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2024-11-08

12. リー群の幾何学的側面 vol.3

前回のエントリーではリー群についてカルタン-キリング計量を導入し、計量を定義するフレーム場が満たすモーレー-カルタン恒等式を求めた。この恒等式とトーション・ゼロの条件式との類推から、リー群をリーマン多様体と解釈できることが分かった。リー群の幾何学を考察するにあたり重要となる量はフレーム場1形式である。今回も引き続きこの視点からリー群の幾何学的な側面について考える。具体的にはリー群のコセット空間(商空間)として表せる2次元球面 S2=SU(2)/U(1) の計量を導出する。

コセット空間 S2 = SU(2)/U(1) の計量

 ここで SU(2) 群の場合に戻ると、SU(2) 群の要素の一般形は
g=11+zˉz(1zˉz1)(eiθ/200eiθ/2)
と表せる。ただし、z=x+iy は複素変数である。実際、微小な θ, |z| に対して、g は恒等行列とパウリ行列 σi で展開できる。
g(1+iθ/2x+iyx+iy1iθ/2)=1+iθ2σ3+ixσ2+iyσ1
つぎに、
g(z,θ)=v(z)h(θ)
として変数分離を考える。
v(z)=11+zˉz(1zˉz1),   h(θ)=(eiθ/200eiθ/2)
このとき、群の要素の規格化  gg=1 は vv=1 から簡単に確認できる。フレーム場1形式は
g1dg=h1(v1dv)h+h1dh
と表せる。ただし、右辺の各項は次のように計算できる。
v1dv=11+zˉz(1zˉz1)     [11+zˉz(0dzdˉz0)(1zˉz1)ˉzdz+zdˉz2(1+zˉz)3/2]=11+zˉz(zdˉzdzdˉzˉzdz)ˉzdz+zdˉz2(1+zˉz)1=11+zˉz((zdˉzˉzdz)/2dzdˉz(zdˉzˉzdz)/2)=σ12dzdˉz1+zˉz+iσ22dz+dˉz1+zˉz+σ32zdˉzˉzdz1+zˉzh1(v1dv)h=((zdˉzˉzdz)/2eiθdzeiθdˉz(zdˉzˉzdz)/2)11+zˉz=σ12eiθdzeiθdˉz1+zˉz+iσ22eiθdz+eiθdˉz1+zˉz+σ32zdˉzˉzdz1+zˉzh1dh=(i2dθ00i2dθ)=iσ32dθ

 式(12.45)-(12.47)を用いると、カルタン-キリング計量(12.44)は
ds2=2Tr(g1dgg1dg)=2Tr[(v1dv)2+2v1dvdhh1+(h1dh)2]=(dzdˉz1+zˉz)2+(dz+dˉz1+zˉz)2(zdˉzˉzdz1+zˉz)2  i2(zdˉzˉzdz1+zˉz)dθ+dθ2=4dzdˉz(1+zˉz)2(zdˉzˉzdz1+zˉz+idθ)2
と計算できる。上式の第1項は2次元球面 S2 の計量に対応する。これはフビニ-スタディ計量と呼ばれる。実際、2次元球面のステレオ射影(立体射影)による座標
x1=z+ˉz1+zˉz,   x2=izˉz1+zˉz,   x3=1zˉz1+zˉz
を用いると、これらは x21+x22+x23=1 を満たし、その計量は
ds2=dx21+dx22+dx23=4dzdˉz(1+zˉz)2
と計算できる。よって、カルタン-キリング計量(12.48)は計量レベルでコセット関係 S2=SU(2)/U(1) を明示していることが分かった。この計量は SU(2) 対称性の自発的破れの解析に有用である。この自発的対称性の破れは、物理において強磁性体スピン波の動力学を記述する。第14章ではこのような現象についてより詳しく解説する。

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