e^{i L \cdot \th} | \Om \ket    \nonumber \\    &=&    \D_{MN}  (\th ) \,  \bra \Om | A_N | \Om \ket    \tag{14.7} \end{eqnarray}\]
と表せる。ただし、$\D_{MN}  (\th)$ は $O(3)$ 群のウィグナー $\D$ 関数を表す。
\[    e^{- i L \cdot \th} A_M  \, e^{i L \cdot \th}    \, = \,    \D_{MN} (\th ) \, A_N     \tag{14.8} \]
13章で見たようにテンソル $A_M$ がベクトルであれば $\D_{MN}  (\th )$ は $O(3)$ 群の随伴表現に対応する。任意のパラメータ $\th$ に対して $\D_{MN} (\th ) \ne \del_{MN}$ であるので、関係式(14.7)から $\bra \Om | A_M | \Om \ket = 0$ となる。つまり、$| \Om \ket$ が対称変換のもとで不変であるとの仮定から関係式 $\bra \Om | A_M | \Om \ket = 0$ を導ける。よって、対偶をとると条件式
\[    \bra \Om | A_M | \Om \ket \ne 0 ~~ \longrightarrow ~~    e^{i L \cdot \th } | \Om \ket \ne | \Om \ket     \tag{14.9} \]
が成り立つことが分かる。すなわち、期待値 $\bra \Om | A_M | \Om \ket$ がゼロでない場合に自発的対称性の破れが起きる。強磁性体では、基底状態で非自明な磁化をもつので磁束密度 (あるいは磁気モーメントの総和) の期待値はゼロでない。このような期待値を正しく評価するには、ハミルトニアンの極小化から基底状態 $| \Om \ket$ を求める必要がる。