11.4 2次元共形変換とビラソロ代数
2次元平面では計量テンソルを gμν=δμν (μ,ν=1,2) とおける。この時、共形キリング方程式
∇μξν+∇νξμ=λgμν
は次式で与えられる。
∂μξν+∂νξμ=λδμν
計量 gμν=δμν で縮約を取ると 2∂μξν=2λ を得る。よって、共形キリング方程式は
∂μξν+∂νξμ−(∂⋅ξ)δμν=0
と書ける。添え字を明示するとこれは3つの式で表せる。
2∂1ξ1−(∂1ξ1+∂2ξ2)=02∂2ξ2−(∂1ξ1+∂2ξ2)=0∂1ξ2+∂2ξ1=0
つまり、
∂1ξ1−∂2ξ2=0∂1ξ2+∂2ξ1=0
と求まる。これらは正則関数のコーシー・リーマン方程式に他ならない。そこで、4.2節にならって、次のような複素変数表示を導入する。
ξ1+iξ2=f, ξ1−iξ2=ˉf,x1+ix2=z, x1−ix2=ˉz∂ˉz=∂1+i∂22, ∂z=∂1−i∂22
計量は ds2=δμνdxμdxν=dzdˉz とおけるので、複素座標においてゼロにならない計量テンソルとその逆テンソルは
gzˉz=gˉzz=12, gzˉz=gˉzz=2
で与えられる。よって、(11.57)は
∂ˉzf=12(∂1+i∂2)(ξ1+iξ2)=0
と表せる。この一般解は f=f(z) となることが確かに分かる。つまり、f は z の解析関数である。従って、2次元共形変換は、3次元以上の共形キリング方程式の一般解(11.6)が拡張され、任意の正則関数で定義される。演算子代数の視点から見ると2次元の共形代数 SO(1,3) は無限次元のリー代数に拡張される。この代数はビラソロ代数と呼ばれる。以下では、ビラソロ代数を導入しそのユニタリー表現を考えるので議論は専ら代数的になる。なお、次章では一般のリー代数について幾何学的な考察を行う。
特異点を z=0,∞ にとり、f(z) のローラン展開を書き出すと
f(z)=−∞∑n=−∞ϵnzn+1
となる。ただし、ϵn は展開係数である。もし f(z) が特異点を持たなければ解は f=(定数) で与えられることに注意しよう。複素パラメータ表示(11.58)から共形変換 xi→xi+ξi は
z→z+f(z)
で実現されることが分かる。パラメータ ϵn に対応する共形変換の生成子は
ln=−zn+1∂z
で与えられる。この生成子は交換関係
[lm,ln]=(m−n)lm+n
を満たす。これはヴィット代数と呼ばれる。部分代数 ln (n=−1,0,1) とその反正則部分 ˉln は SL(2,C) 代数を成す。これは2次元の広域共形代数に対応している。定義(11.62)より2次元共形変換は次の演算子で生成されることが分かる。
O=ϵ−1(−∂∂z)+ϵ0z(−∂∂z)+ϵ1z2(−∂∂z)=ˉϵ−1(−∂∂ˉz)+ˉϵ0ˉz(−∂∂ˉz)+ˉϵ1ˉz2(−∂∂ˉz)=aPz+ˉaPˉz+cM+dD+bKz+ˉbKˉz
ただし、共形変換の生成子は
Pz=−∂z=l−1, Pˉz=−∂ˉz=ˉl−1: 並進変換M=−z∂z+ˉz∂ˉz=(l0−ˉl0): 回転変換D=−z∂z−ˉz∂ˉz=(l0+ˉl0): スケール変換Kz=−z2∂z=l1, Kˉz=−ˉz2∂ˉz=ˉl1: 特殊共形変換
と定義される。(11.65)のパラメータは ϵn (n=−1,0,1) を用いて
a=ϵ−1, ˉa=ˉϵ−1, b=ϵ1, ˉb=ˉϵ1, c=12(ϵ0−ˉϵ0), d=12(ϵ0+ˉϵ0)
と同定される。(11.65),(11.66)は前節で求めた一般次元の結果
O=aμ(−i∂∂xμ)+ωμνxν(−i∂∂xμ)+ϵxμ(−i∂∂xμ)+bα(x2ημα−2xμxα)(−i∂∂xμ)≡aμPμ−ωμν2Mμν+ϵD−bμKμ
Pμ=−i∂μ: 並進変換Mμν=xμPν−xνPμ: 回転変換D=−ixμ∂μ: スケール変換Kμ=−i(2xμxν∂ν−x2∂μ): 特殊共形変換
の2次元版である。
ビラソロ代数はヴィット代数の中心拡大として定義される。
[Lm,Ln]=(m−n)Lm+n+cm,n
ここで、 cm,n は全ての演算子と可換な c-数 である。演算子 Lr と L−r (r>1) は互いに随伴関係にあり、これらの演算子は代数のユニタリー性の要請から必要である。通常、中心因子 cm,n はエネルギー・運動量テンソルで表せる演算子(ビラソロ演算子と呼ばれる)を導入して、演算子積展開の手法を用いて計算される。ここでは、これらの重要な内容については割愛し、リー代数の特性から cm,n の具体的な形を求める。つまり、代数の反交換関係
cm,n=−cn,m
とヤコビ恒等式
[[Ll,Lm],Ln]+[[Lm,Ln],Ll]+[[Ln,Ll],Lm]=0
から cm,n を導出する。ヤコビ恒等式を cm,n で表すと
(l−m)cl+m,n+(m−n)cm+n,l+(n−l)cn+l,m=0
となる。ビラソロ代数は広域共形代数 SL(2,C) を部分代数に持つ。正則部分を考えると、Ln (n=−1,0,1) には中心拡大は起きない。また、cm,n は c-数 であるので、cm,n∼O(z0) となる。これは m+n=0 の場合に限り cm,n がゼロとならないことを意味する。よって、cm,n を
cm,n=c(m)δm+n,0 (m≠0,±1)
とパラメータ表示できる。言い換えると、ゼロとなる cm,n は
c1,−1=0, c0,n=0 (n≠0)
で与えられる。ここで、(11.71)に l=−n+1, m=−1 を代入すると
cm,−m=(m+1)(m−2)cm−1,−(m−1)
を得る。ただし、(11.69)と(11.73)を用いた。これより、
cm,n=(m+1)m(m−1)3!c2,−2δm+n,0
と求まる。したがって、ビラソロ代数(11.68)は
[Lm,Ln]=(m−n)Lm+n+c12(m3−m)δm+n,0
と表せる。ここで、c=12c2,−2 は中心電荷と呼ばれる。ビラソロ代数は無限次元のリー代数であり、2次元共形代数はビラソロ代数で定義される。
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