2022-05-31

知識人の鑑 Lubos Motl のブログが閉鎖された件

 初期のころからフォローしていた Lubos Motl のブログ


が4月から閉鎖されています。ネット言論空間の検閲に抗議してのことですが、最近の議論をみてみると復活する見込みはなさそうです。Reference Frame は私の知る限り世界最高レベルの知性に触れることのできる貴重なブログでしたが、そのようなメディアが無くなってしまうのはとても残念です。これも時代の流れでしょうか?

私がこのブログを始める際に blogger を選んだのは Reference Frame が blogger を使っていたからですが、まさかあの自由で率直で有益なブログが検閲の対象となっているとは知りませんでした。Lubos はその検閲に嫌気がさしてブログ自体を辞めてしまったみたいですが、これは人類にとって大きな損失ではないでしょうか?おそらく政治的な意見が検閲対象となったのでしょうが、Lubos の意見は理論物理学者だけあって論理的でとても参考になるものばかりでした。議論のきっかけになる意見であり、一方的に ban するような内容ではなかったと思います。blogger を運営する google になにか政治的な圧力があるのでしょうか?疑問です。

私が Lubos を初めて見たのはまだニューヨークにいた頃です。2006年の春だったでしょうか、コロンビア大学のセミナーか何かを見に行った際、Lubos が来ていて最前列で熱心にメモをしていました。その頃、私は彼のブログの熱心な読者だったのであれが Lubos かなんて遠巻きから確認しました。Lubos は学部生の時にチェコの大学で書いた論文が弦理論の大御所に認められて大学院からはニュージャージーの ラトガーズ大に入り、影響力のある弦理論の大家たちとボンボンと論文を出し、卒業後はハーバードのジュニアフェローからファカルティになるという絵に描いたようなエリートで、そのような天才が自分のブログで最新物理学のことや大学のことについて日々信じられないようなクオリティとクオンティティの記事を発信していたので場の理論の発展に興味のある私としては読まずにはいられませんでした。ブログのRSSを登録し、読者登録もしていました。2007年にハーバードの助教授として前途有望な(というか若手学者としてこれ以上のステイタスは無いという)Lubos が突然大学を辞めてチェコに帰るという選択をしたときは驚きました。当時のサマーズ学長の解任に反対したことがキッカケだったように記憶していますが、折角の学者生活を捨てて故郷でブロガーになるという決断は凡人の私には到底及びもつかないものでした。

その後も精力的に量質共に比類ないレベルの記事がアップされていました。8年前には Lubos の記事で知った kaggle 主催の


というのに参加し、Discussionコーナーで Lubos とやり取りしたのはいい思い出です。最近、物理より政治的な投稿が多いかなとは感じていましたがロシアのウクライナ侵攻以降、政治的な内容の検閲が厳しくなったのでしょうか。検閲やってらんねぇ的な記事が上がってすぐにブログが閉鎖されたのでさすがに判断早いなぁ。あれだけ大量の科学史的にも価値のある内容が閲覧できなくなるとは大きな損失です。幸いいくつか気になる記事は RSSフィードで Thunderbird に残っているので(今見ると 2008年12月から2022年3月までの一部の記事476件)Lubos ロスになったら折をみて読み返してみようと思います。(追記:その後、少し見てみましたがRSSフィードではエントリー全文ではなく冒頭部分しか残っていませんでした。残念。)

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