救急医療のトリアージの際に患者さんの血液循環に問題がないか調べるテストに Blanch test というのがあります。爪を5秒間おさえて圧迫したあとに、血流が回復するまでの時間が2秒以上あると循環に問題ありとのことです。血流回復時間をCRT (Capillary refilling time:毛細血管再充満時間) とも呼ぶそうです。このCRTについて物理的な知見が知りたいとの問い合わせがあったので調べてみました。
このような現象(雨粒落下や抵抗を通過する電流など)は運動方程式を解いてモデルを作成します。血流内の分子に速度に比例する抵抗が掛かると考えると少ないパラメータでCRTを計算することが出来ます。
血管内の分子の位置:x(t)
このような現象(雨粒落下や抵抗を通過する電流など)は運動方程式を解いてモデルを作成します。血流内の分子に速度に比例する抵抗が掛かると考えると少ないパラメータでCRTを計算することが出来ます。
血管内の分子の位置:x(t)
血管内の分子の速度:v(t)=∂x∂t=˙x
毛細血管の定常血流速度: v0
血管内の分子に働く加速度:a
とおくと血管内の質量mの分子の運動方程式は m¨x=ma−mλ˙x とおける。ただし、λは抵抗係数。初速が 0 で終端速度が v0 なので微分方程式を解くと ˙x=v0(1−e−λt) となり、λ=a/v0 [1/sec] となることが分かる。
これより血流が r % 回復するまでの時間 tr は Ltr=log(100/(100−r)) で与えられる。50%, 80%, 90%のときそれぞれ Lt50=log(2)=0.693, Lt80=log(5)=1.609, Lt90=log(10)=2.303 となる。CRTについて t90 を採用することにすると L=a/v0 が求まればCRTが計算できる。
まず毛細血管内の加速度 a は血圧から計算できるのかもしれませんがよく分からないので、とりあえず概算で重力加速度の2倍として a=20[m/s2] とします。重力に逆らって血流が流れる必要があるという直感的な理由からだけですが、
(3ページ目)によると「大動脈起始部の血流の最大加速度は平均して40~50 m/s2に達する」そうなのでオーダーとしては間違ってないと思います。
次に v0 について。毛細血管の定常血流速度は
によると 0.03 cm/s。一方、脈波伝播速度(脈圧の伝わる速度)は
(10ページ目)によると 16 m/s (小さい動脈)とのことで両者には大きな開きがあります。血流速度を使うと概算で L=6.67×104 脈波伝播速度を使うと L=1.25 となる。このとき t90 はそれぞれ
t90=3.45×10−3 sec (血流速度)
t90=1.84 sec (脈波伝播速度)
となる。v0として血流速度を使うと一瞬で血流が回復するので正常値を反映しているのでしょう。一方、脈波伝播速度の方は判断基準の2秒とオーダーが合うのでもしかしたらこちらを使った方がモデル解析には有意義かもしれません。
最後に毛細血管内の血流加速度 a は血圧(高い方)に比例すると考えられるので、データを収集してこの関係性を使えば t90 の値をより正確に予測できると期待できます。
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