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2024-12-12

13. ウィグナーの D 関数とその応用 vol.1

 13.1 ウィグナーの D 関数


随伴表現

 まず最初に SU(N) 群の随伴表現を考える。12.2節と同様に群の要素は g=exp(itaθa) (a=1,2,,N21) と表せる。ただし、taSU(N) 代数の生成子であり、N×N トレース・ゼロのエルミート行列で与えられる。規格化は(慣例として) Tr(tatb)=12δab と取る。生成子 ta を用いると SU(N) 代数は
[ta,tb]=ifabctc
と定義される。ここで、fabc は代数の構造定数 である。任意の N×N 行列 Φ は生成子 taN×N 恒等行列 1 で Φ=ϕata+ϕ01 と展開できる。ϕaϕ0 は N2 個の係数を表す。

 つぎに、随伴表現を導入するに当たり、行列 g1tag を考えよう。関係式 Tr(g1tag)=Tr(ta)=0 から、この行列は
g1tag=Dab(g)tb
とパラメータ表示できる。ただし、Dab(g) は展開係数を表す。この表示形式を用いると群の要素の合成 g1g2=g3 に対して、
Dab(g1)Dbc(g2)=Dac(g3)
が成り立つ。よって、Dab(g) をある行列の行列成分 (a,b) と解釈すると Dab(g) はSU(N) 群の表現を成す。この表現を随伴表現を呼ぶ。

 群の要素 g の無限小展開は微小の θa に対して g=exp(itaθa)1+itaθa と表せる。同様に、Dab(g)δab+i(Tc)abθc と書ける。ただし、(Tc)ab はリー代数の要素の随伴表現である。式(13.2)の無限小展開は
(1itbθb)ta(1+itcθc)=ta+i[ta,tc]θc+δabtb+i(ifcab)θctb
と計算できるので、(Tc)ab=ifcab が分かる。従って、リー代数の随伴表現は構造定数で与えられる。なお、構造定数のヤコビ律
fabdfcde+fbcdfade+fcadfbde=0
から (Tc)abSU(N) 代数に従うことが確認できる。

クレブシュ-ゴルダンの定理

 行列演算子が作用する状態はヒルベルト空間上で定義され、これは内積の定義される一種のベクトル空間である。それぞれの状態は |R,α と表示される。ただし、R は群の既約表現であり、α は表現 R に属すベクトルを指定する。これらの状態の直積は
|R,α|R,β=R,γCRRRαβγ|R,γ
と表せる。ここで、CRRRαβγ は展開係数であり、クレブシュ-ゴルダン係数と呼ばれる。クレブシュ-ゴルダンの定理によるとクレブシュ-ゴルダン係数は群の性質から完全に決定される。

SU(3) 群のクレブシュ-ゴルダン係数

 簡単な例として、SU(3) 群の 3 表現の直積を考えると12.3節で議論したように
33=63
であった。3 表現のテンソルをそれぞれ ϕiχj (i,j=1,2,3) とすると、これらの積は階数2のテンソル Vij=ϕiχj で表せる。以前同様、この合成テンソルは対称成分と反対称成分に分離できる。
Vij=V(ij)+V[ij]=12(δkiδlj+δliδkj)Vkl+12(δkiδljδliδkj)Vkl=12(δikδjl+δilδjk)Ψkl+12ϵijmΨm
ただし、関係式 δkiδljδliδkj=ϵijmϵklm と定義式 ΨmϵklmVkl を用いた。Ψij は表現 6 に属す階数 (2,0) のテンソル、Ψm は表現 3 に属す階数 (0,1) のテンソルをそれぞれ表す。SU(3) 群の既約表現とそのテンソル表示の一例は以下の通り。(12.3節から再掲)
(p,q)  (p,q)(1,0)3Ψi  (3,0)10Ψijk(0,1)3Ψi  (0,3)10Ψijk(2,0)6Ψij  (2,1)15Ψkij(0,2)6Ψij  (1,2)15Ψjki(1,1)8Ψji  (2,2)27Ψklij
今の場合、還元公式(13.5)は具体的に
|3,i|3,j=C336ij(kl)|6,klC333ijm|3,mC336ij(kl)=12(δikδjl+δilδjk)C333ijm=12ϵijm
と書ける。これらの共役表現は
33=63|3,i|3,j=C336ij(kl)|6,klC333ijm|3,mC336ij(kl)=12(δkiδlj+δliδkj)C333ijm=12ϵijm
と表せる。

 同様に、表現 3 のテンソルと表現 3 のテンソルの直積は
Vji=Ψji+13δjiTr(V)=δkiδjlΨlk+13δjiVkk
で与えられる。ただし、ΨjiVji のトレース・ゼロ成分 (Ψii=0) であり、上の表の随伴表現 8 に対応する。因子 13 は δii=3 のため必要となる。この式は5.3節の関係式
Tij=(Ttraceless)ij+13δijTkk
と同じである。SU(3) 群の既約表現を用いるとこれは
33=81
と表せる。このとき、還元公式(13.5)は
|3,i|3,j=C338ij(kl)|8,klC331ij(kk)|1,kkC338ij(kl)=δkiδjlC331ij(kk)=13δji
と書き下せる。

 つぎに、3 テンソルと 6 テンソルの直積も対称成分・反対称成分に分離して、
Vi(jk)=V(i(jk))+V[i(jk)]=14(Vijk+Vikj+Vjki+Vkji)+14(ϵijmΨmk+(jk))=14(δmiδnjδpk+δmiδnkδpj+δmjδnkδpi+δmkδnjδpi)Ψmnp+14(ϵijmδlk+ϵikmδlj)Ψml
と表せる。ただし、ΨmnpΨml はそれぞれ 10 表現と8 表現のテンソル表示である。対応する還元公式(13.5)とクレブシュ-ゴルダン係数は次のように表せる。
36=108|3,i|6,jk=C3610i(jk)(mnp)|10,mnpC368i(jk)(lm)|8,lmC3610i(jk)(mnp)=14(δmiδnjδpk+δmiδnkδpj+δmjδnkδpi+δmkδnjδpi)C368i(jk)(lm)=14(ϵijmδlk+ϵikmδlj)

 最後に、随伴表現 8 のテンソル、例えば ΨjiΦlk の直積を考える。定義からこれらはトレース・ゼロなので、その直積 Vjlik=ΨjiΦlk
Vjlik=Tjlik+13δliTjaak+13δjkTblib+19δliδjkTbaab
と分解できる。ただし、Tjlik はテンソル Vjlik のトレース・ゼロ成分である。SU(3) 既約表現のテンソル表示 Ψj1j2jqi1i2ip はトレース・ゼロであり、上下の添え字について完全対称なので、テンソル Vjlik は次のように変形できる。
Vjlik=V(jl)(ik)+V[jl](ik)+V(jl)[ik]+V[jl][ik]=Ψjlik+12ϵjlmΨikm+12ϵikmΨjlm+14ϵjlmϵiknΨnm+13δli14ϵjamϵaknΨnm+13δjk14ϵblmϵibnΨnm+19δliδjk14ϵbamϵabnΨnm=Ψjlik+12ϵjlmΨikm+12ϵikmΨjlm+14ϵjlmϵiknΨnm+112δliΨjk+112δjkΨli29δliδjkΨmm
ただし、関係式 ϵjamϵakn=(δjkδmnδjnδmk) と ϵbamϵabn=2δmn を用いた。随伴テンソル成分は
14ϵjlmϵiknΨnm+112δliΨjk+112δjkΨli=14(12ϵjlmϵikn+13δliδmkδjn)Ψnm+14((jk)(li))Ψnm
と書けることに注意しよう。以上より、対応する還元公式(13.5)とクレブシュ-ゴルダン係数は次のように表せる。
88=271010881|8,ij|8,kl=C8827(ij)(kl)(mnrs)|27,mnrsC8810(ij)(kl)(mrs)|10,mrsC8810(ij)(kl)(mrs)|10,mrsC888(ij)(kl)(mn)|8,mnC888(kl)(ij)(mn)|8,mnC881(kl)(ij)(mm)|1,mmC8827(ij)(kl)(mnrs)=14(δmiδnkδjrδls+δmkδniδjrδls                          +δmiδnkδlrδjs+δmkδniδlrδjs)C8810(ij)(kl)(mrs)=12ϵjlmδriδskC8810(ij)(kl)(mrs)=12ϵikmδjrδlsC888(ij)(kl)(mn)=14(12ϵjlmϵikn+13δliδmkδjn)C888(kl)(ij)(mn)=14(12ϵljmϵkin+13δjkδmiδln)C881(kl)(ij)(mm)=92δliδjk

ウィグナーの D 関数

 これまで群の要素 g=exp(itaθa)G の行列表現を主に扱ってきた。ta (a=1,2,dimG) はリー代数 G の定義表現に属す要素(生成子)であった。ここでは、ある任意の既約表現 R に属す群の要素 gG の行列表現について考えよう。Ta を代数 G の表現 R に属す要素であるとする。このとき、対応する群の要素の行列表現は
D(R)αβ(g)=[ei(Ta)θa]αβ=R,α|eiˆTaθa|R,β
と表せる。ただし、α, β は表現 R に属す特定の状態を表す。状態 α, β が固定されているとき、D(R)αβ(g)θa の関数と見做せる。すなわち、D(R)αβ(g) はリー群 G 上で定義される複素数を値に持つ関数であり、写像
D(R)αβ(g):GC
を与える。この関数 D(R)αβ(g) をウィグナーの D 関数と呼ばれる。

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