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2025-02-14

電気四重極子遷移の選択則に関わるクレブシュ-ゴルダン係数

原子内電子の放射現象に関する選択則は例えばこちらにまとめられているが、その導出にはよく知られているようにウィグナー-エッカルトの定理が適用される。この定理の詳細はここでは割愛するが、結論としては電気双極子遷移あるいは磁気双極子遷移の選択則は、任意の角運動量固有状態 |l,ml=1 の角運動量固有状態 |1,a (a=0,±1) との合成で定義されるクレブシュ-ゴルダン係数 lm1a|lm+a の有無によって決定できる。ただし、軌道角運動量量子数l はゼロ以上の整数であり、磁気量子数 mm=l,l+1,,l1,l の値をとる。ただし、電子のスピンを含めると l は 半奇数を含む全角運動量量子数 j に置き換えれられる。ゼロとならない lm1a|lm+a は下表で与えられる。
la=1a=0a=1l+1(l+m+1)(l+m+2)(2l+1)(2l+2)(l+m+1)(lm+1)(2l+1)(l+1)(lm+1)(lm+2)(2l+1)(2l+2)l(l+m+1)(lm)2l(l+1)m1l(l+1)(l+m)(lm+1)2l(l+1)l1(lm1)(lm)2l(2l+1)(l+m)(lm)l(2l+1)(l+m1)(l+m)2l(2l+1)
この表は例えば


に掲載されている。上の表で l=m=0 (あるいは |a|<1 かつ |ll|<1) の場合に係数が例外的にゼロとなることに注意しよう。

 一方、電気四重極子遷移の選択則は任意の角運動量固有状態 |l,ml=2 の角運動量固有状態 |2,a (a=0,±1,±2) との合成で定義されるクレブシュ-ゴルダン係数 lm2a|lm+a の有無によって決定できる。よって、上と同様の表があれば簡単に電気四重極子遷移の選択則を確認できるのだが、分かる範囲では見つからなかった。そこで、以下のクレブシュ-ゴルダン係数の一般形 (Racah 公式) からこれらの係数を求めることにした。
j1m1j2m2|JM=δM,m1+m2(2J+1)(J+j1j2)!(Jj1+j2)!(j1+j2J)!(j1+j2+J+1)!×(J+M)!(JM)!(j1+m1)!(j1m1)!(j2+m2)!(j2m2)!×k((1)kk!(j1+j2Jk)!(j1m1k)!(j2+m2k)!×1(Jj2+m1+k)!(Jj1m2+k)!)
ただし、整数 k の和は階乗をとる数がすべて非負である k だけに限られる。この公式は M0 かつ j1j2 の場合に適用されるが、それ以外の場合は関係式
j1m1j2m2|JM=(1)Jj1j2j1m1j2m2|JMj2m2j1m1|JM=(1)Jj1j2j1m1j2m2|JM

 結果のみを書き出すと、ゼロとならない lm1a|lm+a (a=0,±1,±2) は下表で与えられる。
la=2a=1l+2(l+m+1)(l+m+2)(l+m+3)(l+m+4)(2l+1)(2l+2)(2l+3)(2l+4)(l+m+1)(l+m+2)(l+m+3)(lm+1)(l+1)(l+2)(2l+1)(2l+3)l+1(l+m+1)(l+m+2)(l+m+3)(lm)l(l+1)(2l+1)(2l+4)(l2m)(l+m+1)(l+m+2)l(l+1)(2l+1)(2l+4)l3(l+m+1)(l+m+2)(lm1)(lm)2l(l+1)(2l1)(2l+3)(2m+1)3(l+m+1)(lm)2l(l+1)(2l1)(2l+3)l1(l+m+1)(lm2)(lm1)(lm)(l1)l(2l+1)(2l+2)(l+2m+1)(lm1)(lm)(l1)l(2l+1)(2l+2)l2(lm3)(lm2)(lm1)(lm)(2l2)(2l1)2l(2l+1)(l+m)(lm2)(lm1)(lm)(l1)l(2l1)(2l+1)
la=0l+23(l+m+1)(l+m+2)(lm+1)(lm+2)(l+1)(2l+1)(2l+3)(2l+4)l+1m3(l+m+1)(lm+1)l(l+1)(l+2)(2l+1)l3m2l(l+1)l(l+1)(2l1)(2l+3)l1m3(l+m)(lm)(l1)l(l+1)(2l+1)l23(l+m1)(l+m)(lm1)(lm)l(2l2)(2l1)(2l+1)
la=1a=2l+2(lm+1)(lm+2)(lm+3)(l+m+1)(l+1)(l+2)(2l+1)(2l+3)(lm+1)(lm+2)(lm+3)(lm+4)(2l+1)(2l+2)(2l+3)(2l+4)l+1(l+2m)(lm+1)(lm+2)l(l+1)(2l+1)(2l+4)(lm+1)(lm+2)(lm+3)(l+m)l(l+1)(2l+1)(2l+4)l(2m1)3(lm+1)(l+m)2l(l+1)(2l1)(2l+3)3(lm+1)(lm+2)(l+m1)(l+m)2l(l+1)(2l1)(2l+3)l1(l2m+1)(l+m1)(l+m)(l1)l(2l+1)(2l+2)(lm+1)(l+m2)(l+m1)(l+m)(l1)l(2l+1)(2l+2)l2(lm)(l+m2)(l+m1)(l+m)(l1)l(2l1)(2l+1)(l+m3)(l+m2)(l+m1)(l+m)(2l2)(2l1)2l(2l+1)
前回同様、これらの係数のうちで例外的にゼロとなる可能性のある係数は |a|<2 かつ |ll|<2 を満たすものである。該当する係数から以下の関係式
ll20|ll=l(2l1)(l+1)(2l+3)ll20|l+1l=3l(l+1)(l+2)ll20|l1l1=3(l1)(2l1)l(l+1)(2l+1)ll21|l+1l+1=ll+2ll21|l+1l1=3l(l+1)(l+2)(2l+1) 
を得る。これらを用いると例外を含めた電気四重極子遷移の選択則を確認できる。

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