2023-07-21

父とのお別れ

 先日、7月12日23時46分に7ヵ月以上入院していた父が永眠いたしました。

7月19日に近親者のみで葬儀・告別式を執り行いました。

人徳があり謙虚で誠実。人格者の父でした。いつまでも忘れません。



2023-07-15

3次元 Yang-Mills 理論のシュレーディンガー表現

 プリンストン高等研究所では例年、大学院生向けにある特定のトピックについての夏の学校が開かれています。私が参加したのはもう20年前2003年のことでしたが素晴らしい環境だったので今でもよく覚えています。今年の夏の学校のトピックはYang-Mills理論の閉じ込めについてのようです。私の指導教官だったNairの動画も出ていたので大学院生に戻った気分で興味深く見ました。



相変わらずとても分かり易く勉強になる講義でした。ハミルトニアンを用いた3次元 Yang-Mills 理論は長年ナイアが研究してきたトピックで私も2008年に関連論文を出したことがあります。それ以降ほ比較的新しい内容(カシミール効果の計算、超対称性ゲージ理論への応用、非アーベル型エンタングルメントについての洞察)も丁寧に解説されています。ナイアが好きな質量ギャップについての理解も二日目の講義の32分ごろから披露されていて懐かしかったです。100ページ以上の丁寧な講義録も用意されており、意欲のある学生・若い研究者が取り組みやすいよう配慮されています。Yang-Mills理論の(ラージ$N$ではない)非摂動的な手法に興味ある方は是非ご覧ください。

2023-07-05

Mathematical Review 115: IKKT行列模型、最近の進展

私が大学院に入ったのは1999年でしたが、その頃の素粒子論は弦理論全盛でその中でも特に全てのタイプの超弦理論を統一するという(Witten先生が発見し命名した)${\cal M}$理論が注目されていました。${\cal M}$理論がもつ時空の非可換性との関連で${\cal M}$理論が行列模型で表されるというBFSS行列模型が提唱され、またほぼ同時期にあるタイプ(Type IIBと呼ばれる)超弦理論が行列模型として記述できるというIKKT行列模型が提唱されました。当然ながらこれらについて多くの論文が出ました。博士課程の頃、私もこの流れに乗らないとポスドクが見つからないだろうという思いもあり、これらの行列模型について論文を書きました。20年ぐらい昔の話です。

結局、ポスドクは見つからずその後これらの行列模型についてあまりフォローしていなかったのですが、先日、AMS の Mathematical Reviews からIKKT模型についての論文のレビューを依頼されたので少し読んでみました。昔のことを思い出しながら、ざっと見た感じで表面的にレビューしただけですが、とりあえずこちらを寄稿しました。最近、偶然にも長谷部さんからIKKT行列模型についての関連論文を教えてもらっていたので、こちらについても読んでみました。IKKT行列模型から高次元スピンのゲージ理論やゲージ場の散乱振幅を導くという話です。何故そのようなことを考えるのか今の私には良くわかりませんが、20年にわたり同じトピックを深めていくSteinacker氏の研究スタイルには感服します。今後もシミュレーションではない解析的な手法でIKKT行列模型の研究を続けて行ってもらいたいと思います。