2023-12-22

最近読んだ本:ゲノムでだどる古代の日本列島

DNA解析により考古学も科学として扱われてきたことは2022年のノーベル賞(医学・生理学賞、ペーボ博士)のニュースで知っていました。日本の研究はどうなのか気になり第一人者の斎藤成也先生の最新刊を購入。 


いざ手に取ってみると読みたかった斎藤先生の話は最初(第0章)だけで残りは関連分野のほかの研究者の話でした。DNA解析で日本人の特徴としてインドのアンダマン諸島やチベットの人たちと共通した成分があるとの話は聞いていたのですがそのあたりの分析はありませんでした。0章では縄文・弥生時代に3段階にわたり渡来人が流入してきたことと日本列島内でDNA分布の二重構造があることが説明されていました。都道府県別のDNA成分分析は初めて見たので興味深かったです。兵庫、群馬、埼玉、栃木、大阪に類似性があることに驚きました。徳島、島根、鳥取、高知、福井の異質性も古代史と関連付けると興味深い。読者それぞれゆかりのある地域の分布がどうなっているか見てみるだけでも楽しいと思います。

そのほかの章は飛ばし読みでしたがDNA解析がどのように考古学や人類学の研究に用いられているのかを垣間見ることができました。今後も考古学、古代史についての科学的な結果・証拠が多く発表されることを期待します。

2023-12-21

最近読んだ本:中東問題再考

残念ながらパレスチナのテロ組織ハマスとイスラエルとの戦闘状態が続いています。パレスチナ問題について私はロシア・ウクライナ問題以上に無知なので、何かないかと探して手に取ったのが飯山陽著『中東問題再考』


電子書籍で読みました。現地での生活経験もあり長年イスラム世界について研究されているだけあり貴重な情報が得られました。私の限られた海外経験からなんとなくそうかなあと思っていたこと(例えば、イスラム教は寛容性に乏しいとかイスラム世界では女性が自立しづらいとか)がいくつか実例も含めて説明されていました。

以前、ランチの際にイスラエル人の物性理論の先生がパレスチナ問題について熱く話していたのでそもそも西側がサイクス・ピコ協定とか勝手に結んだのが原因ですよねみたいな教科書的なコメントをしたら、何故か烈火のごとくまくし立てられてこの問題に他人が口を挟むなみたいな感じで圧倒されました。それ以来、中東問題について余計なことは言わないようにしています。『中東問題再考』を読んでみてやはり中東については関わらないほうが賢明だと再認識しました。最近大活躍中の飯山さんには今後も精力的に忌憚なく活動してもらいたいと思います。

2023-12-20

最近読んだ本:地図と拳

妻が友達から借りたという小川哲著『地図と拳』


久しぶりにハードカバーで読みました。かさばるけどデジタルより読みやすいし、誰かにあげることもできるのでやはり紙はいいですね。内容は日露戦争から第二次世界大戦までおよそ半世紀にわたる満州のある都市の興亡についてでした。満州については以前こちらで紹介した『五色の虹』
 

を読んだのでその時の話を思い出しながら読み進めました。タイトルに「地図」が入っているものの話のメインとなる都市の地図が全く出てこないので不親切だなあと思いましたが途中でこれはわざと載せないということか、読者の想像にゆだねているのだなと理解しました。地図といえばロシア語で都市地図のことをプラン・ゴーラダ (план города、直訳すると計画都市) と言うんだよな、なんて気になりながら読み進めていると最後に少し関連する記述があり個人的には楽しめました。