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2024-12-16

13. ウィグナーの D 関数とその応用 vol.2

ピーター-ワイルの定理

 前回のエントリーではリー群 G 上で定義されるウィグナーの D 関数
D(R)αβ(g)=[ei(Ta)θa]αβ=R,α|eiˆTaθa|R,β
を導入した。リー群上の関数について、ピーター-ワイルの定理と呼ばれる重要な定理が存在する。その主張は以下の通り。
コンパクトなリー群 G 上で定義される任意の関数 f(g) はウィグナー D 関数 D(R)αβ(g) を用いて展開できる。ただし、RG のユニタリー既約表現を表す。展開式は具体的にf(g)=Rα,βb(R)αβD(R)αβ(g)と表せる。ただし、b(R)αβ は展開係数である。
最も簡単な例は U(1) 群で与えられる。群の要素は g=eiθ (0θ2π) で与えられる。任意の表現に対して、この要素は gn=einθ (nZ) とパラメータ表示できる。これは gn(θ=0)=gn(θ=2π) が満たされることから分かる。ピーター-ワイルの定理を適用すると、θ についての任意の周期関数は
f(θ)=n=bneinθ
と展開できることが分かる。これは f(θ) のフーリエ展開に他ならない。よって、ピーター-ワイル展開(13.38)はフーリエ展開(13.39)の群論的な一般化と見做せる。フーリエ逆変換の存在から、(13.38)の逆変換を定義するには群の要素 g に関する積分が必要であることが分かる。

リー群要素の積分

 12.2節で解説したように、フレーム場1形式は
g1dg=itaEaαdθα
で定義される。フレーム場 Eaα を用いると、カルタン-キリング計量は
gαβ=EaαEaβ
と表せる。これらについて詳細は12.2節の(12.25)-(12.28)を参照されたい。正の行列式 detE>0 を仮定すると、(13.41)から |detg|=detE が分かる。よって、リー群 G の体積要素は
dV(g)=detEdθ1dθ2dθdimG
で与えられる。

 ここで、ある固定された群の要素 hG を用いて g の代わりに gh を変数として扱う。つまり、
(gh)1d(gh)=itaEaαdθαdV(gh)=detEdθ1dθ2dθdimG
とする。(13.43)の左辺は
h1(g1dg)h=h1(itaEaαdθα)h=Dab(h)(itbEaαdθα)
と計算できる。ただし、随伴表現
h1tah=Dab(h)tb
を導入した。(13.43)と(13.45)から
Ebα=Dab(h)Eaα
が分かる。これを行列方程式 Eαb=EαaDab(h) と解釈して、行列式を取ると
detE=detEdetD(h)
を得る。ただし、D(h)=exp(iTcθc) である。前回冒頭で解説したように、随伴表現の生成子は (Tc)ab=ifcab と構造定数で与えられる。これは添え字について反対称なので、TrTc=0 となる。つまり、任意のコンパクトなリー群の随伴表現に対して detD(h)=1 が常に成り立つ。したがって、detE=detE であり、体積要素の不変性
dV(gh)=dV(g)
が導かれる。これは、実変数の積分測度が、例えば d(x+h)=dx と書けるように、並進不変であることの群論的な類推であると解釈できる。

 別のフレーム場を ˜Eaα で表し、
dgg1=itb˜Ebαθα
と定義する。このとき、フレーム場1形式
g1dg=itaEaαdθα
は次のように変形できる。
g1dg=g1(dgg1)g=i(g1tbg)˜Ebαθα=iDba(g)ta˜Ebαθα
これより関係式
Eaα=Dba(g)˜Ebα
を得る。よって、上と同様に detE=det˜E が求まる。これは、g1dg で定義された(13.42)の体積要素 dV(g) が dgg1 で定義された体積要素と同じであることを意味する。言い換えると、体積要素は右作用、左作用に関わらず同じである。

大直交性定理

 体積要素 dV(g) を用いると、群の要素 g についての積分を定義できる。この積分が定義されれば、群の要素の様々な関数についての積分を考えられる。例えば、ウィグナー D 関数の直交関係は
dV(g) D(R)αβ(g)D(R)mn(g)=1(dimR)δαmδβnδRR
と表せる。ただし、dimR は表現 R の次元である。この関係式はコンパクトなリー群の行列表現一般に成り立ち、大直交性定理として知られている。この直交関係は次のように示される。
dV(gh) D(R)αβ(gh)D(R)mn(gh)=dV(g) D(R)αγ(g)D(R)γβ(h)D(R)mk(g)D(R)kn(h)=[dV(g) D(R)αγ(g)D(R)mk(g)]D(R)γβ(h)D(R)kn(h)=[dV(g) D(R)αγ(g)D(R)mk(g)]D(R)βγ(h)D(R)kn(h)
この方程式は h と独立に成り立つことに注意する。表現 R, R がユニタリーで既約なので、(13.54)から h 因子を除くには、角括弧の中の積分に δγkδRR が含まれることが要請される。同様に、ghhg に置き換えると
dV(hg) D(R)αβ(hg)D(R)mn(hg)=dV(g) D(R)αγ(h)D(R)γβ(g)D(R)mk(h)D(R)kn(g)=[dV(g) D(R)γβ(g)D(R)kn(g)]D(R)γα(h)D(R)mk(h)
となるので、上式の角括弧の中の積分は δγk に比例することが分かる。以上から、規格化を考慮するとウィグナー D 関数の大直交性定理(13.53)が得られる。

 先に触れたように、ピーター-ワイル展開
f(g)=R,α,βb(R)αβD(R)αβ(g)
の逆変換には群の要素に関する積分が必要となる。ただし、f(g) はコンパクトなリー群 G 上の任意の関数であった。実際、大直交性定理(13.53)を(13.56)に適用すると、ピーター-ワイル展開の逆変換公式は
dV(g) D(R)αβ(g)f(g) = b(R)αβ(dimR)
で与えられることが分かる。

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