2021-07-04

最近読んだ本:楽園のカンヴァス

 最近毎回楽しみにしているYouTube『山田五郎 オトナの教養講座』


で紹介されていた原田マハ著『楽園のカンヴァス』


を電子書籍で購入、一気に読みました。ルソーの傑作と言われる『夢』という作品にまつわる歴史的な背景や専門家でないと知りえない内容を小説・ミステリー形式にして息を継がせぬ展開力で最後まで書き切っていてとても良かったです。序盤に出てくる岡山弁がとても自然なのでそれに引き込まれていると話は一気に1980年代のニューヨーク、バーゼルへと飛び、さらに主人公たちが読まされるという形でルソー・ピカソの時代の話が当事者目線のエッセイとして語られています。このエッセイ部分が著者の一番伝えたいことのように感じられました。史実に即しながらも創造的な部分が多いので、このような小説として表現するのが最適だったのだと思いますが、このような形式の小説はこれまで読んだことがありませんでした。おそらく日本語で書かれた初めてのものではないでしょうか。岡山弁だけでなくエッセイ部分の(野口英世のお母様のような)丁寧で心のこもった独特の表現、心情描写の的確さ、場面展開の軽快さ、どれも秀逸で著者の絵画への造詣(ぞうけい)の深さだけでなく言語感覚の高さにも感心しきりでした。

折角なので別の作品も読んでみようということで『本日は、お日柄もよく』


のサンプルを読んでみるとこれも良かったので全編購入しましたが、中盤以降は何故か現実感のないテレビドラマのような内容になってしまい途中から飛ばし読みしていしまいました。また機会があれば著者の絵画小説を読んでみたいと思います。

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