2019-12-23

最近読んだ本:想像力は知識よりも強い、空海の生涯

最近の土曜日は子供の習い事の付き添いに行くことが増えました。その空き時間に本屋によって偶然目にした『眠れないほど面白い空海の生涯』(由良弥生著)


を立ち読みしたところ面白そうだったので先週購入して、昨日読み終わりました。由良さんの作品は初めてでしたが、女性らしい直感を信じる大胆さと緻密な文献渉猟力に感服しました。特に空海の生涯を丹念に調べ上げて、読者を飽きさせない大河ドラマ風の伝記に仕上げる筆力には圧倒されました。空海が生きた時代の時代背景や空海の手紙の内容を詳細にわたり解説している部分については学術的にも貴重な資料ではないでしょうか。私はどちらかというと物語性よりもこれまで知らなかった歴史資料に興味があったので、とても勉強になりました。文献紹介だけなら無味乾燥な読み物となり、文庫として世に出るのは難しかったかもしれませんが、そこは、筆者が本文中でいみじくも述べているように「想像力は知識よりも強い」(34頁)という信念のもと興味深く楽しい読み物に仕上がっています。想像力を羽ばたかせて書かれた部分と知識を伝える目的で書かれた部分が織り交ざって、その配合が上手くいっている部分とそうでない部分が気になりはしました。特に終盤はどうしても歴史的事実の羅列になってしまいがちで読み進めるのに苦労しました。しかし、全体的に文献紹介のレポートとして割り切って考えると非常に良くまとまっているので空海、真言宗について興味のある方は是非手に取ってみて、自分なりの空海像を想像してみてはいかがでしょうか?

由良さんの本を読みながらこういったジャンルの本は以前読んだなあと思い返してみると阿刀田高さんの有名な知っていますかシリーズでした。




大学生のころに立て続けによんでとても勉強になった記憶があります。「アイヤーヨ!」でアブラハム、イサク、ヤコブ、ヨセフを覚えるというのは今でも頭に残っています。宗教について一般向けに本を著すのはいろいろな意味で大変だと思いますが、教養としての宗教を知識として楽しく正しく軽妙に伝えてくれる本が今後も著されることを期待します。

空海と言えば以前のエントリーで紹介したとおり高村薫さんの本があります。


当然ながらこの本も由良さんの本の主な参考文献の一つになっていました。この本を紹介した際に
高村薫の慧眼によると空海の理解にとって重要なことは空海が四国で山林修行をしていた時に室戸岬の洞窟で神秘体験をしたこと、それを言語化・視覚化する努力を怠らなかったこと、そしてなにより空海その人自体に魅力(オーラ)があったことだそうです。
と書きましたが、今回の読書でこれまでの理解が深まりとても良かったです。いつか機会があれば高野山と東寺へ行ってみたいと思います。

最後に空海の生涯について参考になったサイトを紹介します。

http://www.mikkyo21f.gr.jp/kukai-life/
https://true-buddhism.com/history/kobodaishi/
https://senjp.com/kukai/

これだけ資料が充実してきたので近々空海の大河ドラマが制作されるかもしれませんね。主役はもちろんグレートトラバースの田中陽希さんでお願いします!

0 件のコメント: