ピーター-ワイルの定理
D(R)αβ(g)=[ei(Ta)θa]αβ=⟨R,α|eiˆTaθa|R,β⟩
を導入した。リー群上の関数について、ピーター-ワイルの定理と呼ばれる重要な定理が存在する。その主張は以下の通り。
コンパクトなリー群 G 上で定義される任意の関数 f(g) はウィグナー D 関数 D(R)αβ(g) を用いて展開できる。ただし、R は G のユニタリー既約表現を表す。展開式は具体的にf(g)=∑R∑α,βb(R)αβD(R)αβ(g)と表せる。ただし、b(R)αβ は展開係数である。
最も簡単な例は U(1) 群で与えられる。群の要素は g=eiθ (0≤θ≤2π) で与えられる。任意の表現に対して、この要素は gn=einθ (n∈Z) とパラメータ表示できる。これは gn(θ=0)=gn(θ=2π) が満たされることから分かる。ピーター-ワイルの定理を適用すると、θ についての任意の周期関数は
f(θ)=∞∑n=−∞bneinθ
と展開できることが分かる。これは f(θ) のフーリエ展開に他ならない。よって、ピーター-ワイル展開(13.38)はフーリエ展開(13.39)の群論的な一般化と見做せる。フーリエ逆変換の存在から、(13.38)の逆変換を定義するには群の要素 g に関する積分が必要であることが分かる。
リー群要素の積分
12.2節で解説したように、フレーム場1形式は
g−1dg=itaEaαdθα
で定義される。フレーム場 Eaα を用いると、カルタン-キリング計量は
gαβ=EaαEaβ
と表せる。これらについて詳細は12.2節の(12.25)-(12.28)を参照されたい。正の行列式 detE>0 を仮定すると、(13.41)から √|detg|=detE が分かる。よって、リー群 G の体積要素は
dV(g)=detEdθ1dθ2⋯dθdimG
で与えられる。
ここで、ある固定された群の要素 h∈G を用いて g の代わりに gh を変数として扱う。つまり、
(gh)−1d(gh)=itaE′aαdθαdV(gh)=detE′dθ1dθ2⋯dθdimG
とする。(13.43)の左辺は
h−1(g−1dg)h=h−1(itaEaαdθα)h=Dab(h)(itbEaαdθα)
と計算できる。ただし、随伴表現
h−1tah=Dab(h)tb
を導入した。(13.43)と(13.45)から
E′bα=Dab(h)Eaα
が分かる。これを行列方程式 E′αb=EαaDab(h) と解釈して、行列式を取ると
detE′=detEdetD(h)
を得る。ただし、D(h)=exp(iTcθc) である。前回冒頭で解説したように、随伴表現の生成子は (Tc)ab=−ifcab と構造定数で与えられる。これは添え字について反対称なので、TrTc=0 となる。つまり、任意のコンパクトなリー群の随伴表現に対して detD(h)=1 が常に成り立つ。したがって、detE′=detE であり、体積要素の不変性
dV(gh)=dV(g)
が導かれる。これは、実変数の積分測度が、例えば d(x+h)=dx と書けるように、並進不変であることの群論的な類推であると解釈できる。
別のフレーム場を ˜Eaα で表し、
dgg−1=itb˜Ebαθα
と定義する。このとき、フレーム場1形式
g−1dg=itaEaαdθα
は次のように変形できる。
g−1dg=g−1(dgg−1)g=i(g−1tbg)˜Ebαθα=iDba(g)ta˜Ebαθα
これより関係式
Eaα=Dba(g)˜Ebα
を得る。よって、上と同様に detE=det˜E が求まる。これは、g−1dg で定義された(13.42)の体積要素 dV(g) が dgg−1 で定義された体積要素と同じであることを意味する。言い換えると、体積要素は右作用、左作用に関わらず同じである。
大直交性定理
体積要素 dV(g) を用いると、群の要素 g についての積分を定義できる。この積分が定義されれば、群の要素の様々な関数についての積分を考えられる。例えば、ウィグナー D 関数の直交関係は
∫dV(g) D(R)∗αβ(g)D(R′)mn(g)=1(dimR)δαmδβnδRR′
∫dV(gh) D(R)∗αβ(gh)D(R′)mn(gh)=∫dV(g) D(R)∗αγ(g)D(R)∗γβ(h)D(R′)mk(g)D(R′)kn(h)=[∫dV(g) D(R)∗αγ(g)D(R′)mk(g)]D(R)∗γβ(h)D(R′)kn(h)=[∫dV(g) D(R)∗αγ(g)D(R′)mk(g)]D(R)βγ(h†)D(R′)kn(h)
この方程式は h と独立に成り立つことに注意する。表現 R, R′ がユニタリーで既約なので、(13.54)から h 因子を除くには、角括弧の中の積分に δγk と δRR′ が含まれることが要請される。同様に、gh を hg に置き換えると
∫dV(hg) D(R)∗αβ(hg)D(R′)mn(hg)=∫dV(g) D(R)∗αγ(h)D(R)∗γβ(g)D(R′)mk(h)D(R′)kn(g)=[∫dV(g) D(R)∗γβ(g)D(R′)kn(g)]D(R)γα(h†)D(R′)mk(h)
となるので、上式の角括弧の中の積分は δγk に比例することが分かる。以上から、規格化を考慮するとウィグナー D 関数の大直交性定理(13.53)が得られる。
f(g)=∑R,α,βb(R)αβD(R)αβ(g)
の逆変換には群の要素に関する積分が必要となる。ただし、f(g) はコンパクトなリー群 G 上の任意の関数であった。実際、大直交性定理(13.53)を(13.56)に適用すると、ピーター-ワイル展開の逆変換公式は
∫dV(g) D(R)∗αβ(g)f(g) = b(R)αβ(dimR)
で与えられることが分かる。
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