長女が入学早々大学から渡された本がこれ。
創立者・星一(はじめ)の半生記。手に取ってみると、稀代のストーリーテラーであり長男の星新一が著しているだけあって、興味深い内容ばかりで一気に読み進めました。出身地である福島勿来(なこそ)近くの明治維新前後の様子から始まり、当時の開放感や東京の描写は歴史的資料の価値あり。明治の初期に単身サンフランシスコに渡り、ユダヤ人家庭に住み込みで働きながらお金をため小学校で英語を学び、向上心を持ってニューヨークに渡り、行商・住み込みをしながらコロンビア大学で統計学の修士を取得されたという苦学しながらの立身出世物語にはただただ頭が下がり、背筋が伸びる思いでした。手帳など個人的な資料を基にしていることもあり、主人公の内面も丁寧に描写されているのでその気持ちがありありと想像でき、共感しながら読み進めました。私も時代も状況も全く違いますが、アメリカに一人で飛び込んでアリゾナ、ニューヨークに住んで苦学した経験があるので明治時代(いやエジソン・フォードの時代)の自由なアメリカの様子も知ることができ興味深かったです。星一は卒業後、なんとニューヨークで新聞社を立ち上げ、セントルイスの万博に参画したり、ヨーロッパを視察したりまさに外交官のような働きをします。実際、伊藤博文、後藤新平、野口英世など当時の偉人たちとの深い交流があったようです。
その後、帰国し製薬会社を興し、時流に乗って大成功。社員教育のための勉強会施設が今の星薬科大学の前身となったそうです。全く知りませんでした。さすがショートショートの第一人者だけあり、伝記物でありながら史実の羅列にならず、感情移入してしまうほどに引き込まれて読み終えました。
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